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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科26巻5号

1972年05月発行

雑誌目次

図譜・354

Subcorneal pustular dermatosisの1例

著者: 籏野倫 ,   新井亮一

ページ範囲:P.390 - P.391

症例 53歳,女性
初診 昭和45年3月19日

原著

皮膚カンジダ症の種々相

著者: 山田瑞穂 ,   二宮聖耳 ,   藤本典男 ,   吉永花子 ,   丹羽靱負

ページ範囲:P.397 - P.402

 カンジダは口腔内,腸管内などに腐生的に存在し,皮膚表面にもしばしば認められ,病原菌としてはあまり重要な位置を占めていなかつたが,最近,コルチコイド外用薬の乱用のためか,多数の,従来あまり見られなかつた種々の型の皮膚カンジダ症が観察されるようになつた.そのうちの一部の症例をここに紹介する.

角質増殖型皮膚カンジダ症

著者: 東禹彦 ,   池上隆彦 ,   山本哲雄

ページ範囲:P.403 - P.408

 皮膚カンジダ症は通常間擦部に限局して発生し,その症状は紅色丘疹を原発疹とし,症状が進行すれば落屑性紅斑となり,ときに浸軟,糜爛を伴うようになるものであつて,角化性皮疹を生じることはまれである.角質増殖の著しい皮疹を生じるカンジダ症としてはHauser-Rothman1)によつて報告されたmonilial granuloma (以下カンジダ性肉芽腫と記す)がよく知られているが,限局性の角質増殖型カンジダ症の報告はまれである.われわれはこの数年間に角質増殖型皮膚カンジダ症を3例経験したので,それらの症例を報告するとともに,本症の発症誘因やカンジダ性肉芽腫との関連性について若干の考察を試みた.

Candida感染を伴つた外陰部Paget病—とくに病巣の電子顕微鏡的観察

著者: 上田恵一 ,   中安清 ,   長谷川正秀

ページ範囲:P.409 - P.417

 乳房外Paget病,ことに外陰部のPaget病の発生病因に関する研究は数多い.表皮層内にPaget細胞が出現する疾患をPagct病とし,一般にはapocrine排泄管由来とされているが,初発部位の相違により表皮内発生のものと皮膚付属器などの腫瘍が転移しておこつた表皮続発性のものとがある.表皮原発性のものもcarcinoma in situの状態から腫瘍細胞が真皮内へ浸潤し,遠隔転移をおこす場合もみられている.
 著者らは,外陰部のCandida感染を合併した表皮原発性と思われるPaget病で,皮膚・リンパ節・肺などに遠隔転移したいわゆるPaget癌の症例を経時的に観察し,表皮内にみられたPaget細胞の集塊のほかに異常角化細胞を電子顕微鏡で検索,さらに表皮内に存在せるPaget細胞を取り巻くkeratinocyteの異常な形態像につき検討した所見を報告する.

豚のringwormから分離したMicrosporum nanumについて

著者: 長谷川篤彦

ページ範囲:P.419 - P.423

 著者らは,これまで馬,牛,犬,猫,猿およびラッテの各ringwormについて報告し,これの原因菌として,Microsporum canis, M.gypseum,Trichophyton mentagrophytcs, T.verrucosumおよびT.simiiを分離同定した27)
 また好ケラチン性真菌についての土壌調査においては,M.gypseum24),M.cookei25),Keratino-myces ajelloi24),Chrysosporium keratinophilum26),C.tropicumなどの菌を分離同定した27)

Mycobacterium marinum感染による皮膚肉芽腫の1例—付,本邦症例の検討

著者: 古谷達孝 ,   富山哲雄

ページ範囲:P.425 - P.429

 非定型抗酸性菌の1種であるMycobacteriummarinum感染による皮膚病変が欧米においては,1951年よりswimming Pool granulomaあるいはMycobacterium marinum infectionとして報告されているが,本邦においても最近本症報告が相次ぐに至つている.
 筆者らはたまたま本症の1例を経験し,あわせて本邦症例を検討する機会を得,本邦症例においてはその感染機序に独特のもの──熱帯魚よりの感染──があることが判明したのでここに報告したい.

Hand-footmouth diseaseの症例

著者: 森真章

ページ範囲:P.431 - P.436

 昭和44年9月から昭和45年1月にかけて浦和附近にhand-foot-mouth disease (以下,HFMDと略す)の流行があつた.昭和44年夏から年末にかけて関東地方に広域の流行があつたことは山本ら1)が述べており,ここに述べる症例はそれの一部をなすものであるが,文献に記載のない所見があるので症例報告したい.浦和市の当病院で昭和44年典型的臨床症状を確認した12例の報告である.

著明な胸水貯溜を伴つた薬疹の1例

著者: 小野公義

ページ範囲:P.437 - P.442

 いわゆる重症薬疹には,肝,腎,血液障害がよく合併することは周知のこととされている.しかし,肺の所見に関しては薬疹とは別に薬による気管支喘息やレフレル症候群などが知られているが,薬疹に伴う肺の異常所見に関しては,その報告は比較的少ない.著者は最近,著明な胸水貯溜を呈した薬疹を経験したので以下に報告する.

