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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科25巻9号

1971年09月発行

雑誌目次

図譜・342

炎症性辺縁隆起性白斑

著者: 山本哲雄 ,   中尾正敏

ページ範囲:P.850 - P.851

患者 41歳,女性
初診 昭和45年6月30日

原著

特異な病像を示したErythrokeratodermieの1例

著者: 籏野倫 ,   清水夏江

ページ範囲:P.857 - P.862

 紅斑角化症は一部の典型を除きその臨床像が多彩であることと比較的稀有な疾患であるために,諸家により2,3の分類が試みられているとはいえ,なおそれははなはだ不完全なものである。
 私どもは紅斑・角化を主徴とする11歳男児例で,その皮膚所見が既往の報告のいずれにも合致せず,しいてあげるならばErythrokeratoder-mia variabilisのうちのNicolas-Jambon型の記載に類似するも,胸背部の線状の配列,注射痕,生検痕に一致する発疹の新生などは,むしろBorzaおよびVinkosの記載するErythrokeratoderma ichthyosiforme variabile mitcharakteristischem isomorphem Reizeffektにはなはだ近似すると考えられる症例を経験したので,この診断を下すに至つた過程を鑑別診断を含めてここに報告する。

Osteopoikilosisおよび孤立性骨嚢腫を併発せる線状鞏皮症の1例

著者: 土肥淳一郎 ,   山田統正 ,   松葉修 ,   宮脇博子 ,   辻本恵子 ,   五十嵐信一

ページ範囲:P.863 - P.868

 鞏皮症が骨に何らかの病変を呈することはあえて珍らしいことではない。しかしわれわれは孤立性骨嚢腫および整形外科領域においても稀有な疾患とされているOsteopoikilosis (骨斑紋症)の2つの骨変化を有しているきわめて興味ある線状鞏皮症の1例を経験したのでここに報告する。
 この骨の2症状を合併せる線状鞏皮症は,われわれの蒐集した内外の文献では見いだすことができなかつた。

石灰化表皮腫について

著者: 白岩照男

ページ範囲:P.869 - P.875

 石灰化表皮腫は1881年MalherbeおよびChenantaisにより"Epitheliome calcifie desglandes sebacees"と名付けられ,皮脂腺由来の腫瘍として報告せられたが,その後の研究によつて本症は毛母細胞から生じたもの,ないしは第1次上皮芽から毛への分化を示す腫瘍と考えられ,また石灰化が必発でない点からPilomatri-xomaの名称も与えられている。本邦では新妻6)らが,肥田,佐藤の本邦第1例以来の78例を集めて検討し,さらに丸山ら7)も18例を報告している。これらの報告によれば本症は20歳代の若年者に多く,上肢,顔面に多いとされているが,われわれは昭和42年以来4年間に本症14例を経験し,本症は乳幼児の顔面,ことに眉毛部,耳前部に好発するなど臨床的に興味深い所見を得たので,組織学的所見とともに文献的考察を加えて報告する。

紅皮症型毛孔性紅色粃糠疹の1例

著者: 高島巌 ,   青柳俊 ,   村戸克郎 ,   水元俊裕

ページ範囲:P.877 - P.882

 毛孔性紅色粃糠疹(PRP)は,比較的まれな炎症性角化症である。秋山1)は,昭和41年,本邦で122例,慶大で昭和40年までの10年間に30例,Stuttgen2)はSchuermanの報告として,1889年から1963年ころまでに世界文献に346例,Wel-tonら3)は,米国での26,986例の皮膚疾患中に1例もなく,Grossら4)は,1920年から1967年までの英語文献に約300例,Davidsonら5)は,MayoClinicで1929年から1967年の間に57例と報じている。
 本症は,肢端,肘頭,膝蓋の炎症性角化を主とする疾患で,しばしば全身に拡大して紅皮症に発展することはよく知られており,欧米の成書,広本のかかげる臨床写真には,紅皮症型のものが多いが,わが国では紅皮症型を示すものは比較的まれなものと考えられ,日本皮膚科全書の紅皮症の項に,鑑別の対象となる疾患として取りあげられていないばかりか,わが国の教科書,図譜などにみられる臨床写真も,ほとんど肢端,肘膝型に限られている。

皮膚科領域における補体の研究—低補体価をきたした症例を中心に

著者: 白石聡 ,   居村洋 ,   重松正雄 ,   武田克之

ページ範囲:P.883 - P.890

 この約10年間に,日本人のもつれた糸をほぐすような根気と器用さで,4つの成分からなると考えられていた補体が,次々と機能的に純粋な蛋白として分離・精製されてきた。現在では9つの成分からなり,反応順序に従つてC1,C4,C3,C2,C5,C6,C7,C8,C9と命名されている。これらの全成分が反応して,ワッセルマン反応に代表される溶血反応が起こることは,よく知られている。補体は,動物の血液,血漿および血清中にあつて,抗原・抗体結合物に一定の順序で反応し,酵素に類似した蛋白質ともいわれている。ヒト血清中の補体の存在は,Nuttallが体液,滲出液に殺菌力があり,その活性は55℃,45分あたためると失われることを発見したにはじまり,Buch-nerはAlexin(1885),Bordetが1a substancebactericide殺菌物質(1895),Ehrlich & Mor-genrothらはAddiment (1899)と名ずけたがその後AddimentがKomplementと改められ1いわゆる補体の語源となつた。現在,血清中の補体を定量する方法は少なくないが,Mayerらの開発した定量法1)が,最も正確であり,一般に広く行なわれている。すなおち感作ヒツジ赤血球5×108を含む全量7.5mlのgelatin veronalbuffer (GVB++)の系で,37℃,60分反応させ,50%の赤血球(2.5×108)を溶血させる補体量を1単位と定義するものである。この方法で血清補体価(以下CH50と略記)を測定すると,健康人でもかなり広い範囲に分布し,正常値をはるかに越えた値や,逆に低い値を示したり,まつたく溶血しない対象もあつて当惑する。しかし,補体が9成分に分離され,Cl-esterase, immune ad-herence, anaphylatoxin, chemotactic factorなどの生物学的活性も徐々に明らかにされるにつれ,かつて補体の持つていた神秘性はうすらぎつつあり,われわ控皮膚科医の手のとどく所にまで近よつた感がする。近年皮膚疾患と補体の関連性を示唆する報告も散見され,補体の関連において病態を解明し,さらに治療への進展が待たれる現状である。こうした臨床面への応用こそ,補体学は,もちろん皮膚科領域における病態生化学発展の1つの起点となろう。
 ともあれ,著者らは,アレルギー性皮膚疾患の機序解明にその動態を活性のうえでとらえうる補体を利用しえぬかと考え,CH50を中心に検討してきた。最近,溶血活性の低い疾患に遭遇し,その詳細を検討して興味ある知見を得たので,自験症例を中心に若干の文献的考察を加えてみたい。

