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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科27巻11号

1973年11月発行

雑誌目次

図譜・372

Rhinophyma(鼻瘤)

著者: 松木正義

ページ範囲:P.930 - P.931

患者 岩田某 45歳 男子
初診 昭和41年3月31日

原著

Sweet病(Acute febrile neutrophilic dermatosis)

著者: 小玉肇 ,   吉田彦太郎 ,   荒田次郎 ,   月野木清徳 ,   小野公義 ,   木村恭一

ページ範囲:P.933 - P.941

 Sweet病と診断した5例を報告した.本症は中年以後の女性に多く,多くは上気道感染症が先行する.皮疹は,顔面,頸部および四肢を好発部位とする有痛性隆起性紅斑である.発熱,白血球増加,好中球増加およひ血沈値の促進を伴う.副腎皮質ホルモンが卓効を奏する.組織学的には,真皮の好中球を主とする稠密な細胞浸潤が特徴で,血管炎の像はないとされている.
 自験例では副腎皮質ホルモンのみならず,抗生物質も有効であつた.DDSも有効であるが再発がみられた.1例には組織学的に線維素様変性を伴う血管炎の像がみられた.
 本症の発病には,先行あるいは合併する感染症が重要な役割を果すと考えた.本症を一独立疾患と考えるのが妥当である.

マズラ足から分離したMadurella mycetomi,とくに電子顕微鏡的観察

著者: 上田恵一 ,   外松茂太郎

ページ範囲:P.943 - P.949

 本邦においてみられた58歳男,農夫のマズラ足から得た顆粒を光顕的に,また分離したMadurella mycetomiを培養し電子顕微鏡で観察した.
 顆粒内の菌要素は主として厚膜胞子様の菌体が連結し,分枝し,顆粒の辺縁部に放射線状に伸長していた.
 培養菌苔を電顕1的に観察すると,菌要素に2〜4μの太さで,2〜3μの比較的細い菌体では細胞質内に小器官が多く,3〜4μの太い菌体には空胞が多かつた.菌体は細胞壁で囲まれ,太短く隔壁で境されていた.形質膜内には核,ミトコンドリア,小胞体,大小様々の空胞ないし液胞がみられ,ロゼット形成したグリコゲン顆粒などがみられた.また空胞内には電子密度の高い顆粒がしばしばみられ,本菌に特有のものと思われた.

Mycobacterium marinurn感染症の5例

著者: 山本哲雄 ,   辻卓夫 ,   中尾正敏 ,   奥田茂

ページ範囲:P.951 - P.959

 Mycobacterium marinumは通常皮膚に感染し病巣を生ずるもので,本邦でも近年になつて,おもに皮膚科領域において相次いで報告されるようになつた.筆者らも最近3年間に熱帯魚飼育により感染した5例を経験した.いずれも上肢に肉芽腫性病変を生じ,膿および組織片からの菌培養により診断が確定された.治療としては病巣切除,Rifampicin他の抗結核剤投与あるいは局所温熱療法を試み有効であつた.本症はスポロトリクム症と臨床像が似るため,sporotrichoid mycobacteriosisともいわれるが,治療面においてもスポロトリクム症に有効とされる局所温熱療法が奏効したことは興味深い.

塩酸ピリチオキシンによる扁平苔癬様薬疹—11例の報告

著者: 鍛冶友昭 ,   長井忠 ,   五嶋亜男 ,   白崎幸雄 ,   松本鐐一 ,   国吉光雄 ,   石倉多美子 ,   松原為明

ページ範囲:P.961 - P.969

 塩酸ピリチオキシン内服が原因と考えられる扁平苔癬様薬疹11例を報告した.うら10例の皮疹は臨床的ならびに組織学的に扁平苔癬に一致するものであつた.残りの1例の皮疹は本症の前段階のものと推測された.11例中9例でテストを施行,4例では内服試験で,他の4例では貼付試験で塩酸ピリチオキシンが陽性であつたが,残りの1例では貼付試験陰性.11例すべて,塩酸ピリチオキシン内服中止によつて皮疹は比較的速かに軽快し,2週ないし3か月の間に略治または治癒した.なお参考として,シンナリジン内服中に扁平苔癬様皮疹を生じた若干例を付記した.

Erythrokeratodermia progressiva(進行性紅色角化症)について

著者: 堀口峯生 ,   安田利顕

ページ範囲:P.971 - P.976

 24歳女子で4年来右下腿伸側にはじまつて両側足蹠に続発してきたerythrokeratodermiaの症例である.ほとんど自覚症状がなく,はじめは自然軽快をみ,ある時期に徐々に拡大の傾向を示したが,現在は静止の状態である.組織学的にはacanthosis,表皮突起の不規則な延長,乳頭層から乳頭下層にかけての毛細血管の拡張,蛇行,組織球を主として,円形細胞を混じた細胞浸潤であつた.
 かかる症例は経験が少ないが,文献を検討して,かかる年令に発生し,進行性の経過をとり,四肢に好発しくてるものをerythrokeratodermia progressivaとして一括し,症例の増加に伴つて検討し,さらに分類されるものであるかどうかを考慮するのが妥当であることを述べた.

