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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科27巻10号

1973年10月発行

雑誌目次

図譜・371

顔面に生じた浅在性白癬

著者: 原田敬之 ,   西川武二

ページ範囲:P.834 - P.835

<症例1> 65歳,男子
初診 昭和47年10月3日

原著

腹部大動脈瘤を伴つたLassueur-Graham Little症候群

著者: 岡本昭二 ,   宮内好正 ,   香西襄

ページ範囲:P.837 - P.844

 18歳,男.毛嚢一致性角化性丘疹,被髪頭部の脱毛斑,および腋毛・陰毛の発育不全を主訴として来院,皮膚所見は躯幹・四肢などに播種状のlichen spinulosus様皮疹,被髪頭部のpseudopelade様脱毛,および腋窩・陰部の非瘢痕性脱毛というLassueur-Graham Little症候群の3徴候をそなえていた.皮疹の組織像は腹部・腋窩では毛嚢性角化で,頭部脱毛斑では瘢痕性萎縮の所見を示した.2年後に腹部大動脈瘤のため,大動脈瘤摘出および再建術を受けた.大動脈壁の組織像には筋層および弾力線維層の断裂と消失を認めた.本症候群につき文献例を集めて検討すると,扁平苔癬ないしその異型に由来するものと,一種の毛嚢性角化症に由来するものがあり,本症例は後者に相当する.さらに,本報告例においては本症候群と腹部大動脈瘤が合併しているが,その理由は明らかでない.

多発性骨髄腫に伴う全身性アミロイド症の1例

著者: 滝沢清宏

ページ範囲:P.845 - P.854

 アミロイド症の中で本邦では未だ稀とされるprimary systemic amyloidosisの1例につきその概略を述べた.
 その際,診断の根拠となる組織内アミロイドの同定を,従来文献上記載されている組織化学的,偏光顕微鏡的,電顕的方法で行ないこれを確認した.
 一方,自験例はかなりの確実さで多発性骨髄腫を有していると思われる.多発性骨髄腫の本質が,形質細胞の腫瘍性増殖にあることをふまえ,この疾患がアミロイド症といかなる関連を有するかを文献的に考察した.

マイボーム腺癌の1例—特発性血小板減少症を伴つた

著者: 今井清治 ,   池田重雄

ページ範囲:P.855 - P.861

 62歳,女性.初診の約4年前,右上眼瞼に「ものもらい」様のものを生じ,某医のもとで手術を受けたが,3カ月後に再発,以後腫瘍は漸次増大.初診時,腫瘍は拇指頭大,不整形,表面皮膚は平滑だが凹凸不平に隆起した結節性腫瘤で軟骨様硬,被覆皮膚とは大部分で可動性を有し,部分的に黄白色を呈す.圧痛なし.結膜面でも腫瘍は凹凸不整に隆起している.領域リンパ節は触れ得ず.検査所見で白血球増多,血小板減少があり,特発性血小板減少症を指摘されている.治療は全摘出後,全層植皮術.本腫瘍は解剖学的に瞼板より生じており,組織学的に腫瘍巣は胞巣状を呈していて,腫瘍巣の一部に脂腺様構造を認め,腫瘍細胞には細胞の大小不同,核の異型性,核分裂像がみられた.また,嚢腫様構造を呈する腫瘍巣もあり,ズダン皿染色で陽性に染まる脂肪球が特に胞体の明るい細胞の部分に顕著に認められた.マ腺癌は皮膚科領域での報告は少いが,その診断,治療には慎重を要する.

SLE患者に発生したPyridinolcarbamate(Anginin)による薬疹

著者: 東順子 ,   須貝哲郎

ページ範囲:P.863 - P.868

 27歳,女子.SLEのレイノー症状に対してPyridinolcarbamate(Anginin)を投与していたところ,39℃の熱発とともに全身に皮疹を生じ,内服誘発テストにより本剤によることが確認されたので報告する.薬疹発生前後の本剤内服方法は,Pyridinolcarbamate 750mg 4日間内服,6日間休薬,250mg内服後に皮疹が出現,6日後皮疹消褪,9日後ふたたび250mg内服,発熱頭痛を伴なう発疹を生じ入院.白血球数増加,CRP陽性,LE細胞陽性,尿蛋白陽性,尿沈渣中に赤血球多数出現している.肝機能検査異常なし.一般状態改善,皮疹もほぼ消失した後(本剤最終内服日より12日後)Pyridinolcarbamate 25mg(1/10錠)投与するのみで,発熱頭痛の全身症状を伴なう皮疹の再現,白血球数増加,CRP陽性化をみたことは感作の上昇傾向を示唆する.自験例に示すように薬剤の間歇的投与が感作成立を促がし,さらに感作状態を上昇させることより本剤による中毒性肝炎患者において減感作を試みた例もあるが危険を伴なう可能性が大である.なお,本剤内服に続く発疹の報告は数例あるが,内服誘発テストにより確認した例はないようである.

