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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科26巻8号

1972年08月発行

雑誌目次

図譜・357

Reiter病—Cephalosporium寄生を伴つたKeratosis blennorrhagica様皮疹

著者: 上田恵一 ,   草場健二

ページ範囲:P.682 - P.683

患者 66歳,男
初診 昭和40年9月27日

原著

先天性皮膚欠損を伴つた表皮水疱症の1例

著者: 吉永和恵 ,   青木寛

ページ範囲:P.689 - P.695

 先天性表皮水疱症で,生下時皮膚欠損の見られるものとしては,致死性表皮水疱症がある.しかし比較的速かにほとんど瘢痕を残さずに治癒する生来性の皮膚欠損を有し,生後水疱が出没し,また瓜の異常を頻繁に伴い,良性経過をとる臨床型を1966年Bart1)はAnew syndrome-congenitalIocalized absence of skin and associated abnor-malities resembling epidermolysis bullosaの名称の下に記載している.すなわちBartは遺伝学的な立場に立脚し,5世代にわたる104人を追跡し,これまで記載されている先天性表皮水疱症とも先天性皮膚欠損症とも異る1症候群と考えた.我々はBartの記載した新症候群と同一と考えられる1症例を経験し,臨床および病理組織学的検討ならびに遺伝関係より,優性遺伝性栄養障害型先天性表皮水疱症の特異型としてなんらさしつかえないと考えてここに報告し,併せてEpidermolysisbullosa dystrophica hypcrplas-tica (Touraine)との異同につき若干の考察を試みた.

稀有な臨床像を呈した基底細胞癌の3例

著者: 境繁雄 ,   山内晢 ,   祖父尼哲 ,   鹿野宏子 ,   上原伸一 ,   菅原光雄 ,   石戸谷忻一

ページ範囲:P.697 - P.702

 基底細胞癌の臨床像は多種多様であり,多数の分類法が提唱されている.我々は稀有な臨床像を呈する基底細胞癌の3例を相次いで経験したので報告する.1例は皮膚面より有茎性に突出し,赤色の肉芽面を呈する肉芽腫様腫瘤を形成し,1例は線状の浅い潰瘍と瘢痕からなるEpitheliomaPlanum cicatricansに相当するもの,さらに1例は褐紫黒色局面よりなり,一見ボーエン病様臨床像を呈するもので,いずれも組織学的に基底細胞癌と判明したものである.

悪性黒色腫を生じた多発性境界母斑

著者: 池上隆彦 ,   鈴木伸典 ,   中野和子

ページ範囲:P.703 - P.708

 境界母斑は皮膚および皮膚粘膜移行部において,どこにでも分布しうるが,多くの場合,複合母斑の初期発展段階としての比較的一時的な状態であり,小児にのみ見られ,例外的な部位は手掌,足蹠および陰部で,そこでは小児とともに成人でも,組織学的にみられる(母斑)細胞型母斑の普通の病型であるとされている.
 最近,著者らは27歳男子で,悪性黒色腫とともに多発性散在性に境界母斑が存在した1例を経験した.すなわち,患者のほぼ全身に多数の点状色素斑を認め,体部,四肢についてはすべて,合計108の点状色素斑を組織学的に検索したところ,その88が境界母斑であり,またlentigo simplexから境界母斑の発生を思わせる所見も得た.患者は受診の3年前に悪性黒色腫を生じたと同部に,同様点状色素斑が存在したことは写真上明らかであつた.

異所性に発生したBlack heelの1例

著者: 東順子 ,   須貝哲郎 ,   山本哲雄

ページ範囲:P.709 - P.712

 踵に黒褐色点状皮疹が集簇性に生じる疾患がBazex1)によつてPseudochromidrose plantaireとして1962年にはじめて報告され,DegosとCiva-tte2)は同じ症状を1963年にPseudochromidroseeccrine intra-corneeという病名で報告している.また1965年には,KirtonとPrice3)により同一疾患と考えられるものが,black heelという病名で報告され,Rookら4)の編集したTextbook ofDermatologyにはblack heelという病名が採用され,同書では本症が踵にのみ生じることと,運動競技種目,靴,靴下等の種類に関係なく運動後に発生し,あたかも伝染性疾患のように集団発生がみられることに疑問が提出されている.
 最近,われわれは,black heelと臨床的にも,組織学的にも同一と考えられる症例で,皮疹を手掌にのみ生じた例を経験したので,ここに報告し,本症の発生機序について考察を加えた.

Oral Florid Papillomatosisの1例

著者: 相模成一郎

ページ範囲:P.713 - P.716

 有棘細胞の増殖を伴う乳頭腫(squamous cellpapilloma)が口腔粘膜や喉頭粘膜に多発した場合をoral, laryngeal florid paillomatosis (以下,FPと略記する)と呼ばれてきた1).FPの臨床的特徴は多発した乳頭腫が融合することと剔出後よく再発することであり,その発症原因としてウィルス説やホルモン説があげられている.しかしこれらの誘因についての実証はない.FPは癌前駆症であるとの報告2)3)もあるが,本症が初めて記載1)されて以来一般に良性腫瘍であるとの報告が多い4)〜6).ことに,電顕による検索ではFPと有棘細胞癌との間には形態的相異が明らかにされており,臨床的にも転移病巣をもつている症例の記載はない.
 著者はFPに該当する症例を経験したのでここに記録し,ブレオマイシンによる治療成績を付記して些かFPに対して私見を述べたい.

