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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科28巻3号

1974年03月発行

雑誌目次

図譜・378

スポロトリクム症の2例

著者: 後藤允哉 ,   大見尚 ,   儀保元彦

ページ範囲:P.182 - P.183

〔症例1〕 65歳男子,農業,埼玉県鳩ケ谷市在住
初診 昭和48年1月31日

綜説

黒色癌前駆症もしくは悪性黒子

著者: 中山坦子 ,   今井清治 ,   水谷ひろみ ,   池田重雄 ,   川村太郎

ページ範囲:P.185 - P.200

 悪性黒子(Lentigo maligna, Becker 1954)はDu-breuilh(1912)1)により黒色癌前駆症(Melanose cir-conscrite Precancercusc,以下本症と略記)として詳細に記載されて以来,これに関する多くの研究がある.本症には上記の他次の同義語がある:Senilefreckles Hutchinson,1892.Infective melanoticfreckles Hutchinson,1894.Melanosis circumsc-ripta precancerosa Dubreuilh,Melanose de Dub-euilh,Melanotic freckles,Praecancerose Melanoseose,melanotische Praecancerose.最近未だ悪性化に到らなかつた本症の2例を経験したのでこれを報告し,綜説的に考按を加えたい.
 悪性黒色腫の1つの成り立ち方として,本症の悪性化によるもののあることは既にDubeuilhの記載にある.彼は本症を3つの時期にわけているが,そのⅢ期は異型細胞(cellules metaplastiques)が真皮内に侵入(tomber dans le derme)した状態であって,既に(その病巣の一部が)悪性黒色腫に変つた状態(stade de degenerescence, Duperrat)であるとしている.因みに彼はこれを悪性黒色腫とはよばないでcancerとよび,滴落説におけるUnnaと全く同様に,表皮細胞の異型化→真皮内侵入を考えていた.彼のⅢ期はClark以来広く用いられる術語:lentigo maligna melanomaに該当する.Ⅲ期に先立つて,異型細胞が表皮真皮境界に沿つて拡がるが,真皮内には侵入しない時期(Ⅱ期)(stade de lentigo, Duperrat)がある.これはmelanoma in situという表現に該当するものとしてよかろう.本症はDubreuilhによれば,はじめ単純な色素沈着(pigmentation simple,Dub-reuilh;stade d'ephelide, Duperrat2))(DubreuilhのⅠ期)としてはじまり,後に本症に特徴的な異型細胞の離開(Segreg ation,Miescher3))がみられるようになる.単純な色素沈着は,『光顕的には普通の色素沈着と区別出来ない』といわれているが,電顕的知見4)を背景として注意深くみてゆけば,光顕的にもその特徴を或程度知ることが出来るのではあるまいか?悪性黒色腫の種々の対策5)のうち,本症の知見を詳かにし,未だlentigo malignamelanomaとならない時期に処置することも重要と考えられる.

原著

続発性稗粒腫とその発生について

著者: 辻卓夫 ,   中野和子 ,   鈴木伸典

ページ範囲:P.201 - P.207

 10例の患者にみられた続発性稗粒腫について,その肉眼的および組織学的所見をのべると共に,これらの発生母地および発生機序を検討した.特に発生母地については,観察した73個の稗粒腫のうち54個はエックリン汗管由来のもので,2個は毛嚢由来,残りは由来不明であつた.汗管由来の稗粒腫では種々の発達段階のものがみられたが,このいずれにも共通していることは,稗粒腫壁を貫通する汗管の状態で,これらは正常の表皮内汗管にみられる所見とほとんど同じであつた.
 続発性稗粒腫の発生機序については,表皮および附属器の再生における再生上皮細胞と結合組織との異常関係を背景にして生じてくるものと想像され,特に汗管由来の稗粒腫では,汗管側から再生してきた表皮部分とその周囲から再生してきた表皮部分との融合障害による一種の歪みと考えたい.そしてこのような条件によつて生じた後,これらは角質性物質を包むうつ滞性嚢腫として更に発育していくと考える.

Phialophora gougerotiiによる皮膚膿瘍

著者: 岡吉郎

ページ範囲:P.209 - P.216

 24歳,女子.SLEにてステロイドによる治療中.右手小指に難治性の皮膚膿瘍を,手指に皮下結節を生じ,培養により黒色真菌を得た.菌学的に検討し,若干の問題点はあるが,本菌をPh.gougerotiiと同定した.本菌が37℃で発育を示さないことから,温浴による治療を試み,指背の皮疹は完治した.しかし手背の皮下結節には効果なく,これは摘除した.Ph.gougerotiiによる疾患は稀であり,温浴が奏効したという報告はみられないので,ここに報告した.なおこの患者には難治性の爪カンジダ症,再発性の皮膚粘膜カンジダ症があり,またツ反陰性,DNCBテスト陰性など細胞性免疫の低下による真菌感染への抵抗性の減弱がうかがわれた.

