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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科26巻6号

1972年06月発行

雑誌目次

図譜・355

Lupus vulgaris

著者: 西山芳夫 ,   若林武夫

ページ範囲:P.482 - P.483

患者 41歳,女子
初診 昭和46年4月3日

綜説

母斑および母斑症

著者: 広根孝衞

ページ範囲:P.489 - P.495

 母斑および母斑症は,遅発性のものを除き,すべて小児期に発病するが,小児では症状が顕著でなく,診断が困難な場合も時にある.また,母斑症に属する疾患では,皮膚以外の臓器や組織に生じた病変が二次的に重篤な症状を惹起し,患者の生命をおびやかす場合もありうる.そこで,小児期にこれらの疾患を正確に診断し必要な助言を与えることは,患者やその家族から余計な不安を除き,また適切な治療を行なうために重要である.ここでは母斑および母斑症のうちの若干のものについて,最近問題になつている事項を下に述べる.

原著

内臓癌の皮膚転移について—特異な臨床所見を呈した転移性皮膚癌の経験例を中心として

著者: 山口全一

ページ範囲:P.497 - P.503

 内臓癌の皮膚転移はリンパ節や他の内臓臓器への転移に比して比較的まれとされている,わが国では,胃癌はその死因別死亡統計において,癌全体の半数近くの高頻度を占めているにもかかわらず,これの皮膚転移を経験することはまれであり,その比率は低いものとされる1).著者は最近,胃癌のため胃剔除術施行後,ほとんど全身に広汎な皮膚転移をきたし,臨床上特異な皮膚の病像を生じた1例を経験したので,これを記載するとともに若干の考察を試みたい.

癜風菌の角層内形態について—走査型電子顕微鏡による観察

著者: 北村公一 ,   馬場正次

ページ範囲:P.505 - P.510

 癜風は日常ありふれた皮膚疾患であり,その診断および治療に困難を感ずることはなく,関心は癜風菌Malassczia furfur (以下Mfと略す)の菌学に向けられている.Mfの菌学は,本菌が従来培養困難であつたため不明な点が多かつたが,1951年Gordon1)により癜風病巣よりlipophilicyeastとしてPityrosporum oibicularc (以下Poと略す)が培養されて以来,癜風とPoとの関係,PoとMfとの異同について論ぜられてきた,Mfの角層内形態は鱗屑のKOH標本において菌糸と円形胞子の集団として認められるにすぎず,真菌の分類,同定上必要な胞子形成法もblastospore,Arthorospore2)およびphialospore3,4,5)の形成の報告が散見されるにすぎない.われわれはMfとPoの異同を論ずるうえに,Mfの形態,とくに増殖形態を正確に把握する必要を感じ,以下の実験を行なつた.

頑癬の治癒判定について

著者: 黒田和夫 ,   矢口秀男

ページ範囲:P.511 - P.514

 周知のごとく,頑癬および汗疱状白癬は経過中しばしば再発を見る.より正確には再発あるいは再感染というべきであるが,両者の鑑別は不可能に近い.再発とは臨床症状が消失したのちもなお菌が腐生的に存在(無症候性感染)し,それが何らかの機縁によつて発症することであり,再感染とはもとより治癒後新たに菌が侵入して発病することである.これらの疾患について再感染の証明は困難であるが,無症候性感染の有無は立証し得るはずである.
 汗疱状白癬の無症候性感染に関する著者1)の経験によると,夏期に本症に罹患し,冬期には治癒したとしている患者86例のうち36例を冬期に検査したところ22例において菌を検出した.この数字をそのまま信ずれば,冬になつて治癒したと考えている水虫患者の71%に菌が腐生しているという想像が成り立つのである.これを再発,再感染のいずれかに決めることはできないが,一種の無症候性感染とは見做し得ると思う.そこで今回は頑癬における無症候性感染の有無について検討した.

