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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科28巻10号

1974年10月発行

雑誌目次

図譜・384

Solid Cystic Hidradenoma

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.654 - P.655

患者 56歳 女子
初診 昭和48年3月19日

綜説

悪性腫瘍の免疫療法

著者: 関建次郎

ページ範囲:P.657 - P.664

 悪性腫瘍細胞の抗原性や宿主の免疫機能が解明されるにつれ,免疫療法の範囲を定めたり,定義したりすることは逆に困難になつたように思われる.悪性腫瘍を摘出した場合,大手術であればそれ自体免疫抑制的作用をもち1),他方腫瘍が除去されれば血清中のblocking acti-vity(免疫リンパ球の抗腫瘍作用を阻止する血清中の因子による作用)が低下し治癒に有利な条件がつくり出される2).どんな治療手段も癌対宿主の免疫機能の関係に影響をもたずにはすまされないのである.
 Mathe3)は手術あるいは放射線療法によつてはわずかに40%の悪性腫瘍が一掃されるに過ぎず,化学療法は特定の腫瘍を破壊するのみでありこれらを補う治療手段の必要を強調している.恐らく,手術,放射線により治癒した患者のかなりの%は,自らのもつ免疫反応によつて生き残つた少数の癌細胞を破壊しえた結果であると思われる.化学療法は強い免疫反応を起す腫瘍,胎盤性chori-ocarcinomaやBurkitt腫瘍に特に有効であることも知られている.前者は宿主にとつてallograft腫瘍であり,確実な自然治癒例もよく知られている4).一般に制癌剤が功を奏するためには宿主の免疫の存在が不可欠であり,とくにT細胞の機能が重要であるという5).Ryanら6)がE.coliに由来するL-asparaginaseをマウス6C3HED,L5178Y腫瘍に使用した実験は興味深い.腫瘍移植と同時投与では効果なく,3乃至9日おくれて投与すると効果があり,とくに9日おくれて投与すれば完全治癒をもたらすこともできる.生き残つたマウスに2度目の腫瘍移植する場合にも,L-asparaginaseをおくれて投与してあつたものによりつよい抵抗の発生があつた.L-asparaginaseには抗腫瘍作用とともに免疫抑制作用もあるので,移植と薬剤投与との間隔にも興味があるが,更に,抗リンパ球血清やコバルト照射で宿主の免疫抑制をおこなうとこれらの現象は起らなくなり,完全な治癒は稀になつてしまうという.化学療法における宿主の免疫機能の重要性をあらためて痛感せしめられる.免疫療法と名づけられる治療法は,最近大きく評価されようとしているBCGでさえも,単独では強力な治療法とはなり得ない場合も多いと思われるが,症例をえらぶこと,他の治療手段との併用,投与する時期をえらぶことなどにより,すぐれた効果を期待することもできると思われる7).ともあれ悪性腫瘍の治療において免疫をなおざりにすることのできない時代となつてきた.

原著

Macroglobulinemia Waldenstromに伴った環状紅斑

著者: 武誠 ,   小玉肇

ページ範囲:P.665 - P.670

症例は70歳男で4年前より顔面に浮腫をきたし,2年前より顔面に紅斑ができだした.1年前より体幹,四肢に環状の紅斑が多発し,出没しだした.個々の皮疹は始め隆起性小紅斑にはじまり,中心部治癒傾向をしめつつ拡大し大きな環状紅斑となり,全経過2週間程で消腿する.紅斑部組織像は表皮のspongioseと頁皮の血管拡張のみであつた.臨床検査でIgMの著明な単クローン性増加,骨髄中にlymphoplasmocytic cellの増加が認められたことよりMacroglobulinemia Waldenstrom (MW)と診断した.また皮疹は臨床症状,組織所見よりErythema annulare centrifugum Darierに近似のものと考えた.本邦69例のMWを文献的に考察したが自験例のような環状紅斑を伴つた報告はなかつた.(同部に螢光抗体直接法を行つたが,陰性であつた.また血中の抗基底膜抗体,細胞関抗体も陰性であつた.)

難治性下口唇ビランを主徴としたSjögren症候群の1例

著者: 重見文雄 ,   乾睦子

ページ範囲:P.671 - P.675

 下口唇の難治性ビランを主訴として来院しSjögren症候群と診断した52歳女性の症例を報告し,本症候群の皮膚科領域からの報告例を紹介し,文献的考察を加えた.
 自験例には,8年前に関節痛あり,現在,Keratoconjunctivitis sicca,Xerostomia,下口唇と口角にビランを認める.検査では赤沈の亢進,リウマチ因子,抗核抗体陽性,血清総蛋白は高く,高γグロブリン血症を示し,唾液腺造影で点状陰影を認め,胃液検査で無酸症であつた.下口唇の組織学的所見はPlasmacytosis circumorificialisの範疇に入ると思われるが,義歯による外的刺激で起つた2次的変化と考えられる.

亀頭の炎症,前癌疾患,および,癌

著者: 相模成一郎

ページ範囲:P.677 - P.682

 亀頭と包皮における炎症(亀頭包皮炎),前癌疾患(ケラー病,ボーエン病)および,癌(有棘細胞癌)の4症例を記載した.各疾患と尖型コンジローマの病巣部の組織像を鏡検し,基底層における上皮細胞の核の長径と短径とを実測してそれを統計的に処理した.この結果,ケラー病とボーエン病とは統計的には同質の疾患であること,有棘細胞癌は他の疾患とは異質であることを再認識した.

