原著
糖尿病性黄色腫の1例
著者:
斉藤隆三1
山手哲明1
矢島義忠2
所属機関:
1北里大学医学部皮膚科学教室
2北里大学医学部内科学教室
ページ範囲:P.747 - P.755
文献購入ページに移動
35歳男,糖尿病を初めて指摘されてから約9カ月後に黄色ないし帯赤黄色丘疹が多数出現し急速に数を増して来た.家族歴に糖尿病の負荷があり,GTTにて高度の糖尿病を示し,インスリンの反応が低いことがみられた.血清は白濁し,トリグリセライドは,4,300mg/dl,コレステロール1,095mg/dl,遊離脂肪酸1.75mEq/lといずれも高い値を示した.リポ蛋白分画ではpre-βが80.8%で高脂血症の分類ではV型に相当する.糖尿病の食事療法とスルフォニール尿素剤の治療にて糖尿病をコントロールすることが出来,同時に血清の脂質も改善されて来,黄色腫も扁平化あるいは消失して来ている.糖尿病性黄色腫は重症糖尿病あるいは充分コントロールされない糖尿病にみられる稀な皮膚合併症で,本邦の報告例は少ない.糖尿病に基く脂質代謝異常について概説すると共に本邦報告例および自験例について検討した.