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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科26巻11号

1972年11月発行

雑誌目次

図譜・360

毛孔性小結節病変を主徴とする皮膚サルコイドーシスの1例

著者: 野崎憲久

ページ範囲:P.984 - P.985

患者 21歳,男,会社員
初診 昭和46年8月5日

原著

著明な皮膚症状を示した特発性副甲状腺機能低下症

著者: 平野京子

ページ範囲:P.991 - P.998

 副甲状腺機能低下は血清無機燐の上昇と同時に血清カルシウムの低下を来し,その疾患としては,特発性副甲状腺機能低下症,仮性副甲状腺機能低下症(Albright症候群),続発性副甲状腺機能低下症(最も多く甲状腺疾患における甲状腺摘出後の発症1,2))があげられている.この内,特発性副甲状腺機能低下症(以下IdH)は,本態不明な比較的まれな疾患であるとされており,下記のごとく規定される3a).1)低Ca血症の原因となるクル病及び骨軟化症がレ線上証明されないこと,2)慢性テタニーの存在,3)腎機能障害,脂肪性下痢症,慢性下痢症,Alkalosisの存在しないこと,4)副甲状腺ホルモン注射により尿中燐の著明な排泄増加をきたすこと.
 我々は最近,数年来癲癇として治療されていた患者で,昨年発作の頻発した頃より,脱毛と共に,顔面を除くほとんど全身の瘙痒を伴う紅斑,びらん,落屑性の著明な皮膚症状を随伴した本症の1症例に遭遇した.本邦におけるIdHの皮膚科的詳細な記載例は,ほとんどみられず,また,本症例のごとき著明な皮膚症状を示したIdHは海外文献にも稀有である.本例は吉野ら5)が既に内科的報告を行つているが,以下その症例につき若干の文献を参照して皮膚科的症状,病因論の研究などを主体として述べてみたい.

異型汎発性扁平苔癬

著者: 大角毅 ,   秋葉弘

ページ範囲:P.999 - P.1007

 汎発性扁平苔癬は比較的まれである1)といわれるが,非定型的な臨床形態を示す扁平苔癬も少なくない2)との報告もある.著者らは最近この異型で汎発性の扁平苔癬を少なからず経験し,臨床診断を迷わされた事があつた.本報告はその代表的6例についてである.

黒色表皮腫を伴つたPartial Lipodystrophy症例

著者: 谷藤順士 ,   石井禎郎 ,   野口英機

ページ範囲:P.1009 - P.1016

 Partial lipodystrophyは,1885年Mitchell1)によつて初めて記載されたが,次いでBarraquer2),Shaw3)などにより本症の臨床像が詳述された.1911年Simons4)は,本症を上半身贏痩および下半身肥大を特徴とする一種のTrophoncuroseと考え,Lipodystrophia progrcssivaの病名を冠した.以後欧米においては,小児期に発症することが多いこと,内分泌異常および腎障害を伴なうこと,知能障害および精神々経障害などを伴なうことなどから,小児科,内科,精神科領域での報告が多く,Progrcssive lipodystrophy,lipodystrophia pro-gressiva, Barraquer-Simons' discase,Barraquer'sdisease,lipodystrophia facialis,cephalothoracicob-rachial form of lipodystrophy,progressive cepha-lothoracic lipodys trophy,partial lipodystrophyなど種々の名称により,200例余の報告をみたが5),本邦においては20例にみたず6),かなり稀な疾患と思われる.
 著者らは,下顎部と躯幹が贏痩し,頬部と四肢が正常あるいは軽度に肥満した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

PAPILLOMATOSIS CARCINOIDES(ORAL FLORID PAPILLOMATOSIS)

著者: 青木敏之 ,   吉川邦彦

ページ範囲:P.1017 - P.1023

 口腔内に白い表面をもつ丘疹または腫瘍を形成して,ロイコプラキーや有棘細胞癌と間違えやすい疾患が,oral florid papillomatosis1)またはpapillomatosis mucosae carcinoides2)の病名で,1960年以来,耳鼻科,皮膚科領域で10例前後,発表されているが,わが国皮膚科領域では,未だ報告に接しない.
 われわれは,口角にくり返し「有棘細胞癌」を生じ,しかも10年近くにわたつて転移をおこさない症例に遭遇し,臨床,組織両所見からoral florid papillomatosisと考えるにいたつた.また,以前に有棘細胞癌として診断され,加療されていた症例で,本症と考えられるものがあつたので,これらを合せて報告する.

Trichofolliculoma—症例報告と本邦例の集計

著者: 木村俊次 ,   長島正治

ページ範囲:P.1025 - P.1029

 1944年Miescher1)が46歳女子右頬部に生じた毛嚢系の腫瘍をTrichofolliculomaとして報告して以来,本腫瘍は現在迄内外併せて約50例が報告されている.このたび当教室において本腫瘍のほぼ典型的と思われる1例を経験したのでこれを報告すると共に,本邦報告例をまとめ,本腫瘍についての若干の考察を試みた.なお本腫瘍はHair-follicle nevus2,3)あるいはFolliculoma4)として報告されたこともあるが,われわれはMiescherまたGrayら5)にしたがいTrichofolliculomaの名称を採用した.