一頁講座

小児の慢性蕁麻疹,その治療

著者: 山本一哉

ページ範囲:P.942 - P.942

現況
 小児期にみられる蕁麻疹は臨床経過その他種々の面で成人とけ異なるのではないかという考えがある.私共の外来統計上,蕁麻疹類(急性・慢性蕁麻疹,蕁麻疹様苔癬,固定蕁麻疹を含む)は,年問5,000名〜6,000名の新来患者中,患者数では大体第4位にある,しかしながら,慢性蕁麻疹(1ヵ月以上出没し,原因解明困難なもの)となるとその数はあまり多くなく,1971年は21例,1972年は14例が慢性蕁麻疹と診断されたにすぎない.
 この両年度に経験された総計35例の慢性蕁麻疹患者について検討すると,発病は1歳以後であるが,その後は各年代問に患者数の変動はない.性別に4,とくに一定の傾向はない.

DNCB皮膚試験

著者: 設楽篤幸

ページ範囲:P.950 - P.950

 DNGB皮膚試験は細胞性免疫を検索する一手段としてかなり一般に用いられるようになつてきた.
 生体の防禦反応としての免疫現象には体液性免疫(humoral immu-nity)と細胞性免疫(Cellular immu-nity)の2つがある.体液性免疫は近年とくに研究の進歩が著しく,臨床面での応用も簡便となつている.一方,細胞性免疫という用語はかなり日常的なものになりつつあるが,はたして患者に細胞性免疫の低下があるかどうかを調べようとすると,それは体液性免疫の臨床面の応用に比べ,はるかにあつかいにくい面が多く,的確な方法がみいだされていないのが現状である.

リンパ球幼若化現象

著者: 設楽篤幸

ページ範囲:P.960 - P.960

 細胞性免疫に関するin vitroの検査方法として,リンパ球幼若化現象はこれまでに広く検討されつつあるが,本稿では筆者の行なつている本現象の比較的簡単な方法について述べる.
 リンパ球幼若化現象の臨床的応用としては1)染色体分析,2)個体の免疫機能評価,3)組織適合性テスト,4)特異抗原の決定,5)生体の免疫機構解明の手段などがある.われわれはもつぱらPHA (phyto-hemagglutinin)添加により個体の免疫機能評価にもちいている.

講座

乾癬の治療—疹型を中心に

著者: 小嶋理一

ページ範囲:P.977 - P.981

 治療の根本は病因病理をよく理解するにあるということは今更ここで申し上げるまでもない.しかもここで病因病理という言葉を持ち出したということは,この表題の尋常性乾癬という疾患の病因病理というものが非常に複雑であり,多岐にわたり,なかなか理解し難いということをいわんがためである.

薬剤

トリメチルソラーレンによる尋常性白斑の治療

著者: 戸田浄 ,   小堀辰治

ページ範囲:P.983 - P.986

 尋常性白斑の治療はソラーレンの登場で,終つたかと思われていたが,その実施の困難さや薬剤の作用機序が確立されていないということも手伝つて,いまだにいろいろと議論がある.著者らは最近一年間に9例の比較的広範囲に生じた尋常性白斑患者にトリメチルソラーレン(4,5',8-trimethylpsoralen:TMP)を内服させ,その後人工光源,ブラックライトで光線照射を行いよい結果を得ているので報告する.
 Fitzpatrickらによると,TMPの治療では日光が最良であるといつているが1),われわれの経験では,必ずしも日光浴の必要はなく,340nmを中心とする長波長紫外線を発生するブラックライトで充分である.このことは実験的にも裏付けすることができた.われわれの実施したこの方法は治療が簡便であり,誰にでも夜間容易に治療ができ,日中の外出も自由にでき,通勤通学をしているものも広く利用できる方法であることが最大の利点である.

尋常性痤瘡に対する低濃度(0.01%および0.02%)ビタミンA酸乳剤性ローションの効果

著者: 加藤吉策

ページ範囲:P.987 - P.992

 近年,VA酸外用剤は,尋常性痤瘡にすぐれた効果をもつことがみとめられている.しかし,従来使用されている0.1%あるいは0.05%の濃度では刺激症状が頻発し,しばしば治療の中止をみている.一方,尋常性痤瘡の治療には,既存面皰を早期に治癒せしめることともに,新面皰の形成を阻止することも重要な点である.
 そこで今回は,低濃度(0.02%および0.01%)にして,これを長期使用して治療効果を検討した.0.02%を26例に,0.01%を88例に使用した結果,いずれの濃度においても,刺激症状が少なく,使用しやすくなり,かつすぐれた治効をうることが出来た.また試みた12例全例に0.01%による面皰再発阻止効果をみとめた.0.02%と0.01%の優劣については,今後の検討をまちたい.

連載 皮膚科学に貢献した医学者たち・7

紅色陰癬

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.993 - P.997

1.最初の記載者
 Max Burchardtは1831年1月15日ポメラニア(注1)のナウガルト(Naugard)で生まれた.予備教育を終えた後,軍医学校でもあつたベルリンのフリートリヒ・ヴィルヘルム研究所(Friedrich-Wilhelms-lnstitut)で医学の勉強を始めた.そして1855年に腹水に関する論文を提出して,学位をとつた.それに次ぐ20年間,彼は多くのいろいろの地位に軍医として歴任した.そして一生涯,軍陣医学に活発な関心を持ち続けた.1862年彼はイギリスに渡つて,リスター(Lister)の帰依者となり,防腐的外科学説を最初に信奉した者のひとりであつた.ドイツに帰つてからは,彼はこの手技の強力な支持者となつた.
 (注1) Pomerania.ポーランドのバルト海沿岸地方.当時はドイツ領でPommernといつた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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