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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科27巻4号

1973年04月発行

雑誌目次

図譜・365

外歯瘻にみられた肉芽腫性皮疹

著者: 木村恭一 ,   豊島雄一

ページ範囲:P.278 - P.279

患者 9歳女児(初診昭和47年7月27日)
現病歴 6月中旬より右頬に自覚症状のない貨幣大皮疹を生じた.

綜説

表皮の線維間物質とケラトヒアリン顆粒について

著者: 手塚正

ページ範囲:P.281 - P.288

 ケラトヒアリン顆粒は1873年にLangcrhans1)によつて初めて記載され,1882年Waldeyer2)がそのヒアリンに似た化学的性質からケラトヒアリンと命名した.この顆粒は近年になり皮膚の機能である角質形成にきわめて重要な役割を演じていることが指摘され注目をあびるようになり,ここ4,5年の問にこの顆粒の抽出方法があいついで発表されたが3,4,5),抽出方法が異なるためか抽出された顆粒のアミノ酸組成その他の構成成分に関して互いに相違する点が多く,顆粒の正確な組成,生成機序が明らかになるまでにはさらに多くの時間と労力を必要とするようである.

原著

Systemic Lupus Erythematosusの予後—入院患者28例の臨床的観察と転帰について

著者: 川津友子

ページ範囲:P.289 - P.296

 昭和40年〜45年の6年間に大阪大学医学部附属病院皮膚科に入院し,SLEと診断された患者28例の45年12月および46年12月現在の転帰を調べた.28例のうちわけは女性25例,男性3例で,初発年齢は12〜44歳で,30歳未満19例,30〜40歳5例,40歳以上4例である.転帰は45年12月には生存16例,死亡8例,不明4例であつたが,1年後の46年12月にはさらに1例が死亡し,結局生存14例,死亡9例,不明5例であつた.生存14例のうち現在加療中のもの11例(当科通院10例,他病院に通院1例)で,加療をうけていない3例のうち1例にレイノー症状があるが,他の2例には自覚症状がない.死亡9例は初発年齢30歳までの若い女性で,死亡は尿毒症4例,全身性粟粒結核1例,肺炎1例,自殺1例,不明2例で,尿毒症による死亡4例のうち3例は妊娠中絶および死産後に死亡している.

悪性黒色腫の治療

著者: 石原和之 ,   柳田英夫 ,   馬場徹 ,   恒元博

ページ範囲:P.297 - P.304

 最近8年弱に経験した悪性黒色腫41例(皮膚38例,口唇および口蓋3例)の中,比較的経過を観察し得た38例について,初期治療よりの経過について記載した.多くの症例は,がんセンター来院時すでに転移せるもので,これらの症例をさかのぼり,初発病巣に対する治療,リンパ節転移に対する治療および遠隔転移に関する治療とに分けてそれぞれの場合における治療法について検討を試みた.これらによると初発病巣の治療に関してはまだ不十分なものがあり,多くの改善が必要と思われた.
 また,悪性黒色腫は,一般に放射線に対して感受性が低いとされているが,ニュートロン(速中性子)については相当高い感受性を示すことが観察された.また,抗腫瘍剤もビンクリスチン,ハイドロオキシウレアなどに効果が認めらわた.

Stucco Keratoses

著者: 本間真

ページ範囲:P.305 - P.311

 第1例 80歳,男.数年前から両下腿,足関節部,足背および前膊に200個以上の灰黄色の角質塊を頂く丘疹が播種状に発生.第2例85歳,男.接触皮膚炎で受診時に偶然発見されたもので,左アキレス腱部に2個の角化性丘疹をみる.いずれも特異な掻破現象を呈し,組織学的にバスケット波型の角質増殖があり,有棘層はchurch spire型に皮表に向つて突出した像で,stucco keratosesの本邦最初の報告であるが,日常注意して診察しているとかなりの頻度で遭遇する疾患と考えた.内外文献より本症の臨床像,組織像の特徴を述べ,本症を高齢者の露出部位における乾燥性皮膚を素因として発症する一種の後天性の角化症に属するものと考えた.

中国地方におけるスポロトリコーシス—自験例5例を含む

著者: 渡辺進

ページ範囲:P.313 - P.322

 中国地方で発生したと思われるスポロトリコーシスの報告例は昭和47年10月現在,自験例の5例を含めて36例である.すなわち患者の住所よりみると岡山県19例,広島県12例,山口県3例,鳥取県1例,島根県1例で男子13例,女子23例である.発生年度は昭和44年が9例で最も多く昭和43年以降に24例が発生している.病型は皮膚リンパ管型25例,限局性皮膚型11例でこれら以外の病型はみられていない.発病年齢は60歳以上が15例で最も多く,ついで50〜59歳7例,0〜9歳6例となつていて,高齢者と幼児に多い.0歳では6例のうち4例が顔に生じた限局性皮膚型であつた.発病季節は1月に最も多く6〜9例,ついで10月,11月が各5例となつているが7月3例,8月2例と夏にも発生例がみられた.治療法はヨードカリ内服がほとんどであるが,その他にヨード剤注射(局所注射も含む),グリセオフルビン内服,ヨード剤塗布,局所温熱療法,外科的切除等が行なわれている.自験例の3例は外科的切除とヨード剤内服,ヨード剤局所注射の併用で良好な結果を得た.

