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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科28巻7号

1974年07月発行

雑誌目次

図譜・382

皮膚疣状結核

著者: 岩崎隆 ,   湖山里美 ,   服部怜美 ,   本田光芳 ,   浦辺清道

ページ範囲:P.506 - P.507

症例 31歳 主婦
初診 1972年6月26日

綜説

統計からみた新生児の皮膚変化

著者: 肥田野信 ,   中島忍 ,   小林登喜子 ,   浅野さとえ

ページ範囲:P.509 - P.514

 新生児の皮膚変化について近年その解明を目指す研究がいくつか出現しはじめたが,統計的に扱つた論文は未だ少ない.我々はさきに1120名についての統計を一応まとめて報告したが1),その後斎藤・宗像2)による1000名について5年間休みなしに行つた精力的かつ詳細な研究が発表された.我々も引きつづき東京警察病院において観察を続けていたが,この度5年間の3257名に関するデータをまとめたのでここに報告したい.
 新生児にみられる皮疹は多岐にわたるので,このうち母斑や血管腫の類は西日本皮膚科誌に詳細を発表する予定である.従つて本論文中この項に関しては簡単な数を挙げるに止めたい.なお考察は各項目につき付することにする.

一頁講座

アメリカ臨床免疫アレルギー学会の試験

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.516 - P.516

 アメリカにアメリカ臨床免疫アレルギー学会(American Associationof Clinical Immunology and Al-lergy)という臨床家を主体とする学会がある.昨年度の年会は,テキサス州のサン・アントニオで開かれた.この会合に出席した医師の数は約300名であつたが,演説は記念講演ただ1題で,あとは出席者全部の自己検証試験(self-assessment exami-nations)に当てられた.しかも会期は4日間という長さである.
 補習教育を主眼とする学会で,この臨床免疫アレルギー学会ほど多数の若い医師を引きつけた他の学会はなかつた.

Dermal back flow

著者: 大熊守也

ページ範囲:P.523 - P.523

 リンパ造影の際,注入された色素や造影剤が,注入部位以外の他の部位の皮膚に逆流する現象をいう.こねは,大きなリンパ管に通過障害があり,ここまで達した色素や造影剤が,障害部位のリンパ管に流入する他の末梢リンパ管へ逆流することによる.この際,この部位より末梢にあるリンパ節が正常であつたり1),弁機能不全がなければこの逆流現象はおこらない2,3).また,リンパ圧の上昇,リンパ管壁の透過性増大,リンパ浮腫がみられるのが普通であるが常にそうとは限らない4).原因として,腫瘍,外傷,奇形,細菌やフィラリヤによる感染等が考えられる.乳び管より中枢のリンパ系に通過障害があつた場合はchylous refluxと呼ばれ,その障害部位によりchylo-us ascites,chylothorax,chyloperi-cardium,chyluria,chylometror-rhoeaと呼ばれるが,皮膚まで逆流する場合は,白濁した水溶性内容を入れた水疱性病変として認められる.また外傷によりこの水疱が多数,長期間にわたつて破ける場合は,脂質並びに脂溶性ビタミンの欠乏症が現われる.脂質を取りこんだ組織球よりなる黄色腫も付随してみられることがある.治療は,その原因にもよるが,外科的に,拡張したmegalymphaticの結紮,リンパ管静脈吻合などが行われる2).写真は最近経験した症例で,72歳女子,右側に著明な両側のリンパ節,リンパ管が後腹膜,鼠径部並びに下肢の領域に溶いて広範におかされていることがリンパ造影により証明きれ,右趾に注入されたパテントブルー,並びにリピオドール造影剤が右下腿にdermat back flowをおこした際の右下腿のX線像である.この写真は皮膚に分布するリンパ管の立体像を示す点でも興味ある所見である,この症例のリンパ管の通過障害をおこす原因としてフィラリヤまたは細菌による感染が考えられている.右鼠径部リンパ節は組織学的検査により高度は線維化並びにヒアリン変性が認められた.皮膚科医にとつてdermal back flow または,chylous refluxに関して留意すべきことは,これらの現象が,全身のリンパ管疾患の際現われる最初の臨床的所見であることがしばしばであること,他臓器悪性腫瘍の皮膚転移や,スポロトリクス症のリンパ管型が必ずしも中枢の方向へと皮膚病変が拡がらず末梢方向へ逆もどりして皮疹があらわれることがある事などの事実は,この概念で説明ができるのではないかということである.

原著

Lichen myxedematosusの1例—肝機能障害を伴つた症例

著者: 加茂紘一郎

ページ範囲:P.517 - P.522

 Lichen myxedematosusの成因のひとつに挙げられる肝機能障害を伴う例を経験した.自験例では,肝臓の変化を組織学的に慢性肝炎活動型と診断した.ステロイド剤内服により肝機能障害の改善に平行して皮疹も軽快した.本症と肝機能障害との因果関係について若干の私見と文献的考察を加えた.

