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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科29巻1号

1975年01月発行

雑誌目次

図譜・387

食道粘膜剥離を生じた尋常性天疱瘡

著者: 金滝憲次郎 ,   木村恭一

ページ範囲:P.6 - P.7

患者 50歳,女
初診 昭和48年8月15日

綜説

いわゆるWeber-Christian脂肪織炎—慢性関節リウマチとの関係

著者: 斉藤隆三 ,   鎌田直子 ,   堀嘉昭

ページ範囲:P.9 - P.15

 全身の脂肪組織の系統的疾患であるWeber—Christian病(以下W-Chr病と略記)の原因は不明であるが1,2),脂肪代謝異常,感染アレルギー,膠原病ことに脂肪組織に対する自己免疫などの考え方がある.また,膵疾患に伴う場合のように原因の明らかな病変を症候性のW-Chr症候群)とし,エリテマトーデスなどの皮下脂肪組織の壊死性血管炎ないし内腔の狭窄をきたす血管変化によつてLipolyseを起こす場合をW-Chr病様症状(W-Chr脂肪織炎)とまとめることがある4)
 われわれは,慢性関節リウマチ(以下RAと略記)の患者の経過中に主として下肢に有痛性皮下結節を生じ,組織学的にW-Chr病を考えるに至つた症例を経験し,また,骨髄炎症状の既往のあることなどから,骨と関節の変化を中心にW-Chr病を眺め,RAとの関連性について若干の考察を行つた.

一頁講座

SporotrichumとSporothrix

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.16 - P.16

 スポロトリコージスの病原菌は以前からSporotrichum schenckii (注)として一般に通用しているが,近頃はSporothrix schenckiiと称する人がしだいにふえている.いずれを採択すべきかについて,いささか考えてみたい.
 (注) Sporotrichum Schenckiiと種名を大文字で始める人もある.国際植物命名規約によると,人名を種名に使用する場合,最初の文字は大文字でも小文字でもよいとなつている.しかし近頃は人名でも種名に使うときには,小文字で始める著者が増している.

原著

2-mercaptopropionyl glycine(MPG)による強皮症の治療

著者: 戸田浄 ,   吉井田美子 ,   小堀辰治

ページ範囲:P.17 - P.20

 汎発性強皮症の発生機序は未だ不明であるが,著者らはその発生機序はコラーゲン分子の高分子化の異常亢進のために可溶性コラーゲンが減少するために起ると考え,コラーゲンの分子間結合—シッフ塩基—の阻害作用がある2-メルカプトプロピオニール・グリシン(MPG)一日1,200mgを2例の強皮症患者に長期間投与して有効であつた.

皮膚腫瘍の統計—主として青森県における皮膚科・外科系一般医療機関からの集計

著者: 道部秉

ページ範囲:P.21 - P.27

 主として青森県の皮膚科勤務医,開業医および弘前市周辺の外科病医院に依頼して,皮膚腫瘍の集計を昭和47年11月から48年12月迄の約1年間にわたつて行なつたところ,皮膚科系から58症例61標本,外科系から31症例31標本,合計89症例92標本が得られた.男子41,女子46例,性別不明2例で,これらの標本につき病理組織検査を行なつたところ,上皮性良性腫瘍51,同悪性腫瘍7,非上皮性良性腫瘍30,同悪性腫瘍4例であつた.この中には比較的稀有な疾患も含まれており,さらに,悪性腫瘍の占める割合は12%であった,青森県主要病院における皮膚腫瘍摘出標本数を推定してみると,年問300例以上と,思われるが,皮膚科医の目に触れるものは約半数に過ぎず,残りの見捨てられた腫瘍をどうするかが,今後の問題であろう.

Solitary Juvenile Xanthogranuloma—成人例を含む5例について

著者: 浜田稔夫 ,   山本哲雄

ページ範囲:P.29 - P.35

 単発性のjuvenile xanthogranuloma (いわゆるnevoxanthoendothelioma)の5例を報告した.5例中1例は36歳♀,他の4例は2歳2カ月♀,5力月♂,4歳♀および3歳♀の乳幼児で,大きさは直径5mmより10mmまでの半球状に隆起した弾性硬の黄色ないし橙黄色腫瘤で,1例のみ表面が靡爛状で中央がやや陥凹Lている.血液生化学的検査を行なつた3例では血清脂質値はともに正常範囲内であつた.組織所見では真皮全層にわたり,主として組織球,泡沫細胞,時には線維芽細胞等からなり,多くのTouton型巨細胞もみられ,肉芽腫様性格が強い.陳旧性のものは線維芽細胞が増える傾向にある.単発性JXGは多発性に比し一般に大型の結節であるが,組織像では両者の間に差はない.cafe-au-laitspotsなどJXGに合併する所見ないし全身症状を示すのは文献例でも,ほとんどが多発例においてである.併せて成因,近縁諸疾患との関係などについて考察を加えた.

