icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科27巻9号

1973年09月発行

雑誌目次

図譜・370

Gianotti-Crosti Syndrome

著者: 木村恭一

ページ範囲:P.738 - P.739

患者 1歳10ケ月男児(初診昭和48年1月22日)
既往歴・現病歴 昭和47年11月種痘.昭和48年1月3日上気道感染(3日で治癒).15日頃より顔に始まり数日の中四肢に皮疹汎発.発熱なく全身状態良好.

綜説

最近の伝染性膿痂疹について

著者: 藤田恵一 ,   唐沢直人 ,   佐久間実

ページ範囲:P.741 - P.751

 多くの皮膚科書を比較すると,膿痂疹の皮膚疾患分類上の位置についてはそれぞれの著者によつて多少の違いがあり,大多数の著書ではその原因を重視して細菌性疾患群の中に入れているが,一部では発疹の形態を重視して細菌性疾患群から除き,水疱性疾患群5)あるいは膿疱性疾患群10)の中に入れている.
 また膿痂疹に包含する疾患の範囲も必ずしも一致せず,たとえばボックハルト膿痂疹を膿痂疹に入れるものと,膿痂疹とは区別して毛嚢炎に入れるものがあり,あるいはリッター剥脱性皮膚炎を膿痂疹に入れるものと入れないものとがある.

原著

成年期に発症した播種状色素性蕁麻疹の2例

著者: 日野治子 ,   古谷達孝

ページ範囲:P.755 - P.765

 22歳,36歳時に発症した成年性播種状色素性蕁麻疹男性2例を報告し,併せて昭和35年以後に報告された17歳以上で発症した色素性蕁麻疹28例について文献的考察を行なった.
 自験第1例では骨髄像で軽度の肥胖細胞増殖を見,同時にヒスタミン値の増加がみとめられた.
 既報28例の文献的考察では,成年期に発症した本症はすべて病型分類的には多発播種型,個々の皮疹は斑紋結節型,組織像はRona型であつた.これら28例中には皮疹以外にリンパ節腫脹,肝腫大,骨X線像の変化等の病変を伴った症例が若干あつた.
 本症の病因としては,遺伝説,母斑説,一種の組織反応説,腫瘍説等があり,今なお詳細は不明であるが,成年期に発症し,皮膚のみならず内臓病変をも併発している症例は全身性肥胖細胞腫である可能性が強く,このような症例では病変の経時的観察が必要であると思われた.

粘液水腫における皮膚症状

著者: 斎藤隆三 ,   新井春枝

ページ範囲:P.767 - P.774

 粘液水腫の臨床症状については既によく知られている.57歳,主婦の典型的な本症の1例を報告すると共にその皮膚症状につき述べ,本症の診断に重要であることを述べた.また,Livedo病変およびびまん性脱毛症について触れた.本症例の下肢にみられたLivedoracemosaは小動脈壁のムチン沈着による内腔狭窄のためと思われ,かかる原因による症候性Livedoは未だ例をみない.一方,びまん性脱毛症については粘液水腫の30〜40%にみられるといわれ,必ずしも全症例にみられるわけではない.甲状腺ホルモンの毛嚢に対する作用以外に,貧血,ビタミンA代謝異常,過コレステロール血症,ムチン沈着などが何らかの形で毛嚢に影響を及ぼし,脱毛の1つの要因となり得るであろう.

単発性陰部平滑筋腫

著者: 長谷川末三 ,   山本邦一

ページ範囲:P.775 - P.781

 皮膚平滑筋腫は稀な疾患である.そのうちでも乳房部,外陰部を発生母地とするsolitary genital leiomyoma(Myomes dartoiques Besnier)はきわめて稀とされ,本邦においては,いまだその報告例をみない.最近われわれは28歳男子の陰嚢に生じた小腫瘍を組織学的に検索した結果.純平滑筋腫からなる本症と考えられた.ここに,われわれは本邦における第1例として報告するとともに,主として臨床的ならびに病理組織学的に若干の考察を試みた.

サルコイドージスの1例

著者: 湖山里美 ,   服部怜美 ,   岩崎隆 ,   本田光芳

ページ範囲:P.783 - P.791

 74歳,女子.顔面,躯幹,四肢に特異な皮疹型を呈したサルコイドージスの1例を経験した.
 皮疹は,鱗屑を付着した丘疹が孤立して存在するもの,これらが大きな局面を形成するもの,あるいは辺縁が堤防状に隆起した環状の形態をとるものなど種々の病型を呈する.
 本例は,皮膚病変以外に,虹彩毛様体炎を認め,胸部レ線像ではサルコイドージス研究協議会の診断基準よりM1H2P0の所見がみられた.ツベルクリン反応は減弱,Kveim反応は,抗原入手とともに行なう予定である.組織学的には,真皮全層,皮下組織にわたり,ラングハンス型あるいは異物型巨細胞を多数混じた類上皮細胞肉芽腫の形成を認めた.

