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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科27巻2号

1973年02月発行

雑誌目次

図譜・363

PITTED KERATOLYSIS

著者: 山本哲雄 ,   中尾正敏

ページ範囲:P.102 - P.103

〔第1例〕 19歳男子,工員
初診 昭和47年5月8日

綜説

正常人上皮の角化

著者: 宮崎寛明

ページ範囲:P.105 - P.110

 角化(Keratinization)とは上皮細胞の持つ最も重要な機能である.上皮基底細胞は分裂により有棘細胞をつくる.有棘細胞は上方に赴くにつれて,次第に皮膚表面に対して楕円形に形を変えながら,顆粒細胞に変り,遂に死滅して核その他の細胞内構造を失い,ケラチンでみたされた扁平な角質細胞に変化する.光学顕微鏡で観察すれば,最後の顆粒層から角層への移行が,きわめて急激唐突な変化として目にうつる.しかしながら角化は基底細胞内からすでに始まり,上皮の下方から上方へ向うゆるやかな細胞の流れの中に,次第に完熟して行く一つの分化過程であるといえる.
 以下電子顕微鏡レベルでの角化について大体を述べることとする.

皮膚の病的角化

著者: 広根孝衞

ページ範囲:P.111 - P.118

 種々の角化異常症において,3種の病的な角化,すなわち角質増殖(hyperkcratosis),不全角化(parakcratosis)および異常角化(dyskeratosis)は単独に,または二つ以上併存した形で見られる.それらはおそらく表皮細胞の角化(角質形成)に関与する成分の全部または一部の異常によつて起こり,その結果として異常な角質細胞および角質が形成される.
 他方,角化に関与する既知の細胞成分としてはトノフィラメント(以下TFと略),ケラトヒアリン(KH)顆粒,デスモソーム(DS)およびmembrane coating granule (MCG)があり,それぞれ角質の線維成分の前駆物質,角質の線維間物質の主成分,TFの繋留装置,および角質細胞の細胞膜の肥厚に関係あるものと考えられている.そこで,病的角化の電顕的研究では,表皮細胞におけるこれらの諸成分が観察のおもな対象になる.またさらに,これら諸成分の角質形成に果たす役割を解明するため,各成分の変化と角質細胞および角質の異常との関係も常に検討されねばならない.

一頁講座

イタミを伴う皮膚腫瘍—1.単発性のもの,他

著者: 橋本謙

ページ範囲:P.110 - P.110

 皮膚腫瘍でイタミ(自発痛,圧痛)を伴うもののうち,通常単発するものを列記してみた.このうちには,イタミが必発するものではないものも含まれている.逆に,イタミが必発するとされているもので,イタミを欠く症例も報告されている.組織学的検査を必要とする所以である.
 報告例におけるイタミの有無を抜粋すると下記の通りである.

原著

アトピー皮膚における皮表脂質

著者: 松尾聿朗 ,   新井亮一 ,   籏野倫

ページ範囲:P.119 - P.122

 アトピー皮膚炎の発症病理として特異な所見を示すアトピー皮膚における皮表皮脂の態度に注目した業績は少なくないが必ずしも定説が得られていない.
 従来,正常皮表皮脂量では正常に比し著変なく,皮脂回復量では正常に劣り,さらに病理組織学的に皮脂腺の萎縮があると報告されているが,著者らは30分間の皮脂回復量において皮脂腺由来のTriglyceride (TG)およびその分解産物であるDiglyceride (DG),遊離脂肪酸の総和がアトピー皮膚において正常皮膚に比して高値であること,さらにDG値がアトピー皮膚では有意に高値を示すことをしつた.このことからアトピー皮膚では皮脂腺におけるTG合成系およびその排泄過程におけるTG分解系に何らかの異常があることを推測させた.これがアトピー皮膚炎の病因となりうるかどうかはさらに検討を要する.

