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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科25巻8号

1971年08月発行

雑誌目次

図譜・341

頸部に生じたスポロトリクム症の2例

著者: 加藤友衛 ,   柳田真理子 ,   苅谷英郎

ページ範囲:P.752 - P.753

〔症例1〕 49歳家婦,農業兼自転車屋,茨城県稲敷郡河内村在住
初診 1970年12月19日初診の約3ヵ月前,左頸部に小豆大の紅色丘疹出現,近医にて加療うけるも,数,大きさともに増大したため来院。外傷の既往はない。

綜説

紅皮症治療の問題点

著者: 武田克之

ページ範囲:P.759 - P.766

 紅皮症erythrodermaあるいは剥脱性皮膚炎exfoliative dermatitisは,全身または広汎にわたる皮膚の著明な炎症性の発赤と落屑を表現した名称で,本来の皮膚病の臨床像その他の問題は除外した診断名である。本症の組織学的変化は基礎疾患の組織像がそのまま保持されるものであり,治療も含めて刺激となる処置がなされた病巣のみが変化する(Montgomery 1933,1954)。また本症は類似の症状を呈しやすいが,数多くの異なつた疾患を含む症候群であり,いまなお原因不明の病像が大きな部分を占めているから,適確な整理分類は難かしい。

原著

持久性隆起性紅斑の1例

著者: 高岩堯 ,   谷奥喜平 ,   岩尾英一

ページ範囲:P.767 - P.773

 比較的まれな疾患とされているErythema el-evatum diutinum (以下EEDと略記)も,近年相次いで報告に接するようになり,本邦でも百瀬1)の初報告例以後今日までにおよそ30例をかぞえる。本症はその臨床像とともに,難治であることが特徴とされ,病因追求と相いまつて多種多様の治療が試みられているが,最近DDS (diamino-diphenyl-sulfone)の著効例が発表され2,3,4,5),その作用機序より病因に関する考察もなさている。
 最近われわれは,水疱形成著明で,種々の治療に抵抗したが,DDSにより劇的効果をおさめた本症の1例を経験したので報告する。

トキソプラズマ症

著者: 木村鈴代 ,   水野信行

ページ範囲:P.775 - P.786

 トキソプラズマ症はToxoplasma gondii (以下,Tpと略す)によつてひき起こされるzoono-sis (人獣共通感染症)である。Tpは感染スペクトルがきわめて広く,自然感染はヒトを含みほとんどの哺乳動物や,多数の鳥類ならびに一部の冷血動物などにも発見されている。しかし,本症がごく最近にいたるまで注目されなかつたのは,病原体であるTpの検出が比較的困難であつたことと,ヒトにおける症状が割合に特異性が少ないため,他の疾患と誤認されることが多かつたためであろう。しかし,最近診断に有力な種々の免疫学的検査法が考案され,Tp症の疫学および臨床についての飛躍的な研究がおしすすめられてきた。今回,一症例に特有の眼底変化をともない,Senear-Usher症候群様,急性湿疹様およびジベル・バラ色枇糠疹様の多彩な皮疹をつぎつぎに示した本症を経験したので報告する。

Poikiloderma様症状を呈したHyalinosis cutisの1例

著者: 秋葉弘 ,   笹井陽一郎

ページ範囲:P.787 - P.793

 組織学的に皮膚のピアリン沈着を主病変とする疾患はHyalinosis cutisと総称されるが,ピアリンの概念がきわめて漠然としているためにhyalin-osis cutisの概念も明確なものではない。
 われわれは,従来知られているHyalinosis cu-tisとは臨床的にまつたく異なり,全身のpoiki-loderma様臨床症状を呈した皮膚のhyalinosisの1例を経験したので,文献的考察をも加えて以下に報告する。

掌蹠膿疱症—治療と予後

著者: 熊谷武夫 ,   川島愛雄 ,   金原武司 ,   鍛冶友昭

ページ範囲:P.795 - P.801

 掌蹠膿疱症はわれわれが日常しばしば経験する疾患で,かつ難治である。われわれは昭和34年以降同45年までの11年2ヵ月間に金沢大学皮膚科において観察された本症263例を統計的に検討し,また予後についてのアンケート調査も行なつた。以下にその成績を述べる。

