文献詳細
論説
文献概要
ムコ多糖が結合組織の基質として静的に存在しているときは,すべて特有の蛋白質コアーと共有結合した「ムコ多糖蛋白複合体」として存在すると考えられている.しかしムコ多糖と称せられる物質群の生理機能を分子レベルで論ずるにはなお十分な材料はなく,著者自身,どこから手をつけてよいやら暗中模索の状態である.生命現象を扱う多くの分野で生化学的手段による開拓はかなり進み,日常的な手法として常識化しつつあるが,動的な生命現象とその病変を理解するためには物理化学的手段による開拓が今後の課題であると思う.皮膚などの結合組織は筋や脳などのようにそのままでは多くの物理化学者の興味をひきつけないであろうから,われわれは努めて物理化学者に興味ある問題を提起し,より多くの研究者のこの分野への参加を促すことが責務であろう.このような理由からムコ多糖蛋白複合体(複合体と略す)の生化学については概略を述べるにとどめ,高分子電解質としての見方が結合組織の種々の現象を理解するためにどのようにアプローチできるかを探つてみたいと思う.しかし,筆者は物理化学の専門家ではないのでシロウトの解説であることを断つておかねばならない.
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