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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科27巻3号

1973年03月発行

雑誌目次

図譜・364

下腿潰瘍を伴つた先天性動静脈瘻

著者: 赤井昭

ページ範囲:P.190 - P.191

症例 16歳男子
現病歴 昭和44年中卒後鮨屋に就職してからまもなく左下腿に色素沈着が生じ,ついで潰瘍化した.外傷の既往はない.

綜説

ケラチンならびに角化の生化学的問題

著者: 清寺真

ページ範囲:P.193 - P.200

 ケラチン(keratin)とは,従来漠然と上皮組織に含まれる不溶性,抵抗性の線維性蛋白質と考えられてきた.そして現在は電子顕微鏡下に角層細胞に認められる電子密度の低い線維性成分と推測され,基底細胞,有棘細胞に含まれる上皮線維(tonofilament)はその前駆体であろうと考えられている.一応このように仮定すると,ケラチン生成とはかかる線維性蛋白の生成ということになる.一方角化(kcratinization)とは,表皮では形態学的に基底細胞が有棘細胞,顆粒細胞をへて角層細胞になる過程であり,これは単なるある特定の蛋白質の生成のみでなく,もつと複雑な,生化学的代謝機構の総合された生物学的な過程で,しかも同化とそれに続く異化過程とよりなつている.したがつて従来角化がケラチン生成と同意語に解されていたのは適当でなく,角化とは角質生成と考えるのがよい.
 細胞生化学的な問題を論ずるにあたつてこのことは重要なことである.

原著

全身性エリテマトーデスの姉妹例

著者: 中島忍 ,   肥田野信

ページ範囲:P.201 - P.207

 20歳と18歳の姉妹に発症した全身性エリテマトーデス例を報告した.
 いずれも皮疹と腎障害があり検査所見もあわせて典型的な症例で,姉は妊娠したが死産に終りその死産児にはエリテマトーデスの所見は認められなかつた.
 文献上51家族106例,本邦でも16家族32例のSLEの家族内発生例があり,SLE発症の要因の1つとしての遺伝的因子について,免疫血清学的な面と細胞遺伝学的な面から検討した.

湿疹とくに小児アトピー皮膚炎と小児乾燥型湿疹における流血中好酸球数

著者: 姉小路公久 ,   町田栄子 ,   菅谷潤子

ページ範囲:P.209 - P.219

 小児乾燥型湿疹における罹患皮膚とアトピー皮膚炎におけるatopic skinとは色々な点,すなわち皮脂分泌機能,発汗機能,アセチールコリンによる遅延蒼白反応などから類似の傾向があるとされている.しかしながら両疾患における流血中好酸球数の態度に関しては比較検討されていない.
 アトピー皮膚炎における好酸球増多はすでに多くの成書に記載があるにもかかわらず,わが国ではこれを裏づける検査成績が以外と見当たらないので,まずこの点につき検討したところ,36例(成人17例,小児19例)中26例(72.2%)に好酸球増多を証明した.
 次に小児アトピー皮膚炎と同年齢(2〜10歳)の乾燥型湿疹との比較では,前者で19例中12例(63.2%)の好酸球増多に比べ後者では18例中4例(22.2%)と両者間に著しい差を示し,好酸球数は前者で最高2444,後者では768にとどまり,また好酸球百分率は前者で10%以上が7例あるに反し,後者では10%以上のものは1例も認められなかつた.この好酸球増多の明確な差違は,両疾患における炎症の有無と関連があるのではないかと推測される.

金ゾル製剤による薬疹

著者: 松葉幹夫

ページ範囲:P.223 - P.232

 最近金ゾル製剤による薬疹が増加しつつある.著者は昭和46年から同47年にかけて相次いで11例を経験した.この中できわめて興味ある経過をたどつた2症例を中心に報告する.
 第1例はその経過中に,まず脂漏性皮膚炎,続いて,ジベル氏薔薇色粃糠疹,さらに棘状苔癬などに類似した皮疹を見せ,手足は角化性皹裂性病変を呈し,爪甲は脱落した.
 第2例では初めに手指掌側,膝蓋部,肘頭,足趾腹側などに一見疣贅様,あるいは膿疱様皮疹が出現し,続いて第1例と同様,頭部,躯幹に脂漏性皮膚炎様皮疹を発現,さらに手足は角化性師裂性病変を呈した.
 著者の観察した症例は全て全身状態は比較的良好で,一般検査でも特記すべき所見はなかつた.また貼布試験は4例に対して,皮内試験は2例に対して行なつたが全て陰性であつた.皮疹の発生と金使用量との間に相関は認められなかつた.

汎発性膿疱性乾癬の2例

著者: 斎藤信也 ,   三浦隆 ,   秋葉弘

ページ範囲:P.233 - P.240

 第1例:27歳,女.18歳で初発し長年副腎皮質ホルモン剤(副皮ホ)の全身投与をうけた.紅皮症となり当科に入院.メソトレキセート内服により軽快したが,まもなく尋常性乾癬に典型的な紅斑局面が発生.ついで全身に膿疱が多発し全身症状を伴つた.その後時々全身に膿疱が汎発している.
 第2例:48歳,男.紅斑発生数カ月後副皮ホの投与をうけ,その直後全身に拡大.副皮ホの減量により増悪し,全身に膿疱の汎発を繰返した.初発より約2年後死亡.両例とも膿疱は無菌的でKogojiの海綿状膿疱であつた.膿疱は短期間で乾燥し,鱗屑縁を残して唐草模様状を呈した.
 汎発性膿疱性乾癬について文献的に他の膿疱性疾患との関係,病型,原因について考察し,本症には臨床的に2型ありとする説を支持した.誘因として副皮ホを強調し,乾癬に対する副皮ホの全身投与は禁忌であることを警告した.

