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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科26巻1号

1972年01月発行

雑誌目次

図譜・347

円盤状エリテマトーデスに併発した有棘細胞癌

著者: 徳田安基

ページ範囲:P.8 - P.9

症例 29歳男. 初診:昭和46年3月22日
既往歴 15,6歳ごろ肝疾患,腎疾患(詳細は不明)

原著

人,牛共通白癬の集団発生について—その臨床的,疫学的ならびに菌学的検討

著者: 青柳俊 ,   平出晃也 ,   三浦祐晶 ,   高橋幸治 ,   矢久保義哉

ページ範囲:P.15 - P.21

 Trichophyton verrucosum (Tr.v.)による家畜および人の白癬の報告は,欧米においては数多いが,わが国では比較的少なく,高橋(吉)ら1)2)が昭和36年秋以来岩手県に流行した人および牛の白癬について調査を行ない,その後これとあわせて山形県におけるケルスス禿瘡姉妹例について詳細に記した報告や3),大越ら4)5)の青森,岩手,出形,栃木,東京,佐賀など各地の牛からTr.v.を分離し,その地域での本菌による牛の白癬の集団発生を認めた報告などがあるに過ぎない.われわれは,北海道宗谷地方でTr.v.による人および牛共通の白癬の集団発生例を観察して学会報告6),をしたが,ここに臨床的,疫学的ならびに菌学的に検討した成績を記述する.

Granuloma gangraenescensの1例

著者: 石川芳久 ,   橋本紘 ,   小林敏夫

ページ範囲:P.23 - P.28

 1869年Mc Bride1)が鼻および顔面の急速な破壊をきたす1例を発表して以来,Woods2),Klinger3),Stewart4)など数多くの諸家が同様の疾患について報告している.このGranulomagangraenescens(G. g.)の病因に関しては炎症性,腫瘍性,代謝異常などの考察があり,現在のところ未だ本態不明の疾患とされており,臨床的にも確診が難かしく,剖検により始めて診断されるものも多い.G. g. の現在迄の報告例は約100例と推定されるが,診断に対する意見が区々としているので,正確な症例数は明らかではない.それ故,この疾患の同意語はいろいろあり,malignant granuloma,Osteomyelitis necroticansfaciei,lethal midline granuloma,reticuloendothelial sarcomaなどが知られている.一般的には男性に多く,20〜50歳代に発生し,文献的にはlethalな経過をとるものが大多数である.しかしMulfay5),Pichler & Traunerの他数例の生存例も報告されている.今回著者らはG. g. と考えられる一例を経験したのでその臨床的経過ならびに検査所見を記し,併せて若干の考察を加えてみたので報告する.

Letterer-Siwe病

著者: 中川俊郎 ,   塙嘉之 ,   斎藤胤曠

ページ範囲:P.29 - P.35

 1924年,Letterer1)により,および1933年Si-we2)によつて報告されて以来,数多くのLette-rer-Siwe病の報告があり,わが国においても1970年までに80例を越す報告をみることができる.
 本症は病理組織学的に,広汎に細網内皮細胞が増殖する疾患の一つとしてとらえられているが,細網内皮症の概念が未だに混沌としており,その病因に関しては定説が無い.

熱傷瘢痕上に生じた線維肉腫—14年前に熱傷瘢痕癌をみた1例

著者: 新村真人

ページ範囲:P.37 - P.42

 熱傷瘢痕上に受傷後数十年を経て,悪性腫瘍の発生をみることは稀ではないが,その大部分は有棘細胞癌であり,時に基底細胞癌を生ずることもあるが,肉腫の発生をみることは,きわめて少ない.
 軟部組織にみられる線維肉腫の発生誘因としては,外傷,放射線照射等があげられているが,熱傷瘢痕もその一誘因になり得ると考えられる.文献を渉猟したところ,本邦においては,村上17)の症例以来7例の熱傷瘢痕肉腫の報告がみられ,欧米においても,Fleming14),Pack3),Gaynor9)等に同様の報告例をみる.

