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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科26巻10号

1972年10月発行

雑誌目次

図譜・359

皮膚腺病

著者: 大角毅 ,   高橋伸也

ページ範囲:P.888 - P.889

症例 70歳,男.
初診 1970年4月13日

原著

Lichen Myxedematosus

著者: 中安清 ,   高石喜次

ページ範囲:P.895 - P.900

 本症は1935年にNeumann5)が甲状腺の機能障害がない限局性皮膚ムチン沈着症をLichenmyxedematosusとして発表以来,Papular mucin-osis6),Scleromyxedema8),Lichen fibromucinoido-sis7)の病名でも記載され,欧米では比較的に多くの症例報告があるが,本邦においては2,3の報告23,29,30)をみるにすぎない.最近著者らは,肝機能障害を伴つた本症の1例を経験したので大要を報告し,いささか文献的考察を加えた.

当教室で経験したいわゆるループス精神病10例についての臨床的考察

著者: 前川嘉洋 ,   衛藤延江

ページ範囲:P.901 - P.909

 全身性エリテマトーデス(SLE)についてはKaposi1)(1872年)以来すでに多くの報告があり,臨床的あるいは血清免疫学的に種々の事象が解明されている.なかんづくKlemperer2)らが1942年確立した膠原病の概念やHargraves3)(1948年)らのLE細胞の証明は,その後LE因子・抗核抗体等の発見と相俟つて自己免疫疾患の立場から俄かに注目をあび,その発生頻度は,近年徐々ではあるが,増加の一途をたどつている(深瀬ら4)).これに伴つて本症の経過中に精神病を合併する頻度も次第に高まりつつあり(原田5)),このことからも本症が全身の結合織を系統的におかすことが容易に想像される(E.L.Dubois et al.図1参照).おそらく,本病型は中枢神経系の結合織に一連の病変が発生するのであろう.一方ループス精神病は治療の目的で使用したコルチコイド療法(以下「コ」と略す)によつて誘発されることがあり,実際問題としてその発生機序ないし治療ははなはだ煩雑である.
 かような見地から著者らはループス精神病,とくにその治療に深い関心を抱いているが,最近意識障害を伴うSLE 3例を経験,詳細に検討する機会を得たので,最近11年間の当教室の自験例を加えて,いわゆるループス精神病について若干考察を加えてみたい.

脊椎辷り症による足穿孔症

著者: 石橋正夫 ,   三浦隆 ,   久保田正博

ページ範囲:P.911 - P.913

 足穿孔症は一般に中枢神経または末梢神経の障害により発生することが多く,しかも脊椎披裂をはじめとする各種脊椎疾患に起因する中枢性の場合が多い1)という.我々は最近脊椎辷り症に原因した本症の1例を経験したので,以下に報告する.

Klippel-Trenaunay母斑症に発生したKaposi肉腫

著者: 高木章好 ,   福井清美 ,   村上耕喜 ,   浜本淳二

ページ範囲:P.917 - P.922

 Kaposi肉腫は1872年M.Kaposiが"idiopa-thic multiple pigment sarcoma of the skin"として報告して以来,特異な臨床経過と多彩な病理組織学的所見とのため注目をあつめ,種々の異名のもとに多くの報告をみるが,今日ではKobner(1891)の命名によるsarcoma idiopathicum mu-ltiplex haemorrhagicum(Kaposi),あるいはKa-posi肉腫としてよく知られている.Dutzら1)は1960年までに報告された全症例を集計し,1,256例としているが,その後も海外において本症の報告は数多くなされている.本邦においては,大島(大正8年)の報告を嚆矢とし,現在までわずか38例の報告をみるにすぎない.さらに合併疾患としては,Hodgkin病,lymphosarcoma,lympha-tic leukaemia等1,2)が多く,まれにmuhiplemyeloma3),aplastic anaemia4)があり,その他,内臓諸器官の悪性腫瘍の併発も指摘されている2,5).本症は毛細血管由来の腫瘍であるとする報告もあるが5,6),血管腫に発生したKaposi肉腫の報告はきわめて少なく,過去10年間の内外の文献を渉猟するに,Klippel-Trenaunay母斑症の血管腫から発生したとするSzegoらの1例7)を見るにすぎない.今回著者らは同様にKlippel-Trenaunay母斑症から発生したKaposi肉腫の1例を経験したので報告する.

