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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科27巻6号

1973年06月発行

雑誌目次

図譜・367

Eccrine Duct Epithelioma

著者: 野平睦子 ,   中村絹代

ページ範囲:P.462 - P.463

症例 54歳,女子,家婦
初診 昭和46年12月20日

綜説

Keratoacanthoma

著者: 森岡貞雄

ページ範囲:P.465 - P.479

 1934年Ferguson Smith1)が,また1936年MacCormac2)が今日のkeratoacanthomaの多発型および単発型のそれぞれ最初の例を報告して以来多数の症例が追加され,今日,本症はそれほど稀有な疾患ではなくなつてきた.その臨床的特徴とgrade Iの有棘細胞癌に一致する組織学的所見とから比較的安易に本症と診断される場合が少なくないが,Smithによつて自然治癒することが本症の特徴とされたにかかわらず,その後自然治癒せず癌性変化し,転移を来たし死亡した症例が報告されるにおよび,本腫瘍は果たして良性腫瘍なのか,あるいは癌に属するものなのか,さらにはまた本症と癌とは臨床的に,そして特に病理組織学的に鑑別し得るものなのか,もしそうであるならいかなる差異があるのかなどの問題が議論されてきている.本文ではこれらの点を自験例ならびに文献的記載に基づいて論じ,さらに発症病理学的観点から他の上皮性腫瘍との関連性について検討することにする.

原著

Histiocytosis X—Heamophagocytic Reticulosisの1例を加えて

著者: 菊池禮子

ページ範囲:P.483 - P.491

 当教室においてLetterer-Siwe病に典型的と思われる皮疹を有する6症例を経験した.1症例は跛行,それに次ぐ歩行不能の出現より初診時に,Hand-Schuller-Christian病とされ,他5症例中4例が,その後の皮膚生検を含む諸検査,経過,さらに剖検などによりLetterer-Siwe病,1例がheamophagocytic reticulosisと診断された.
 1960年より1969年迄の10年間に報告されているLetterer-Siwe病,Hand-Schuller-Chri-stian病の各々94例,50例および経験した5症例について,類似点および差異を考察した.同一疾患であろうとの結論が得られたが,予後の見極めおよび治療方針のために,従来使用されて来た,それぞれの名称は捨て難い.heamophagocytic reticulosisはprim-aryなreticulosisとされ,Letterer-Siwe病に似た症状を有し,乳児期に電撃的な経過をとる.診断は組織学的検索を待たねばならなかつた.

線状苔癬について

著者: 露木重明 ,   伊藤文子

ページ範囲:P.493 - P.499

 1.昭和40年1月より47年6月までの8年6カ月間の経験例44例の検討結果を報告した.
 2.原発疹はlichenoidの丘疹で,多角形ないし円形,中心臍窩なく,時に鱗屑を有し,融合傾向あり,苔癬化局面を作る.局面は多くは線状配列をとる.一般に片側性である.
 3.自覚症は欠如するのが普通である.
 4.好発部位は上肢で過半数を占め,下肢がこれに次ぎ,躯幹,顔面,頸部にも発生する.
 5.発症年齢は5歳を頂点とし,10歳以下に集中し,最低年齢9カ月,最高年齢19歳であつた.
 6.性別比は20対24で男女ほぼ同数であつた.
 7.本症は突如として発症し,数週間から年余に亙る経過をとる.自然治癒が期待出来る疾患であり,外用療法の効果は判定し難い.
 8.組織学的には本症に特異的な所見はなく,診断の補助的手段としての意味をもつにすぎない.
 9.臨床的,組織学的に,特にLichen planusとの鑑別なかんずく両者の類似性,異同について,さらに充分な検討の余地があろう.