手術創周辺に多発し,コルチコステロイドの奏効したいわゆる血管拡張性肉芽腫の1例

著者: 安里哲時 ,   原田種雄 ,   佐川禎昭 ,   重見文雄

ページ範囲:P.869 - P.873

 34歳の家婦で鼻根部に発生した血管拡張性肉芽腫と思われる初発腫瘤の摘出術を受けた後に,術創の周辺から左上眼瞼,眉間にかけ,健常皮膚に腫瘤が多発したいわゆる血管拡張性肉芽腫の1症例を報告した.健常皮膚に多発した例は本邦で第3例目にあたる.また本症例に0.24% Betamethasone valerate creamのODTを施行し期待する治効をおさめえたので附記した.

猫より感染したMicrosporum canisによる皮膚白癬

著者: 木下浩彰 ,   桧皮谷清 ,   重見文雄 ,   久保艶尚 ,   伊川裕

ページ範囲:P.875 - P.878

要約 患者は24歳,家婦.徳島市在住,ペルシャ猫をペットとして飼つていたところ,毳毛部に瘙痒性皮疹が出現した.病巣部,猫よりMicrosporum canisを培養しえた.疹型は斑状小水疱性白癬であつた.

Anthralinによる尋常性乾癬の治療

著者: 水元俊裕 ,   青柳俊 ,   高木章好 ,   村戸克郎 ,   大河原章 ,   高島巌 ,   三浦祐晶

ページ範囲:P.879 - P.892

 Anthralinのすぐれたantipsoriatischer Effektについては,古くから多くの報告がみられる.われわれはFarberらの方法の変法とでもいうべき方法で,0.2%anth-ralin Pasteを入院16例,外来15例,計31例の乾癬患者に使用し,93%強に有効の成績を得た.平均治療日数は入院で14日,外来通院で103目であった.また平均入院日数は40日で,Farbcrらの報告に比べると少しく時日を要するようであった.副作用は,入院,外来の区別なく一様に使用部位の着色および刺激症状がみられたが,全身的には臨床検査成績上異常をみたものは1例もなかつた.さらに本剤の作用機転および副作用の発生機転などについて,文献的に総括した.

一頁講座

毛嚢虫について

著者: 佐藤良夫

ページ範囲:P.862 - P.862

 日常診療上,真菌の直接鏡検は広く行なわれている.筆者の知つているY県のA先生も多忙な開業医ではあるが,真菌検索を少しもいとわずに行なつている一人である.ところが,それと似たような手技である毛嚢虫の検査は,行なわれていることが案外少ないように思われる.
 毛嚢虫の病原性,病原的意義については,現在なお不明なことが多いけれども,毛嚢虫による痤瘡,酒皶,毛瘡,粃糠疹などの症状を示す患者がいることは知られている.そして硫黄剤などの毛嚢虫に対して効果のある薬剤によつてのみ,それらは治癒するものである.

SLEの診断基準

著者: 橋本謙

ページ範囲:P.874 - P.874

 免疫異常疾患として,SLE (急性エリテマトーデス)が注目を集めていることは,いまさらいうまでもないことであるが,これまで,いろいろな診断基準──Jessar et al,Ste-vens et al,Medical Research Co-uncil,Pollak et al,Ropes,太藤教授(岡山大)──が提案されている.
 しかし,各施設が異なつた基準を採用していては,本症の自然歴,治療の評価,疫学的記述などを集計するのに問題があることから,1971年に,the Diagnostic and Therape-utic Criteria Commitee of theAmerican Rheumatism Associationが,新しい分類の基準をprelimi-nary criteriaとして発表している.この基準に到達した分析過程については省略し,原文のまま掲載して参考に供したい.

Ultraviolet Erythema

著者: 佐藤吉昭

ページ範囲:P.893 - P.893

 紫外線のヒト皮膚に対する紅斑効果については,280nmに谷のある曲線がStandard Erythema Curveとして標準化され,長年親しまれてきた(米国照明学会出版のThe St-andard Lighting Guideの最新版であるIES Lighting Handbook,1972を開くと,理由の記載はないが,今なお,Standard Erythema Curveを支持している).ところが,1965年Everettらは新しい形の紅斑効果曲線を報告し,その中で,従来の"Standard"のもとになつた実験は,紅斑反応に関連するいくつかのpa-rameterについての検討が不足していることを指摘した.その後,Fre-ernanら,1966,Crippsら,1970もあいついで新しい形の曲線を報告し,皮膚に対する紫外線の紅斑効果は波長の短いものほど大きく,250〜260nmあたりに最大があつて,310nm近くに向つて漸減するというpatternを示した.別図で対比されているように,この新旧両者の間には,300nmあたりから.急激に下降する点をのぞき,著しい差のあることがわかる.さらに,一見同様な1920〜1930年代の曲線も注意深く比較すると,296.7nmのpeakにおける一致をのぞき,270nm以下,とくに250nmでは大きな開きがみられる.この差につき,これら曲線の報告者の1人であるLuckieshは後日(1946年),当時短波長紫外線のenergy測定が非常に難しかつたこと,また短波長域の紅斑はevanes-centであるため,照射後の判定時間によつてその価が大きく左右されたことを理由にあげ,InternationalCommission on Illuminationでは,これらの価のapproximate averageを用いて標準化したと述べている.
 さて,ではなぜこの標準曲線に対して異論がでてきたのであろうか.Everettら,1969は,"Standard"はいろいろな研究者の部分的なデータと補間によつて合成されたものであり,とくに実験条件の異つたデータを一括処理したことに最大の欠陥があるといい,具体的には照射のan-atomical site,照射野のfield size,光源の種類,放射の分光的純度,判定時間,季節などをその要因としてあげた.事実,実験に用いた光源は主にHg arcで,対象は小人数,部位は主として腕で,field sizeは小さく,観察時間はまちまち,照射時間も30分以上といつた条件でえられた結果であり,定量的なMEDの記載もない.この波長別MEDの絶対値は報告されていたとしても,各国の測定標準に若干の差があるので(わが国でも最近測定原器の目盛移動があつた),現在のものと厳密に比較はできないが,relative effectiveness算出のもとになるものであり,光源の特性や分光的純度と密接な関係があるため,記載のないことは問題であろう.

