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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科27巻7号

1973年07月発行

雑誌目次

図譜・368

Eccrine Spiradenomaの1例—A CASE OF ECCRINE SPIRADENOMA

著者: 国分蓉子 ,   高木繁

ページ範囲:P.554 - P.555

患者 36歳,主婦
主訴 右鎖骨上窩部の小腫瘤

綜説

膠原病

著者: 藤巻茂夫

ページ範囲:P.557 - P.566

 膠原病が唱えられて既に30数年,医学の急速な進歩に伴い,本病に対する見解も大きく変つてきた.Klemperer自身でもリウマチ熱と多発性動脈炎の原因に過敏症を認めながらも,膠原病に対するアレルギー説を反駁してきた.膠原病が流行しだしてから17年後,Klempererも自説をひろがえし,ヘマトキシリン体はDNAの低重合によるもという考えを捨てた.門下のGodman (1956)がLE細胞のメチール緑などによる組織化学的研究をやり,これは核の低重合によるものではなく,核と血漿タンパクとが結合したものであるというすばらしい成績をだした.その後HX体は核と血清のγグロブリンが結合したものであるという事実が免疫化学的に証明され,Godmanの説にはもはや疑いをさしはさむ余地がなくなつたのである.かくてSLEが多分自己免疫疾患であろうという本態観に対してKlempererは基礎的資料を提供したのである.
 それにしてもアレルギー説をあれほど否定し続けてきた彼には自己免疫を認めざるをえないとは何たる皮肉なことであろう.

原著

爪甲剥離症におけるカンジダの役割

著者: 東禹彦

ページ範囲:P.567 - P.573

 爪甲剥離症におけるカンジダの役割を明らかにするために,狭義の爪甲剥離を有する患者を次の如く3群に分類して比較検討した.すなわち,第1群:爪甲剥離のみ認められたもの31例,第2群:爪甲剥離が1〜数指にあつて,他指・趾爪に真菌性病変を認めたもの12例,第3群:爪甲剥離が1〜数指にあつて,身体のいずれかに真菌症以外の皮膚疾患を認めたもの8例である.第1群の患者は女性に多く,患者は指爪が主で,それも数指にかぎられ,全身性疾患が原因とは考え難く,また検査成績でも全身性疾患との関連性はつかめなかつた.第1,2群では患部から高率に菌要素を検出し,培養では80%以上にカンジダを分離した.第3群ではカンジダは分離されなかつた.薬剤に対する反応も第1,2群と第3群では異なつた.以上の結果から,第1群の爪甲剥離症の大多数は爪に対する外傷や浸軟を誘因として発症し,カンジダ感染を伴うことにより症状の悪化と永続化をきたしたものと推論した.

Eccrine Ductcarcinoma

著者: 斎田俊明 ,   池田重雄

ページ範囲:P.575 - P.585

 75歳男子の陰嚢皮膚に原発し,リンパ節転移を来たした腫瘍に対し,各種組織学的,電顕的検索を実施し,次の結果を得た.組織像の主体は真皮結合織間に主に索状ないし小塊状に散在する腫瘍巣からなり,1部で管腔構造がみられ,又,一部表皮内ではPaget現象がみられた.腫瘍細胞は比較的小型であるが異型性大.細胞質はH-E染色で紫紅色にやや濃く染まり,PAS陽性物質を含み,その1部はdiastase抵抗性であり,微量のneu-raminidase消化性Hale陽性物質も証明された.また好酸性無定形物質もみられ,これはPAS陽性,diastase抵抗性.酵素組織化学的に腫瘍細胞はSDG,MAO,Ac-P-aseが中等度以上の陽性.Al-P-ase,ATPase,Ch-Ease,Feyrterともに陰性.電顕的には分泌顆粒様物質がみられ,細胞間には嵌合および分泌細管が観察された.これらの所見から本腫瘍をeccrine ductcarcinomaと診断した.
 文献的に汗器官癌について検討し,かつ,汗器官腫瘍について,しばしば問題になるエックリン系とアポクリン系の区別および各汗器官における部位的区別に資するべく,正常汗器官の酵素組織化学的,電顕的所見等を比較整理し,若干の考察を試みた.

サルコイドージスの1例

著者: 吉江治彦 ,   畠山正

ページ範囲:P.587 - P.594

 症例は23歳女子,耳下腺腫脹,眼のブドウ膜炎を伴い両側下腿に不規則な網状を呈する暗赤紫色紅斑が発生,表面に鱗屑を付着し,浸潤を軽度に触れる.組織学的に真皮全層ならびに皮下組織内に境界鮮明な類上皮細胞肉芽腫が散在している.ところにより癒合も見られるが,概して小型の肉芽腫よりなる.また肉芽腫により線維芽細胞の増生も見られる.BHL陽性,ツベルクリン反応偽陽性,Kveim反応陽性.治療はステロイド剤の結膜下注射および点眼が行なわれた.約9カ月後視力は回復し皮疹は消褪した.福代は皮膚サルコイドを結節型,局面型,ビマン浸潤型,皮下型の4型に分類している.本例は強いて分類すれば局面型に属すると思われるが,その臨床像,組織像は従来の局面型とは異なる特殊なものである.