皮膚筋炎の2例—著明な肺病変併発例を含めて

著者: 北村啓次郎 ,   木村俊次 ,   松岡滋美

ページ範囲:P.515 - P.526

 皮膚筋炎は横紋筋,皮膚,食道,血管その他の諸臓器の炎症および変性を主病変とする疾患で,臨床症状として筋肉の圧痛および運動痛,筋力低下,嚥下困難,発熱,発疹などが広く知られている.
 最近,著者らは,ほぼ定型的な皮膚筋炎の2例を経験し,そのうち1例は著しい肺病変のために死亡した.

点状角化症の1異型

著者: 山本哲雄 ,   中尾正敏

ページ範囲:P.527 - P.530

 手掌に角化性丘疹や小陥凹をきたす疾患にはいくつかあるが,ここに述べる症例は両手掌のしわ,すなわち皮膚線に一致して発生したものであり,このような臨床像はかなり特徴的であるにもかかわらず報告は少なく,その名称についても報告者により異なつている.
 自験例では組織学的に汗孔に一致して角栓形成を認めたが,このような所見はこれまでに報告された類似症例では見いだされていない.

耳介のみにみられた環状肉芽腫—とくに皮下環状肉芽腫と単一症候性リウマチ結節の問題について

著者: 高島巌 ,   水元俊裕 ,   青柳俊

ページ範囲:P.531 - P.537

 環状肉芽腫は,発症病理,組織鑑別などで問題になることのきわめて多い疾患であるが,それらの問題点を除いては,臨床像,組織像などに特有のものがあり,また報告例も多く,まれなものとはいいがたい疾患である.ちなみに,藤沢1)によると,昭和43年までに,本邦で120例の報告をかぞえるという.
 著者らは,最近,両耳介のみに小結節を多発した小児例に遭遇し,紅織学的に環状肉芽腫と診断した.きわめてまれな例と考えるのでここに報告しておおかたの批判を仰ぎたい.

薬剤

外用コルチコステロイド経皮吸収による副腎皮質機能抑制の検討—第1報密封包帯法によるFluocinolonc acetonide creamの場合

著者: 島雄周平 ,   桜井克彦 ,   三原基之 ,   臼井敏明 ,   河本裕子

ページ範囲:P.541 - P.547

 皮膚科領域におけるコルチコステロイド療法は,経口投与を主とする全身療法と,軟膏療法を主とする局所療法に分けられる.全身療法においては適応症の厳重な選択が要求されるが,絶対的適応症に対してはやむたく長期間従つて大壁が投与され,当然副腎皮質能機抑制を中心とする全身的副作用の問題が樗こる.局所療法は従来全身的影響が少ないとされ,強力な抗炎症作用を有する優れた比較的安価な外用剤の開発,密封包帯法などの適応の工夫,社会保険上の適用の拡大などによつて,コルチコステロイド局所療法の価値の認識は益々たかまり,今や皮膚科領域におけるコルチコステロイド療法の中心は局所療法であるといい得る.
 コルチコステロイド外用の場合の全身的影響に関する研究には米欧に若干のものがみられ,その結果には賛否両論がある.しかし本邦における邦人を対象とするこの方面の研究はきわめて少ない現状である.われわれ1,2)は先に副腎皮質機能検査法として簡易で安定した血清11--Hydroxycorticosteroids(11-OHCS)の測定法を開発した.本論文においては本法を用いての血清11-OHCS値尿中17-OHCS・17-KS値の追求を中心として,汎発性尋常性乾癬患者について0.025%fluocinolone acctonidecrcamを20gr/day (fluocinolone 5 mg)(occlusive dress-ing techniquc (ODT)の方法で連続毎日用いた場合の全身酌影響について検討した結果について報告する.

