原著
蚊によるアレルギー反応
著者:
高橋千恵1
上原正己1
野村宏1
所属機関:
1京都大学医学部皮膚科教室
ページ範囲:P.423 - P.429
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生来蚊の刺咬のあと高熱を発し,局所反応も激烈で,特に下肢には深い瘢痕を残す12歳女子.幼時に喘息があり,現在アトピー皮膚がある.インフルエンザ,日脳の予防接種後も,高熱と注射部潰瘍を生じたという.刺咬部の生検では,皮下脂肪織深部に及ぶ強い出血を伴つた細胞浸潤があつた.蚊エキスを用いて調べたところ,患者はアカイエカ,コガタアカイエカに強い反応を示し,経時的に反応を追うと,即時型膨疹を示した後,3時間目では反応はほとんど消え,6時間目頃より再び強くなつて,30〜48時間後の局所反応が最強であつた.また6時間目の皮内反応組織に遊出赤血球を認めた.P-K反応は陽性.患者血清は蚊エキスと沈降反応を呈した.これらの結果から,この反応にはレアギンタイプの即時反応の他に,遅延型反応と,アルサス様反応も関与している可能性が考えられる.