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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科26巻12号

1972年12月発行

雑誌目次

図譜・361

特発性血小板減少性紫斑病

著者: 池沢英子 ,   青木良枝 ,   大賀誠

ページ範囲:P.1078 - P.1079

患者 35歳主婦
初診 昭和45年11月12日

原著

播種性黄色腫とその周辺

著者: 滝沢清宏 ,   富沢尊儀 ,   安西喬

ページ範囲:P.1085 - P.1098

 播種性黄色腫(Xanthoma disseminatum)は,正脂血性皮膚粘膜黄色腫のまれな1型で,四肢屈側や間擦部に好発し,しばしば尿崩症を伴なうものである.発疹は丘疹,あるいは結節性で慢性に経過し,予後良好の疾患であるが,粘膜,特に結膜,角膜,口腔,咽頭,喉頭,気管などにも出現し,時に気道閉塞という重大な合併症を伴ない,気管切開が必要となることがある.発疹は,通常長期にわたつて存在するが,時に自然消褪をみる.
 組織学的には,真皮における組織球,泡沫細胞,多数のTouton型巨細胞および炎症性細胞よりなる肉芽腫性病変で,初期の段階では,組織球の浸潤が主体をなすことから,本症の一次的病変として,肉芽腫形成性の網内系組織球浸潤(一種の細網内皮症)が挙げられ,組織球への脂質蓄積は二次的なものとされている1).したがつて,他の組織球浸潤性疾患,特にHistiocytosis X, Ncvoxanthocndothelioma, Histiocytoma cutis, Reticulohistiocytomaとの関連が問題となる.著者らは,本症と診断した1例を報告し,これと近縁の疾患との関連につき考察を加えたい.

Cafe au Lait Spotsを伴えるNevoxanthoendotheliomaの1例並びにNevoxanthoendothelioma本邦報告例50例とXanthoma Disseminatum同23例との統計的観察—両症の鑑別に関して

著者: 最上晋

ページ範囲:P.1099 - P.1105

 1912年McDonagh1)がjuvenile xanthomaと異なる黄色腫5例を集めて報告し,nevoxanthoendotheliomaなる名称を提起して以来,その発症病理に関して多くの紛糾を呼びながらも,今日その独立性はほぼ容認されるところとなつている.しかしながら,本症のclinical entityとして挙げられている諸点は,しばしばxanthoma disseminatumと相通ずる事が多く,夫々定形像をとる時には両症の鑑別にさして困難を感ずることはないにせよ,境界線上の臨床像をとる時にはその症例の帰属に困却することがある.著者は先にトルコ鞍の拡大を伴つた本症の1例を本誌に報告したが,今回自験第1例2)と臨床的に聊か趣きを異にする本症を経験した.第2例の診断にあたつて,両症の画然たる鑑別の手掛りを得るために,自験2例を加えたnevoxanthoendothelioma本邦報告例2〜41)51例およびxanthoma disseminatum同23例42〜61)について統計学的に比較検討し,ある程度の結果を得たので,ここに報告する.

Acanthome a cellules claires

著者: 石川謹也

ページ範囲:P.1107 - P.1115

 1962年,Degosら1)は46歳の男子の腹部に発生した10×5mm大の結節状の腫瘤を組織学約に検索し,従来の記載にみない新しい所見に注目し,acanthome a cellules claircsなる名称の下に報告した.その後,フランスにおける報告が特に多いが,各国の学者の注目するところとなり症例が追加され2〜32),1970年,Degos & Civatte28)は最初の発表以後の8年間における世界文献よりの104例を集め統計的に再検討している.
 本邦では広川ら32,33)が第1例を報告しているが,尚,症例が少なく三島ら34) ,福代ら35)の報告に接するのみである.最近著者も1例を経験したので報告する.

肺癌を合併した多発性ボーエン病の1例

著者: 渡辺進

ページ範囲:P.1117 - P.1123

 過去に砒素を取り扱つたことのある患者が肺癌に罹患し,皮膚にはボーエン病が多発し,手掌足蹠には疣贅様皮疹が多数みられた.患者は死亡したが症例報告とともに肺臓組織よりの砒素定量を行なつたので報告する.

