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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科26巻4号

1972年04月発行

雑誌目次

図譜・352

硬化性萎縮性苔癬

著者: 高梨雄蔵

ページ範囲:P.298 - P.299

患者 41歳,男子,教員
初診 昭和46年5月24日

図譜・353

Lymphocytoma Cutisの1例

著者: 西山芳夫 ,   若林武夫

ページ範囲:P.300 - P.301

患者 28歳,男子
初診 昭和46年3月25日

綜説

Infantile Papular Acrodermatitis Disease(Gianotti病)

著者: 伊藤光政

ページ範囲:P.305 - P.312

 Infantile papular acrodermatitis disease(=Gianotti病;以下I. P. A. D. と略す)は1955年イタリアのミラノ大学のGianotti教授によつて最初に記載報告された,小児の主として四肢をおかす特徴的な苔癬様丘疹性皮膚疾患である1).その後欧米においては相当例の報告があり,本邦においても若干の文献をみるに至つている2,3).著者は1970年秋より1カ年間イタリア政府の交換研究員としてミラノ大学皮膚科学教室において本疾患の最初の記載者Gianlotti教授の直接の指導をうける機会に恵まれた.その際,本疾患の臨床的定義および命名法に関しての同教授の考え方が,他の著者による文献において,不十分にまたは誤つて解釈されて,それが広く一般に流布していることを知つた.例えばI. P. A. D. の必発の随伴症状である肝炎に関する記載が,他の文献には強調されていない.本症にみられる肝炎は小児のみにおこり,検査成績がきわめて著しい異常を示すにもかかわらず全身状態・予後ともに良好であり,皮膚症状を主訴として来院してはじめて発見されるというきわめて特異なもので,ひとり皮膚科領域のみならず,肝炎の臨床や疫学・病理に関心をもつ他の領域の研究者の大きな関心をひくに足るものである.また,I. P. A. D. は一般に最初の記載者にちなんでGianotti-Crosti症候群と呼ばれることが多いが,これは次に述べる2つの理由により妥当ではない.すなわち後に詳しく述べるように,本症がきわめて特徴的な症状をそなえた単一の独立疾患であることは明らかであるから「症候群」なる名称は不適切である.かつまたGianottiは,I. P. A. D. とは別に,やはり小児の四肢に発生するが,皮疹の形態や分布を異にし,肝炎の合併を常に欠いた瘙痒性の皮膚疾患を記載4,5)し,これに対しinfantile papular-similvesicular acrodermatitis syndrome(=Gianotti症候群)という名称を与えている.I. P. A. D. をGianotti-Crosti症候群という名称で呼ぶことは,この疾患との無用の混乱・混同を招くおそれが多分にある.故にこれら2疾患がもし冠名疾患として呼ばれるとしたら,後者こそGianotti症候群と呼ばれるべきものであり,I. P. A. D. はGianotti(-Crosti)病と呼ばれるべきである.
 著者はここにGianotti教授の御厚意により使用を許されたミラノ大学の症例をつかつて,同教授の考え方にもとづいて本疾患のあらましを総括し,あわせて必発の合併症状である肝炎に関するいくつかの興味ある新知見を紹介したいと思う.

原著

汎発型限局性鞏皮症

著者: 高橋正昭

ページ範囲:P.313 - P.316

 鞏皮症(scleroderma)とは皮膚の硬化をきたす疾患に対して与えられた総称である.これらは汎発性鞏皮症(diffuse scleroderma)と限局性鞏皮症(localized scleroderma:circumscribedscleroderma:morphoea)とに大別されている.しかし現在は臨床症状に基き,諸家によりさらに細かく分類されている.樋口らの分類1)によれば,汎発型を,1)汎発性鞏皮症,2)手指鞏皮症,3)先天性鞏皮症,4)新生児鞏皮症に分類し,限局型を,1)斑状鞏皮症,2)帯状鞏皮症3)線状鞏皮症とに分類した.今回著者は,限局性斑状鞏皮症ともいうべき病巣が,躯幹,四肢等に広範囲に多発し,一見汎発型鞏皮症を思わせるも,末端および骨,筋,内臓等に全く異常を認めず,限局性鞏皮症の汎発型ともいうべき症例を経験したので,以下に報告する.

狼瘡癌について

著者: 星野臣平 ,   佐々田健四郎 ,   安江隆 ,   安江厚子

ページ範囲:P.317 - P.320

 尋常性狼瘡の経過中,その病変部より,ないしはその瘢痕部より発生した癌を狼瘡癌という.肺結核,骨結核などの発生頻度の減少に伴い,皮膚結核,特に尋常性狼瘡はすくなくなつており,従つて狼瘡癌もあまり見られなくなつた.今回,我々は狼瘡癌の1例を経験したので,この機会に新しい観点より狼瘡癌につき考察してみたい.

Keratolysis Plantare Sulcatum

著者: 東禹彦

ページ範囲:P.321 - P.325

 Keratolysis plantare sulcatumは1910年にCastellani1)によつてKeratoma plantare sul-catumの病名ではじめて報告され,Acton andMcGuire2)によつて微生物感染による疾患であることが確定された.さらに,その臨床像がKera-tomaでないという理由でActon and Mc-Guire2)によつてKeratolysis plantare sulcatumと名付けられた.
 近年ではZaiasら3)によってPitted kertoly-sisという別称で報告されている疾患である.従来の報告はほとんどが熱帯および悪熱帯に属する地方からのものである.本邦において本症と確認しうる症例の報告は陳4)により台湾における例が報告されているのみである.

