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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科28巻4号

1974年04月発行

雑誌目次

図譜・379

Porphyria cutanea tarda

著者: 木村恭一 ,   幡慶一

ページ範囲:P.270 - P.271

患者 45歳,農業
初診 昭和48年2月23日

原著

小児丘疹性先端皮膚炎

著者: 高橋吉定 ,   高橋久 ,   冲永公江 ,   西沢一郎

ページ範囲:P.273 - P.278

 生後10カ月の女児(第1例)と9カ月の男児(第2例)とに発生した本症を報告した.両例とも下肢,上肢,顔面に対側性に丘疹を突発し,少数には体幹にも丘疹を生じた.丘疹は単一性の苔癬様形状を示した.第1例においては丘疹は融合性著明で,点状出血を多発した.さらに全身的には肝脾を触知し,未梢血中に異型リンパ球を証した.組織学的に丘疹に小水疱形成を認めた.第2例においては丘疹の融合傾向少なく,紫斑を認めず,丘疹の組織学的変化も全身症状も前例より軽度であつた.臨床検査的には両例とも血清トランスアミナーゼは高値を示し,ポールーバンネル反応は陰性であつた.発疹は初発後それぞれ11日および14日でほとんど消失した.

二重盲検法によるClotrimazoleクリームの皮膚真菌症に対する治験

著者: 高橋伸也 ,   香川三郎

ページ範囲:P.279 - P.285

 全国10施設共同で,1%Clotrimazoleクリームの皮膚真菌症に対する治療効果を,二重盲検法を用いた偽薬との比較によつて検討した.治験対象は汗疱状白癬,体部白癬股部自癬,カンジゲ性指間糜爛症,癜風である.治療成績の統計学的解析は,臨床効果についてはχ2検定あるいはKolmogorov-Smirnov検定,菌陰性化についてはχ2検定あるいはFisher直接確率計算法によつた.その結果,臨床効果では体部白癬,股部白癬,カンジダ性指間糜爛症に,菌陰性化では汗疱状白癬を除く4疾患において有意差をもつてClotri-mazoleクリームの有効性が証された.副作用としては一次刺激作用が低率に認められたに過ぎない,外用抗真菌剤治験における二重盲検法の意義,必要性についてはさらに検討を要するが,治験対象として汗疱状白癬は適当といえない.癜風に対する薬剤の価値評値には症状の改善度よりも菌学的検査成績を指標とした方が望ましい.

スポロトリクム症の3例

著者: 苅谷英郎 ,   高橋容子

ページ範囲:P.287 - P.291

 スポロトリクム症が関東地方に偏在していることは従来より指摘されているが,近年各地からの報告の増加とともに関東地方の症例の占める割合は減少してきているといわれる.千葉大学皮膚科における本症の増加は依然として著しいものがあり,特に最近の数年間は毎年10例以上を経験している.今回,これらの症例のうち小潰瘍と瘢痕化を繰り返しつつ拡大した症例,5年にわたり診断不明のまま治療され手指の変形固定をきたした症例,高齢者に生じ短期間に大型の深い潰瘍を形成した症例について報告した.

外科的侵襲によつて皮疹が増悪したと考えられる水痘の1例

著者: 谷垣武彦 ,   小塚雄民

ページ範囲:P.293 - P.296

 4歳,男子.腹部に水痘様皮り参が2個あり,その時に小耳症の手術の)ため右大腿部から植皮片を採取した.2〜3日後に植皮片を採取したまわりに水疱が多発した.初代人胎児細胞を使用して,皮疹の内容液を材料にウイルス分離操作を行い分離されたウイルスの生物学的性状からvaricella-zoster virusと同定した.皮疹が少なくてもウイルス血症を起こしていると考えられる患者に外科的侵襲その他の皮膚刺激が加わるとウイルス性皮疹が増悪することを報告した.