Eosinophilic Pustular Folliculitis

著者: 藤田優

ページ範囲:P.217 - P.222

要約 29歳男.既往にてんかん発作あり,アレビアチンを常用.現症歴:約3年前から,顔面,躯幹に瘙痒性紅斑丘疹ないし膿疱出現し,近医にてステロイド内服,外用にて一進一退,周期的に増悪をくり返す.現症:顔面,躯幹に毛孔一致性紅色丘疹ないし膿疱多発し,躯幹では比較的境界鮮明な,辺縁に膿疱多発,中心部色素沈着,落屑せる局面形成す.手掌,足蹠,口腔粘膜に皮疹なし.組織学的に毛孔に一致した好酸球浸潤を主体とする膿疱形成.膿疱培養,細菌,真菌ともに陰性.検査所見に白血球15400,好酸球15%,CRP20時間+3.0の異常所見あり.太藤らのeosinophilic pustular folliculltisと診断,一年余の経過を観察したが,皮疹は寛快,再燃をくり返し,多くの場合,再燃に一致Lて,白血球増多,好酸球増多を伴うことを認めた.

皮膚アスペルギルス症

著者: 池田真康 ,   金原武司 ,   福代良一

ページ範囲:P.223 - P.227

 帝王切開を受け臥床中の家婦に生じた皮膚アスペルギルス症の1例を述べた.症例は31歳.昭和45年8月11目初診.病歴:7月30日帝王切開,仰臥位で臥床.術後3日目背部中央2か所に小膿疱の集まりが発生,融合して浸潤局面を形成.発病後10日目に皮膚科受診.現症:全身状態および帝王切開術創に異常なし.背部中央で脊柱の左側に,小鶏卵大と鳩卵大の2個の褐紅色浸潤局面がやや離れて縦に並んでいる,局面中央は潰瘍化して壊死塊が固着,辺縁は肉芽腫状で小膿疱多数,局面の周囲に衛星状の小膿疱(+).その様子は毛嚢炎および癰に似る.一般検査成績:貧血と血沈促進.組織像:拡大・破潰した毛嚢を中心に膿瘍形成,膿瘍内に隔壁ある太い菌糸多数,菌糸は放射状発育を示し,それらの先端は染まりが悪く,枯れたようにみえる.培養:組織片から純培養的にAspergillus fumigatusが得られた.本菌株はウサギに病原性(+),経過:背部の潰瘍は約1カ月半で瘢痕治癒した.

Microsporum canisの凍結走査型および走査型電子顕微鏡による観察

著者: 渡辺進

ページ範囲:P.229 - P.233

 倉敷市内在住の12歳男子小学生に発症したMicrosporum canisによる毳毛部白癬の1例を経験した.患者はペルシャ猫を飼育していてその猫には脱毛斑があり,その病変部からもMicrosporum canisを分離した.米粒培地に培養せるMicrosporum canisを凍結走査型及び走査型電子顕微鏡で観察し比較してみた.その結果凍結走査型電子顕微鏡では変形が極めて少なく生に近い状態で観察ができたが走査型電子顕微鏡では変形が強くみられた.固定,脱水,乾燥の必要がない凍結走査型電子顕微鏡は霜取りの問題が解決されれば真菌の観察には極めて有力な器具となるであろう.

講座

爪の疾患(3)

著者: 東禹彦

ページ範囲:P.234 - P.246

 これまでの2回で,主として爪変形の症状について記し,病変の発生機序についても記した.今回は病因別にどのような異常が爪に生じるかを記す.爪の異常を原因によつて分類すれば表1の如くになる.これらのうち,Aの生理的変化およびBの先天性の爪の変化についてはすでに記したので省略し,Cの後天性の爪の異常について記す.

連載 皮膚科学に貢献した医学者たち・10

色素性蕁麻疹(その3)

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.248 - P.253

5.フランスにおける見解
 フランスにおいては色素性蕁麻疹を説明するのに,二とおりの傾向が見られる.その一つは本症に関連した記述を歴史的に行うもので,最初に色素性蕁麻疹を古典的に記載し,次いで最近明らかにされた肥満細胞症をつけ加えるのである.他の一つは色素性蕁麻疹を初めから肥満細胞症の一型と定義し,肥満細胞症を概観して,その中に色素性蕁麻疹を位置づけるのである.前者は歴史的敍述法を襲用した従来からの見かたであり,後者は,イギリスやアメリカにおけると同じく,疾患包括的の新しい観点に立つものといえよう.
 ここには本症記載のこの二つの代表として,DuperratとDegosとの記述を掲げるが,先ず歴史的立場をとるDuperratの記すところを述べる.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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