先天性魚鱗癬の兄弟例—剖検例,特に胸腺,脾臓,リンパ腺の変化について

著者: 渡辺進 ,   渡辺悟

ページ範囲:P.525 - P.530

 先天性魚鱗癬の兄弟例を報告した.両親及び家系に血族結婚はみられない.兄は生後22日目に急性肺炎で死亡し,弟は生後4日目に未熟児及び羊水嚥下性肺炎で死亡した.剖検で興味ある所見は兄では胸腺に強度の退縮,脾臓,腸間膜リンパ腺の胸腺支配域にリンパ球の減少,弟では胸腺にStarry sky様の退縮がみられたが兄の例ほど変化は強くなく,脾臓,腸間膜リンパ腺に所見はみられなかつた.これらの所見より兄の例では胸腺退縮の結果,胸腺ホルモン等の分泌が障害されその影響が胸腺のみならず脾臓,リンパ腺にも及んだが弟の例では生後4日目に死亡したこともあつて変化が胸腺にのみとどまつたものと推察した.先天性魚鱗癬に於いては感染等の他に皮膚の病変それ自体がStressとなり胸腺に変化を及ぼしてくることも考えられる.

結節性紅斑とpustular bacteridの併発例

著者: 水野久美子 ,   石原勝 ,   伊藤正俊 ,   安田利顕

ページ範囲:P.531 - P.536

 扁桃炎に引き続き,右足関節上部と両膝関節下方に結節性紅斑が生じ,その後まもなく両手掌,両膝蓋,左大腿膝蓋直上,左足背にAndrewsのpustular bacteridと考えられる無菌性膿疱が発生した28歳の主婦例を報告した,両疾患はいずれも日常時おり経験されるが,その併発例は極めて稀と考えられるので,それぞれの疾患の成因について種々考察を加え,本症例の場合はβ溶血性連鎖球菌の感染アレルギーによつて生じたものと結論した.安静と抗生物質投与により皮膚所見および諸異常検査所見は比較的急速に軽快した.

ウイルス性皮膚疾患の電顕的脱落細胞診

著者: 長尾貞紀 ,   薗田紀江子 ,   我妻亜喜雄

ページ範囲:P.537 - P.542

 数種のウイルス性皮膚疾患の皮疹より,水疱蓋,膿疱蓋,痂皮をピンセットで剥離し,これらをエポン包埋し超薄切片とし電顕的に観察したところ,手足口病をのぞいて,それぞれのウイルス粒子が高率に認められた.この方法は生検手技を用いずに簡単に材料を採取でき,かつウイルス粒子の発見率は高いので,ウイルス性皮膚疾患の診断,特にEczema herpeticumとEczema vaccinatumの鑑別診断に有力な方法であると思われる.この方法は脱落した細胞群を電顕的に観察する方法であり,ウイルス粒子の有無のみならず,細胞の変化も観察しうるので,電顕的脱落細胞診といえる.
 手足口病の表皮内封入体様物質のあるものは,電顕的に"fibrillarer Korper"に一致するものと思われた.また表皮内にウイルス粒子を確認出来ず,本法によつては手足口病の診断は他のウイルス性皮膚疾患よりも困難と思われた.

Proliferating Trichilemmal Cyst

著者: 木村俊次 ,   田中玲子

ページ範囲:P.543 - P.548

 76歳,女子の頭頂部に生じたproliferating trichilemmal cystの1例を報告し,本邦例を集計した.本腫瘍の特徴として,中年および高齢の女性の被髪頭部に好発すること,外毛根鞘細胞類似の細胞より成る嚢腫の増殖がみられ,その壁は顆粒層を欠く角化を示すこと,良性のdyskeratosisがみられることなどが挙げられる.またその組織像から本腫瘍の発生機序に関して2つの可能性を考え,既存の嚢腫壁の増殖によるものをⅠ型とし,外毛根鞘の腫瘍性増殖に伴う二次的な嚢腫形成によるものをⅡ型とした.報告例にはⅡ型が多く,自験例もⅡ型に属すると思われる.

単発性Nevoxanthoendotheliomaの1例

著者: 滝野長平 ,   大熊守也

ページ範囲:P.549 - P.554

 8カ月男児の頭頂部に生じた単発例.6カ月頃米粒大の皮疹として初発し,漸次大きさを増して初診時には超豌豆大,更に2カ月後には桜実大となり,擦過傷を受け易いため全摘出を行つた.現在まで再発ならびに他部位への新生はみられていない.臨床所見・組織学的ならびに組織化学的所見から本症と診断したが,同時に行つた電顕所見も従来の記載に一致し,主体は組織球様細胞であるがランゲルハンス顆粒・ミエリン体の欠如することが確認された,この機会に本邦報告例を通覧し,主に単発型と多発型との比較を試みたが,単発型は13例でその頻度は全体の約1/6であり,単発型の多い欧米のそれとは全く異つた傾向を示した.また発症年齢・Cafe au lait spotsならびにレックリングハウゼン氏病の合併・血清コレステロール値などの点で両者に大きな違いがみられた.従つて単発型と多発型との間にはそれらの基盤になんらかの違いがあるものと推測された.

連載 皮膚科学に貢献した医学者たち・14

連珠毛

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.555 - P.562

1.はじめに
 連珠毛の患者は,まれではあるが,わが国においてもときに見られる.この毛髪疾患の類症として結節性裂毛症があり,連珠毛と同じくわが国においても,確かにときどき存在する.捻転毛については,残念ながら,本稿の編者はそれを見た経験がない.結節性裂毛症の発生原因についてアメリカにおいては新説が提案されているが,日本の皮膚科医はそれを納得するであろうか,どうであろうか.
 ある種の毛髪疾患を有する患者は,アルギニノ琉珀酸尿を排泄するという遺伝性アミノ酸代謝異常の問題が提起され,それの提起されたアメリカ本国においても賛否両論がある(注1).

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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