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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科27巻5号

1973年05月発行

雑誌目次

図譜・366

灯油皮膚炎

著者: 山口淳子 ,   富沢尊儀

ページ範囲:P.370 - P.371

症例 17歳,男
初診 47年3月30日

綜説

下肢血行と障碍

著者: 坂本邦樹

ページ範囲:P.373 - P.381

 「皮膚の血流」のテーマをいただいたが,綜説として既載1)また掲載予定2)の稿がある.それで重複をさけるため,本稿では焦点を下肢血行にしぼり,簡単な検査法などを加えてみた.
 ヒトの皮膚血行動態が他の哺乳類と異なる由来は,大別して全身に密生する剛毛の放棄と,二足歩行の2点にある.前者は体温調節機構の複雑さと微妙さを生み,後者は重力に抗しての循環調節と,その破綻よりくる数々の疾患をヒトにもたらした.

一頁講座

ジャノッティ病とジャノッティ症候群とについて

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.381 - P.381

 本誌26(4);305,1972に伊藤光政氏は,"Infantile Papulas Acro-dermatitis Disease (Gianotti病)"という標題で本症に関する綜説を書かれている.さすがジャノッティ教授自身の指導をイタリア・ミラノ大学において受けられただけあつて,上記綜説もジャノッティ教授の真意を確実に把握されており,教授の1955年における発表以来,特にヨーロッパにおいてかなり多数発表された本症に関する誤鱗をも明瞭に正しているところが多い.
 わが国においてもすでに池田・小川・太藤氏や前田・佐野氏の報告もあり,その他学会報告も見られ,必ずしもきわめてまれな病変ではないようである.

皮膚生検の簡便法

著者: 佐藤良夫

ページ範囲:P.382 - P.382

 前号では皮膚生検材料採取の一般に行なわれている方法の注意すべき事柄について改めてまとめてみた,忙がしい日常診療では,もつと簡便なやり方で材料を採取することもあり得る.たとえば,完全に有茎性の小腫瘍は,焼灼,電気メスなどで腫瘍実質を傷つけることなく採取できるし,パンチ・バイオプシーもその長短をわきまえて行なえば,習熟者にとつては簡単な方法であろう.
 また表在性の皮膚病変や疣贅などの病巣に対しては,メスで水平に削りとるようにして採取し,そのあとは縫合しないという方法も行なわれる.この方法は病変の深さと創傷治癒の問題がポイントとなる.筆者の経験はほとんどないけれども,症例によつては大変簡単な方法のように思われる.これには単純ながらも若干のコツが必要のようである.最近,ウィーン大学のSchenanderおよびFritschは,この術式について次のように記している.

Methotrexate

著者: 眞海文雄

ページ範囲:P.392 - P.392

 重症乾癬症に対し,以前より乾癬表皮細胞増殖のKineticに立脚して葉酸拮抗剤としてのAminopterinsodiumやmethotrexate(MTX)による治療が試みられ著効を示すことが報告されている.本薬剤の投与法としては種々,報告されているか,一般には以下の方法が用いられることが多い.1)1週間,少量のMTXを内服させ,その後,短期間の休薬期をおくReesらの方法.2)週1回,中等量(25mg〜50mg)のMTXの非経口的投与法(VanSkottらの方法).3)週1回,少量(12.5mg〜20mg)のMTXを内服し,その後,1週間の休薬期をおくRoenigkらの方法等がある.しかしながら,いずれの方法も量的,質的に問題があり種々の副作用を認めるため,その使用に関しては十分なる注意を必要とする.
 最近,Weinsteinらは,MTXの新しい治療法を報告し,重症乾癬症に対し著効を示すと共に,比較的,副作用が少い投与法を考案している.すなわち,この方法によれば,比較的少量(2.5mg〜5.0mg)のMTXを,12時間おきに3回内服させるもので,まず初回投与として,2.5mgを24時間はなして2回内服させ,その後異常反応の有無を確かめた上で,次の週より2.5mgを12時間おきに3回内服させ,以後,1週間休薬する方法である.その後,同様の投与法にて続行し,必要があれば,減量ないしは増量し,ある程度,皮疹の改善があれば,休薬期間を延長する.以上のWeinsteinらの方法による治療効果は,約70%の改善度とされ,多くの場合,4週間前後で皮疹の改善傾向を認め,2〜3カ月後には治癒すると報告している.しかも,他の投与法に比して,その副作用は非常に少いと報告されている.