外用コルチコステロイド経皮吸収による副腎皮質機能抑制の検討—第2報 Flurandrenolonc(Drenison)tapeの場合

著者: 島雄周平 ,   牧野孝三 ,   井上多栄子 ,   山崎知行 ,   臼井敏明 ,   河本裕子

ページ範囲:P.549 - P.554

 Drenison tapeは,半透明なポリエチレンフイルム上にアクリル樹脂系の粘着剤を塗布したBlenderm sur-gical tapeに4μg/cm2のflurandrenolone acetonideを含有させたものである.Drenison tape療法はODTの一特殊変法と考えられ,従来ODTが有効とされる各種の疾患に効果のあることが内外においてすでに数多く報告さ,れている1〜17).flurandrenoloneをointment・crcam・lotionの型で用いた場合の副腎皮質機能抑制を中心とする全身的影響に関する研究には米国における若干のもの18〜23)がみられるが,flurandrenolone(Drenison)tapeを用いた場合の副腎皮質機能抑制を中心とする全身的影響に関する研究は極めて少なく24,25),本邦におけるものはみあたらない.われわれは第1報2,6)において,汎発性尋常性乾癬患者に0.025% fluocinoloneacetonide crcam 20gr/day (fluocinolone 5mg)によるODTを連日行ない,血清11-OHCS,尿中17-OHCS,17-KSを追求することによつて,副腎皮質機能抑制を惹起するに十分なfluocinolone acetonideの経皮吸収のおこることを示した.本論文においては,第1報と同様血清11-OHCS値,尿中17-OHCS・17-KS値の追求を中心として,汎発性尋常性乾癬とアトピー性皮膚炎による続発性紅皮症の2症例にflurandrenolone (Drenison)tapcを1250cm2/day (flurandrendoiie 5mg)連続毎日用いた場合の全身的影響について検討した結果について報告する.

皮膚科学の流れ 人と業績・25

Ernest Besnier, Vittorio MibelliとJohn Addison Fordyce

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.556 - P.559

Ernest BeSnier
 Ernest Besnierは1831年オンフルール(Honfleur)で生まれた.勉学はパリで行ない,アルディ(Har-dy)とバザン(Bazin)の門下にはいつたが,数多くの門弟のうちでも特に卓抜しているといわれた,1857年の医学校卒業後,まつたく皮膚科学に没頭し,1872年には早くもサン・ルイ病院の医長になつていた.
 ベニエは皮膚科学のあらゆる面において活発に仕事をした.彼の考えかたは本質的にフランス的であつたが,それにもかかわらずカポシの教本をフラン語に飜訳して,それに正確な注釈をつけた.乾癬に関する彼の論文,アトピー性皮膚炎に関する業績,湿疹に関する研究は,一流のフランス皮膚科学者としての彼の地位を確定した.臨床皮膚科学に対する彼の貢献ははなはだ大であつたが彼のもつとも著しい功績は教師としてであつた.1909年の彼の死去に当たつて,その弟子であるプリングル(Pringle)は次のように記している.

外国文献

外国文献—専門誌より/外国文献—専門誌から

ページ範囲:P.560 - P.561

THE BRITISH JOURNAL OFDERMATOLOGY85: 1, 1971
The Mechanism of Delayed Hypersensitivity Derangements in Reticulum Cell Lymphontata (Reticulosarcomata): A. Lonelier, M. Pazoikska-Proniewska and Wieslaw Glinski 1
Cytotoxic Factors in Inhibition of Lymphocyte Transformation in Lymphomata: A. Langner, M. Pawaska-Pronewska, W. GliUsi and S. Maj 7

〈原著論文抄録〉

内臓癌の皮膚転移について—特異な臨床所見を呈した転移性皮膚癌の経験例を中心として,他

著者: 山口全一

ページ範囲:P.563 - P.563

 52歳女子に胃癌剔除術後,臍窩左側に皮膚転移初発病巣を生じ,この腫瘍の剔除を受けたにもかかわらず,漸次躯幹,四肢等に拡大して特異の臨床所見を呈し,かつ長期の経過を観察しえた転移性皮膚癌の1例を記載した.
 本例では,胃癌から皮膚への転移径路がほぼ確認され,その特異な臨床型ならびに臨床経過のきわめて長い理由についても若干の考按を行つた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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