一頁講座

わきがの話

著者: 野北通夫

ページ範囲:P.766 - P.766

 「小児等草者勿苅八穂蓼乎穂積乃阿曽我腋草乎可禮」──平群朝臣が穂積朝臣を嗤つた歌で,この歌に対しては逆に穂積朝臣が平群朝臣の赤鼻をやじつた歌もあるが,歌の意味は,「子供らよ,わざわざ遠くへ行つて草は刈るなよ,それよりも穂積朝臣の腋の臭さを苅れ」といつたものである.
 「わきが」は中国隋の頃の「病源候論」にも,「胡臭」,「狐臭」の名で記載され,「その臭気は葱鼓の如く,また狐狸の臭いに似る」と書かれているというが,本邦でも,上述のように,「わきくさ」または「わきくそ」の名で,王朝時代から歌にまで詠まれている程,昔も今も変らず,人にきらわれたものであつたようであるが,東洋に比べ欧米ではさほど問題にもならず,また臭い自体も日本人のものほど強烈でなく,香水などで適当に胡麻化して,結構うまくやつているとのことである.

皮膚臨床—病理カンファレンス(2)

Lymphadenosis benigna cutis(Bafverstedt)

著者: 本間真

ページ範囲:P.792 - P.793

症例 66歳 女子
現病歴と現症 3年前,前額中央の髪際に淡紅色の腫瘤を生じた,自覚症状を欠き放置していたところ,2カ月前からその周辺に数個の同様の腫瘤ができ,これが融合拡大してきた.初診時(図1)には前額中央の髪際から前頭部にかけて数個の鮮紅色,拇指頭大,半球状に隆起した弾性硬の結節が融合して全体として手掌大の腫瘤を形成している.表面は平滑で,著明な毛細管拡張をみる,軽度の瘙痒を伴う.所属リンパ節は触知されない.

Mycosis fungoides or Parapsoriasis variegata?

著者: 河村幸郎 ,   浜口次生

ページ範囲:P.794 - P.795

 症例26歳男子
 現病歴と現症13歳の時から自覚症状のない皮疹が右前胸部,肩甲部,および腰部にみられ,これは徐々に拡大の傾向を示した.皮疹はいずれも米粒大の丘疹をともなう浸潤性苔癬化紅斑で表面は粗糙,乾燥性であつた(図1,2).前胸部の発疹には肋間に一致して指頭大までのリンパ腺をふれる.ツベルクリン反応陰性,末梢血エオジノフィリー(10〜12%),血清脂質の増加をみる以外に検査所見に異常はなかつた.皮疹はステロイドODTにわずかに反応し,さらにステロイド内服により浸潤は軽度となつた.

Lymphocytic infiltration of the skin(Jessner & Kanof)

著者: 本間真

ページ範囲:P.796 - P.797

症例 51歳 女子
現病歴と現症 5カ月前,右頬部にほぼ円形の境界比較的鮮明な皮表より僅かに隆起する紅色浸潤面を生じ,次第に拡大して来た.自覚症状は全くない.初診時(図l)には右頬部に2.6×3.0cmのほぼ円形,境界鮮明で中央部は皮膚面から僅かに陥凹し,辺縁やや隆起する紅褐色の浸潤局面をみる.表面は僅かに凹凸不平で毛孔の開大があるが,萎縮,鱗屑は認めない.所属リンパ節腫脹はない.

斑状鞏皮症様基底細胞上皮腫(Morphea-like basal cell epithelioma)

著者: 本間真

ページ範囲:P.798 - P.799

症例 84歳 女子
現病歴と現症 約10年前,左頬に黒い小結節ができ,糜爛,潰瘍化することなく,きわめて徐々に中央が陥凹して瘢痕様を呈しながら周辺に拡大して来た.初診時(図1)には左鼻背から左頬中央に2.6×3.0cm,不正形,黄褐色の境界鮮明で周辺は隆起縁を形成し,中央は陥凹し瘢痕様の光沢のある受皿様の硬い病巣がみられる.また鼻背側に2個の黒褐色丘疹があるが,潰瘍,痂皮形成はない.