環状肉芽腫の4例

著者: 島田義昌

ページ範囲:P.685 - P.689

 環状肉芽腫の4例(第1例:定型診,第2例:点状滴状型,第3例:局面形成型,第4例:紅斑型)について報告し,併せて,その疹型と組織像について考察した.
 本症の皮疹には,定型疹と非定型疹があるが,著者は,定型疹には,環状配列型と環状隆起型があると考える,非定型疹については,Gougerot,Vissan,Bazexらの分類があるが,著者例をBazex分類に従つて考察した.
 本症の組織像には,完全変性型と不完全変性型があるが,不完全変性型は見落されやすいので,特にこれについて考察した.また,膠原変性巣をとり囲む細胞浸潤に,帯状浸潤型と1)斑状浸潤型があることについて言及した.

Bowen病にみられたIntraepidermal Epithelioma

著者: 堀尾武 ,   田上八朗

ページ範囲:P.691 - P.695

1)68歳,女子の左大腿屈側に生じた,単発性ボーエン病の1例を報告した.
2)組織学的検索の結果,異常細胞が表皮全層を占める,本症として典型的なcarcino-ma in situの所見以外に,正常表皮内にintraepidermal nestの形成が認められた.
3) intraepidermal epitheliomaは,seborrheic verruca,Bowen病,hidroacanthomasimplexなど,種々の疾患に生じ得る,1種の組織学的現象である.
4)従来より報告のある,intraepidermal epithelioma (Borst-Jadassohn)は,独立疾患とは見なし難い.

一頁講座

Hunt症候群

著者: 中村雄彦

ページ範囲:P.676 - P.676

 耳部に生じた帯状疱疹に顔面神経麻痺と内耳障害を伴つたものを一般にHunt症候群とよんでいる.その歴史は古く1907年Ramsay Huntにより提唱されたものである.耳症状あるいは神経症状のため耳鼻科医や内科医を訪れることが多く皮膚科領域での報告例は比較的少ないようである.著者は典型例を経験したので報告する.

講座

皮膚生検と病理組織標本—実地医家と臨床検査技師の立場から

著者: 篠力 ,   市川武城 ,   伊藤信一 ,   江本修

ページ範囲:P.697 - P.702

 皮膚生検は皮膚疾患の診断に有用であるが,その普及には手技の簡易化が重要で,外来診療の場で容易に行い得るものでなくてはならない.市川1)は,この目的に副い生検器具の消毒法として,手術用絹糸消毒液の応用と,手動式皮膚用トレパンによる生検が便利であるとした,今回はトレパン生検の得失,局麻の組織所見に及ぼす影響等を検討し,またより良い標本を作るため,検査技師の立場から標本作製上の問題を取り上げて見る.

印象記

「神戸色」あざやかに—第73回日本皮膚科学会

著者: 今村貞夫 ,   山田瑞穂

ページ範囲:P.704 - P.706

 第73回日本皮膚科学会は,交通ゼネストで日本中が身動き出来なかつた4月11日に講習会が,翌日から総会と学術大会が開かれた.筆者らは,この非常事態における会場の「入り」を心配しながら講習会へ出かけたが,過去のどの講習会よりも多い人々が,東から西からはせ参じて,会場はぎつしりと聴講者でつまり,今更ながらこれらの人々の熱心さに心をうたれた.

連載 皮膚科学に貢献した医学者たち・16

遺伝性表皮水庖症(その2)

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.708 - P.712

 前回に引続いて,Pearsonが"機械的水疱性疾患"の題目下に書いた論著を中途から書くことにする.

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綜合医学賞(皮膚科)の銓衡について

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.706 - P.706

 1月における本誌編集会議は,25日に東京都文京区本郷の医学書院本社で午後6時から開かれた.本誌の編集のほかに,綜合医学賞授与皮膚科論文の銓衡も行なうことが,以前から本誌編集同人に知らされていたので,この同人4名,すなわち籏野・橋本・佐藤の3教授とわたくしとは,昭和48年に発行された"臨床皮膚科"1〜12号に掲載された綜説と原著とを,あらかじめ調べておいて集つたわけである.
 いよいよ銓衡会議が始まると,どんな形式で会議を進行させるかが,まず問題となつたが,結局4名の各人がこれはと思う論文の題名と著者名とを紙片に書いて提出し,最高の投票数を得た論文を授賞の対象とすることにきまつた.各投票者は,ひとりで好きな数だけ投票したので,全部を合わせると,10篇を越える論文が候補にのぼつた.

第23回総合医学賞入賞論文

ページ範囲:P.707 - P.707

 第23回総合医学賞論文が別記14論文に決定した。総合医学賞論文は1949年に第1回入賞論文を選定していらい優秀原著の顕彰の役割をはたし,受賞者の中から第1回の東大内薗耕二教授を初めすぐれた学者や臨床家を輩出して今日に及んだ。今回選定された14論文は昨年中に発行された小社の全雑誌中から,それぞれ各誌1篇の最優秀原著を慎重審査の結果選定したもので,各論文に対し賞辟・賞状・賞金10万円,および副賞が贈られる。
 入賞論文のなかには英文雑誌「Japanese Journalof Microbiology」から選ばれた英文論文も含まれている。まだ外国人学者の寄稿者からの入賞論文は出ていないが,今後の国際的な学術文化交流の趨勢の裡では,そのような可能性もはらまれているわけである。今後もこの賞の優秀論文の寄与によつて研究の進展が期待される。

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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