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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科27巻1号

1973年01月発行

雑誌目次

図譜・362

CUTIS MARMORATA TELANGIECTATICA CONGENITA:VAN LOHUIZEN SYNDROME

著者: 加藤友衛

ページ範囲:P.6 - P.7

症例 18歳,女子.
初診 1971年8月4日

綜説

羊毛ケラチンの微細構造

著者: 近土隆

ページ範囲:P.9 - P.14

 ケラチンは,脊椎動物の表皮およびそれから外に向つて発達した組織(角,爪,体毛,羽毛など)で適度の強度や弾性が要求される部分を構成する組織たん白質として知られている.化学分析的には,シスチンの含有量が他のたん白質に比べて高いことが特徴である.シスチンの大部分は,ペプチド鎖間にまたがり,隣接分子をジサルファイド架橋によつて結びつける役割を果たしている.これが構造全体を強化するように働いていることはほぼ間違いないところである.またケラチンは,加硫ゴムとならんで,架橋高分子の異型として,高分子構造物性研究者にとつても,きわめて魅力あるたん白質である,ケラチン分子中でのアミノ酸の配列の順序(1次構造)については1部のフラクションを除いて,ほとんど判つていない,本稿では主として羊毛ケラチンの2次以上の構造について筆者の見聞する範囲で概説したい.

微細構造よりみた毛組織のケラチン化とケラチン

著者: 橋本謙

ページ範囲:P.15 - P.23

 ヒトの成長期anagenの毛組織は,A.毛hair──毛髄medulla(Md),毛皮質cortex(Cx),毛小皮cuticle(CH)──,B.毛包hair follicle(毛根鞘root sheath)──1.上皮性毛根鞘……i.内毛根鞘inner root sheath,鞘小皮sheath cuticle(Cs),ハックスレー層Huxlcy layer(Hx)・ヘンレ層Henle layer (HE)──ii.外毛根鞘outer rootsheath……2.結合織性毛根鞘からなる8−a,b)
 このうちで,ケラチン化(角化)***するのは,毛皮質,毛小皮および内毛根鞘(3層)の3層で,外毛根鞘は脂腺開口部以下では角化しない.なお,毛髄については不明である.

毛組織のケラチン化およびケラチンに関する討論

著者: 橋本謙

ページ範囲:P.24 - P.26

 橋本(昭和大)では,毛組織のケラチン化およびケラチンについて討論を行ないます.
 清寺(東北大)毛の場合は,表皮と異つて,形式のちがう細胞が各々ちがつたfunctionをしながら,しかも最終的には同じ角化のpatternをとるということが,どうもわからなかつたのですが,只今の橋本先生の説明ですと,毛皮質,毛小皮あるいは内毛根鞘がつくるpatternはそれぞれ異なるのですね.

一頁講座

ヘキサクロロフェン(Hexachlorophene),他

著者: 籏野倫

ページ範囲:P.27 - P.27

 先般フランスでヘキサクロロフェンを含有する外用剤が問題になり,木邦のジャーナリズムもいち早くこれをとりあげて紙上をにぎわしたが最近は本剤にかぎらずいろいろな薬剤が問題に歳つている.今回はこのヘキサクロロフェンに焦点を介わせてその問題点をさぐつてみたい.
 ヘキサクロロフェン(以下「へ」と略)は皮膚の殺菌,消毒,洗浄を目的とする外用剤として浴用剤(粉剤0.025〜3PPM),腋臭防止剤(粉剤1%,液剤0.05〜0.5%軟膏0.1〜0.5%,エアゾル剤0.005〜12.5%スティック0.5%),いわゆる薬用化粧品(粉剤0.15〜0.3%,液剤0.08%,軟膏0.2〜0.5%,石鹸0.5〜3%,(固型),0.25%(液))などの部外品のほか,痔疾剤(軟膏0.1〜0.74%,坐剤2.5〜22mg/個),含嗽剤(液剤0.075%),創傷保護剤などの医薬品の中に種々の濃度の割に含まれたものが多方面に用いられてその効果を発揮してきた.

