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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科28巻5号

1974年05月発行

雑誌目次

図譜・380

足蹠に生じたSolitary mastocytosis

著者: 西山芳夫

ページ範囲:P.350 - P.351

患者 2歳6カ月 女児
初診 昭和48年1月29日

綜説

接触アレルギーとリンパ節

著者: 永井隆吉

ページ範囲:P.353 - P.358

 周知のように,接触アレルギーはいわゆる遅延型アレルギー反応ないしcellular hypersensitivityの一典型とされており,その発生機転などについては既に多くの業績とモノグラフがあり,今更解説を試みるのも蛇足を加える感がないでもない.しかも,最近の免疫・アレルギー学の進歩は目ざましく,わたくし如きものには到底消化しきれるものではないという感を深くしているのであるが,編集部のもとめに応じ,及ばずながらも,上記表題について,文献に基づいて柳かの解説を試みる次第である.

原著

カンジダ性肉芽腫の1例

著者: 福士堯 ,   亀田忠孝 ,   花田勝美 ,   野口允

ページ範囲:P.359 - P.364

 13歳,女子.10歳時に額に膿疱性皮疹を生じ,次第に被髪頭部,顔面に黄色調の汚い痂皮を伴う肥厚する潮紅性病巣が拡大し,右2指爪の肥厚,溷濁,変形をもみるようになり,更に外陰にも皮疹をみた.何れの部位から採取した材料からもC.alb.を得た.また,喀痰中からも鏡検ならびに培養で同じ菌を得た.組織学的には角質屑,毛のう上皮に多数の仮性菌系の存在をみた.仮性菌系はH・E染色においても染色陰性像として観察し得た.治療上,ナイスタチン,Bay-B-5097は効果は期待出来ず,アンフォテリシンBの投与で治癒状態を得た.

Clear cell hidroadenomaの1例

著者: 吉井田美子

ページ範囲:P.365 - P.371

 33歳,家婦の頭頂部に小豆大,表面やや凹凸ののある腫瘤を生じ,自覚症状はなよい.組織学的に,真皮上層から中層に,周囲の組織とは明らかに境された腫瘍塊を認める.
 腫瘍実質は結合織によつて小葉に分けられる.腫瘍細胞は単一ではなく,索状〜石垣状に配列する立方形または紡錘形の上皮細胞様細胞と,細胞質の明るいClear cell,及びその移行形からなる.これらの細胞はPAS陽性・ジアスターゼ消化性の顆粒を豊富に持つ.一部小葉では,円柱状の細胞にかこまれた管腔形成を認め,好酸性,PAS陽性,ジアスターゼ抵抗性の管腔内容を持つ.
 腫瘍組織は,毛嚢漏斗部で,表皮細胞と連続性が認められるが,両者ははつきり区別出来る.以上の組織像より,本腫瘍はいわゆるClear cell hidroadenomaに一致するものと考え,本症の臨床像組織学的所見,鑑別診断などについて文献的考察を行なよつた.

新生児に発症した癜風

著者: 滝内石夫 ,   中島国夫

ページ範囲:P.373 - P.375

 症例は3ケ月,男児.神奈川県足柄市在住.正常分娩で発育および栄養状態も良好であり,また家族内に癜風はない.
 現病歴は生後4週の乳児検診時に保健所にて前額部の皮疹を指摘され,時折,副腎皮質ホルモン軟膏を塗布していた.その後わずかずつ周囲に拡大してきた.
 現症は眉間部を中心として左右対称性に眉毛部,眉毛上部に大豆大までの健常皮膚色よりわずかに白色を呈する境界明確な色素減弱斑が極くわずかに粃糠様鱗屑を付し融合多発する.局面は掻破により著明に落屑する.鱗屑の培養は陰性であり,苛性カリ標本にて癜風菌を証明した.
 皮疹の形態は乳児と成人の間に差はないようである.しかし乳児の癜風の特徴は顔面,殊に眉間部より眉毛部に好発し,家族内および同居入に同症が見られず,苛性カリ標本所見では菌要素が極めて少ない事等が考えられる.