Granuloma glutaeale infantumの2例

著者: 今村貞夫 ,   滝川雅浩

ページ範囲:P.923 - P.927

 1971年Tappcinerら1)は3〜7カ月の幼児のオムツカブレに引続いて,オムツの当る臀部,大腿屈側部に数個乃至10数個の赤色結節を生じた6症例を報告し,臨床所見ならびに病理学的所見より未だ記載されていない独立疾患であるとして,Granuloma glutaeale infantumなる新名称を堤唱している.
 我国においては,いまだかかる症例の報告はないようであるが,我々は最近Tappeinerらの報告例にほぼ一致すると思われる2症例を相次いで経験したので,これを報告する.

マダニの皮膚寄生

著者: 真家興隆 ,   大角毅 ,   小野泰正

ページ範囲:P.929 - P.931

 マダニが人体に寄生することは比較的まれなようで,本邦での報告例はいたつて少ない。我々は最近,4歳の男児にマダニの皮膚寄生した症例を経験したので以下に報告する.

昭和46年夏における伝染性膿痂疹の観察

著者: 安江厚子 ,   安江隆 ,   佐々田健四郎 ,   星野臣平

ページ範囲:P.933 - P.936

 伝染性膿痂疹は,夏季の幼小児の伝染性疾患としては最も多い疾患であるが,その特徴ある臨床症状より診断が容易であり,かつ比較的容易に治癒するため,その原因菌の検索や,その菌に対する薬剤感受性についてはなおざりにされる傾向が強く,治療方法も画一的になり勝ちである.しかしながら,その原因菌にも年次的変化や地域的差異があり,原因菌の薬剤感受性にも年々変化がみられる1).また最近,伝染性膿痂疹の遷延治癒等が原因となつて発症した膿痂疹性急性腎炎の報告が,欧米と同様に本邦においても散見されるようになつた2,3,4)ことから考え,伝染性膿痂疹の治療に際してはこれらの続発症の問題も考慮されるべきであると考えられる.昨年われわれは,名古屋地区における夏季伝染性膿痂疹の原因菌と,その薬剤感受性とを検索する機会があつたので,その結果を報告するとともに,最近の伝染性膿痂疹の問題点につき若干の考察を行つてみたい.

単純性疱疹の臨床的観察

著者: 吉岡郁夫

ページ範囲:P.937 - P.940

 単純性疱疹Herpes simplex (HSと略す)の臨床的統計的研究はわが国では少く,帯状疱疹の発生状況との比較の資料として使用されているにすぎず,比較的最近では小原(1963)の報告があるのみである.しかし著者がHSについて観察した目的は,これに関する報告が少ないからではなく,HSの中で最も多い口唇ヘルペスHerpeslabialis(HLと略す)の発生部位に興味をもつたからである.
 口唇はその外面を顔面皮膚,内面を口腔粘膜によつておおわれ,その間に皮膚と粘膜の移行部,すなわち口唇移行部(口唇縁) lip margin;seamof the lipがある,口唇移行部は発生学的に外皮部と粘膜部の両方に由来するものであり,成人では表面が平滑であるが,胎生後期には1つの溝によつて外帯outer zoneと内帯inner zoneとに分れている.従来HSの好発部位は単に皮膚粘膜移行部と記載されていたが,著者はこのような口唇の形態学的特性に着目し,HLの発生状態について観察したので報告し,あわせてHSの統計的観察の結果について述べてみたい.

論説

結合組織の超微形態学

著者: 梶川欽一郎

ページ範囲:P.943 - P.949

 このシンポジウムで私に与えられたテーマは「結合組織の超微形態学」であるが,この方面の研究はすでに多数にのぼつており(1〜3参照),その総てを紹介することは不可能である.そこで我々の教室でこれまで行なわれてきた結合組織の電顕的研究の結果を中心に概説したいと思う,話の順序として,結合組織細胞の主要な構造的特徴についても触れるが,細胞間物質の超微形態学に重点をおいて述べたい.生理的にせよ,病的にせよ,結合組織の状態は終局的には細胞間物質の性状に集約され,しかもこの物質の超微形態学は細胞成分のそれより研究がおくれていると思われるからである.ここで取上げる問題は必ずしも皮膚病変に直接関係のないものが少なくないが,結合組織の病変を理解するための基礎的知識として役立つならば幸いである.

