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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科26巻3号

1972年03月発行

雑誌目次

図譜・351

壊疽性膿皮症

著者: 野平睦子 ,   松岡滋美

ページ範囲:P.196 - P.197

症例 38歳,女子,家婦.
初診 昭和46年3月6日.

原著

Reiter症候群

著者: 赤井昭 ,   村川英三

ページ範囲:P.203 - P.209

 1916年Reiter1)の報告以来,尿道炎,結膜炎,関節炎を併せ持つた疾患のあることが知られReiter症候群ないしReiter病と呼ばれて来ており,今日では各病変が成書にも詳述されている.一方,症例報告が重ねられるにつれ本症候群では稀れならず皮膚病変を見ることが知られて来た.その発生頻度は報告者によりかなりの開きがあるが,16例を長期観察した経験を持つWeinbergerら2)はその中の10例に皮膚病変を認めており,またHollander3)は,注意していれば高い頻度にこれが見い出されることを指摘している.しかるに本症皮膚病変についてはまことに断片的な記載が多く,本症候群の発生頻度が低いことに加えて患者が皮膚科医の目に触れる機会がさらに少なく,一方その外観は多彩を極めることなどがその理由かと考える.Reiter症候群の皮膚病変を知るに役立つのはかろうじてWeinbergerら2)の記載であり,本邦では西岡ら4)の報告も貴重なものと考える.そもそも本邦におけるReiter症候群の症例報告は1948年,黒田5)によるものが最初であり,未だ症例数も少ない.
 著者らは最近著明な皮膚病変を伴つたReiter症候群の1例を経験し,皮疹のほぼ全貌を観察することができたので報告する.

Alopecia mucinosa—特に本症における酸性ムコ多糖類について

著者: 池村郁男

ページ範囲:P.211 - P.217

 Alopecia mucinosaは1957年Pinkusにより独立疾患としてその概念が明らかにされ,欧米ではその報告が多いが,本邦における報告例は現在までに約15例を数えるのみで,まだ比較的少数にとどまつている,著者は最近34歳男子に典型的と思われる1例を経験し,さらにその沈着物質である酸性ムコ多糖類(aMPS)について,組織化学的にそのaMPSを酵素消化法により同定し得たので報告する.

Colloid milium—特に膠状物質の起源およびその本態について

著者: 水元俊裕 ,   青柳俊 ,   高木章好 ,   平山晃也

ページ範囲:P.219 - P.224

 膠様稗粒腫Colloid miliumは年とともにその報告が増すにつれてそれほど稀なものではないことが知られてきたが,最近では本症の主要変化である膠様物質の本態,起源について興味がもたれ,諸家により多くの新事実が報告されて本症の病因の解明に新たな手がかりを与えている.しかしいずれもまだ推測の域を出ておらず,真因はなお不明といわざるを得ない.一方本症の発症については個人的素因ならびに周囲の環境が何らかの役割を果していることは諸家の認めるところであり,さらに地域的にも好発地帯があるかのごとくである。最近われわれは比較的典型と思われる本症を経験し,その本態について若干の考察を試みたのでここに報告する。

下腿に発生した基底細胞上皮腫

著者: 石川謹也

ページ範囲:P.225 - P.228

 基底細胞上皮腫は大多数が顔面に発生する.Broder1)(1919)はその90.7%が顔面に,また,96.28%が鎖骨より上部に発生すると記載している程である。しかし,近年,臨床的ならびに組織学的診断の進歩と共に身体各所に観察されてきている.著者は最近下腿に発生した本症を経験したので報告する.

腫瘍形を呈した真性皮膚結核の1例

著者: 小林健正

ページ範囲:P.229 - P.234

 人類における結核症は過去2回の世界大戦による疲弊が誘因となつて,その都度,かなりの蔓延をみた.しかし,皮膚結核(CT)だけを切り離してみると,第1次大戦後の増加は衆目の認める所であつたが,第2次大戦後は他臓器と趣を異にする報告が多いようである.わが国のCTをみると,戦前一様に1.0%前後の発生率1)であつたが,戦後は北方で減少,南方で増加の傾向にあるようである2).と同時に,戦前比較的一定していた真性結核(GT)と結核疹との比は戦後に崩れ,終戦後のGTの相対的増加の後,抗結核剤の導入と共にCT全体が減少したが,とりわけGTの減少は著しかつた.従つて,昨今,われわれは皮膚科の診療に当つてGTを扱う機会も乏しくなつたが,著者はたまたまもつとも稀なCTである腫瘍状皮膚結核(TCT)に属すると思われる症例を経験したので,記載に留めたい.

DERMOLIPOMA

著者: 山本哲雄 ,   中尾正敏

ページ範囲:P.235 - P.238

 Dermoidは皮膚組織が胎生期に断裂,迷入して生じた一種の分離腫で,その多くは嚢胞を形成するdermoid cyst (皮様嚢腫)であるが,ときに充実性で嚢胞のみられないことがあり,このようなものをsolid dermoidという1,2,3).このうち表皮や皮膚付属器管以外に脂肪組織に富むものはdermolipoma1,3,4)あるいはlipodermoid5,6)とよばれ,角膜輪部や結膜下などの眼科領域に発生しやすい.皮膚科医がdermoid cystをみる機会は少なく7,8),ましてsolid dermoidやder-molipomaに関しては皮膚科書にも記載なく,皮膚科領域での報告もみられない.
 われわれは眼瞼に発生したdermolipomaの1例を経験し,この結節が皮膚類似組織からなるため皮膚組織病理学的にも興味あると考えたので,文献的考察も加えてここに報告する.

