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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科28巻12号

1974年12月発行

雑誌目次

図譜・386

右大腿動脈瘤を合併せるベーチェット病の1例

著者: 高野祐策 ,   馬場俊一 ,   阿部貞義 ,   水村重美

ページ範囲:P.802 - P.803

患者 17歳,男子,学生
初診 昭和48年3月15日

綜説

皮膚筋炎とウイルス様封入体

著者: 佐藤猛

ページ範囲:P.805 - P.812

 皮膚筋炎は骨格筋および皮膚の急性あるいは慢性の炎症性疾患であり,一般に膠原病の範疇に入れられている.しかし,1967年Chou1,2)および1969年著者ら3)により多発性筋炎患者の罹患筋内にウイルス様封入体が発見されてから,現在までに12例の報告があり4〜12),皮膚筋炎の成因におけるウイルスの役割が問題になつている.
 本稿では皮膚筋炎と多発性筋炎の臨床と病理の概要に続いてウイルス様封入体の特徴,さらに膠原病とウイルスとの関係について述べる.

原著

Papillon-Lefevre症候群—症例報告と本邦12例の集計

著者: 新井亮一 ,   長島正治

ページ範囲:P.815 - P.820

 10歳女児のPapillon-Lefevre症候群すなわち歯周症を伴なう掌蹠角化症の1例を報告し,本邦報告例12症例を集計,主として皮膚科見地から本症候群の臨床を概説した.本邦12例中,女子が男子の2倍を示し,7例に家系内血族結婚を,また2家系に同胞例を見出した.皮膚および口腔病変の発症年齢また症状は,いずれも従来の記載にほぼ一致したが,本邦例中に毛孔性紅色粃糠疹様の皮疹を示す症例のあることを指摘し,診断上留意すべきことをのべた.掌蹠多汗症また硬脳膜石灰化像を有する症例はみとめられなかつた.

Incontinentia pigmenti achromians(Ito)の1例

著者: 阿曾三樹 ,   島雄周平 ,   長野拓三 ,   真喜屋武夫 ,   吉野邦夫

ページ範囲:P.821 - P.824

 4歳女児に発症したIncontinentia pigmenti achromiansの一例を報告し,本疾患とIncontinentia pigmentiとの相違点について若干の考察を行つた.
 自験例では,右偏側性・帯状の脱色素斑が認められ,組織学的所見で表皮の著明なメラニン顆粒の減少があり,DOPA陽性のメラノサイトを少数ながら認めた.皮疹の改善あるいは増悪などは経過中におこらなかつたが,知的発育および運動発達の遅延が出現し,脳波異常を示す精神運動発作を合併してきた.気脳撮影で側脳室と第3脳室の軽度拡大を認めた.

色素性痒疹について

著者: 長島正治

ページ範囲:P.825 - P.830

 色素性痒疹の2例(27歳,46歳女性)を追加報告するとともに,既報告例で現在経過観察中の2例についてもその後の経過をのべた.また自験10例ならびに文献例7例を総括し,本疾患の病因ないし発症機序また治療について考察した.
 本疾患の病因はなお不明である.貼付試験による接触アレルゲン検出は現在不成功に終つているが,なお種々の点から本疾患の病因として接触アレルギー関与の可能性は捨て難い.本疾患治療には従来みるべきものがなかつたが,自験3例にDDS内服を試みた結果は一応有効としてよく,本疾患治療に試用すべき薬剤と考えられた.しかしその効果確認にはなお多数例の追加検討と長期観察が必要であることをのべた.

