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特集 基底膜
Ⅵ 基底膜の生化学と機能
著者: 大久保達也1
所属機関: 1神戸大学医学部皮膚科教室
ページ範囲:P.715 - P.720
文献購入ページに移動 いわゆる基底膜(BM)とはその組織化学あるいは電顕的所見よりみて,一般生体膜すなわち細胞膜,ミトコンドリア膜,ゴルジ膜のごとき蛋白質と燐脂質を主体とするunit membraneとは異なり,一部は上皮細胞他は結合織由来の成分が相接合した結合膜(boundary membrane)であると考えるべきである。
その強固な結合構造からBMを純粋に分離することはきわめて困難であるため,その化学的組成の分析はいまだ正確を欠き,ことに表皮真皮接合部のBMについての知見はほとんどない現状である。しかしながら腎糸球体,血管,水晶体,腫瘍組織などにおける化学的分析あるいは偏光分析所見1〜4)をもととして,これに皮膚基底膜の電顕,組織化学,X線回折の諸成績5)を加味して推察すると,その組成は線維蛋白と糖蛋白,一部ムコ多糖蛋白よりなると考えられる。すなわち,まずハイドロキシプロリンおよびグリシンに富むコラーゲン様線維蛋白が,平面な膜構造ではなくヘチマの線維のごとく網状ないしスポンジ様構造をとり,その線維間には主として糖蛋白質,一部ムコ多糖蛋白質が一方では線維蛋白に纒い付き結合し,他方では水,電解質および有機性の栄養物,代謝産物を保持してゲルの状態で存在するのであろう。
その強固な結合構造からBMを純粋に分離することはきわめて困難であるため,その化学的組成の分析はいまだ正確を欠き,ことに表皮真皮接合部のBMについての知見はほとんどない現状である。しかしながら腎糸球体,血管,水晶体,腫瘍組織などにおける化学的分析あるいは偏光分析所見1〜4)をもととして,これに皮膚基底膜の電顕,組織化学,X線回折の諸成績5)を加味して推察すると,その組成は線維蛋白と糖蛋白,一部ムコ多糖蛋白よりなると考えられる。すなわち,まずハイドロキシプロリンおよびグリシンに富むコラーゲン様線維蛋白が,平面な膜構造ではなくヘチマの線維のごとく網状ないしスポンジ様構造をとり,その線維間には主として糖蛋白質,一部ムコ多糖蛋白質が一方では線維蛋白に纒い付き結合し,他方では水,電解質および有機性の栄養物,代謝産物を保持してゲルの状態で存在するのであろう。
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