結合織の生化学と臨床

著者: 山村雄一

ページ範囲:P.951 - P.955

 リウマチ様関節炎(慢性関節リウマチス)をはじめ,全身性紅斑性狼瘡(systcmic lupus erythe-matosus,SLE),皮膚筋炎,結節性動脈周囲炎,鞏皮症(スクレロデルミー)など多彩な症状を示す疾患を統一的に理解する病名として登場してきたのが,膠原病(collagen disease)である.
 しかしこの膠原病という言葉はあまり適切ではない.とりわけ生化学的な知識を基礎とすると,膠原病は膠原(コラーゲン)の異常に疾病が限定してしまうような感じを与える.ところが上述の疾患はいずれもコラーゲンに限定した疾患ではなく,結合織全汎が関与するところの疾患であるからである.正しくはコラーゲンをふくめた結合織の病気,「結合織病」(connective tissue disease)とよぶべきであろう.

皮膚科学の流れ 人と業績・29

George Henry Fox, Abraham BuschkeおよびJosef Jadassohn

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.957 - P.959

George Henry Fox
(前回からの続き)
フオックスーフォアダイス病(Two Cases of a Rare Papular Disease Affecting the Axillary Region)2)
 これから簡単に述べようと思う異常な発疹を示した最初の患者は,1899年1月ニューヨーク皮膚・癌病院(New York Skin and CanccrHospital)に入院した.この女性は28歳で,未婚,ロシア生まれであつた.発疹は主として腋窩部に限局し,1年以上前から持続しており,少なからざる苦悩を引起こした.瘙痒は激烈で発作性であり,睡眠を著しく妨害し,全身の健康に障害を与えた.患者はやせていて,はなはだ神経質の気質を有し,障害された健康がどの程度まで,悩んでいる皮膚病の原因かまたは結果か決めかねた.

Summaries in Arch. Derm.

Summaries in ARCHIVES OF DERMATOLOGY

ページ範囲:P.960 - P.963

 The original source of publication: Reprinted from ARCHIVES OF DERMATOLOGY, Vol. 105, Number 5; pages 676, 681, 684, 695, 702, 711, 717, 720, 722, 728, 730, 734, 737, 739 and 748 May 1972 Copyright 1972 AMA.

外国文献

外国文献—専門誌より

ページ範囲:P.964 - P.965

ACTA DERMATOVENEREOLOGICA52: 1, 19723
Degeneration of Dermal Elastic Fibres in Relationto Age and Light-Exposure: L. Danielsen and T. Kobayasi 1
The Effect of Sodium Hydroxide and HydrochloricAcid on Human Epidermis: S. Nagao, D. Stroud, T. Hawker, H. Pinkus and D. J. Birmingham 11

〈原著論文抄録〉

Lichen Myxedematosus,他

著者: 中安清 ,   高石喜次

ページ範囲:P.967 - P.967

 60歳男子,初診46年3月19日.半年前より肝炎に罹患,45年12月中頃より項部に軽度掻痒をおぼえる皮疹に気付き,後頭,側頭さらに下顎部へと次第に拡がり,46年5月には腰部にも認めるようになつた.初診時,顔面は浮腫性に腫脹,皮膚は肥厚し,項・後頭・側頭部および下顎部では,肥厚した皮面に半米粒大の黄褐〜正常皮膚色の光沢をもつ丘疹が集籏,一部は融合して比較的境界鮮明な局面をつくつている.両手指は軽く浮腫性に腫脹しているが皮疹はない.
 検査成績で肝機能障害が認められるが,甲状腺機能の異常はない.項部丘疹の組織学的所見は,HEおよびエラスチカ・ワンギーソン染色でおもな変化は真皮乳頭下層から真皮中層にみられ,結合織線維は膨化あるいは断裂,離開して空隙をつくりなんらかの物質沈着を思わせた.ムチカルミン染色によつて結合織線維および線維間に陽性物質を認め,この部分ではpH7.0およびpH4.0のトルイジンブルーでメタクロマジーを示しpH2.5では示さず,またpH3.0のアルシャンブルー液に反応し青色を示したが,pHを0.5にすると反応せず,なおこの物質は睾丸ヒアルロニダーゼにより完全に消化された.以上の染色態度よりコンドロイチン硫酸よりはむしろヒアルロン酸が主要構成成分と推測される酸性ムコ多糖類の沈着と考えられる.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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