虫刺によると思われる環状紅斑について

著者: 山田瑞穂 ,   河合享三

ページ範囲:P.377 - P.381

 第1例:40歳男子,胸部,腹部,鼠蹊部に遠心性に増大し,環状の,また融合して不規則形の紅斑となり,それらの大部分は中心に虫刺と思われる小丘疹を有していた.第2例:28歳男子,左上腹部に遠心性に増大する環状の紅斑を生じ,おくれて生じた環状紅斑の中心に小丘疹を有していた.第3例:42歳女子,左臀部に遠心性に増大する大小の環状の紅斑,不規則に融合した紅斑が見られ,これらの中心に点状の小丘疹を有するものが多かつた.第4例:66歳女子,左臀部に大きな遠心性環状紅斑とその辺縁に小紅斑が見られ,大きなものの下縁に小丘疹が見られた.組織学的所見は,4例とも真皮の血管周囲性細胞浸潤があり,好酸球をかなり混じていた.これらの例は,虫刺により注入された毒液が遠心性に拡散するにつれて,環状の紅斑を生じたものと考えた.本症は,Lipschutz, AfzeliusのEry-thema chronicum migransとは異なるが,虫刺により生ずる遠心性の環状の紅斑という点では類似のものと考える.

ノルウェー疥癬の1例

著者: 藤本典男 ,   山田瑞穂

ページ範囲:P.383 - P.387

 患者は26歳男子,沖縄県宮古伊良部島の出身で,約2カ月前より大阪の某工場に勤務している.インフルエンザの予防ワクチンをして頭痛,高熱を出して内科へ入院し,コルチコイド,抗生剤などの治療を受けていたところ,約2カ月のうちに怪異な形の角質塊が大腿部や腰部に生じた.
 皮疹を生検したところ,ノルウェー疥癬と判明したが,治療する間もなく死亡した.本症発症の原因には種々の説があげられているが,その病像発現が内科的疾患およびその治療に大いに関係があると思われる症例で,免疫学的背景が考えられる.内科的には粟粒結核という免疫不全状態があり,さらにコルチコイドという免疫抑制剤が投与されて,短時日のうちにノルウェー疥癬の病像を完成したと考えられる症例である.

アンピシリン投与による発疹

著者: 東順子 ,   須貝哲郎 ,   高木喬

ページ範囲:P.389 - P.394

 アンピシリンによる発疹頻度は,通常のペニシリンよりも有意に高く,本剤による感作が通常のペニシリンによる感作よりも成立し易いことを示唆する.アンピシリンによる薬疹例はペニシリンG,アンピシリンおよびbenzyl penicilloylヒト血清アルブミンでの皮内反応陰性例がほとんどで,皮内反応のみでは薬疹を予知することは困難であり,薬疹の原因薬剤の決定には,内服テストを行なわねばならない.アンピシリン製剤相互間には発疹頻度に差がなかつた.例数が少ないので,統計的に有意の差を認めなかつたが,アンピシリン内服による5.9%に対し,注射では12.5%の発疹頻度であつた.また,薬疹と考えられた例でも,誘発テストで,連続内服を行なつても発疹を生ぜず,薬剤過敏以外の原因によるものも存することを確認した.アンピシリンとヘタシリンによる薬剤過敏交叉例を2例中2例に認めたが,ヘタシリンでの発疹頻度は通常のペニシリンと同じであつた.

一頁講座

新しい治療法の2経験,他

著者: 樋口裕乗

ページ範囲:P.372 - P.372

1)ゲルタルアルデハイドによる爪白癬の治療
 Suring1)は21例の足趾のの爪白癬にゲルタルアルデハイド水溶液(以下GAと略す)を塗布し著効を得たと報告した.従来GAは電顕用固定液または消毒薬として用いられており,その殺菌効果も極めて優れているといわれる.彼の用いたGAは次の液である.
A)20%Glutaraldehyde

皮膚臨床—病理カンファレンス(2)

Apocrine duct epithelioma?—Organoid nevus上に発生した

著者: 池田重雄 ,   中山坦子

ページ範囲:P.396 - P.397

症例 31歳 男子
現病歴と現症 生来,頭頂部に淡黄褐色,脱毛性局面あり,15歳頃より表面が不規則疣贅状,plateau状に隆起.最近2〜3年来,更にその上に半球状の腫瘤発生.物に触れると易出血性.頭頂に鳩卵大,皮面より1〜2mm plateau状に隆起し表面凹凸不正細顆粒状,ろう様光沢を示す局面と,その病巣内後方の辺縁部に大豆大,ピンク色を呈する半球状腫瘤があり,一部ビラン・出血を示し血性痂皮を付着している(図1).