皮膚科における酸性ムコ多糖類検索特に電気泳動法による検索について

著者: 石川英一

ページ範囲:P.803 - P.812

 昨今,病変の場としての結合組織が再認識されるにつれ,その重要構成成分である基質の研究も次第に盛んになつてきており,他方疾患を代謝の面から再検討する試みもまた増大してきている。そしてその場合最も重要なこととして,方法の正鵠性があげられるが,酸性ムコ多糖類(AMPS)の検索については,この方面の研究がなお新らしい分野に属するものだけにとくに強く望まれる。そこで本文では,AMPSの研究に現今用いられている諸法を列挙するとともに,その限界点,優劣に触れながら,筆者が現在行なつている電気泳動法による皮膚および尿AMPS検索成績の一部を紹介し,この方面の今後の研究の参考ともなれば幸せである。

皮膚科学の流れ 人と業績・15

Thomas Addison Camille Gibert

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.814 - P.816

(前号から続く)
 現在の疾患は,黄疸が14カ月続いたのちに発症した。初め手に出現し,指節関節屈面を越えて手掌に拡大した。その後間もなく黄色がかつた斑が一側の眼瞼の内眼角付近に生じ始め,次いで他側眼瞼のちようどそれと対称的の部位に現われた。この斑ははなはだわずかに高まり,明らかには硬結を示さず,その拡大はきわめて緩徐であつた。1850年の早い時期に,この症例の蝋模型を2個作製した。この時には顔面の斑は上述したとおりの状態であつた。手掌および指節関節のひだに接する隆起に沿つては,黄色がかつた,不透明,不規則な,やや高まつた線状病変が存在した。母指,諸指の第1指節関節,手根の内側面および内面の発疹には,結節性隆起にしだいに移行するのが見られた。肘と膝には明らかな結節がいくつか存した。罹患部には圧痛があつた。患者の体の全表面は鈍いレモン色様の色調を呈した。種々の療法を用いたが無効であり,疾患は徐々に進行する傾向を示した。患者が現在診療を受けているStartin氏の好意によつて,現在に至るまでわれわれは患者の観察を続けている。黄疸はいまだに存続し,おりおり肝症状の再発によつてその色調が濃くなつている。全皮膚はくすんだレモン色の色合を呈する。この7カ月の間に発疹はますます結節状になつた。とくに右手の指節関節背面ではそうであつた。右肘の融合性結節のつくる斑は,蝋模型をとつてから,かなり増大した。肘は両側とも同様におかされている。また,右膝,足の親指の上面,両耳介にも結節が見られる。手において斑状型から結節型への漸次的移行がはなはだ明瞭なので,両型の本質的関係は証明される。症例Sheriffにおいて耳介,肘,指節関節,その他にある結節は性質が同じである。それは堅く,表面はむしろ不整であり,よく観察すると真皮内の病変によることがわかる。表面の所々に毛細血管の見えることがあつて,ぶちの外観を示す。

Summaries in Arch. Derm.

Summaries in ARCHIVES OF DERMATOLOGY

ページ範囲:P.818 - P.824

 従来本誌では,外国文献欄にて海外論文の紹介に努めてまいりましたが,かねてあとがきなどでお知らせしましたように,Archives of Dermatology掲載全論文のsummaryを随時掲載致します。外国文献同様ご活用下さい。
 The original source of publication:Reprinted from the ARCHIVES OF DERMATOLOGY;Vol. 103, Number 4;pages 351, 358, 362, 371, 375, 387, 394, 400, 407, 409, 423, 428, 438, 442, 448 and 452. April 1971. Copyright C 1971, AMA.

外国文献

外国文献—専門誌から

ページ範囲:P.826 - P.827

DERMATOLOGICA 141 : 1 1970
Eczema vaccinatum. Report of Four Cases by Contact-Infection. Treatment with Methiasazone (Marboran) : J. C. M. Grosfeld and A. G. S. van Ramshorst 1
Sensitization to Phenylacetaldehydc : S. Fregert 11

〈原著論文抄録〉

持久性隆起性紅斑の1例,他

著者: 高岩堯 ,   谷奥喜平 ,   岩尾英一

ページ範囲:P.829 - P.829

 55歳家婦,足関節の水疱を以て発症し,後四肢,臀部の各所にも水,膿疱を生じ,これらは次第に結節あるいは隆起性の紅斑に変じるという経過をとつた持久性隆起性紅斑の1例。観察期間中水疱の新生,再発は止まらず,組織学的にも真皮上層の小血管を中心とした急性滲出性炎症が著明であり,corticosteroidを初め種々の治療に頑強に抵抗したが,DDS 150mg投与で劇的な効果がみられた。以上より本症におけるDDSの効果を細小血管炎に作用して炎症を抑えることにあると推定した。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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