論説

ムコ多糖蛋白複合体について

著者: 桂暢彦

ページ範囲:P.717 - P.722

 ムコ多糖が結合組織の基質として静的に存在しているときは,すべて特有の蛋白質コアーと共有結合した「ムコ多糖蛋白複合体」として存在すると考えられている.しかしムコ多糖と称せられる物質群の生理機能を分子レベルで論ずるにはなお十分な材料はなく,著者自身,どこから手をつけてよいやら暗中模索の状態である.生命現象を扱う多くの分野で生化学的手段による開拓はかなり進み,日常的な手法として常識化しつつあるが,動的な生命現象とその病変を理解するためには物理化学的手段による開拓が今後の課題であると思う.皮膚などの結合組織は筋や脳などのようにそのままでは多くの物理化学者の興味をひきつけないであろうから,われわれは努めて物理化学者に興味ある問題を提起し,より多くの研究者のこの分野への参加を促すことが責務であろう.このような理由からムコ多糖蛋白複合体(複合体と略す)の生化学については概略を述べるにとどめ,高分子電解質としての見方が結合組織の種々の現象を理解するためにどのようにアプローチできるかを探つてみたいと思う.しかし,筆者は物理化学の専門家ではないのでシロウトの解説であることを断つておかねばならない.

ムコ多糖の構造と同定法

著者: 瀬野信子

ページ範囲:P.723 - P.731

 ムコ多糖(mucopolysaccharide)という名称はK.Meyer1)によつて初めて用いられ,古くからムチンとかムコイドと呼ばれていた粘稠な動物高分子物質が,いずれもアミノ糖を含むことに注目し,アミノ糖を含む複合多糖体に対して名付けられた,ムコ多糖のうち,化学的によく研究されているのは酸性基をもつ酸性ムコ多糖(狭義のムコ多糖)で,硫酸基の有無によつて非硫酸化ムコ多糖と硫酸化ムコ多糖に分類される(表1).
 これらのムコ多糖は動物の結合組織の基質および体液中に多量に存在し,動物の形態形成にあずかり,外部からの衝撃から保護し,また細胞間を移動する水分や電解質の調節および石灰化に関与していると考えられる.このほかヘパリンのように血液凝固阻止作用や脂血清澄作用をもち,臨床上用いられているものもある.

駆梅治療中のペニシリンショック様発作について

著者: 皆見省吾

ページ範囲:P.733 - P.735

 ペニシリンショックは今日は以前ほど多くはないように思うが,それでもその起る可能性は充分にある.この発作は誠に嫌な症状で,一度これに遭遇するともう二度とペニシリンを使う気がしないという人もある.しかしペニシリン(PC)はよい薬であるためわれわれは毎日淋疾や化膿症に対してこわごわ使用しており,その前に必ず単刺皮内反応を行つておる.この反応で紅斑が径1cmをこゆれば注射を控えるが,陰性の場合には障害はないように思う.しかし絶対的に安全とはいえないし,皮疹などを起こすこともあるが,大体の目安としておる.
 このごろ駆梅療法についてサルバルサンなどは使用しないでPCなどに主力をおく考えが多いように思われ,サルバルサン(サ剤)の製造も中止されるらしいが,わたしはそのある間は使用することにしている.PCやバイシリン(BC)もわたしは使用しておるが,そのショック症状には常に注意しておる,ただし治療の初めにはなんら副作用を起さないので安心して使用しておるとかなり注射したのちにショック様症状を起すことがある.これをショックというべきか否やは確かではないが,これに類似するものである.その例をあげてみたいと思う.

薬剤

二重盲検法によるドレニゾンテープの治験

著者: 山田実 ,   佐藤吉昭 ,   滝野長平 ,   入交敏勝 ,   小宮勉 ,   宮崎和広 ,   大熊守也 ,   大滝倫子 ,   山口淳子 ,   大川原脩介

ページ範囲:P.737 - P.745

 このたび我々は,従来の密封包帯法をより簡易に施行する目的で開発された副腎皮質ホルモンの外用粘着テープ(LT−86,ドレニゾンテープ)を臨床に応用する機会を得たので,この新しい薬剤が皮膚疾患に対してどのような薬効を示すかを,double blind controlled trialにより検討を行なつた.
 あわせて本疾患における薬効検定法の問題点についても検討を行なつたので報告する.