糖尿病と皮膚病変—最近15年間の統計的観察

著者: 菅原光雄 ,   道部秉 ,   桜井学 ,   石河知之 ,   佐藤静生

ページ範囲:P.501 - P.507

 弘前大学皮膚科における昭和32年1月より47年7月までの外来患者中,糖尿病の確認されたものは134例で,同年間の新来総数28,018名の0.48%に当たる.性別では男81例,女53例で男子にやや多い.年次的には32年には1例もみられなかつたものが,46年には19例,1.05%と増加を示し,徐々に増加の傾向がみられた.一方,外来検査で一時的に過血糖や糖尿がみられ,糖尿病が疑われるが,未確認のものはこの年間に194例みとめられ,新来総数の0.69%に当たる.男132例,女62例でやはり男子に多くなつている.年次的には42年に26例,1.22%と増加がみられ,やはり漸増の傾向を示す.
 これらの症例について,比較的多くみられた皮膚疾患の内訳をみると,膿皮症,真菌性疾患,皮膚掻痒症,急性湿疹などの順となつているが,当科における全皮膚疾患患者との疾患別順位比較などを行なつて検討して結果,糖尿病との関連がとくに重視される皮膚病変としては,壊疽,潰瘍,顔面細血管拡張症,皮膚掻痒症および急性湿疹(間擦性湿疹型)などがあげられる成績が得られた.

Lymphadenosis benigna cutisの1例

著者: 鈴木和子

ページ範囲:P.509 - P.514

 Lymphadenosis benigna cutisはリンパ細網細胞の巣状浸潤を基本構造とするが,最近,泡沫細胞の多数の出現を伴つた本症の1例を経験したので報告する.
 症例:45歳農婦.
 皮膚所見:約10年前に発症.左外眼角外側に25×18mm,右下顎角部に20×22mmの浸潤性紅斑,右下顎角部上方に皮下結節を認める.
 組織所見:表皮に著変なく,真皮中層から皮下脂肪織の深さにかけて巣状の細胞浸潤が多数認められる,浸潤細胞の構成は中心部が細網細胞を混じたリンパ球よりなり,周辺部では泡沫細胞を思わせる明かるい組織球性の細胞が多数認められる.この細胞はエオジン好性,PAS陽性,Sudanblack B陽性の顆粒を有する.

ピオクタニン水溶液外用による皮膚障害

著者: 篠力

ページ範囲:P.515 - P.517

 ピオクタニン青は1〜2%水溶液として,その強い殺菌力,乾燥作用の故に古くから膿痂疹,カンディダ性間擦疹等に愛用され,かつ安全性の高い外用剤として皮膚科だけでなく内科,小児科等の開業医が好んで用いている.しかし過度の塗布により表皮の壊死性変化がおこることには注意が必要である.ことに乳幼児の間擦部位や湿潤性病巣で分泌物,尿,糞便,汗等で塗布したピオクタニンが乾燥,被膜を作りにくい条件に加えて角層のbarrierが障害され頻回塗布によつて高濃度のピオクタニンが直接表皮細胞に接触することが発生条件と思われる.この変化は一種のtoxic reactionと考えられる.
 初発症状は塗布したピオクタニンが点々と紫色の点状に皮膚に残存する状態で,拡大して観察すると小びらん面である.
 予後は良好で通常塗布を中止すると比較的容易に治癒するが,潰瘍化した深い病巣では治癒が遷延することがある.

ノルウェー疥癬を伴なつた脳回転状皮膚の1例

著者: 吉井恵子

ページ範囲:P.519 - P.523

要約 患者は51歳,女性.20歳頃より頭部に瘙痒ある皮疹を,やがて頭部全体に凹凸をみとめるようになつたが,治療もしないまま放置していた.現症:頭部全体,主として前後に走る皺襞と深溝を有し,あたかも脳回転のごとくである.また,同時に頭部全体,厚い白色鱗屑によつておおわれ,剥離すると下床には著明な紅斑および一部には出血をみとめる.
鱗屑を鏡検するに疥癬虫を多数みとめ,病理組織でも厚い角質層下に多数の疥癬虫体がみられ,虫体は毛のう深部にまで侵入しているのがうかがわれた.真皮においては炎症性変化以外著変は認められなかつた.チアントールにて治療開始後約3週間後には鱗屑・瘙痒ともに消失し軽度の紅斑をみるのみとなつたが,同時に皺襞,深溝も著明に軽減した.このことより本症を疥癬という炎症性刺激が誘因となつて生じた脳回転状皮膚(Fischerの分類第1群第1項)と考え報告した.なお内分泌系異常・精神異常等はみられなかつた.

