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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科28巻11号

1974年11月発行

雑誌目次

図譜・385

慢性膿皮症に続発した

著者: 中村絹代 ,   野平睦子 ,   長島正治

ページ範囲:P.730 - P.731

患者 40歳,男子
初診 昭和46年11月19日

原著

皮膚カンジダ症—最近の傾向

著者: 境繁雄 ,   帷子康雄 ,   矢口宏

ページ範囲:P.733 - P.740

 皮膚カンジダ症は最近急激な増加がみられる.その主なものは乳児カンジダ症成人の股部のカンジダ症,外陰部カンジダ症などで,乳児のみならず成人のカンジダ症も増加している.比較的珍らしい病型も多くなり,汗疹様ないし播種状型,顔面のカンジダ症なども観察された.乳児カンジダ症の増加要因として,これまであげられているもののほかに排便後,母親が清拭を怠つていることも原因と思われる.外陰部カンジダ症の増加の一因として夫婦間の感染が重視されるが,これを証明することは必ずしも容易でなく,夫婦一緒に治療するものの少ないのが現状である.また,通常非病原性とされているG.albicans以外の菌種も種々の条件下で病原性を発揮し,これによる発症も増加傾向にあるのではないかと思われる.

アジア丸内服が原因と考えられる多発性有棘細胞癌の1例

著者: 安野洋一 ,   筏淳二 ,   前田基彰

ページ範囲:P.741 - P.746

 54歳,家婦.約20年前に遺伝性掌蹠角化症として2年間にわたつてアジア丸を投与された既往を有し,角化性皮疹と多発性の有棘細胞癌,およびそのリンパ節転移をみた症例を報告し,慢性砒素障害の皮膚病変につき,文献的に若干の考察を行つた.

糖尿病性黄色腫の1例

著者: 斉藤隆三 ,   山手哲明 ,   矢島義忠

ページ範囲:P.747 - P.755

 35歳男,糖尿病を初めて指摘されてから約9カ月後に黄色ないし帯赤黄色丘疹が多数出現し急速に数を増して来た.家族歴に糖尿病の負荷があり,GTTにて高度の糖尿病を示し,インスリンの反応が低いことがみられた.血清は白濁し,トリグリセライドは,4,300mg/dl,コレステロール1,095mg/dl,遊離脂肪酸1.75mEq/lといずれも高い値を示した.リポ蛋白分画ではpre-βが80.8%で高脂血症の分類ではV型に相当する.糖尿病の食事療法とスルフォニール尿素剤の治療にて糖尿病をコントロールすることが出来,同時に血清の脂質も改善されて来,黄色腫も扁平化あるいは消失して来ている.糖尿病性黄色腫は重症糖尿病あるいは充分コントロールされない糖尿病にみられる稀な皮膚合併症で,本邦の報告例は少ない.糖尿病に基く脂質代謝異常について概説すると共に本邦報告例および自験例について検討した.

右軟口蓋に初発したと思われる細網肉腫の1例

著者: 居村洋 ,   重松授 ,   高須賀信夫 ,   重見文雄

ページ範囲:P.757 - P.759

 右軟口蓋の腫瘤で入院加療中,背部に広範囲に浸潤性ならびに硬結性紅斑を生じた細網肉腫の1症例を報告し,若干の考察を試みた.症例は,61歳の男.コルチコステロイドの全身的投与などで一時背部の紅斑は軽快したが,その後,腹部にも腫瘤を生じ,急性呼吸不全が原因で死亡した.

リンパ管(広義)の管腔中にみられた赤血球ならびにその由来について

著者: 大熊守也

ページ範囲:P.761 - P.764

 組織標本の管腔中に,赤血球がみられるからこれはリンパ管でなくて血管であるという議論をよく耳にするが,このことが必ずしも正しくないことを示す為に,次の実験的材料を検索した.即ち,A.生体組織内での病的変化による出血,B.組織中に溶液を注射する,C.組織片をメスで切り出す,以上三つの事柄の種々の組合わせを作り,1.A+B+C,2.B+C,3.B,4.A,B,Cいずれもないもの等の試料を光顕並びに電顕的に観察した.
 電顕的に基底板の欠如することにより,毛細リンパ管と同定された管腔中にも赤血球が存在し,その由来として,組織が病的変化を生検時以前に受けていない場合は,生検中に赤血球が結合組織部よりリンパ管腔中に取り込まれたものと思おれる.また結合組織部に赤血球が存在する原因の一つとして,生検時の局麻,あるいは,リンパ管拡張の目的で組織内に液を注入することが考えられる.

クリオフィブリノーゲン血症の1例

著者: 島田義昌 ,   堀尾豊 ,   吉井田美子

ページ範囲:P.765 - P.769

 クリオフィブリノーゲン(CFG)血症の1例を報告すると共に,その臨床的事項(CFGの検出法,臨床像,基礎疾患,発生機序,治療法等)について,若干の文献的考察を加えた.特に,その臨床像(血栓または循環障害症状,出血傾向,寒冷過敏舵状など)の考察に力を入れたが,発生機序については,細菌内毒素を重視するThomas説,血液内トロンビンの発生を重視する水品説に加えて,身体深部損傷時の止血機転(これによって,血液内にCFG形成因子が発生)を重視する著者の考えを追加した.

講座

皮膚の老化

著者: 小堀辰治

ページ範囲:P.770 - P.779

I.加令を示す器官としての皮膚
 江戸時代,尾張藩の重臣,横井也有が老化をあらわす7つの狂歌をよんでいる.それをここに記すると「しわはよる,ホクロはできる,背はかがむ,頭ははげる,毛は白くなる」,「手は震う,足はよろつく,歯は抜ける,耳は聞えず,目はうとくなる」,「よど(ヨダレ)たらす,目しるは絶えず,はなたらす,とりはずしては小便もるる」,「またしても同じうわさに孫自慢,達者自慢にわかきしやれごと」,「くどうなる,気短かになる,ケチになる,思いつくことみな古うなる」,「聞きたがる,死にともながる,さびしがる,出しやばりたがる,世話やきたがる」であるが,老化をあらわして誠に適切で,その中でも,最初の句は皮膚老化の諸徴候を端的に示している.
 皮膚科教科書をひもどくと,その皮膚生理の項に,保護作用,温熱調節作用などが列記してあるが,皮膚の作用にはこの外に,第二次性徴作用,加令表現作用があると著者は考えている.

連載 皮膚科学に貢献した医学者たち・17

遺伝性表皮水疱症(その3)

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.781 - P.786

 Pearsonの"機械的水疱性疾患"と題する論著の,前回から後の残部を掲載する.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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