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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科26巻1号

1972年01月発行

文献概要

論説

補体—最近の問題

著者: 進藤宙二1

所属機関: 1東京大学

ページ範囲:P.43 - P.49

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 周知のように,日本における補体研究は国際的に高いレベルにあり,一昨年行われた日米補体ゼミナーでも高く評価されたことであった.また補体研究会も10年近くも続いており,アレルギー学会でもしばしばシンポジウムとして取り上げられ,アレルギーと補体の密接な相関は益々重要となつている.けれどもまだまだ一般には補体についてはつきりした理解ができていないようである.それ故少しく復習と同時に最近の研究から話題を拾い啓蒙に資したい.
 細菌学が1890年代を境にして急に発達しはじめた頃に,病原菌感染を対象として免疫学が始まつたのであるが,その少し以前から補体の前身ともいえるAlexinの研究が始まつた.続いてBor-det, Gengouの補体結合反応の発見となつて,補体の性格づけもできはじめ,重要な因子として特にワッセルマン反応などで取扱い方も問題になつて来た.けれども,本態は漠然とした点の多いままに,モルモットの新鮮血清という形で使われていた.詳しくその性質を研究しはじめたのはOsbornらであつて,Pillemer一派のかなり精細な研究が一里塚となつたが,何分補体因子は不安定であること,また単純なものでないことが分かるにつれ,未だ非常に難かしい研究対象であつた.そして補体が発見されて凡そ50年の間,多くの研究や実用にも拘らず,断片的な性状が知られていたに過ぎなかつた,ここで今少し詳しく補体の歴史的展望を続けることにする.1880年代にBu-chnerやvon Fodor,Nuttalらが,血清中に糸田菌を殺菌・破壊する因子のあることを見付け,Alexinと呼んでいた.その因子は所謂免疫体とは直接関係のないことが確認されており,当時からその殺菌作用は血清が古くなるか,または56℃に加熱すると急激に消失することも分つていた.その後Pfeifferらがコレラ菌の溶菌現象を発見し,またBordetらが試験管内反応でも溶菌現象の見られることを見付け,その際免疫血清の溶菌作用は56℃ 30分の加熱で消失することから,特異的な溶菌現象には免疫体と今一つの加熱によつて消失する因子が必要であることをみつけた.そしてその反応に関与する免疫体を当時Amboze-ptorと呼び易熱性の因子をComplementと命名した.免疫原と免疫体の反応,今日の抗原抗体反応を補足するという意味の名称で,吾国では補体と呼ばれたわけである,そしてBordetはこの補体はBuchnerらのAlexinに相当すると主張した.以来Alexinという言葉は姿を消したのである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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