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文献概要
原著
右半身にのみ皮膚症状を現わしたレックリングハウゼン病
著者: 岡部省吾1 西脇宗一1
所属機関: 1関東中央病院皮膚科
ページ範囲:P.29 - P.36
文献購入ページに移動 症例は,47歳の女子である.家族歴では,両親8名の同胞,2名の子に同症を認めない.症状は皮膚の色素斑と腫瘍であり,眼,耳,骨,脳波に異常所見を認めない.諸検査成績でも特記すべきことはない.腫瘍の組織は楕円形,紡錘形の核と波状に平行に走る原形質がみられ典型的Neurofibrom型である,この症例は皮疹が知覚神経のC4〜T4の範囲に限られ,しかも右半身に限局し,比較的軽症であり,家族に同症を認めない点が特徴的である.レックリングハウゼン病は性細胞の突然変異により新たな患者を生じ,しかも優性遺伝により高い浸透度で遺伝していくが,体細胞にも同様の突然変異が起こつて,この細胞から生じた細胞にのみ変異を伝えていく.このようにして生じた個体がモザイクで,植物の「枝変り」が好例であるが,本論文の症例は「レックリングハウゼン病のモザイク」とみなされる.モザイクは性腺を含む身体の一部に変異が及ばない限り遺伝しない.
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