エストロゲン外用による乳房腫大

著者: 肥田野信

ページ範囲:P.404 - P.404

 エストロゲン含有軟膏は円形脱毛症,凍瘡などに使用されているが,女児の限局性鞏皮症に塗布させた所,まもなく乳頭の着色と腫大をきたした.限局性病変に少量を用いたにもかかわらず,このような副作用をみたので,ご参考に供したい.

原著

化粧品障害と化粧品のpHについて

著者: 浦上芳達

ページ範囲:P.383 - P.391

 化粧品皮膚炎患者について,化粧品のpHに焦点を合わせて臨床統計学的観察を行なうとともに,若干の実験的考察を加え次の結果を得た.1)各種化粧品貼布試験の結果,化粧品皮膚炎患者は化粧品に対して多種過敏性を示す.2)既知pHクリーム(pH2.2,pH8.0)と酸,およびアルカリ化粧品貼布試験陽性一致率は高率で一致を見た.3)既知pHクリーム(pH8.0,pH2.2)7日間朝夕塗布した結果,皮表pHは塗布せられたクリームのpHに従って酸およびアルカリ化するが,そのアルカリ中和能には変化を見ない.また化粧品皮膚炎患者の額中央部の皮表pHはアルカリ側に偏し,中和能はおとろえている.4)皮膚炎発生率の高い化粧品は皮表pHの復元速度が遅い.
 以上のことより化粧品皮膚炎は皮膚の生理的修復能力とpH等外的刺激との平衡が破れて,機能的にも形態的にも表皮の傷害があらわれたものと推測した.

水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症の3例

著者: 宮田千珈子 ,   鈴木啓之 ,   竹村司

ページ範囲:P.393 - P.403

 自験せる水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症の3例を記載し,あわせて本症の本邦例36例につき若干の文献的考察を行なつた.また自験例のうち1例を電子顕微鏡的に観察し,とくにケラトピアリン顆粒の形成過程につき考察を試みた.すなわちケラトピアリンは細胞質内で遊離リボゾームにより形成され,周囲の張原線維の線維間隙に浸潤し不整形を呈する.一方,周囲に張原線維を欠く場合には,そのまま滴状に細胞質内に貯溜して球形を呈するものと推測される.

続発性(偶発性)種痘疹

著者: 境繁雄 ,   道部秉 ,   工藤素彦 ,   赤坂徹 ,   工藤真生

ページ範囲:P.405 - P.410

 9カ月の女児.今年2月16日,兄が第1回種痘を受け,1週間後善感と判定された.3月7日より女児の下顎に皮疹が出現,拡大し,嘔吐,高熱などにより受診.初診時,下顎から両頬部に痂皮を伴う不規則な潰瘍と,周辺に臍窩を伴なう水疱,膿疱が多発に体温は39.5℃で,元気がない.組織所見は表皮内水疱ないし膿疱形成があり,中央の表皮は壊死.水疱の辺縁に網状変性がみられる.表皮,真皮には密な細胞浸潤がみられる.一般検査成績では特に異常ない.VIG,抗生物質,補液等で治療し,入院3日目より全身状態の改善,皮疹の縮小をみ,入院23日後に瘢痕治癒した.母親の下顎,右肘関節部にも水疱があり,組織所見は同様である.女児の水疱よりワクチニアウイルスを分離した.男児の種痘部より妹へ,さらに母親に接触伝染したものと考えられる.種痘副作用の実態,対策の現状などについて文献的考察を加えた.

皮膚の非定型抗酸菌症(Sporotrichoid Mycobacteriosis)の1例

著者: 本間真

ページ範囲:P.411 - P.417

 42歳の家婦にみられた熱帯魚を介してのMycobacterium marinum感染による右拇指から上行性に拇指背面,前腕,上膊に皮下結節を多発したりリンパ管型スポロトリクム症様皮疹をしめした1例を報告するとともに,非定型抗酸菌症の臨床について文献的考察を行なつた.

女児顔面のスポロトリクム症4例の経験

著者: 西山千秋

ページ範囲:P.419 - P.421

 スポロトリクム症は本邦においてはすでに稀な疾患ではなく,ことに関東地方では頻繁にみられ,年々増加の傾向をたどるとともにほぼ日本全土に波及しているようである.今回私は昭和46年1月から12月までに駿河台日大病院を受診した典型的と思われる,10歳から3歳までの女児の顔面の本症の4例を記述した.その病型は皮膚限局型3例,リンパ管型1例であつた.