老人性白毛における色素脱失機序の電顕的研究

著者: 吉川博文 ,   三島豊

ページ範囲:P.525 - P.533

 本邦人黒色頭髪が老人性白毛に至る種々の色素脱失段階における毛根部を検索した.正常黒色毛に比し,白毛化の初期段階の灰色毛毛根部においては,melanocyte(MC)数の明らかな減少及びMC zoneの消失,毛球部角化細胞内に貪食蓄積されたmelano-someの著明な減少をみるも,残存するMC内におけるmelanization processおよびGolgi氏装置によるpremelanosome形成能は保全されているのを認め得た.電顕的dopa反応により,premclanosomc及びcoated vesiculeならびにGolgi associatedendoplasmic reticulum内にin vitro dopa-melanin生成能を認め得た.白髪化の進行した老人性白毛においてはMCの完全消失,毛球部角化細胞内のmelanosomeの減少消失を認めた.しかしながら尋常性白斑のようなα-樹枝状細胞の著明な増加,汎発性白皮症MCのようなmelanizationの欠損を有するpremelanosomeを認め得ないことから,毛髪の生理的老人性色素脱失は,従来のいずれの型とも異なる第3の型ともいうべきmelanin生成障害過程によるものと考えられる.

一頁講座

皮膚試験切除切片のオリエンテーション

著者: 佐藤良夫

ページ範囲:P.492 - P.492

 病理組織標本の作製そのものは,特殊なもの以外は,通常,技術者にまかしているのが現状である.それらの技術者はただ機械的に標本を作ることが多く,それ故ときとして切片が皮表に斜あるいは水平に切り出されたり,小皮疹では病変部が切り出されなかつたりするために,診断がつかないことがあるのは,日常多くの人が経験していることと思う。顔面とくに鼻部,口腔粘膜などでは,どうしても皮片は小さくなるし,皮片が小さければオリエンテーションがつきにくく,皮表と垂直の標本を作ることは困難となるのは当然である.かつて私共の教室では,試験切除した医師自らが組織標本を作製するのが習わしであつたという.これは以上のような不適当な標本を作らないためにも,その当時としては一つのやり方であつたであろうが,多忙な現在では不可能であり無意味に近い.
 そこで切除切片のオリエンテーションについては,人それぞれ工夫をしている.最も普通に行なわれているのは,第一に切除皮片を直ちに乾いた濾紙に,切除基底面を下にして貼りつけ,鋏で余分な部分を切りとつて固定液に入れることである.固定間に,組織は収縮し,皮膚の材料はしばしば変形しやすく,丸まつたまま伸びなくなるので,ことに小さな材料や手掌,足底のような角質の厚い材料では,この注意を行なわないと立派な標本を作ることがむつかしくなる.小さな材料では濾紙面に垂直に包埋すれば,皮面に垂直な標本が得られることになるが,通常の材料ではホルマリン液固定12時間位してから,安全カミソリの刃で皮面に垂直に2等分し,その割面から切片を作製できるように包埋する.病変が腫瘍のときには,病変の広がりや浸潤を見るために,もちろん切除境界線まで含めた割を入れなければならない(図参照).

比較的簡単なウイルス観察法

著者: 橋本謙

ページ範囲:P.500 - P.500

 ウイルスの証明は,光顕的に封入体の存在によつて,これを窺うことができるが,実体の観察には電子顕微鏡の拡大率を借りなければならない。水疱を形成する皮膚のウイルス性疾患では,nagative stainが応用されている.この方法は,煩雑な操作を必要とせず,しかも比較的短時間で観察することが可能であり,しかも立体的観察ができる利点がある.筆者もこの方法をしばしば試みているが,手技の未熟さがあつてか,なかなか成功していない.そこで,水疱膜をハサミで切りとつて,標本をつくり,観察したところ,ウイルスの直接証明には,これでも充分であることを経験した.
 図1は,女児に発生した水痘の水疱膜の標本にみられたヘルペスウイルス.