スポロトリクム症の3例—滋賀県下における最初の症例

著者: 相模成一郎

ページ範囲:P.241 - P.244

 昭和46年以前における文献から滋賀県はスポロトリクム菌に汚染されていない県の1つであると考えられていたが,著者の6カ月の診療期間内にスポロトリクム症の3例の経験で,滋賀県はスポロトリクム菌に汚染されていないと考えるよりは,なしろ,強い汚染地区であると見做してよい.
 もちろん,今後における症例数の発見によつてその実証はなされるであろうが,著者はまずここに自験症例を簡単に記録にとどめる.本記録が,汎発型のスポロトリクム症を発見し,適切な治療によつて患者の生命を保全しうる,いと口になれば幸甚といえよう.

胃癌を伴つた皮膚筋炎の1剖検例

著者: 佐藤昭彦 ,   立川治俊 ,   牧野好夫

ページ範囲:P.245 - P.253

 65歳男.初診の2カ月前に発生した顔面,頸,前胸部の紅斑と四肢の筋肉痛を主訴として来院した.臨床症状と僧帽筋の典型的病理組織学的所見から皮膚筋炎と診断ざれ内科的検索の結果,胃癌が発見された.手術時,腹腔内転移のため根治手術は行なわれず胃切除術を施行した.術後,皮膚筋炎の症状は改善しなかつたが,ステロイドとメトトレキセートの併用は一時,著明な軽快をもたらした.肺炎により死亡し,剖検され,胃癌の多発性肝転移巣,肉様化肺炎,食道と大腸の滑平筋の侵襲などが明らかにされた.40歳以上の本症には高頻度に悪性腫瘍,特に胃癌を合併すること,悪性腫瘍に対する処置が皮膚筋炎に必ずしも有効でないこと,このような症例にメトトレキセートが有効なこと,肺炎の本体,また本症では骨格筋のみならず平滑筋も犯されることなどにつき若干の考按を加えた.

6カ月乳児にみられたElastosis perforans

著者: 増谷衛

ページ範囲:P.255 - P.258

 6カ月,男児.家族歴,既往歴に特記すべきことなし.初診1週前に,恥丘,鼠径部にオムツ皮膚炎様の所見を呈したという.初診時,下腹部,両鼠径部は潮紅を呈し,なかに膿疱様の硬い黄白色小結節が,散在性,あるいは集簇性にあり,環状,網状の部位もある.眼底検査で,軽度の網膜色素線状がみられるようである.組織学的に,真皮上層から下層にかけ,石灰沈着,弾力線維の膨化,断裂を認める.弾力線維性仮性黄色腫の明らかな皮疹は認めなかつた.本症例は文献例を見ても一番若く,また本邦においては,弾力線維性仮性黄色腫に併わないで発症した貴重な例といえる.将来とも,弾力線維性仮性黄色種その他の変化をみないかどうかを観察したい.

Melanocyteにおけるintermediate junctionおよびbasal dense plate形成:汎発性白皮症表皮の電顕像

著者: 小野友道 ,   三島豊

ページ範囲:P.259 - P.262

 生後3カ月の汎発性白皮症男子の表皮基底層melanocyteの一部にそれに隣接するkeratinocyteとの間にintermediate junction(zonula adhcrens)の生成されているのを認めた.すなわちmelanocyteとkeratinocyteとの相接する細胞膜の肥厚およびその細胞原形質側にopaque plaque of Brodyが存在する.なお本結合の細胞間距離は約180A前後であつた.さらに本melanocyteの基底膜に接する部分にdense plateの生成されているのも認めた.

一頁講座

NBT試験

著者: 佐藤良夫

ページ範囲:P.208 - P.208

 実地診療上,有熱性疾患々者をみて,それが細菌感染によるものであるかどうかを区別することは,なかなか困難なことが多いようである.最近,細菌感染と膠原病などの有熱性疾患を鑑別する新しい方法としてNBT試験が注目されてきた.
 NBT(nitroblue tetrazolium)は組織化学用の淡黄色の色素で,還元されるとformazanを作り暗紫(青黒)色となる.細胞内殺菌能をもつている好中球はNBT還元能を有することから,NBT試験は好中球のNBT超生体染色によつて細胞内殺菌能を検査しようとするものである.

イタミを伴う皮膚腫瘍—2.多発するもの

著者: 橋本謙

ページ範囲:P.232 - P.232

 通常は単発するが,時に多発するものを含めて,イタミを伴うことが多い多発性の皮膚腫瘍を列記した.
1) multiple lciomyoma cutis:外国例では多発性が多いが,日本では,多発性10例,単発性19例である.多発性で自覚症の記載ある例では,自発痛+圧痛……5,圧痛のみ……2,イタミなし……3である.Ormsbyによると自発痛24/38,圧痛3/38(Arch.Dermat.11;466, 1925).

副腎皮質ステロイド外用剤の副作用

著者: 籏野倫

ページ範囲:P.254 - P.254

 Schopf, E.1)によれば副腎皮質ステロイド("副ス")の皮膚および付属器に及ぼす薬力学的作用には次のものがあげられる.
1)表皮の増殖ないし再生の抑制(D.N.S.合成の抑制)

印象記

第36回日本皮膚科学会東日本連合地方会印象記

著者: 上野賢一

ページ範囲:P.263 - P.265

 第36回東日本連合地方会は,昭和47年10月7日(土)上後より8日(日)全日にわたつて,慶応大学籏野倫教授を会長に,日本都市センターホールにおいて催された.
 両日とも,幸いに好天候に恵まれ,秋の清々しい空気の中で,参会者約500名という盛会であつた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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