Mucinosis Follicularis

著者: 徳永信三

ページ範囲:P.1031 - P.1035

 Mucinosis follicularis (以下M.F.と略)は1957年Pinkus1)によつて,独立したclinical entityとして報告されて以来,欧米では百数十例におよぶ報告があり,本邦でも1935年鳴海の報告以来20例におよぶ報告が見られる(表1).私は最近著明な好酸球ならびに細網細胞の増殖を伴う肉芽腫形成を呈した1症例を経験したのでここに報告する.

薬剤

尋常性痤瘡に対するビタミンA酸外用剤の応用—第1報

著者: 平山芳 ,   新関寛二 ,   神田行雄 ,   松葉修 ,   神田直子 ,   辻本恵子

ページ範囲:P.1037 - P.1040

 Kligman1)(1969),Pedace2)(1971),Harris3)(1971),Bradford4)(1970)らは尋常性痤瘡にVitamin A酸(以下V.A酸と略記)の外用が有効であることを報告し,その後さらに種々の痤瘡に対するV.A酸の有効性がしばしば報告されている5,6,7,8,9)
 今回我々は大正製薬および日本ロシュより提供されたV.A酸外用剤を尋常性痤瘡に使用して2・3の検索をおこなつたのでその結果について報告する.

尋常性痤瘡に対するビタミンA酸外用剤の応用(第2報)—0.01%ビタミンA酸乳剤性ローションによる尋常性痤瘡の治験

著者: 平山芳 ,   新関寛二 ,   神田行雄 ,   松葉修 ,   神田直子 ,   辻本恵子

ページ範囲:P.1041 - P.1045

 第一報において,我々は0.02%および0.03%ビタミンA酸(以下V.A酸と略記)乳剤性ローションが尋常性痤瘡に対して良好な成績を示すことを明らかにしたが,なお塗布した部位に発赤,その他副作用的症状を認めることから,さらに濃度を下げた0.01%V.A酸乳剤性ローションを使用して,尋常性痤瘡に対する治験を行ない,効果およびその他2・3の事項について検討を加えた.

皮膚科学の流れ 人と業績・30

Josef Jadassohn, Jean Darier, Gustav Riehl Bruno Bloch, Hulusi Belicet, Erich UrbachおよびF. Parkes-Weber

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.1046 - P.1052

Josef Jadassohn
(前回から続く)
斑状皮膚萎縮症(Uber eine eigenartige Form von "Atrophiamaculosa cutis")2)
 A. Z. 23歳女子.小児期に麻疹と百日咳にかかつたが,その他の熱病疹,リンパ腺腫張は知らない.両親は現存,健康,姉妹ひとり健康.家系内に皮膚および神経系の疾患なし.患者自身にも頭痛,神経性症状,ヒステリー症状はない.
 9歳時,両手に熱湯で熱傷,大きな水疱を生じ,約3か月で瘢痕治癒.

外国文献

外国文献—専門誌より

ページ範囲:P.1054 - P.1055

ACTA DERMATOVENEREOLOGICA52: 2, 1972
Ultrastracture of Generalized Scleroderma: T. Kobayasi and G. Asboe-Hansen 81
Ultrastructural Changes of Mitochondria in Dithranol-treated Psoriatic Epidermis: G. Swanbeck and P. G. Lundquist 94

〈原著論文抄録〉

著明な皮膚症状を示した特発性副甲状腺機能低下症,他

著者: 平野京子

ページ範囲:P.1057 - P.1057

 既往症にマラリア,現症歴に白内障,変形性股関節炎,癲癇様発作を持つた51歳男子症例で,約7年来,癲癇として治療されていた.昨年春発作の頻発した頃より,頭部および腋毛の脱毛,爪甲の粗糙化とともに,瘙痒を伴つて,顔面を除くほとんど全身の紅斑びらん落屑性の,剥脱性皮膚炎様の皮膚症状を来してきた.臨床諸検査の結果,特発性副甲状腺機能低下症と診定.Vit D2およびグルコン酸カルシウムの投与により,発作は翌日よりまつたくなくなり,皮疹も急速に著明に軽快し,軽度の色素沈着を残すのみとなり,頭髪,腋毛も再生されてきた.
 本疾患の皮膚科的記載のほとんどは,皮膚の乾燥粗粗,脱毛,爪甲の変化などであつた.本症例のごとき著明な皮膚症状は本邦においては初の報告例であり,文献的にも3例ほどで,稀有であつた.なお,本疾患の病因論としては,現在のところ不明であるが,一方においては,臓器特異性自己免疫疾患との見解を支持する研究も打ち出されている.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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