特異な毛嚢母斑の1例

著者: 清水順也 ,   日戸平太

ページ範囲:P.123 - P.129

 23歳男子の右下口唇下部に生じた特異な毛嚢母斑の1例を経験した.臨床的に正常皮膚色の,爪甲大,半球状に軽度に隆起せる腫瘤で,硬毛の群生を認めた.組織学的,組織化学的な検索を行ない以下の結果を得た.毛嚢に大小2型があり,小型の毛嚢はminiature follicle様であるが,その結合織性毛根鞘は集塊状に増生し,各毛周期に相当する毛嚢の毛球部が包みこまれている像を示した.大型毛嚢は毛髄質の不整塊状変化,毛乳頭内への上皮索の突出,毛球部周囲結合織における基質(酸性粘液多糖類)の増加などを示した.これら毛嚢に一致してみられる奇形性変化は毛嚢母斑と考えられ,特に小型毛嚢の結合織性毛根鞘からなる結合織集塊は結合織性毛根鞘母斑(conncctive tissuesheath nevus)とも称しうる特異な像である.

Clotrimazoleが奏効した慢性疣状結痂性皮膚カジンダ症の1例

著者: 加茂紘一郎 ,   原田鍾造 ,   籏野倫

ページ範囲:P.133 - P.138

 HauserおよびRothmanは,特異な臨床像を示す慢性皮膚カンジダ症について,これをMonilial granulomaとして報告したが,本症の名称に関しては2,3の考え方があつてgranulomaという語に異議を唱えるものもあるが,Hauser-Rothman型皮膚カンジダ症として彼らのいうMonilial(Candidal) granulomaを認めて,これを1つのclinical entityとするものが多い.著者らはHauserおよびRothmanのいう典型とは部位などで異なるが本質的にはそれとしてよいと考えられる2カ月女児例について報告した.本例は父方祖父母に血族結婚が認められる非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症に併発したものでIgGの高値を示す他,内分泌異常の所見なく,特異な皮膚素因にその発症要因があると考えられ,約6カ月余にわたるClotrimazoleの内服により奏効した,なお認むべき副作用はみられなかつた.

汎発性黒子症候群(Lentiginosis Profusa Syndrome)の1例

著者: 高屋通子

ページ範囲:P.139 - P.148

 汎発性黒子症候群は遺伝性疾患の1つで,レックリング・ハウゼン病Turner症候群と発生起源を同じくする母斑症の1つと考えられる.本症は全身に汎発する黒子,眼,心臓,性器の異常,難聴,精神神経系の障害,低身長,骨格の奇形などを伴う1症候群である.
 これまで本邦においては精薄を合併した1例および知能発育不良,身体発育遅延,眼瞼下垂,神経性難聴と心電図の異常を伴つた1例を除くと,黒子の報告のみにとどまる.
 ここに報告する24歳,女子の症例は,本症の多くの症状を呈し,さらに新たに後頭部の骨欠損像,弱視,潜伏眼振,爪の萎縮,趾間の過伸展と蹼がみとめられた.本症候群について文献的老察を行なうとともに,黒子および黒子とともに最も頻度がたかく出現する心の異常所見の発生機序について若干検討を加えた.

伝染性膿痂疹に伴う落屑性紅斑

著者: 米沢郁雄 ,   今村貞夫 ,   荻野篤彦 ,   高橋千恵 ,   滝川雅浩

ページ範囲:P.149 - P.155

 昭和45,46年に,伝染性膿痂疹にともなつて全身に落屑性潮紅を生じた,生後9カ月から4歳までの患者15名を経験した.
 この皮疹は,膿痂疹に罹患して1〜10日目ごろに,口囲の痂皮様鱗屑とともに,びまん性潮紅が間擦部に生じ,次第に躯幹および四肢末梢へと拡大する.各部位の発赤は1〜3日で消褪するが,その後5〜7日間小葉状の落屑が続く.広範囲に水疱を形成する症例はすくないが,間擦部を中心として水疱形成やニコルスキー現象が認められる.疾患の全経過は10〜15日で,全身症状は一般に軽微である.
 このような症例は,近年増加していると考えられる新生児剥脱性皮膚炎ないしToxicEpidermal NecrolysisのRitter's typeに属するもので,伝染性膿痂疹の起炎菌によつてひきおこされると考えられる.