原著

右半身にのみ皮膚症状を現わしたレックリングハウゼン病

著者: 岡部省吾 ,   西脇宗一

ページ範囲:P.29 - P.36

 症例は,47歳の女子である.家族歴では,両親8名の同胞,2名の子に同症を認めない.症状は皮膚の色素斑と腫瘍であり,眼,耳,骨,脳波に異常所見を認めない.諸検査成績でも特記すべきことはない.腫瘍の組織は楕円形,紡錘形の核と波状に平行に走る原形質がみられ典型的Neurofibrom型である,この症例は皮疹が知覚神経のC4〜T4の範囲に限られ,しかも右半身に限局し,比較的軽症であり,家族に同症を認めない点が特徴的である.レックリングハウゼン病は性細胞の突然変異により新たな患者を生じ,しかも優性遺伝により高い浸透度で遺伝していくが,体細胞にも同様の突然変異が起こつて,この細胞から生じた細胞にのみ変異を伝えていく.このようにして生じた個体がモザイクで,植物の「枝変り」が好例であるが,本論文の症例は「レックリングハウゼン病のモザイク」とみなされる.モザイクは性腺を含む身体の一部に変異が及ばない限り遺伝しない.

爪甲下黒色腫(subungual melanoma)の2例

著者: 伊藤一弘 ,   竹田勇士 ,   山田和宏

ページ範囲:P.37 - P.44

 58歳男子の左第1趾,および50歳女子の左拇指に発生した爪甲下黒色腫の2例を報告した.
 第1例は,全身転移および高度の貧血にて死亡し,第2例は左拇指末節切断後,現在まで3年6カ月間,局所再発あるいは遠隔転移を認めず健在である.あわせて悪性黒色腫中まれである本症の統計的観察,鑑別診断,治療につき述べた.

実験的DNCB接触皮膚炎における放射性コルチコステロイド軟膏の経皮吸収について

著者: 清水正之

ページ範囲:P.45 - P.51

 DNBC感作によるモルモットに対して,0.25%,0.1%DNCBアルコール溶液0.05mlを腹部皮膚に滴下し,惹起反応をおこない,この被検部に12時間後より,0.025%放射性fluocinolon acctonideを含有する油脂性軟膏と乳剤性軟膏を塗布した.塗布6時間後,12時間後,36時間後に皮膚生検し,組織学的に表皮湿疹反応部位のコ剤の経皮吸収の状態について検討した.
 乳剤性軟膏塗布ではコ剤塗布6時間後に,経表皮的には角質屑より,一部有棘層へ,経毛嚢的には毛嚢壁をこえて,真皮結合織内に感光顆粒の存在をみとめた.12時間後には角質層とその直下の真皮浅層に感光顆粒をみとめ,第2のbarrierが表皮湿疹反応により破壊されたため,角質層に進入したコ剤はすみやかに有棘層をこえて,真皮に到達すると推定できる所見をえた.しかしコ剤の表皮吸収量は少ないと考えられる.一方油脂性軟膏ではコ剤は多く経毛嚢的に進入したと思われる部分でも,なお表皮性毛嚢壁にとどまる所見をえたにまた正常皮膚にコ剤塗布後惹起反応を施行した群では,コ剤は表皮内に主つたくみとめず,モルモット皮膚でコ剤塗布後惹起反応阻止効果をみようとするこころみは困難であると考えられる所見をえた.

Dermatophyte Test Medium(DTM)による真菌培養成績

著者: 境繁雄

ページ範囲:P.53 - P.58

 皮膚糸状菌のアルカリ産生能を利用し,培地にpH指示剤を加え,さらに抗生物質,cycloheximideを添加して雑菌の発育を阻止し,皮膚糸状菌の発育により生ずる培地の着色を指標として皮膚糸状菌の発育を判定するDermatophyte Test Mediumを作製し,193組の臨床材料についてSabouraud glucose agarと比較した.前者では細菌,腐生真菌による汚染は強く阻止されたが,皮膚糸状菌の発育は抑制されず,後者に比し皮膚糸状菌,カンジダをより多く分離できた.pH指示剤の発色を指標とした場合,培地の着色をみた118例中,細菌によるfalse positiveの着色が5例あつたが,皮膚糸状菌のfalse negativeの無着色はなく,約96%の高率で皮膚糸状菌の判定が可能であつた.しかしfalse positiveの着色をきたす集落の形態は皮膚糸状菌のそれとは区別が容易であり,最少の真菌学的知識により皮膚糸状菌をかなり正確に判定できると思われた.なお,カンジダによる着色は2週間以内では起こらず,皮膚糸状菌の発育は一般にDermatophyteTest Mediumにおいて速かつた.