結節型硬化萎縮性苔癬

著者: 本間真

ページ範囲:P.800 - P.801

症例 52歳 男子
現病歴と現症 10年前に胃潰瘍に罹患.2年前,背部中央よりやや右よりに小結節が2個上下に並んで発生しているのに気付いた.自覚症状を欠くため放置していたところ,最近,下方の小結節が白ぽくなつて来たという.初診時にはこの淡黄白色の小結節(図1)は0.6×0.7cm,円形,半球状に隆越した弾性軟のもので,表面平滑,鱗屑形成はない.

Follicular Syphilid

著者: 宇多弘次

ページ範囲:P.802 - P.803

 症例42歳男子
 現病歴と現症約1カ月前より,胃腸,肝障害のため通院している.その後間もなく,胸部,頸部,背部,顔面の順に米粒大の丘疹が発生してきた.瘙痒感などの自覚症状は全くない.
 皮疹は米粒大で中心に角化傾向を示す紅斑を伴う毛包性丘疹で胸部,背部,頸部および,顔面に散在し,一部分に膿疱を混ずる(図1).顔面では一部融合し鱗屑を生ずる.リンパ節腫脹,脱毛を来している.検査成績では白血球10,300,リンパ球60%,T. T. T. 11.3,Kunkel 12.8.

Rheum toid nodule(慢性関節リウマチ結節)

著者: 本間真

ページ範囲:P.804 - P.805

症例 57歳 女子
現病歴と現症 10年来,リウマチ様関節炎に罹患(朝のこわばり+,RA-test+++,赤沈55mm/1時間,CRP 2+).1カ月前,左肘関節伸側に自覚症状を欠く皮下結節を生じ,次第に大きくなつて来た.初診時(図1)では皮膚面より扁平に隆起した1.4×1.5cmの弾性硬,境界比較的明瞭な無痛性皮下結節で皮膚とは癒着せず,下床とは軽度の癒着がある.

Metastatic squamous cell carcinoma

著者: 宇多弘次

ページ範囲:P.806 - P.807

症例 75歳 男子
現病歴および現症 1カ月位前から無痛性の両側腋窩リンパ節腫大ができてきた.最近両上腕上部から前胸部にかけて皮下結節を多数認めるようになつた(図1).

Myxoma

著者: 安原稔

ページ範囲:P.808 - P.809

症例 16歳 男子
現病歴と現症 約3年前より小指頭大の柔らかい腫瘍が左足底に存在していた.自覚症状はなかつた.某医により疣贅といわれ,スピール膏の貼布療法を受けたがことがある.しかし,治癒しなかつたのでそのまま放置しておいた.その後,この腫瘍は次第に大きさを増し,歩行に際し軽度の疼痛を生じてきた.初診時には直径2cm,高さ3〜4mmの扁平に隆起する円形の柔らかい腫瘍であつた.腫瘍表面の一部はビラン面を呈し,一部は結痂状であつた(図1).

Mucinous carcinoma of the skin

著者: 藤原昇 ,   江原昌春

ページ範囲:P.810 - P.811

症例 79歳 女
現病歴 約4カ月前に肛囲の腫瘍に気付いた.腫瘍は徐々に大きさを増し,鶏卵大になるとともに有痛性となつた.

薬剤

ビタミンA酸軟膏の諸種角化症に対する臨床効果の検討

著者: 長島正治 ,   森俊二 ,   新関寛二 ,   平山芳 ,   手塚正 ,   佐藤吉昭 ,   福原右 ,   上野賢一 ,   橋本憲樹 ,   藤田優

ページ範囲:P.812 - P.818

はじめに
 尋常性乾癬をはじめとする諸種角化症に対するビタミンA酸(以下A酸と略記)外用療法は近年にわかに注目されるところとなり,わが国においても,すでにビタミンA酸臨床研究班1)がこれら諸疾患に対するA酸外用効果を二重盲検法により検討している.
 今回われわれは,関東地区(東北地区の一部を含む)8施設の協力を得て,諸種角化症に対するA酸外用効果をopen studyで検討する機会を得たので,ここにその成績の大要を報告する.

Sulbenicillin(SB-PC)の抗トレポネーマ作用について

著者: 大久保暢夫 ,   柏木義勝 ,   柴田実 ,   堀幹郎

ページ範囲:P.819 - P.820

緒言
 耐性ブドウ球菌感染症の治療は種々の合成ペニシリン,セファロスポリン系薬剤の開発によつて殆んど解決されたものと考えられているが,これに代つて緑膿菌,変形菌等グラム陰性桿菌による難治感染症の問題がクローズアップされるようになつた.
 これらの難治感染症に有効な薬剤は,Polypeptide系抗生物質をはじめ,Gentamicin等が開発されたが,毒性等の点で難点があり十分にその効果を発揮し得るものではなかつた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?