皮膚科領域における血清IgE測定の意義

著者: 只野寿太郎 ,   赤坂陽 ,   大川義栄 ,   野上有信

ページ範囲:P.297 - P.300

 第5の免疫グロブリンであるIgEはレアギン活性を持つタンパク質として1966年石坂らにより同定され,アレルギー性疾患との関連が報告されている.即時型アレルギー反応を呈する疾患はPrausnitz-Kustner反応によつて比較的容易に証明できるが,遅延型アレルギーを呈するアトピー性疾患でのP-K反応は陰性例が多く,抗体の証明も必ずしも容易でない.このことから血清IgE値を知ることにより,レアギン最を推定し臨床症状や治療効果との関連を知ることが可能かどうかについて検討した.IgE値は臨床的にはアトピー性皮膚炎で最も高率に陽性となるが,その他アトピー性素因を持つ多くの疾患でも陽性を示す.臨床検査室のレベルでは本検査はアトピー素因の強さをスクリーニング的に知る検査法として応用できると思われる.

一頁講座

鞏皮症,皮膚筋炎の診断

著者: 籏野倫

ページ範囲:P.286 - P.286

 鞏皮症のうち限局性のものはともかく汎発性のものの診断,特にそれの早期の診断は必ずしも容易ではない.しかしわれわれ皮膚科医を十分なつとくせしめる診断基準は残念ながら未だ見当らない.一方皮膚筋炎についてはWHO,あるいはMed—sgerの診断基準はあるがこれらについてもなお充分なものとはいわれない.因みに皮膚筋炎は広く多発性筋炎の範疇に含めて本質的には両者は同一疾患と考えられているようである.
 われわれは今般厚生省の強皮症(内科では用語委員会の定めにより強の字を用いることになっているという.従ってprogrcssive systemicsclerosis Goetzに関しては以下鞏のかわりに強を用いることにする),皮膚筋炎,多発性筋炎調査研究班(班長籏野倫)を組織するにあたり調査研究を目的とする暫定的診断の手引きを作成した.広く皮膚科,内科ならびに基礎医学者により検討されたものであるが,あくまで手引きであつて真の意味の診断基準ではない.真の診断基準はこの手引きをもとに調査研究を行つてはじめて完成されるものであるが,ここに記して参考に供したい.

汗孔角化症→エリテマトーデスの関連—枠組の構成

著者: 筏淳二

ページ範囲:P.292 - P.292

 標題をみてとまどわれた方もあるだろう.汗孔角化症→ダリエ病→家族性良性慢性天疱瘡(以下H-H病)→尋常性天疱瘡→紅斑性天疱瘡→エリテマトーデス(以下LE)と書けばおおかたの皮膚科医は納得されると思う.これを1本の軸とし,さらに尋常性天疱瘡より他の天疱瘡群,類天疱瘡,ジューリング皮膚炎,滲出性紅斑を分岐させ,LEより皮膚筋炎,硬皮症,figurate erythemaを分岐させる.これら分岐もfigurateerythemaを除き異論は少ないであろう.
 まず共通点をあげると,汗孔角化症,ダリエ病,H-H病は家族内発生,季節的変動,膿疱の出現をみる.さらに前2者は粘膜疹,中心臍窩(組織学的),毛のう,汗孔の病変がある.異常角化,棘融解は後2者の特徴で,同症との見解もある.汗孔角化症でも異常角化はまれでない.天疱瘡群は書くまでもない.紅斑性天疱瘡とLEとは蝶型紅斑のほか,最近両者に尋常性天疱瘡も含め重症筋無力症,胸腺異常,抗核抗体をみることが明らかになつた1).逆に相違点をあげると,汗孔角化症は棘融解を欠きダリエ病と異なる.顔を侵すことは,ダリエ病では普通であるが,成人のH-H病では例外的のみならず,口腔粘膜をも侵さない,尋常性天疱瘡の家族内発生はまれで,予後もH-H病と対照的である.水疱はLEでもみるが基底層の液化変性によるとされ,類天疱瘡などの水疱の発生機序と異なる.本質的な差は,天疱瘡類,LEは自己免疫疾患であり,汗孔角化症,ダリエ病は自己免疫を思わす所見を欠くことである.以上,個々の疾患の間に明確な差異はあるが,相互に関連性をもつことは否定できない.