Malignant eccrine duct epithelioma?

著者: 池田重雄 ,   今井清治

ページ範囲:P.398 - P.399

症例 74歳 家婦
現病歴と現症 約40年前,頭頂部に小指頭大の結節を生じたという.20年前同部が物にぶつかりかなりの出血を見た由.以後同腫瘤は徐々に増大,10年前某病院を受診,外用療法を受けるも軽快せず.最近急速に増大し,鮮紅色を呈する拇指頭大の腫瘍となつた.頭頂部に39×37×20mm,半球状に隆起した腫瘤が認められ,表面は紅色ビラン面,粗大顆粒状乃至乳頭状を呈し,一部に血痂の付着をみる.僅かの刺激で容易に出血をみる.領域リンパ節腫脹(転移)はみられない(図1).

Eccrine ductocarcinoma

著者: 高安進 ,   佐藤健二

ページ範囲:P.400 - P.401

症例 59歳 男
現病歴と現症 2,3年前,後頭部のホクロ様皮疹に気づいた.その後徐々に増大,隆起し,表面はびらんを呈するようになつた.後頭部左寄りに2.8×2.4cmのほぼ楕円形,高さ3mm位隆起した腫瘍がある(図1).硬さは弾性硬,表面は暗赤色で一部びらん面を呈し,中央部は少し陥凹している.周辺皮膚に浸潤を触れず,深部組織とは可動性がある.所属リンパ節は触れない.

Eccrine spirocarcinoma

著者: 井上勝平

ページ範囲:P.402 - P.403

症例 46歳 男子
現病歴と現症 昭和35年夏,左背部を打撲,皮下出血が長期間認められていた.昭和40年ごろより同部に腫瘤が出現,急速に増大,小児頭大となり出血をみるようになつたので熊本大学第2外科に昭和45年12月23日に入院した.入院時所見では栄養・体格中等,表在リンパ節は触れない.肝・脾も触知しない.一般検査成績では血沈値の亢進(1時間1直52mmの以外は胸部レ線を含めて異常なし.皮膚所見では左背部に12×15cm大の硬い紅色腫瘤があり,一部潰瘍化し,静脈性出血をみる(図1).

Cervical auricle

著者: 須貝哲郎

ページ範囲:P.404 - P.405

症例 37歳 男
現病歴と現症 幼時より(生下時?),左前頸部の鎖骨やや上方に腫瘤を有していたが,自覚症状のないままに放置していた.初診時,左胸鎖乳突筋の前面,鎖骨のやや上方に,14×10mm大の不規則な隆起があり(図1),その部の皮下に硬い腫瘤を触れる.腫瘤は軟骨様硬で,皮膚と可動性,基部と固着し,不整形を示す.

連載 皮膚科学に貢献した医学者たち・12

色素性蕁麻疹(その5)

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.406 - P.410

6.ドイツにおける見解(2)
(b) Gertlerの記載
 ドイツにおいては,ヨーロッパ諸国やアメリカと異なり,肥満細胞症の名称は一般的に用いられない.したがつて,色素性蕁麻疹も肥満細胞症の一型としての位置を与えられず,細網症に含ませて論ずるのが通例である.ここにおいてドイツの皮膚科学者の意味する細網症の内容を知つておく必要を生ずるが,それに関してはGertlerによる最近の記述8)がある.そのうちから"血芽球症"と"細網症"とを抜粋して下記する.白血病などについての記述も混じているので,やや繁雑の観がないでもないが,記載の順序の関係から,省略しないでしるすことにする.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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