加熱融解した塩化バリウムによる熱傷(死亡例)

著者: 福井米正 ,   小林淳介 ,   小田島粛夫

ページ範囲:P.1125 - P.1133

 近年,産業の振興に伴いいわゆる公害を含めて種々の産業災害が発生し,われわれ皮膚科医もまたこの問題に無関心ではいらねない.最近,著者らは加熱融解した塩化バリウムによる熱傷をうけ,おそらくその経皮吸収によると思われる多彩な急性中毒症状を示し,急速に心麻痺に陥り,一旦は蘇生しえたが,第6病日に至り遂に死亡した症例を経験した.以下にその特異な経過と文献的考察を述べる.

薬剤

Controlled trialによるFluocinolone Acetonide Acetateクリーム(RS−410 FAPGクリーム)の吉草酸ベタメサゾンとの治効比較成績

著者: 武田克之 ,   佐川禎昭 ,   二神義和 ,   長尾栄治

ページ範囲:P.1135 - P.1141

 皮膚科領域の治療手段として,今なお外用療法の占める比率は高く,その主流はcorticosteroid軟膏による外用療法といえよう.近年合成corticosteroidの進歩はめざましく,局所専用で消炎効果のすぐれたcortico-steroidが相次いで開発され,新しい外用corticostcroid剤として提供されてきた.なかでも臨床効果を高く評価さ,ねてきたものけ,すべて脂溶性のacetonide型のcordcosteroidを主剤とする製剤であつた.例えばtriamcinoloneとそのderivativeであるfluocinoloneなどは局所専用のacetonideが開発され,外用corti-costeroid剤としての優位を占めてきている.
 わたくしらは,今回田辺シンテックス株式会社より新しいcorticosteroid外用剤Fluocinolone AcetonideAcetateクリーム(RS−410 FAPG)を提供されたが,その臨床試用にあたつて,日常奨用されている吉草酸ベタメサゾン(Betamcthasone 17−Valcrate)との効果をcontrolled trial方式で比較検討したのでその効果を報告する.

皮膚科学の流れ 人と業績・31・完

土肥慶蔵先生

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.1142 - P.1145

 この"皮膚科学の流れ──人と業績"も,本誌に掲載し始めてから第3年目を終ろうとし,少し長い間書きすぎたようである,もつとも,連載を重ねるにつれて,これでは読者もうんざりするだろうと思えてきたので,記述をできるだけ簡略にし,書きたい学者の数も大幅に削つた.それでもこのまま書き続けたら,いよいよ読者をたいくつさせるだけであろう.合戦ではないが,引き揚げ時が肝心というから,このへんで本稿に終止符をうつことにする.
 ただ最後に,既述したように西欧において発展した皮膚科学が,わが国においてはどう受け入れられたか,これを本邦皮膚科学建設者である土肥慶蔵先生を通じて考えてみることにする.

外国文献

外国文献—専門誌より

ページ範囲:P.1146 - P.1147

THE JOURNAL OFINVESTIGATIVE DERMATOLOGY 58: 1, 1972
Failure to Induce Immune Tolerance to Nitrogen Mustard. Intravenous Administration Preceding Topical Use in Patients with Psoriasis: R. L. Baer, P. Michaelides and A. E. Prestia 1
In Vitro Demonstration of Delayed Hypersensitivity in Patients with Bcrylliosis: W. R. Henderson, K. Fukuyama, W. L. Epstein and L. E. Spitler 5

〈原著論文抄録〉

播種性黄色腫とその周辺,他

著者: 滝沢清宏 ,   富沢尊儀 ,   安西喬

ページ範囲:P.1149 - P.1149

 播種性黄色腫(Xanthoma disse-minatum)は,正脂血性皮膚粘膜黄色腫のまれな1型であり,その一次的病因として,肉芽腫形成性の網内系組織球浸潤が挙げられ,組織球への脂質蓄積は二次的なものとされる.この意味で,本疾患は,他の組織球浸潤性疾患,特にNevoxanthoendothelioma(N. X. E.)およびHand Schuller-Christian病(H. S. C.)と混同されることがままある.著者らは,本疾患と思われる1例を経験した機会に,その位置付けを明確にする為,文献的検討を行なつた.
 本疾患を1独立疾患とするには,種々の問題はあるが,皮膚粘膜を侵す予後良好の慢性疾患で,その典型像は,N. X. E.,H. S. C. と区別され得るものと考えたい.自験例の治療にステロイドを用いて著効をおさめ得たことは,本疾患を1種の細網内皮症とする説の論拠の一つとなるかも知れない.

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臨床皮膚科 第26巻 総索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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