嚢腫壁に接し螢光細胞(セロイド含有細胞)のみられたepidermal cyst

著者: 長島正治 ,   北村啓次郎

ページ範囲:P.327 - P.330

 1970年,本間1)は嚢腫壁に接して多数の顆粒細胞のみとめられたepidermal cystの1例を記載し,この顆粒細胞がHamperl2)のいうFluorocyten(螢光細胞)に一致するものであり,しかもこの細胞に含まれている顆粒が,Lillieら3,4)のいうセロイド(ceroid)色素に相当することを組織化学的に証明した.
 従来,病理組織学的にepidermal cystの周囲に異物反応がしばしばみとめられることはよく知られており,また日常よく経験される所でもある.しかしながら,従来の成書に該部におけるセロイド色素の出現を指摘したものはない.

人体蠅(幼虫)症の1例

著者: 木根淵承一 ,   池村郁男

ページ範囲:P.331 - P.339

 蠅(幼虫または蛆)症,myasis or miasisとはハエの幼虫が人体に寄生するものをいう.生活環境の改善,各種殺虫剤の発達によりハエは少くなつてきており,とくにハエの幼虫が人体に寄生するなどということは現在ではちよつと考えられなくなつてきている.一般にはハエは不潔なところで発生すると考えられているが,過去においてウジが傷口をきれいにすると考え治療に用いられたりした時代もあつた.
 現在ではハエは少なくなつたとはいえ,夢の島の大発生のような例は別にしても,われわれの周囲にまだまだ沢山みられる.

腋窩にみられたapocrine cystadenoma

著者: 中西綾子 ,   水野信行

ページ範囲:P.341 - P.343

 Apocrine cystadenomaは単発性の半球状半透明な結節で,通常顔面に好発するといわれる1)
 その報告例は著者らのしらべた限りでは比較的少く,しかもその発生部位は頭部および顔面に限られるもののようである.著者らは腋窩に発生した本症を経験したので報告する.

肺癌を合併した菌状息肉症の1剖検例

著者: 村井哲夫 ,   安西喬

ページ範囲:P.345 - P.349

 菌状息肉症は1932年にAlibertが報告して以来,その特異な臨床像および組織学的所見から,多くの皮膚科医および病理学者の研究の対象としてとりあげられているが,その割に剖検例の報告が少なく,病因についても,未だ種々意見が別れている.最近我々は,菌状息肉症のいわゆる古典型と考えられる症例で,4年間にわたり経過を観察し,この間右肺腺癌の合併を認めた症例を剖検する機会を得たので報告する.

研究メモ

結節性黄色腫

著者: 佐藤吉昭

ページ範囲:P.344 - P.344

 この一連の写真は,17〜8年前東京周辺の大学など数施設を受診し,教科書,図譜に結節性黄色腫,黄色腫症として掲載され,現在はごく軽い瘢痕を残すのみとなつた22歳男の症例である.今夏偶然その予後を知ることが出来たので,簡単に報告する.
 図1は発症後約1年の症状で,同2との間に教科書などの写真が入ることになる.この間,日大駿河台,千大,東大,そして2,3の医院を受診したが,いずれも短期治療で転医したため効無く,腫瘍は漸増,膨隆し,とくに瞼縁部では著明になつたといい,再度本学を受診した(図2).当時血清は清澄で,総脂質,Cholesterol値,心血管系などを含めて一般検査成績に異常はなかつたが,最近のように精密な脂質代謝や血清蛋白異常に関する検索は行われていない.

皮膚科学の流れ 人と業績・23

Jonathan Hutchinson Henry Radcriffe-Crocker

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.355 - P.358

Jonathan Hutchinson(前回から続く)
砒素癌(Arsenic Cancer-Report of the Pathological Society of London)3)
 Jonathan Hutchinson,F. R. S.(注:Fellow of the Royal Society—英国学士院会員)氏は,砒素の長期大量内服が,上皮の変形ではあるが,ある特性を示す一種の癌を生ずることがあるという主張を発表したいと希望した.

印象記

Pacific Dermatologic A ssociation第23回例会に出席して

著者: 中村絹代

ページ範囲:P.359 - P.361

 私がフィラデルフィヤに留学中,Atlantic Dermatologic Associationの例会に出席したことがあつたが,Pacific Dermatologic Association(PDA)について詳しい情報を得たのは,慶応の先輩である平塚市の中野政男先生が第22回例会に出席きれてからのことであります.
 PDAの会員になるために2名の推薦者が必要なため,中野先生と,フィラデルフィヤ時代の私のボスであり,現在University ofCalifornia at Irvineの教授であるDr.James H.Grahamに推薦状を頂いて,ようやく会員にはなつたものの今回の開催地がメキシコと聞いて,色々考慮した末,出席することに決定しました.

外国文献

外国文献—専門誌から

ページ範囲:P.362 - P.363

ACTA DERMATOVENEREOLOGICA 51: 5, 1971
Changes in the α-Fibrous Protein During Epidermal Keratinization: H. P. Baden and L. A. Goldsmith 321
The Occurrence of Distinctive Intramitochondrial Granules in Epidermal Langerhans Cells and Dermal Mononuclear Cells: E. George Tirorne, J. H. Motlaz and A. S. Zelickson 331

〈原著論文抄録〉

汎発型限局性鞏皮症,他

著者: 高橋正昭

ページ範囲:P.365 - P.365

 61歳の主婦で,肩,乳房,背,上肢および下肢等に,対側性に広範な硬化像がみられ,これらは限局性鞏皮症の範疇に入ると考えられる症例を報告した.皮膚の病巣は全体表面積の約20%以上にも達するが,末端の硬化やその他,筋,骨,内臓等に全く変化はみられず,組織学的所見でも,典型的な鞏皮症の像を示していた.本症例の如きものは,米英学派で言うGeneralized Morphoeaとするのが妥当と考え,本邦における適訳がないので「汎発型限局性鞏皮症」と仮称した.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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