講座

皮膚癌の治療(4)—化学療法

著者: 石原和之 ,   柳田英夫

ページ範囲:P.895 - P.900

 抗腫瘍薬の歴史は古く,1973年colchicineが登場し,次いで毒ガスであるyperiteを経てnitrogen mustard〔methyl-bis(2-chlorocthyl)amine hydrochloride〕がとり上げられ,1942年Gilman,Philipsらにより悪性淋巴腫にその効果が確かめられた.nitrogen mustardはアルキル化剤で,細胞構成物質に反応してアルキル化反応を行なうもので,かかるものをbiological alkylatingagentといわれ,その作用機序は直接DNA,殊にその構成塩基へのアルキル化反応がおこり,DNAの自然の立体構造にひずみを生じたり,あるいは断裂をおこしてその複製を阻害したりすると考えられている.現在一般に考えられている抗腫瘍剤を列記すると上記の他に代謝拮抗剤(me-tabolite antagonist……腫瘍細胞の代謝に必要なcoenzymeまたはsubstrateに類似する構造をもつ物質をもつて競合させ,代謝反応の過程を阻害するもの),植物成分Calkaloids and other plantconstituents),制癌抗生物質,その他に分けることが出来る.この細目に関しては表1並びに表2に一括した.この様に抗癌剤の種類は極めて多く,また夫々複雑な作用機序を有する.
 また,これらの抗癌剤が単独ではなく,しばしば併用されることにより効果がより高められるという報告も多い.

薬剤

2,3の抗ヒスタミン剤のヒスタミン皮内反応におよぼす影響について

著者: 清水正之 ,   日高義子 ,   竹内隆司

ページ範囲:P.901 - P.906

 成分の異る抗ヒスタミン剤,さらに同一成分を有し,持続型と非持続型と異る薬剤,また異つた製造会社間での同一製品の差を検討する目的で,ヒスタミン,アセチルコリン皮内反応を施行した.抗ヒ剤内服後,対象健康人前腕皮膚に皮内反応をおこない,膨疹面積,紅斑面積を測定し,抗ヒ剤の効果判定にヒスタミン紅斑面積の変動率をあてることが適当であることをみとめた.また対象薬剤とした非持続型のCarbinoxamineが内服4時間後より急速に紅斑抑制効果が減ずるのに反して,持続型のCarbinoxamineは内服9時間後まで強い紅斑抑制効果を持続することをみとめ,経時的に抗ヒ剤の効果を検討するのにも本法が使用できることを確かめた.なお異なつた2社間の同一製品の検討についても,それらの効果の差を確めうることが合わせみとめられた.しかしヒスタミン皮内反応部位の膨疹面積,アセチルコリン皮内反応部位の紅斑,膨疹面積は各症例間に差が大きく,抗ヒ剤の効果判定の方法として,これらの数値を使用するのは適当でないと推論した.

印象記

考える皮膚科学をめざして—第72回日本皮膚科学会

著者: 大久保達也

ページ範囲:P.908 - P.912

 おそらく次回開催地の縁でお鉢が廻つて来たものと思うが,毎年群衆の中の一人として参加している自分が,次の学会事務を担当する身になつてみると,プログラムの編成,会場の位置,大きさ,参加人数,受付のスペース,その処理の方法,会議の進行,スライド映写の具合など,とかく裏方の方に心が配られて,学会の印象を書けといわれても視点が学会の内容そのものより,運営の方法に移動していて,このような学術誌には不適当ではないかとも考えたが,所詮,学会印象記なるものは一種の自慰行為のようなもので,読者の意図するところと合えば良く,合わないでも大きな害とはなるまいと考えてお引受けした次第である.
 いずれの学会においても初日は歯車の動きがギシャグシャして緊迫感のうちに駆動を開始し,徐々にクレセンドして中日に盛上がり,最終日になると峠を越えた安堵感とともに多少浮足立って来るものである.主催側としては何とかして最後までダレることなく会を盛上げて,ワッと終りたいと願われることであろう.そこに学会の運営に対する技術と妙味のようなものを感じられ,一種のゲームのような緊張と期待と祈りのうちに終始されるであろうと推察される.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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