蠣殻状乾癬の1例

著者: 川上寛子

ページ範囲:P.59 - P.62

 43歳,男子.約3年来,躯幹に,帯黄緑色ないし黒褐色,円錐状に隆起する年輪様痂皮を附す皮疹を生じ,寛解,再燃を繰り返えしていた.30歳時より,現在に至るまで,腰痛を訴えているが,これに関しては,強直性脊椎炎の診断を受けている.臨床検査成績におげる,赤沈値の亢進,アルカリホスファターゼ値上昇,γ-グロブリン増加,CRP陽性の諸変化は,強直性脊椎炎によるものと判断している.組織像は,滲出傾向の強い乾癬の像を呈している.なお,関節症性乾癬とは,ワーラー・ローズ反応陽性であることにより鑑別したに典型的蠣殻状乾癬の1例を報告し,簡単に文献的考察を加えた.

講座

角化症

著者: 長島正治

ページ範囲:P.63 - P.73

 角質肥厚を主要な変化とする一群の皮膚疾患は一般に角化症(Keratosis)と呼ばれ,このうち炎症症状が顕著で角質肥厚と同時に潮紅を伴うものは通常炎症性角化症といわれている.角化症はこのほか遺伝性の有無により,遺伝性あるいは非遺伝性角化症として分類されることもあり,また毛嚢性角化を主徴とするものは毛嚢性角化症としても一括される.
 ここではこれらの分類にとらわれず,次の数種の疾患を中心に,関連諸疾患もこれに加えて,その臨床と病理組織を解説する.

薬剤

エンラマイシンによる梅毒治療—第2報

著者: 小野田洋一 ,   松葉修

ページ範囲:P.75 - P.79

 エンラマイシン(ERM)はPolypeptide型の新しい抗生物質であり,1日1回の筋肉内の注射をくり返すことによって,他の臓器に影響を与えることなく1),次第に血中濃度が高まること2),梅毒Treponemaに対して強い発育阻止能力をもつていることが判明している3)
 今回はERMの250mgまたは200mgの啓筋内注射をくり返し,量的差異によって生じる血中濃度の推移と持続状況を検討し,外来で駆梅を行なうときのERMの適正な注射量と注射法を考えることに重点をおいた.あわせてさらに梅毒治療症例を追加し,同時に妊婦にERMを使用した場合の新生児に対する影響と新生児の梅毒抗体の推移についても観察し,ERMの効果を検討した.

連載 皮膚科学に貢献した医学者たち・1

皮膚科学に貢献した医学者たち

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.80 - P.83

はじめに
 昭和45年から47年にわたつて"皮膚科学の流れ—人と業績—"と題する小文を本誌に連載した.ここで取扱つたのは,19世紀の初期から20世紀初めに至る約100年間で,この期間は,近代皮膚科学として創始されたこの学問が多くの学者によつて進歩し,やがて現代皮膚科学として樹立され,医学の一分科として不動の地位を獲得した時期に当たる.
 "皮膚科学の流れ"においては,このほぼ1世紀にわたつて,皮膚科学を科学的医学の一分野として発展させるのに著しく貢献した皮膚科学専門の学者を選び出したが,それはもちろん主として欧米における学者であつた.しかし,その名は現今に至るまで何らかの意味で引き合いに出されているので,そのほとんどは読者の記憶にあつたことと思う.ところが,名だけは熟知の学者でも,その人がどんな経歴や人柄であるかは,多くの読者には未知と思い,各人の略伝を添えて,その人物を知るよすがとした.この"皮膚科学の流れ"はほぼ3年間連載したが,現代皮膚科学のわが国への輸入まで稿を進めたので,一応ここで打切ることにした.その最後は"土肥慶蔵先生"で,昭和47年12月号の誌上であつた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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