レアギン(皮膚感作抗体)測定の臨床的経験について

著者: 赤坂陽 ,   大川義栄 ,   大津美智子 ,   野上有信

ページ範囲:P.239 - P.242

 近年,石坂公成氏らによつてなされた皮膚感作抗体(レアギン) Ig-Eについての業績は,いわゆるアトピー素因というものに次第に明かな概念を与えつつあるように思われる.そこで私達は,その測定の臨床的価値を評価する目的で,アレルギー機序が関与すると思われる疾患群に,血清Ig-E測定を中心とする一連の検索を行ない,ある程度の結果を得たので報告する.
 検索対象アトピー皮膚炎,蕁麻疹,湿疹群を主とした258例について行つた.

薬剤

Enramycinの抗トレポネーマ作用について

著者: 大久保暢夫 ,   堀幹郎 ,   宮沢貞雄

ページ範囲:P.247 - P.249

 前報1)で我々はEnramycin (以下ERMと略)の梅毒治療効果について家兎実験梅毒を用いて検討し,肉眼的にも病理組織学的にもPenicillin-G (以下Pc-G)とほとんど同程度の治療効果を示すことを報告した.
 しかしこの実験では治療効果が期待できる薬剤であるか否かを明らかにすることを主目的としたために,用いた薬剤投与量は成人常用量の2倍以上であり,ERMのトレポネーマに対する最低発育阻止濃度,血中濃度等から算出したものではなかつた.

Enramycin(ERM)による梅毒の治験

著者: 小野田洋一 ,   朝田康夫 ,   宗義朗 ,   野田三千磨 ,   安原稔 ,   山田瑞穂 ,   西谷宣雄 ,   渡辺昌平 ,   仁木富三雄 ,   鳥山悌 ,   植村隆 ,   河島敏夫

ページ範囲:P.251 - P.261

 日本で創製された新抗生物質Enramycin(以下ERMと略記)が梅毒トレポネーマに対して有効であることが動物実験1)ならびに臨床試験2,3)で報告された.われわれは本剤の梅毒に対する基準となる用法および用量を確立することを目的として,関東および関西の12病院の皮膚科および性病科において共同研究を行なつた(表1).その結果について報告する.

印象記

プラハとワルソーの大学皮膚科を訪ねて

著者: 朝田康夫

ページ範囲:P.263 - P.267

 昭和46年8月23日から28日迄,チェコスロバキヤのプラハで第7回国際化学療法学会が開催されました.日本から各科合わせて約120名の参加があつた由で,私もCoryncba-cterium acnesの演題を出し参加しました.会場はRudolfinum(Hou-se of Arts)でモルダウ川に面した静かな所で10の小会場に分れておりました.私の口演のScctionはA−14−4のclinical evaluation of an-tibacterial chemotherapcutics indermatovenerologyで座長はProf.Kleine-Natrop(Dresden),Prof.Meyer-Rohn(Hamburg),Prof.Stüttgen(Berlin),およびProf.Fadrhoncová(Praha)が交代で勤められ,私の口演の時はProf.Me-yer-Rohnでした.Meyer-Rohn教授とはドイツで一度お会いしたことがあり,そのためか大変気楽に口演することが出来,座長席から私にウインクを送られながらの司会に助けられて大過なく10分間の持時間を終りました.用語は全て英語に統一されておりましたが,英語も各国によつてこれ程違うかと思う程それぞれのお国ぶりのしやべり方でした.
 この学会に参加した機会にプラハ並びにワルソー(ポーランド)の各大学皮膚科を訪ねてみました.チェコとポーランドの皮膚科クリニックについては,すでに横浜市大の野口教授が立派な報告を書いておられます.二番煎じですが以下私なりに感じた点を少し報告したいと思います.

皮膚科学の流れ 人と業績・22

Morit KaposiとJonathan Hutchinson

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.268 - P.271

Moritz Kaposi
(前回から続く)色素性乾皮症(Xeroderma,Pergamenthaut)2)
 この名称によつて,皮膚萎縮症の総称の中にはいる特異な一疾患を指し示すことにする.本症には二つの変形があり,第1形は顕著な色素異常を示すが,第2形においてはこれを欠くのである.
 この疑いなくまれな疾患の第1形を,わたしは2例において観察する機会を得たにすぎない.

外国文献

外国文献—専門誌から

ページ範囲:P.272 - P.273

DER HAUTARZT 22: 1, 1971
Angriffspunkt und Wirksamkeit der antisyphilitischen Penicillinbehandlung. 11 Die Problematik der Penicillindosicrung: A. Luger 1
Über die Therapie der Acne vulgaris. (Kritische Übersicht der Literatur von 1964-1968.): K. Holzegel 7

〈原著論文抄録〉

Reiter症候群,他

著者: 赤井昭 ,   村川英三

ページ範囲:P.275 - P.275

 34歳,男子の多発性関節炎,尿道炎および全身諸処の滲出性,角化性紅斑を伴なう1例を報告した.27歳時発病,33歳,34歳時に夫々再発し,その後不完全な緩解のまま軽い関節炎と発疹を持続して現在に至つている.
 発疹は紅色丘疹乃至小水疱として初発し,滲出傾向を帯び,足蹠,足背,下腿などでは厚いかき殻状の角化性痂皮を形成し,その他四肢,腋窩,そ蹊,外陰等では融同して大きな紅色鱗屑性局面を示す.自覚症はない.組織はKogoj海線状膿疱と角質源生を示す.関節液,尿培養でマイコプラスマ陰性,STS(−),RA(−),CRP,赤沈値α2グロブリン値は病勢に一致して変動する.コルチコステロイド,ブタゾリジン,サリチル酸剤が対症的に有効であつた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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