蚊によるアレルギー反応

著者: 高橋千恵 ,   上原正己 ,   野村宏

ページ範囲:P.423 - P.429

 生来蚊の刺咬のあと高熱を発し,局所反応も激烈で,特に下肢には深い瘢痕を残す12歳女子.幼時に喘息があり,現在アトピー皮膚がある.インフルエンザ,日脳の予防接種後も,高熱と注射部潰瘍を生じたという.刺咬部の生検では,皮下脂肪織深部に及ぶ強い出血を伴つた細胞浸潤があつた.蚊エキスを用いて調べたところ,患者はアカイエカ,コガタアカイエカに強い反応を示し,経時的に反応を追うと,即時型膨疹を示した後,3時間目では反応はほとんど消え,6時間目頃より再び強くなつて,30〜48時間後の局所反応が最強であつた.また6時間目の皮内反応組織に遊出赤血球を認めた.P-K反応は陽性.患者血清は蚊エキスと沈降反応を呈した.これらの結果から,この反応にはレアギンタイプの即時反応の他に,遅延型反応と,アルサス様反応も関与している可能性が考えられる.

Isolated Epidermolytic Acanthoma

著者: 徳田安基

ページ範囲:P.431 - P.437

 56歳男子の腹部ほぼ全域に,米粒大よりアズキ大,孤立性,播種状の疣贅様皮疹があり,組織学的にEpiderrnolytic Hyperkeratosisの所見を認めた.第1回組織生検時,Epidermolytic Hyperkeratosisを認め,真皮中下層にEpidermal cysteを認め,起毛筋に隣接し,あたかも毛嚢あるいは毛嚢漏斗部に関係ある所見と考えた.
 第2回生検所見では,毛嚢またはその附属器に関係ある所見は得らなかつたが,一つの表皮索に変化が限局し,健皮を問に入れ,同様な変化が連続し,あたかも蕾状の像を呈し,一つの表皮索に始まつた変化が連続して一つの臨床像を作る可能性があるという意見に賛同した.
 本症例の光顕所見にあわせて,先人の電顕的および文献的検索をし,本疾患が,分類上Epidermolytic Hyperkeratosis類の非遺伝性,孤立形に属し,しかもその播種状であることに賛同した.

講座

皮膚癌の治療(1)—特に総括的な問題

著者: 石原和之 ,   柳田英夫

ページ範囲:P.439 - P.445

 皮膚癌の治療に関しては多くの論文があるが,われわれは過去10年余にわたる経験を基にして種々の角度より検討して記載し批判を仰ぎたい.なおそれらに関し,次の項目に分けて記述する.
1.総括的な問題

連載 皮膚科学に貢献した医学者たち・4

皮膚ジフテリア

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.446 - P.449

1.初めて記載した人
 皮膚におけるジフテリア感染を初めて記載したのはArmand Trouss-eauである.彼は1801年11月4日トゥール(Tours)で生まれた.オルレアン(Orléan)およびリヨン(Lyons)で早く学業を終えたのち,シャトールー(Chateauroux)大学の修辞学の教授に就任した.ある晩餐会で彼は高名なブルトノー(Bret-onneau)に会つた.この人はジフテリアと腸チフスとの病理を初めて解明した医学者である.この年長者の勧誘に従つて,彼はトゥールの病院で医学の勉強を始めた.死体解剖台で彼はあまりに精励恪勤であつたので,その級友は彼に"兀鷹おやじ(Vultur-papa)"の仇名をつけた.トゥールにいる間,子のなかつたブルトノーからは,ほとんど実子同然の待遇を受けた.1825年パリにおいて学位をとり,1828年にはソローニュ(Sologne)におけるジフテリアの流行を調査するために政府から派遣された.ジブラルタル(Gibraltar)で黄熱病をしばらく研究した後,いくつかの病院で研修を行なつてから,パリのオテル・ディウ(l'HôtelDieu)に自分のクリニックを持ち,終生ここに止まつた.
 トゥルソーは花々しい教師であつた.その門弟のひとり,ディウラフォア(Dieulafoy)はトゥルソーのクリニックの生き生きした描写を残している.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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