襁褓皮膚炎に生じたKaposi肉腫様肉芽腫

著者: 中安清 ,   上田恵一 ,   高石喜次 ,   外松茂太郎

ページ範囲:P.157 - P.162

 襁褓皮膚炎の病変部に生じたKaposi肉腫様肉芽腫の6例を報告し,Kaposi肉腫およびGranuloma glutaeale infantumとの異同について述べた.
 本症は,臨床症状では発生年齢が乳児に限られ,部位が襁褓皮膚炎に一致し,経過は比較的に短かく,再発もなく,組織学的にKaposi肉腫の肉芽腫期とほとんど区別できないが,肉腫様変化をみない点で異なつていた.またGranuloma glutaeale infantumとは発生部位が殿部以外にもみられ,組織学的に著明な好中球の浸潤と膿瘍形成を除いてはほぼ一致していた.
 本症の発症病因は不明であるが,襁褓の着用,襁褓皮膚炎ならびに使用した外用剤などが,本症の発症になんらかの誘因となつていると思われ,なお全例ビタミンK1によく反応した.

新しい抗腫瘍剤ネオカルチノスタチンの疣贅への応用

著者: 熊坂鉄郎 ,   宮沢偵二

ページ範囲:P.163 - P.168

抗腫瘍剤の疣贅への応用は古くはPodophyllinに始まり,最近はBleomycinや5FUが注目を浴びているが,われわれも新しく開発された抗腫瘍剤の一つNeocar-zinostatin(以下NCSと略す)を本症に用いてみた.
NCSの作用機序は,1)動物細胞の分裂阻害と,2)特異的なDNA合成阻害でRNA合成や蛋白合成にはまつたく作用しない.
使用方法は本剤の1vial 3mg単位(重量約2mg)を添付の溶解液で溶解し,さらに生食で稀釈し,1回量5/80mg(62.5mcg)〜1/80mg(12.5mcg)を週1回皮内局所に注射した.
24例に応用した結果全例に結節の消失・退縮をみ,またその3/4の18例が3〜5回投与で疣贅の消失をみた.
これは作用機作のよく似たBleomycinの疣贅に対する治療に匹敵する.特記すべき副作用はまつたくみられなかつた.

連載 皮膚科学に貢献した医学者たち・2

新生児スクレレーマ(その2)

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.169 - P.172

4.類症の記載者
 アンダーウッド(Underwood)から約70年たつてから,その記載した皮膚病とはなはだ類似した疾患を著書に詳しく書いた学者がいる.それはパロー(Parrot)である.この人の名はわれわれになじみで,先天梅毒の症候としてパロー仮性麻痺やパロー凹溝を学生時代にすでに習つた記憶がある.
 この互いに類似する疾患をアンダーウッドはskin-bound (皮膚が硬変するという意味)と称し,パローはathrepsie (重症の慢性栄養障害の意)と呼んだ.前者は皮膚科的な,そして後者は小児科的な名称であるが,皮膚病変の立場からみて,両者を同様とする老えと,異なるとする説がある.相違説の学者は,アンダーウッドの疾患は新生児スクレレーマであり,パローの疾患は新生児浮腫であるという.何しろそれぞれが18世紀と19世紀における著述なので,類症鑑別はいまだ顧慮されておらず,したがつてそれらの記載は必ずしも十分とはいえない.しかし,本稿においては,これらの類症を併記しつつ,現在の学者の見解をも述べるので,読者はそれを参考にしてみずから考えられたい.

印象記

日本皮膚科学会第23回中部支部学術集会

著者: 大城戸宗男

ページ範囲:P.173 - P.175

 橿原市の大和八木は,周囲に飛鳥の里をはじめ史蹟の多い場所であるから,観光に熱を入れるべきであつたろうが,歩行者を無視する車にあふれた田舎道はきらいなので,会場となつた大講堂にいることが多かつた.
 今回の学術集会会頭である奈良医大坂本邦樹教授は,つぎの4点を運営の大綱とされた.1)学術主題の設定.2)一般演題の優遇.3)一会場での運営.4)理解を深めるための司会方法.終つた時点でみると,これらの目的どおり会は運営され成功であつた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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