印象記

第71回日本皮膚科学会総会ならびに学術大会

著者: 加藤吉策

ページ範囲:P.746 - P.749

 昭和47年3月15日,山陽新幹線が開通し,岡山駅は新幹線の発着駅となつた.第71回日本皮膚科学会総会ならびに学術大会は,この岡山市で,岡山大学谷奥喜平教授を会頭として4月21日,22日,23日の3日間にわたり開催された.会場は旭川にかかを相生橋のものと岡山衛生会館である.対岸には名城烏城が望まれ,川州の中には日本三名園の一つ,後楽園がよこたわるという絶景の地である.会期3日間は好天にめぐまれ,新緑は目にしみるように鮮やかだつた.学会の疲れをいやす会員のの姿が,また旧交を暖めあう会員の姿がこの新緑の中に点在し,川面の輝きの中に影を作つていた.
 参会費2,500円と引換えに名礼を受取り学会の人となる.会員は続々と参集し,1000名を越える大学会となつた.交通の便がよくなつたとはいえ,1000名以上といえば皮膚科学会全会員の約1/3にあたる会員が参加したことになる.まことに御同慶にたえ次いところである.

皮膚科学の流れ 人と業績・27

Caesar BoeckとJean-Louis Brocq

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.750 - P.753

Caesar Boeck
 Cacsar Peter Moeller Boeckは1845年9月28日にノルウェーのLierで生まれた.クリスチャニア(オスロ)の医学校を卒業した後,数年間一般医となつていた.1874年にはヨーロッパ大陸におもむき,特にウィーンにおいて1年間皮膚科学と組織学とを勉学した.クリスチャニアに帰つてRikhospitaletの医員となつたが,やがてノルウェー大学のスタッフに加えられた.1895年には皮膚科学教授に就任した.
 彼はきわ立つた教師であるとともに,非凡な臨床家であり,特に診断の名手であつた.彼のクリニックが非常に人気をよんだのは,一つには,彼の熱心さが評判となり,治療の巧妙さが喧伝されたからであつた.著者としては多くの外国雑誌に100を越える原著を発表したが,そのうちもつともよく知られているのは結核疹およびザルコイドージスに関する研究である.彼は,原因不明の大きな一群の皮膚病と結核との関係を明瞭に見通した最初の人であつた.1880年に彼は丘疹性壊疽性結核疹の1例を記載したが,それは結核疹を組織学的に特微づけたものであった.後年において彼はその研究的才能を主としてザルコイドージスに集中した.ザルコイドージスに関する彼の原著は,ノルウェーとアメリカとの雑誌に同時に掲載された.下に和訳する原著は,アメリカの雑誌にのつたものである.その論文に記載されているザルコイドージスの患者は,80歳まで生きのびて,1940年に死亡し(Boeckの死去は1917年)剖検に付せられたが,Boeckが治療して治癒と判定したザルコイドージスの本例においては,その病変の痕跡だに見付けられなかつた.

Summaries in Arch. Derm.

Summaries in ARCHIVES OF DERMATOLOGY 105:2, February 1972/Summaries in ARCHIVES OF DERMATOLOGY 105:3, March 1972

ページ範囲:P.754 - P.759

 The original source of publication: Reprinted from ARCHIVES OF DERMATOLOGY, Vol. 105, Number 2; pages 189, 197, 208, 213, 216, 222 229, 233, 236, 244, 247, 249, 252, 256 and 263 February 1972 Copyright 1972 AMA.

外国文献

外国文献—専門誌より

ページ範囲:P.760 - P.761

THE BRITISH JOURNAL OF DERMATOLOGY 85: 4, 1971
Juvenile Dermatitis Herpetiformis in the Light of Immunofluorescence Studies: S. Jablonska, T. Chorzelski, E. H. Beutner and M. Blaszczyk 307
Serum Complement (C'3) and Immunoglobulin Levels in Dermatitis Herpetiformis: N. G. Fraser, J. S. Beck and F. Albert-Recht 314

〈原著論文抄録〉

先天性皮膚欠損を伴つた表皮水疱症の1例,他

著者: 吉永和恵 ,   青木寛

ページ範囲:P.763 - P.763

 患者は生後2日,男子.生下時体重3020g.満期安産であり,妊娠期間中及およ分娩時異常を認めず.WaR陰性.出生時すでに右下腿から足にかけて皮膚欠損があつた.衣類がさわると痛がりその為か外反足様変位を呈する.初診時所見,右膝蓋ほぼ全面から下腿伸側次で足背にかけて帯状に走る境界明確な潰瘍を示す.舌背と歯肉の一部に糜爛を形成す.レントゲン所見で下腿脛骨長は患側が短い.臨床経過,生後33日目にほぼ上皮形成は完了したが,日を追つて機械的圧迫の加わる部に水疱や糜爛の形成が明らかとなつてきた.生後20日頃から両手,足の爪甲が白濁,肥厚してきた.270日目来院時は殆んど瘢痕を残さず治癒し,下肢骨長に有位の差がなく,爪の異常と新たに指趾背面に稗粒腫および疣贅様丘疹が出現した.家系内に4代に亘り,爪の変形,水疱形成,皮膚欠損等がかなりの頻度に認められたことから優性栄養障害型表皮水疱症の一型と考え,文献的に考察した.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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