皮膚附属器などの構造を立体的に観察する試み—Stereohistomorphology

著者: 佐藤良夫

ページ範囲:P.508 - P.508

 毛嚢,脂腺,汗腺などの皮膚附属器は,結合織にとり囲まれて真皮内に存在している.しかしそれは,樹木の根のように掘り起し土をとり払つて,それだけをとり出すようなわけにはいかないので,皮膚附属器をあるがままの形態で観察することは不可能に近い.崖くずれによつて樹木の根が見えたとする.それは四方へ延びている根の一断面を見ているにすぎず,普通の組織像があたかもそれに相当するものであり,根のごく一部を観察するのが電顕像というふうに考えてよいであろう.皮膚附属器は正常でも部位によつて,年齢によつて,また個人差によつて変化し,variationに富んでいるし,病的過程によつて著しい形態的な変化を示してくる.それらの形態,大きさ,相互関係の変化を全体として把むことは,電顕像ではもちろんだめだし,普通の光顕像でもきわめて困難である.とくに毛嚢の正常hair cycleに際しての形態的変化,円形脱毛症などのときの病的な変化過程は,連続切片の観察によつても大変むずかしいことである.ある都市での災害において,一局部の詳細な分析,検索と同時に,なによりもまず,災害の規模,範囲などの全体的観察調査が行なわれるように,皮膚附属器の形態学的観察が,全体的,立体的に行なわれるとしたら,今まで漠然としていた事柄が幾つか明瞭になつてくるであろう。"木を見て森を見ない"ということでなく,木も見るがまず森を見ようということである.
 毛嚢脂腺系を研究してきた筆者は,以上のようなことから,立体的な組織構造を把む簡便な方法がないものかと考えた.そこで思い出したのが,筆者が入局した年に抄読会で読んだLeachの論文1)であり,たまたまそのころ掲載されたSander-son & Thiedeの論文2)を参照し,この方法にならつて500μ厚の切片を観察することを現在の鷲尾助教授にやつてもらうことになつたわけである.それは昭和36年であつた.以来この方法を現在も用いており,ときには他の方法も併用しつつ毛嚢脂腺系,汗管などの立体的観察を行なつている.この方法は採取した組織片中に含まれる皮膚附属器の様子を,ごく少数の切片で全部観察できる.たとえば0.5cm厚の皮膚組織について連続切片を作るには,普通の方法では10μの厚さとして500枚を要するが,この方法の500μ厚切片だと10枚の切片で充分であるということになり,かつ核染色のアントラセンブルー染色は透光性で実体顕微鏡で観察することにより立体的に検討できるのである.厚切片の観察・検討法にも若干の工夫が加えられ,また再構築模型を作製して参考にする.従来の平面的な所見に,three-dimensionalな所見を加えようとするこのような検討に対し,stereohistomorphologyと呼称している3)

講座

皮膚癌の治療(2)—特に電子線療法について

著者: 石原和之 ,   柳田英夫

ページ範囲:P.537 - P.543

 皮膚癌の放射線治療として従来より行なわれているものに,深部X線(200KVP規格),超軟X線(Machlett Be-窓X線,Bucky X線,Dermopanなど),小線源治療(226Ra針,222Rnシード,60Co針など)あるいはTele 60Coなどがあげられる.しかし,最近高エネルギー電子線発生装置が登場しこれが各施設に導入され新しい治療法として加えられた.したがつて本邦では電子線治療の歴史は比較的新しい.ふりかえつて外国では,その歴史は古く,1921年,米国のSlepianあるいはハイデルベルグのPhilipp,Lenardなどによつて基礎理論がすすめられ,1940年米国のD.Kerstによつて初めてベータートロンが設計され,1945年ゲッチンゲン大学に6 Million elec-tron Volt (MeVと略)ベータートロンが医療に登場した.実際の治験報告は,皮膚腫瘍に対するものが最初で,1949年,Bode,PaulおよびSchubertがこれを行なつた。このように,高圧治療特に電子線に関する歴史はかなり古くから認められるが,本邦では1965年の筆者らの報告が,皮膚腫瘍に関しては最初と思われる.現在,使用されている電子線発生装置には2種類をあげることができる.すなわち,ベータートロン(betat-ron)とリニア・アクセラレータ(linear accerela-tor)である.後者は直線型ブで,エネルギーを変えることができない.しかし,広範囲(例えば全身)に照射できるという利点がある.国立がんセンターにおいては,ベータートロンとして18MeVのもの1台(独,Siemens製),リニア・アクセラレータ(リニアアクと略)として6MeVのもの2台(米,Varian製と日本,日本電気製)が設置されている.この電子線発生装置を利用して皮膚癌の治療経験を記載すると同時に2,3の基礎的概念について併記する.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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