研究メモ

白色ワゼリンならびにラノリンの電子顕微鏡的観察

著者: 長谷川輝彦

ページ範囲:P.418 - P.418

 皮膚病治療の一つである軟膏療法は重要である.中でもワゼリンは広く使用されているが,その形態についての知識は貧弱であつた.最近Pajorら1)がワゼリンの電子顕微鏡的観察を報告した.皮膚科医として軟膏治療の知識の重要性から,白色ワゼリンならびに精製ラノリンのブリーズエッチング法による観察を行なつたのでここに報告する.

皮膚科学の流れ 人と業績・24

Henry Radecriffe-CrockerとPaul Gerson Unna

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.448 - P.451

Henry Radcriffe-Crocker
(前回の続き)
環状肉芽腫(Granuloma Annu-lare)3)
ここに明確な特性を共通に示す6症例があつて,一つの臨床群に属することに疑いない.その特性を総括すると,次のとおりである.徐々に発育する小結節あるいは丘疹で,集合しあるいは部分的に融合して環を形成するが,それを構成する小結節はなおも見分けがつくのである.発疹は徐々に退縮する傾向を示し,その場合環は切れて,しはしば三日月形のみ残るかあるいはいくつかの三日月形が融合すれば連圏状の局面をつくる.環の内側すなわち退縮した側は緩い傾斜をもつて正常皮膚に移行し,罹患していた部分にはしばらくの問わずかに赤味を残す.外縁はそれより峻しいが,円鋸歯状あるいは明瞭に小結節状を呈し,ときとするとごく狭い量のあることがある.発疹の着色は紫味がかつた紅色か,あるいはまつたく蒼白である.小結節は堅く,そのあるものはわずかに疣状を呈することもあるが,他のものは扁平でむしろ扁平苔癬を思わせる.分布は主として手根,手,指の背面であるが,頸部のこともあり,奇妙なことに少なくとも4例においては,丘疹は項部髪際に発生していた.また頭部において耳介の後,顔面の上部に見られた症例もあつた.男児においてのみ下肢に生じ,膝の上に見られたことがあつた.丘疹は,指関節,橈骨と尺骨との末端,その他骨隆起部に好発するようであるが,これに限るというのではない.男児における本症の特徴は,その他の者におけるほど明確ではなかつた.
 わずかに涜状を示した発疹に関連して注目されたことは,2例において通常の痴贅が先行もし,共存もしていたことである.そして第4例においては本症の発疹が疵状狼瘡(Lupus verrucosus)に似た症状にまで進展したが,組織学的に疵贅の特徴を示さず,表皮の変化は僅少であつたのに比し,真皮における細胞浸潤ははなはだ顕著であつた.

Summaries in Arch. Derm.

Summaries in ARCHIVES OF DERMATOLOGY

ページ範囲:P.452 - P.457

 The original source of publication: Reprinted from ARCHIVES OF DERMATOLOGY, Vol. 104, Number 5; pages 459, 467, 476, 486, 490, 501, 508, 513, 515, 522, 524, 529, 533, 538, 541, 547 and 551 November 1971 Copyright 1971 AMA.

外国文献

外国文献—専門誌から

ページ範囲:P.458 - P.459

ARCHIV FUR DERMATOLOGISCHE FORSCHUNG240: 1, 1971
Ultrastructure of the Human Toenail. Cell Migration. Keratinization and Formation of the Intercellular Cement: K. Hashimoto 1
Zur Ultrastruktur der menschlichen Epidermis bei der allergischen Epicutantestreaktion: O. Braun-Falco und H. H. Wolff 23

〈原著論文抄録〉

皮膚カンジダ症の種々相,他

著者: 山田瑞穂 ,   二宮聖耳 ,   藤本典男 ,   吉永花子 ,   丹羽靱負

ページ範囲:P.461 - P.461

 従来あまり見られなかつた,種々の形の皮膚カンジダ症が,最近(昭和45,46年)急激に増加した.その原因はコルチコイド外用薬の乱用であろうと想像される.
 単なる"おしめかぶれ"皮膚炎はむしろ少なく,種々の程度の乳児寄生菌性紅斑がしばしば見られ,乳児の汗疹に続発する汗疹状カンジダ症があり,腋窩,陰股部などのカンジダ性間擦疹,陰茎,陰嚢,女子外陰,膣カンジダ症なども増加し,夫婦間感染も見られる.また,全身広範囲に生ずる汎発性カンジダ症も多く,それにも丘疹型,膿疱型,落屑型,毛孔性,脂漏性湿疹様のものなどがあり,これが併存していることが少なくない.新生児汎発性—膿疱型皮膚カンジダ症,ボーエン病様前癌症に合併したカンジダ症なども報告した.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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