皮膚臨床—病理カンファレンス(1)

脂腺母斑の上に発生しSyringocystadenoma Papilliferum

著者: 安原稔 ,   清金公裕

ページ範囲:P.302 - P.304

症例 14歳 女子
現病歴と現症 出産時より左眉毛の上方に黄褐色の斑が存在した.2歳頃から病巣の中央部が隆起してきた.5歳の頃にこの隆起物を電気焼灼術で除去した.9歳の時,某医により全病巣にレントゲンの照射をうけた.その後病巣の中央部は徐々に隆起し,現在,32×18mmの縦に長い黄褐色点状物の集合から成る境界鮮明な病巣内に15×8mm,高さ5mmの紅色腫瘍が存在する(図1).

Dermal Duct Tumor

著者: 石川謹也

ページ範囲:P.304 - P.305

症例 57歳 女子
現病歴と現症 発生時期は明確でない。右下腿の上1/3部の伸側で脛骨前縁より内側3.5cmの部に4×4mm大,淡紅褐色,周囲の健皮よりゆるやかなカーブをえがいて隆起した腫瘍が認められた.硬度は軟,圧痛なし.母斑細胞母斑も多少疑われたが,診断不明確のまま切除した.

Pleomorphic Adenoma of Sweat Apparatus(Apocrine?)With Tumor of Follicular Infundibulum

著者: 中西綾子 ,   水野信行

ページ範囲:P.305 - P.309

症例 75歳 男子
現病歴と現症 初診(昭和48年2月14日)の5年前から鼻尖部に紅色を帯びた丘疹状の皮疹があり,徐々に大きさを増して来たという.自覚症状はない.鼻尖部に径12mm,淡紅色球状広基性の腫瘤がみとめられた.表面は平滑で光沢があり,毛細血管の拡張がみられる.弾性硬で下床との可動性は少ない.腫瘤の頂部に更に径4mm半球状の隆起がある.圧痛はない.鼻孔には異常所見をみとめず,所属リンパ節もふれない(図1).

Clear Cell Hidradenoma

著者: 安原稔 ,   清金公裕

ページ範囲:P.309 - P.310

症例 33歳 女子
現病歴と現症 8年前より右臀部下部の大腿屈曲部に腫瘤が発生し,徐々に大きくなつて,30×20mm,高さ10mmの表面平滑な半球状に隆起する弾性軟の腫瘤となつた.自覚症状はないが,腫瘤の一部に浅い潰瘍を来し,漿液性分泌物を排出する(図1).

Clear Cell Hidradenoma

著者: 山本哲雄 ,   桜根弘忠

ページ範囲:P.311 - P.312

症例 41歳 男子
現病歴と現症 1年前,頭頂部に無自覚性腫瘤が単発し,徐々に増大してきた.初診時,腫瘤は17×14×10mmの球状で有茎性,表面は紅色で湿潤する(図1).これを全切除した.

講座

戦後25年間の西日本の梅毒

著者: 野北通夫

ページ範囲:P.313 - P.325

 戦後20年間(1946〜1965)の西日本の各大学における梅毒の動態についてはすでに,1968年の「皮膚と泌尿」30巻3号に報告したが,1971年秋,たまたま,第26回台湾医学会総会に招かれた機会に,日本の梅毒を紹介する意味で,その後の5年間を加えて発表した.本報告は,当時,病床日誌製本中などのため欠損していた部分を補なつて作り上げたものである.
 前回の報告は,教室員が分担して,直接関係各大学を訪づれてできるだけ精しい調査表を作つたものであるが,今回はアンケート形式で集めた成績によるもので,この点前回に比し,多少明確さを欠く点がないでもない.

連載 皮膚科学に貢献した医学者たち・11

色素性蕁麻疹(その4)

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.326 - P.331

5.フランスにおける見解(前回から続く)
(b)Degosの記述肥満細胞症の他形(Autres formes de mastocytoses)6)
 われわれの見解によれば,臨床面においては,肥満細胞症の明らかに異なる数型はこれを色素性蕁麻疹から分けるのが適当であると思う.この特殊形にはしばしば色素沈着のないものがあるが,ここでは皮膚肥満細胞症からは別けないで記載する.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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