論説

補体—最近の問題

著者: 進藤宙二

ページ範囲:P.43 - P.49

 周知のように,日本における補体研究は国際的に高いレベルにあり,一昨年行われた日米補体ゼミナーでも高く評価されたことであった.また補体研究会も10年近くも続いており,アレルギー学会でもしばしばシンポジウムとして取り上げられ,アレルギーと補体の密接な相関は益々重要となつている.けれどもまだまだ一般には補体についてはつきりした理解ができていないようである.それ故少しく復習と同時に最近の研究から話題を拾い啓蒙に資したい.
 細菌学が1890年代を境にして急に発達しはじめた頃に,病原菌感染を対象として免疫学が始まつたのであるが,その少し以前から補体の前身ともいえるAlexinの研究が始まつた.続いてBor-det, Gengouの補体結合反応の発見となつて,補体の性格づけもできはじめ,重要な因子として特にワッセルマン反応などで取扱い方も問題になつて来た.けれども,本態は漠然とした点の多いままに,モルモットの新鮮血清という形で使われていた.詳しくその性質を研究しはじめたのはOsbornらであつて,Pillemer一派のかなり精細な研究が一里塚となつたが,何分補体因子は不安定であること,また単純なものでないことが分かるにつれ,未だ非常に難かしい研究対象であつた.そして補体が発見されて凡そ50年の間,多くの研究や実用にも拘らず,断片的な性状が知られていたに過ぎなかつた,ここで今少し詳しく補体の歴史的展望を続けることにする.1880年代にBu-chnerやvon Fodor,Nuttalらが,血清中に糸田菌を殺菌・破壊する因子のあることを見付け,Alexinと呼んでいた.その因子は所謂免疫体とは直接関係のないことが確認されており,当時からその殺菌作用は血清が古くなるか,または56℃に加熱すると急激に消失することも分つていた.その後Pfeifferらがコレラ菌の溶菌現象を発見し,またBordetらが試験管内反応でも溶菌現象の見られることを見付け,その際免疫血清の溶菌作用は56℃ 30分の加熱で消失することから,特異的な溶菌現象には免疫体と今一つの加熱によつて消失する因子が必要であることをみつけた.そしてその反応に関与する免疫体を当時Amboze-ptorと呼び易熱性の因子をComplementと命名した.免疫原と免疫体の反応,今日の抗原抗体反応を補足するという意味の名称で,吾国では補体と呼ばれたわけである,そしてBordetはこの補体はBuchnerらのAlexinに相当すると主張した.以来Alexinという言葉は姿を消したのである.

免疫グロブリンと補体と線溶系

著者: 山本一哉

ページ範囲:P.51 - P.56

 アレルギ一性病変と免疫グロブリンおよび補体が密接に関連しあうことについては,あらためて述べるまでもない1).一方,これらの系と共に線維素溶解酵素系(以下線溶系)もまた,炎症性反応の発現にあつかつていることがしられている2).このような複雑な病態生理学的連繋は,皮膚科領域の疾患においても同様に存在しているのである.アレルギー性皮膚疾患としては湿疹・皮膚炎群が常に問題となるが,なかでも小児湿疹はその発生頻度,症状の特異性などからみても重要なものといえよう.
 今日では小児湿疹の主体をなすものは,アトピー素因の上に成り立つと考えられるアトピー性皮膚炎に他ならないとされている3).したがつて,近年,アトピー性皮膚炎発症の基盤となる素因の解明,あるいはその素因をもつ個体の特異性をしる目的で種々の検索が行なわれている。最近ではこの方面の研究は,前述したような免疫血清学的,酵素学的方向に急速に進歩しており,本症の根底にこれらの遺伝的な機能異常があることが想像されている.しかも,このような機能は,それ自体乳幼児期には発達の過程にあり,正常な場合でも発育の時期に応じた変動が認められるものである.それ故,乳幼児期,小児期のアトピー性皮膚炎患児が示す免疫血清学的,酵素学的な特異性に興味がもたれるのである.