肛門周囲に発生した基底細胞上皮腫

著者: 岡部省吾 ,   西脇宗一 ,   山本達雄

ページ範囲:P.891 - P.895

 基底細胞上皮腫の発生部位には特異な傾向があり,顔面,頭部に70%以上のものが生じ,顔面においても上口唇より上方に集中して発生するという明瞭な傾向が認められている。この反面,手掌,足蹠,粘膜,外陰および肛門周囲にはきわめてまれにしか発生していない。これらの事実は基底細胞上皮腫の発生原因,または誘因,あるいはその発生母地に対する諸説の根拠として,いろいろな見地から検討されている。われわれは,臨床的には表在型であり,組織学的には大部分が充実型に分類される,肛門周辺に生じた基底細胞上皮腫を経験したので報告する。

軟レ線照射およびブレオマイシン局注の奏功したKeratoakanthomの1例

著者: 上野賢一 ,   小野莞爾 ,   新村真人

ページ範囲:P.897 - P.902

 ケラトアカントーム(以下KAと略す)は,自然退縮の可能性はあるとはいえ,Baer & Kopf(1962)1)も述べているごとく,何らかの治療を行なつた方が望ましい。われわれは,さきに軟レ線2,3,4)およびブレオマイシン軟膏4)で加療し,優れた効果をみたことを報告したが,今回55歳男子の鼻翼部に生じた本症に軟レ線照射およびブレオマイシン局注療法を行ない,これまた満足すべき結果をみたので,ここに簡単に追加報告する。

Senear-Usher syndrome様症状を呈した尋常性天庖瘡の1例

著者: 木下浩彰 ,   白石聡 ,   武田克之

ページ範囲:P.903 - P.907

 尋常性天庖瘡Pemphigus vulgaris (以下P.v.と略記する)の症例のほぼ半数は口腔粘膜に初発し,全経過を通じて口腔粘膜が侵されないことは非常にまれである。したがつて口腔内病変が少なくとも3週間以上持続すればP.v.を疑うべきであるが,口腔粘膜のびらん性変化のみでP.v.と診断することは難かしく,難治性口内炎としてみすごされやすい。私らは口腔内に皮疹を生じ,医治をうけながら再発をくりかえし,難治性口内炎とみなされてきたが2年後にSenear-Ushersyndrome (以下S.U.と略記する)様皮疹を生じたP.v.の1例を最近経験した。本症について免疫グロブリンの定量,および血清補体価(以下CH 50)の測定をおこない多少とも興味ある知見を得たので,私らの集めえた口腔内病変が先行した症例に関する文献的考察とともに報告する。

皮膚科学の流れ 人と業績・16

Erasmus Wilson

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.912 - P.914

 これまで1年以上にわたつて本誌に連載してきたのは,ヘブラ前史とでもいうべき皮膚科学の流れであった。ヘブラによつて現代皮膚科学が創始されたとすると,これまで叙述したのはヘブラの偉業の基礎となつた皮膚科近世史といつてよいかもしれない。その期間は18世紀の半ばから19世紀の半ばに至る約1世紀に当たるわけてある。
 このヘブラ前史にBいてもつとも巨大な足跡を残したのはウィランであつた。彼によつて皮膚科学は科学として成立したのである。ウィランについでイギリスにおいては,幾多のすぐれた皮膚科学者が現われ,この時期のイギリス皮膚科学界には目を見張らせるものがあつた。これらの学者は皮膚科学の諸分野において卓越した業績を残し,皮膚科学の長足の進歩はイギリスの皮膚科学者によつて遂行された観がある。イギリス皮膚科学に刺激されてフランスにおいても皮膚科学が勃興し,アリベールのような宏才達識の学者が出現した。これにつぐ俊秀は,初め皮膚科学のイギリス的思想を踏襲するにすぎなかつたが,たちまちフランス独自の皮膚科学を発展させた。やがてフランス皮膚科学はその盛時にはいるのである。

外国文献

外国文献—専門誌から

ページ範囲:P.916 - P.918

THE BRITISH JOURNAL OF DERMATOLOGY 83: 6, 1970
Autoantibodies in Dermatitis Herpetiformis: N. G. Fraser 609
Milk Sensitivity in Dermatitis Herpetiformis: O. Ch. Pock-Steen and A.-M. Niordson 614

〈原著論文抄録〉

特異な病像を示したErythrokeratodermieの1例,他

著者: 籏野倫 ,   清水夏江

ページ範囲:P.920 - P.920

 11歳,男児,生後3カ月ごろから存在するほぼ全身の潮紅と落屑を示す症例を報告した。
 父に同病があるが両親は血族結婚でない。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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