皮膚に原発した多発性髄外形質細胞腫

著者: 川津智是

ページ範囲:P.595 - P.602

 60歳,女性,既往歴で左股関節炎,及び左大腿骨を中心とする慢性骨髄炎に罹患.昭和46年6月頃より左下腿部,大腿部,臀部に赤紫色の硬結が生じ,8月に初診.
 生検の結果,真皮全層から皮下脂肪層に亘る密な,異型性の強い形質細胞を認めた.
 更に,血清中にはIgG-L型の骨髄腫蛋白を認め,γ-グロブリン43.6%,血清IgG 3100mg/dlと増加し,IgA,IgMの減少を認めた.
 しかし,再三に亘る骨髄穿刺や骨X線像では骨髄腫は発見されなかつた.
 副腎皮質ホルモン,およびcyclophosphamideの使用,続いて,放射線療法に腫瘍はよく反応し,臨床検査成績の改善もみられた.
 患者は昭和48年1月現在,健在であり,その間,左下肢以外に左外眼角部の皮膚,および右眼底(疑診)に腫瘍の発生をみたが,骨髄を含む他の臓器には病変をみていない.
 これまでに報告されている皮膚の形質細胞腫の症例中,本症例のように,骨髄腫を合併しない皮膚の多発性形質細胞腫は極めて稀である.

扁平苔癬の病巣内に発生した有棘細胞癌の1例

著者: 相模成一郎 ,   岸村治美 ,   熊田道子

ページ範囲:P.603 - P.607

 30年間の経病歴をもつ扁平紅色苔癬の病巣の一つである左上腕部に有棘細胞癌が発生した69歳の男性例を記述した.既存の扁平紅色苔癬を前癌症であると報告する文献は存在するが,病巣皮膚の発癌機構については,現時点ではなお不明である,しかし,熱傷癖痕や慢性の潰瘍性皮膚病巣内における発癌症例をしばしば経験する事実から,扁平紅色苔癬病巣部の皮膚萎縮が発癌に関与しているとも考えられるが,扁平苔癬は先天的な酵素異常に基づく疾患であるとの報告もあり,その発癌機構については今後の検討を要するものと考えられる.

Macrophage migration inhibition現象の皮膚科領域応用への試み

著者: 大城晶子 ,   中山秀夫

ページ範囲:P.609 - P.614

 接触皮膚炎,皮疹部パッチテスト陽性の遅延型アレルギーの考えられる固定薬診及び皮膚炎型中毒疹のin vitroの診断法としてのmacrophage migration inhibition(MI)現象の可能性につき検討した.
 抗原として,パッチテスト用アレルゲンを基準として稀釈したものを用いCytotoxicityのない濃度が得られたが,上記の抗原と血清蛋白の存在下で患者リンパ球とモルモットmacrophageを用いてMI現象を行ない,すべて陰性であつた.今後の問題としてハプテンの代謝,とくにcarrierの問題の解決が必要であると考えた.

前頸部にみられた副耳珠の2例

著者: 井上勝平 ,   菊池一郎 ,   佐藤隆久 ,   出盛允啓

ページ範囲:P.615 - P.619

 1.前頸部にみられた副耳珠2例について組織学的に検討したが,いずれも弾力軟骨母斑と毛包母斑の像を呈した.
 2.毛包母斑の出現は,耳珠の部位的特異性によるものであることを,正常耳珠の組織像,hairy earの好発部位などから推測した.
 3.本症は第1鯉弓に由来する耳珠の奇形であり,副耳accessory earよりも副耳珠accessory tragusとする方が,奇形学的にみても妥当な病名であると主張するBrownstcinet al.の説に賛意を表した.

一頁講座

厚切片法の応用

著者: 佐藤良夫

ページ範囲:P.608 - P.608

 前号では厚切片標本の作り方,それを必要とする理由について記した.この標本は非常に厚い切片ではあるが,透徹が充分行なわれており核染色のアントラセン・ブルーが透光性であるため,実体顕微鏡で見れば立体的に観察し得るし,普通の顕微鏡を用いても,附属器,細胞浸潤などの状態が広い視野から観察できる.もちろん連続切片で検討するが,附属器の相互関係,全体的関係を詳細に把握するために,次のような工夫をすればさらに明らかな結果を得ることができる.すなわち,厚切片標本をプロジェクション・スクリーンに投影し,透明プラスチック板または透写紙に模型図を画く.数枚の連続切片についてこれを行ない,これらの模型図を重ねて検討する.大きな脂腺や毛嚢なども5枚前後の標本を観察することで全体の形,大きさ,相互関係が明白となる.
 アルカリフォスファターゼ活性を組織化学的にみる場合,200μ位の厚切片で観察すると,小血管の分布状態がよくわかるようになる,これによつて教室の内山は,正常頭皮および円形脱毛症病巣部の血管状態を明らかにした.

連載 皮膚科学に貢献した医学者たち・5

メレダ病

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.621 - P.625

1.はじめに
 わが国においても皮膚科学会において"メレダ病"として患者の供覧されたことが何回かあつた.その患者の病変が軽度なとき,ほとんどいつも討論されたのは,"ウンナートスト型遺伝性掌蹴角化腫"との鑑別についてであつた.そこで"メレダ病"はどんな人によつて一般に注目されるようになつたか,そして現在海外において,またわが国において皮膚科学者はどう理解しているか,今回はこれらについて書いてみることにする.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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