Melanoma neurocutaneeの1例とMelanoses neurocutaneesの文献的考察

著者: 中出毅 ,   石川巌 ,   荏原光夫 ,   中島利子

ページ範囲:P.831 - P.835

 皮膚Melanoblastと神経周囲Melanoblastが同時に異常増殖をする状態をTouraineはMelanoma neurocutaneeと定義したが,中枢神経系に増殖したMelano-blastが悪性の傾向を有するめに,他臓器へは転移しない事が特徴的である.症例は24歳男子,全経過約1年半で死亡した.診断は表皮の色素性母斑と脳腫瘍症状であるが,他の脳腫瘍と術前に鑑別する事は困難である.他の脳腫瘍が脳水腫や痙攣初発の事は往々にしてあり,髄液の黄色調も脳室内腫瘍で普通に見られる.しかしながらそれ等に皮膚症状を加えると推定診断は易しいとも言える.
 我々は約70例の内外の文献を検討したが,欧米と本邦例を比較すると年齢,性別では大きな差を認める.性別の点では本邦例が少い為に,それが有意であるか否か判定しにくい.年齢では,先天的色素の差即ち白色,黄色の差が,アミノ酸代謝異常疾患と同様に存在するのかもしれない.

Calcaneal Petechiae(いわゆるBlack Heel)

著者: 三浦俊夫

ページ範囲:P.837 - P.843

 12歳女子の両踵の1例を報告し,併せて文献について考察を行い,集計の結果本症は男子に多く(男女比は2:1),年齢は12歳から42歳にわたるが,15歳以上20歳未満が約60%を占める事などを記し,発生機序に関する考えを述べ,本症の名称に言及した.

Angioma senile des freien Lippenrandes(Pasini)

著者: 石川謹也

ページ範囲:P.845 - P.849

 83歳男子及び71歳女子のそれぞれ下口唇に単発したAngioma senile des freienLippenrandesと考えられる症例を報告した.いずれも下口唇の左側で正中部に近く,半球状ないし軽度に隆起した径1.0cm以下の暗紅色腫瘍で硝子圧により容易に扁平化するが,圧を去ることにより旧に復する.組織学的に真皮乳頭下層から筋層に及ぶ大小さまざまに拡張した血管の断面が認められ,諸処に絨毛状に内皮に囲まれた結合織部が管腔内に突出している.血管壁は薄く,その内壁は扁平化した内皮細胞から成り,筋線維は認められない.弾力線維は僅かに外膜部に認められる.
 2自験例から,主としてPasiniの記載にしたがつて,本症の臨床像,病理組織所見及び発生機序について紹介すると共に,老人性血管腫,venous nakeなどを挙げて類症鑑別した.

顕著な皮膚神経腫様構造を示した色素性母斑

著者: 高屋通子 ,   高屋豪瑩

ページ範囲:P.851 - P.854

 28歳,女子の被髪頭皮に発生したLudyのいう皮膚神経腫の1例を報告した.本腫瘍は腫瘍組織中に神経細胞がみられないことから,神経腫様肥厚症,神経線維腫,色素性母斑の1型とするなど,分類,定義などに諸説がある.
 組織学的検索を行つた結果,本腫瘍は真の神経性腫瘍とは考え難く,母斑の発生過程において何らかの機転で末梢神経が特定の刺激状態下におかれ,特有の神経様構造が形成されたものと推測され,母斑の1型と考える方が妥当であろうことを呈示するとともに,併せて文献的考察を加えた.

連載 皮膚科学に貢献した医学者たち・18

急性限局性皮膚浮腫あるいはクインケ浮腫

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.855 - P.861

1.はじめに
 昭和の初め頃,旧日本海軍は揚子江に艦艇を常駐させていた.そしてその軍医は,揚子江沿岸に在任する一般日本人の診療をしばしば依頼されていた.その軍医の中にはわたしの先輩や同僚に当たる東大皮膚科医局の出身者も少なくなかつたので,おりおり医局で出会うこともあり,中国で見られる特殊な疾患の話などを聞いたものである.そのようなとき,強く印象づけられたのは,揚子江沿岸に住む日本人の間には,主として顔面に突然限局性の浮腫を生ずるものの少なくないという話であつた.そしてこれは"長江浮腫"と一般にいわれているが,軍医の間ではクインケの浮腫だろうと考えている人が多いということであつた.
 昭和12年に起こつた日中事変は,中シナにまで拡大し,日本陸軍は揚子江を遡行して進軍した.当時召集されて陸軍軍医として内地の陸軍病院に勤務していたわたしは,中シナからこの陸軍病院に戻つた兵士には,前記の長江浮腫を発生するものの少なくないのを知つた.

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臨床皮膚科 第28巻 総索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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