新しい紅色陰癬菌の培養法

著者: 田崎高伸 ,   大隈貞夫 ,  

ページ範囲:P.323 - P.328

1)1%Haemoglobin,1%triptonを含な普通寒天培地を用い.紅色陰癬病巣からWood's lightで赤色螢光を呈するコロニーを形成するグラム陽性桿菌を分離しえた.またコロニーの形態,染色性,電子顕微鏡による観察,生化学的検索,薬剤感受性試験から本菌はSarkanyのいうCorynebacterium minutissimumに一致することを示した.
2)本菌にはR型とS型のあることを認めた.
3)本菌が紅色陰癬の病巣鱗屑中に認められる菌と同一であることを螢光抗体法,走査電顕,マウスにおける接種実験により証明した.

アルテルナリア・カンジダ混合感染症の1例

著者: 東禹彦 ,   島津隆 ,   朝田康夫

ページ範囲:P.329 - P.334

 8カ月,女児.初診47年1月20日.2カ月前より両頬部に紅色丘疹を生じ,医治を受けていたが,一部皮疹が潰瘍化したので来院.潰瘍面の壊死物質の鏡検により褐色に着色した幅5〜7μの隔壁を有する菌糸および透明で幅2μ前後の菌糸と直径2〜3μの胞子の集団を見い出した.培養によりアルテルナリアとカンジダを分離した.痂皮でおおわれた丘疹の組織学的検索において,上記2種の菌要素を認め,膿疱中では幅広い菌糸が主なることを見い出した.以上の所見より本例はアルテルナリア・カンジダ混合感染症と診断した.本例における潰瘍はアノレテルナリアの感染に基づく可能性が大なることを指摘し,植物寄生性真菌であるアルテルナリアもときには人に対して病原性を示す場合があることを述べ,アルテルナリア感染症について文献的にも考察した.なお,自験例はピマフシン軟膏の外用により略治した.

セファレキシンによる固定疹の1例

著者: 湖山里美 ,   服部怜美 ,   岩崎隆 ,   本田光芳

ページ範囲:P.335 - P.339

41歳,男子,医師
 昭和46年3月頃よりセファレキシンを頻回にわたり内服していた.昭和47年3月,セファレキシン1日1500mg,分3,4日間内服により下口唇,外陰部に固定疹が出現した.その後,ジクロキサシリン内服により,同一部位に,ピリピリした感じが生じた.
 著者らは,本症例の原因薬剤をセファレキシンと断定し,ジクロキサシリンとの交叉反応の可能性も推測して,セファロスポリン系薬剤およびペニシリン系薬剤による貼布試験,掻皮試験,内服試験を試みた.
 その結果,セファレキシンの内服試験のみが陽性を示し,ジクロキサシリンとの交叉反応は認められなかつた.
 内服試験法は,従来一般に行なわれていた方法とことなり,内服量は,常用1日量ないしはその1.5倍とし,内服日数も1日から3日間の連続投与を行なつた.

一頁講座

皮膚生検について

著者: 佐藤良夫

ページ範囲:P.312 - P.312

 皮膚の生検は,皮膚疾患の組織学的診断上きわめて重要であることは周知のとおりである.生検は目的とする検索に一度で十分なだけ,しかしなるべく局所障害は小さく止めて材料を採取し,患者の苦痛を最小とし,将来の瘢痕を考慮しながら,かつ病変の増悪をきたしめないことを原則とすべきである.しかしそういうことを気にする余り,材料が小さすぎたり,浅すぎたりして,折角の生検が価値のないものになつてしまうこともあるので,"必要にして十分なだけ"採取することを心がける必要がある.
 "必要にして十分なだけ"の材料というのは,簡単のようであるが案外むつかしいこともある.それにはまず代表的病変の代表的時期の皮疹を選ぶことが大切である.またそれと周囲の正常皮膚との関係を明らかにするために,一部正常組織を含めて採取すること,および皮下脂肪の病変でなくても皮下脂肪織の一部まで含むよう深く採取することが望ましい.さらに割を加える場合に,皮膚表面に垂直の割を加えるべきで,斜めや切線的な割では封埋のときよほど工夫しないと良い標本が得られない.もちろん病像や時期の異なつた部分,別々に生検する必要がある.