皮膚疾患と補体

著者: 河島敏夫

ページ範囲:P.57 - P.63

 補体ははじめ抗体の作用を補足する血清中の蛋白として認識されたが,その後多くの研究により,現在では逆に疾患の発現機構に参与する一因子として脚光をあびるに至つている.すなわち現在では九つの蛋白と,三つのinhibitorからなり,それらの精製分離が次第に可能になるとともに,それぞれの生物学的活性も徐々に明らかにされてきた.九つの補体蛋白は抗原抗体結合物と一定の順序で反応し,その中間段階で,immuneadherence, anaphylatoxin, chemotactic fac-tor, immune phagocytosisなど種々の免疫反応をおこすことが明らかにされてきた1)
 臨床疾患においても,SLE2)3)4)や急性腎炎5)6など一部の疾患では,補体価や補体成分値の測定が行なわれ,病変組織の免疫グロブリンやβ1E−,β1c(A)−グロブリンなど補体蛋白の所見と合わせて,補体が疾患にどのように関与しているかが明らかにされてきた.

皮膚科学の流れ 人と業績・20

Louis Duhring

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.64 - P.67

(前回から続く)
疱疹状皮膚炎(Dermatitis Her-petiformis)5)
 わたしが診察した皮膚病のうちの多数の症例を"疱疹状皮膚炎(Der-matitis Herpetiformis)"の名称の下に統括することを提言する.従来これらの症例は,湿疹,疱疹または天庖瘡のような周知のありふれた疾患のいずれかの特殊な現われと診断され,あるいは未記載の疾患と見做されて来た.
 このようにいろいろ形を変える疾患が存在し,これら種々の皮膚表現が一つの病的過程によることには疑う余地がない.いくつかの重要な変つた形を陳述してこの点を説明しよう.変つた形というのは,湿疹の症例に見るように,ある種の発疹が主となることによるのである.説明を行なう前に,本症のすべての形に共通する症状に言及したい.これについて今まで特に触れた人はなかつたのである.重症例においては発疹発生に先だつ数日間通例前駆症が存在し,これは不快感,便秘,発熱,悪寒,熱感あるいは交互に来る熱感と冷感である.瘙痒もまた発疹の数日前から存在するのが一般である.軽症においてさえ,軽い全身障害が発疹に先だつてあるいはそれとともに起こる.発疹はその発症あるいは進行が徐々のこともあり,急激のこともある.まれならずそれは急激であつて,ある種の皮疹が数日間に瀰蔓性にあるいは局面をなして皮面の大部分に発生し,激しい瘙痒または灼熱感を伴う.

外国文献

外国文献—専門誌から

ページ範囲:P.68 - P.69

DERMATOLOGICA 142: 1, 1971
Clinical Aspect of Pityriasis Rubra Pilaris in Child-hood: L. Stanoeva, D. Konstantinov and R. Ristov 1
Histologic Response of Skin to Repeated Trauma: W. C. Johnson and Th. Butterworth 7

Summaries in Arch. Derm.

Summaries in ARCHIVES OF DERMATOLOGY

ページ範囲:P.70 - P.72

 The original source of publication: Reprinted from ARCHIVES OF DERMATOLOGY, Vol. 104, Number 2; pages 117, 124, 128, 132, 141, 148, 161, 166, 172, 177, 182, 188, 192, 197 202 and 207, August 1971, Copyright 1971, AMA.

〈原著論文抄録〉

人,牛共通白癬の集団発生について—その臨床的,疫学的ならびに菌学的検討,他

著者: 青柳俊 ,   平山晃也 ,   三浦祐晶 ,   高橋幸治 ,   矢久保義哉

ページ範囲:P.74 - P.74

 昭和43年1月頃から北海道宗谷地方で流行している牛の脱毛性皮膚疾患と関係があると思われる症例13例について,その臨床的観察を検討するとともに,現地調査を行ない,得られた資料をもとに,疫学的および菌学的観察を検討した.本集団発生は菌学的検索の結果からTrichophyton verrucosum(Tr. V.)を起因菌と同定,臨床像も従来報告されているTr. V. による白癬の症状にほぼ一致していることを認めた.また菌学的,疫学的観察の結果から,牛にTr. V. が集団発生し,これが牛を飼育する酪農家ならびにその家族に蔓延したものであることを知つた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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