スポロトリクム症の1例

著者: 滝沢清宏 ,   溝口昌子

ページ範囲:P.37 - P.42

 スポロトリクム症はSporothrix schenckiiによる慢性感染症で,その報告は近年増加の一途にある.ヨードカリが本症に対し著効を示し,スポロトリキン反応が本症に特異性が高く重要な補助診断となることは周知である.
 著者らは「ス」反応が陰性でヨードカリ内服療法にも抵抗したスポロトリクム症の1例を経験したので報告する.

Eccrine Poromaの1例—とくにその電顕像について

著者: 諸橋正昭 ,   日戸平太 ,   岡吉郎

ページ範囲:P.43 - P.49

 49歳,男子の右肩に生じたeccrine poromaについて電顕的検索を行なつた.
 腫瘍細胞の細胞内管腔形成像と細胞外管腔形成像が観察された.これらの管腔を形成する腫瘍細胞には,トノフィラメント,デスモゾームの明瞭な細胞とそれらが明瞭でなく,むしろ絨毛様突起が特徴的である細胞とがみられた.
 細胞質内にグリコゲン顆粒を確認した.腫瘍細胞のムコ多糖産生能が推測された.
 腫瘍細胞巣内にメラノサイト,ランゲルハンス細胞,組織球性細胞の混在を確認した.
 基底膜に異常所見はなく,腫瘍細胞との間に半デスモゾームが存在した.

Homozygous Type II Hyperlipoproteinemiaによる黄色腫

著者: 羽田俊六 ,   浜松輝美

ページ範囲:P.51 - P.54

 症例は18歳,女性.3歳ころより黄色腫の発生をみる.アキレス腱部にtendinousxanthoma,肘頭,足背および手背などにtuberous xanthomaをみるほか両側指間,両肘,膝窩などにeruptive xanthomaを思わせる皮疹あり.両親(いとこ同志)および姉にtypeII hyperlipoproteinemiaあり.本症例はホモ型の接合子を有すると考えられた. Homozy—gous type II hyperlipoprotcinemiaは重篤で,心血管系障害で若死することが多いため,これに対する対策を文献の上から論じた.

薬剤

尿素含有外用剤の諸角化異常症に対する臨床効果の検討(第1報)

著者: 西脇宗一 ,   岡部省吾 ,   安西喬 ,   富沢尊義 ,   山口淳子 ,   籏野倫 ,   長島正治 ,   原田敬之 ,   橋本謙 ,   矢代昭夫 ,   山崎律子 ,   未次敏之 ,   渡辺靖 ,   永島敬士 ,   安田利顕 ,   石原勝 ,   堀口峯生 ,   笹川正二 ,   神田行雄 ,   新谷堯 ,   浦野和民 ,   武田克之 ,   松房孝憲 ,   藤田知道 ,   北郷修 ,   神保有光 ,   本田光芳 ,   湖山里美 ,   岩崎隆

ページ範囲:P.55 - P.63

尿素含有外用剤の概要
 すでに,紀元前800年頃からバビロニア人により,尿が治療薬として応用されていたという記載1)があるといわれ,その後,その有効成分は尿素であろうと考えられるようになつた.しかし,尿素の局所効果が検討されたのは比較的近年のことで,本邦においては,木本ら2-3)その他が化膿性乳腺炎,癤などの膿汁溶解剤としての効果を認めたのが端緒と思われる.皮膚科領城においては一部の医師が,尿素の効用に興味を持ち,外用剤を調製して使用したこともあるといわれるが,一般に汎くは採り上げられなかつた.しかるに,1968年,スウェーデンのSwanbeck4)が,尿素外用剤の魚鱗癬その他の角化異常症に対する局所臨床効果を報じて注目を浴び,欧米においては既に本剤が魚鱗癬,乾皮症,掌蹠の角化症などの治療薬として,広く応用されているといわれる.
 尿素の作用機序としては,壊死蛋白の溶解作用1)2)3)の他に角質内水分保有能効果4)が挙げられている.なお,角質の水分保持能にあずかる化学的成分については,これまでかなり多くの検討が行なわれてきたが,特に水溶性のアミノ酸やポリペプタイド,尿素,乳酸塩,ヘキソサミン,ペントースなどが重視されている5).従つて,尿素を皮膚に外用した場合,皮膚表面の壊死蛋白を溶解し,あるいは更に角層の水分保有能を高めるとすれば,諸種の角化異常症が尿素含有外用剤の適応となる可能性が考えられる.

連載 皮膚科学に貢献した医学者たち・19

外陰クラウロージス(その1)

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.64 - P.69

1.はじめに
 "クラウロージス"とかな書きだけにすると,何のことか初めは戸惑いするかもしれないが,これは"kraurosis"のことであり,この語の和訳についていささか考えてみたいのである.
 現行の本邦皮膚科学教科書には,いずれもkraurosisは"萎縮症"と訳されているが,萎縮ないし萎縮症を表わす一般的な用語"atrophia"とは意味を異にするのである.もつとも多く使われるKraurosis vulvaeは,なるほど一種の萎縮症ではあるが,この萎縮はたいてい白斑を随伴し,さらに重要なのは硬化を生ずることであり,ついには特徴的な収縮を起こす一つの症候群である.これを皮膚科的には単なる萎縮症である,たとえば"老人性萎縮(Atro—phia senilis)"と比較するならば,その差異はおのずから明らかである.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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