ハイドロキシウレア(Hydroxyurea)

著者: 松尾聿朗

ページ範囲:P.340 - P.340

 ハイドロキシウレア(以下「HU」と略)は1869年にすでに合成され,CH4N2O2の構造を有し,1960年になり本剤に抗腫瘍作用のあることか報告されて以来にわかに注目されるところとなつた.以来「HU」はRNAおよび蛋白質の合成を阻害せず,選択的にDNAの合成を阻害する代謝阻害物質の一つとして各種の悪性腫瘍,皮膚科領域においては難治性の乾癬に試みられるようになつた.
 Ariel1)は手術不可能となつた各種悪性腫瘍の患者118例に「HU」50mg/kg/体重を1日2回に分けて連日内服させ,腫瘍の大きさが25%以上縮少したものを有効とした場合悪性黒色腫,結腸・直腸・肛門癌(特に肝臓に転移を認めるもの),頭頸部の癌,リンパ腫および原発性肝癌に著効例の多いことを報告している.悪性黒色腫では19例中11例に自覚症の改善と共に腫瘍の縮少を認め,改善状態は平均して約3週間認められたという.国際メラノーマ研究グループのセミナー(1970)においてCarterは悪性黒色腫に各種制癌剤を使用して,「HU」用いた232例中57例(24%)に有効で,これはimidazole carboxamideの424例中87例(20%)有効とともに最も効果が著しいとした2)

薬剤

オルガドロン・クリーム(Dexamethasone Cream"Organon")の臨床効果について—2重盲検法による検討

著者: 藤田恵一 ,   船橋俊行 ,   渡辺靖 ,   仁木富雄 ,   松島伊三雄 ,   安田利顕

ページ範囲:P.345 - P.349

 今日,種々の炎症性皮膚疾患の治療に,topical steroidは欠かせない薬剤となり,広く用いられていることは衆知の通りである.その多くは,このステロイド剤の抗炎症作用ならびに抗アレルギー作用を利用して,強力な滲出性機転を抑制して,局所の炎症とともに,瘙痒を除去するものである.そうして,これらのtopical corticosteroidはnatural hydrocortisone──はじめはhydrocortisone acetateが用いられていた──にはじまつて,次第にその化学構造式を変えて,corticosteroid剤としてのpotencyをたかめてきたものである.この間corticosteroidのハロゲン化halogenationと16-,17-acetnideがこれらステロイド剤の抗炎症作用の強化とともに,topical steroidとしての特異性をたかめる条件であることが明らかにされてきた.すなわち,最近のtopicalcorticosteroidは,局所的,特異作用の強いものが用いられている.betamethasone valerate,triamcinoloneacetnidcは,全てこの方向の製剤である.
 表1はForsham(1962)があげている各種corticosteroidsの抗炎症作用とナトリウム蓄積効果の比較である.今回われわれが使用したdexamcthasoneは9α-luoro-16α-methylprednisoloneであつて,強力なbetamcthasoneに匹敵する抗炎症作用を有し,外用しても全身的影響のないものである.そうして,遊離のdexamethasoneを含む外用剤についての臨床成績については,わが国では,ほとんど公表されていない.

連載 皮膚科学に貢献した医学者たち・3

新生児スクレレーマ

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.350 - P.353

(前号から続く)
7.アメリカにおける見解
 まずPillsbury,ShelleyおよびKligmanの著書7)に書かれているのは,次のとおりである.

印象記

日本皮膚科学会第24回西日本連合地方会見聞記

著者: 荒尾龍喜

ページ範囲:P.354 - P.356

 日本皮膚科学会第24回西日本連合地方会は10月28・29日の両日新装なつた徳島市パークホテルにおいて,新進気鋭の徳島大学武田克之会長のもとに盛大に開催された.この間幸いに快晴に恵まれ,気温も申分なく,学会が一層爽快となつたことは事実である.学会出席者は300名を越え,東京,東部,中部の各地区からも多数の参会者を算え,学会が一段と盛大なものとなつた.
 学術大会の前日午後3時半より開催ざれた地方委員会において,2年前よりの懸案であつた日本皮膚科学会西部支部規約案が一部の語句修正のみで承認され,今後本会はこの規約によつて運営されることとなつた.その主なことを記すると,本会の正会員は西部地区(中国,四国,九州)在住の日本皮膚科学会々員で,西部支部長,同副支部長は西部支部所属の口本皮膚科学会理事より選出され,正会員中より選出された若干名の運営委員と共に会務を執行し,地方委貝は従来と異なり,本会に属する各県より正会員10名につき1名(ただし最低3名,最高10名)を選出して会務について協議する.本会の主催する学術集会は従来通り日本皮膚科学会西日本連合地方会と呼称し,正会員中より総会において選出された会長が,プログラム委員会,実行委員会などの委員,事務局長を正会員中より指名し,学術集会の企画運営に当ることになり,ますます会員多数の意志を反映した会が行われるようになろう.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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