icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科29巻10号

1975年10月発行

雑誌目次

図譜・396

Multicentric Bowen's Disease

著者: 山本哲雄

ページ範囲:P.824 - P.825

患者 24歳,未婚男子
初診 昭和49年1月9日

綜説

皮膚腫瘍に対する局所化学療法(II)—ブレオマイシン軟膏の基礎

著者: 池田重雄 ,   川村太郎 ,   宮里肇 ,   今井清治 ,   中山坦子 ,   石原和之 ,   水谷ひろみ

ページ範囲:P.827 - P.839

 我々は先きに,第I編に於て,皮膚腫瘍に対する局所化学療法—特に臨床を中心として—と題して,ブレオマイシン軟膏(以下BLM-Oと略す)の臨床治験について述べて来たが,今回はそれを理論的に裏付ける目的で,1) BLM-Oの経皮吸収及び尿中排泄,2) BLM-O—ODT 24時間施行後の悪性皮膚腫瘍組織内濃度,3) BLM-O—ODTによつて生ずる皮膚悪性腫瘍の電顕的所見等の基礎的諸問題につき検討を加え,若干の知見を得たのでここに報告する.なお近年明らかにされた1) BLMの構造と化学,2) BLMの作用機序,殊にBLMのDNAに対する分子レベルでの作用等の最近のトピックスについても若干の文献的考察を加えてみたい.

原著

新潟大学皮膚科における皮膚筋炎について

著者: 木村嶺子 ,   古沢範子 ,   佐藤良夫

ページ範囲:P.841 - P.846

 新潟大学皮膚科における昭和25年から昭和49年までの25年間の皮膚筋炎の患者20例を総括した.40歳未満6例(1例は8歳の小児例),40歳以上14例で性差はないが40歳以上では男は女の2倍近くを占めている.悪性腫瘍合併例は8例で,40歳以上では半数の症例に悪性腫瘍が合併していた.腫瘍の種類は,胃癌4例,消化器系腫瘍1例,尿路系癌腫1例,悪性脳腫瘍1例,縦隔腫瘍1例である.また全身性エリテマトーデスの合併が1例ある.悪性腫瘍を合併している例(腫瘍群)の平均罹患期間は9カ月で,全例死亡,悪性腫瘍を合併していない例(非腫瘍群)は半数が死亡している.直接の死因は肺炎が多い.腫瘍群と非腫瘍群の間に,臨床症状,検査所見において若干の差が認められた.ツベルクリン反応は17例中11例陰性,DNCB皮膚反応は4例全例が陰性である.また筋組織内のウイルス様封入体の電顕的検索では,8例中5例に封入体を証明した.うち2例では筋核内にミクソウイルス様封入体を,3例では筋組織内の毛細血管内皮細胞内に細管状構造を証明することができた.

Diabetic Scleredemaの1例

著者: 岸山和敬 ,   高島巌 ,   花井尚志

ページ範囲:P.847 - P.852

 47歳,女性の項部から上背部にかけて生じたscleredemaの1例を報告した.患者は肥満し,長期間糖尿病に罹患し,糖尿病性網膜症,神経症,高血圧症の合併がある.Krakowskiらのdiabetic scleredemaに相当する症例と考えた.scleredemaおよび,本邦における本症と糖尿病との合併例について若干の文献的考察を行なつた.

皮膚スポロトリコージスの研究—その臨床的および病理組織形態学的観察

著者: 北村啓次郎 ,   原田敬之 ,   西川武二 ,   籏野倫

ページ範囲:P.853 - P.859

 昭和37〜49年に慶大皮膚科で経験した皮膚スポロトリコージス28例の臨床統計で,28例中23例,82.1%が限局性皮膚型であつた.ついで,パラフィンブロック借用可能であつた8例を加え36例につき病理組織学的に検討した.本症の組織像は基本的には慢性非特異的肉芽腫性炎であるが,組織内出血(鉄染色で確認),好中球による組織内小膿瘍,毛細血管の増生拡張および浮腫を高頻度に認め,3層構造,細胞増殖圏,星芒状体の存在など若干の特徴が加わる.しかし定型的な3層構造は稀で,リンパ球,形質細胞,線維化が混在し,複雑な組織所見を呈するものと老えた.組織内菌要素では遊離胞子が多いが,胞子の大小不同多形性,分芽胞子も認めた.さらに菌体破片の如き顆粒状小体の存在に注目し,これらの小体は螢光抗体法で特異螢光を発することより菌体の一部と考えた中これら菌要素の多くは組織内小膿瘍の中および近辺にみられ,そこにある種の生体反応系を想定した.

帯状疱疹(三叉神経・頸部脊髄神経領域)に対する星状神経節ブロックの効果について

著者: 福井米正 ,   逸見稔

ページ範囲:P.861 - P.866

 顔面,頸部附近の帯状疱疹重症22例に対し,星状神経節ブロックを主とし,時に頸部硬膜外ブロックを併用した治療を行なつたところ,疼痛緩和および急性症状の寛解には著効を奏した.全体的な治療日数の短縮には到らなかつたが,老齢者で疼痛の著しいものに発症後早期より行なえば極めて有用な治療手段と考えられるので,実施上の注意と若干の文献的考察について紹介した.

凍瘡を合併せる続発性肥大性骨骨膜症(仮称)

著者: 喜多野征夫

ページ範囲:P.867 - P.873

 1939年,中条が凍瘡を合併せる続発性肥大性骨骨膜症という名称で,血族結婚の両親から生まれた兄妹に発生した疾患を報告した.以来8例の同様症例の報告が見られる.著者はこの稀有と思われる疾患を3例経験したのでその臨床像を記録にとどめるとともに過去の報告例とあわせて考察を加えた.本疾患は常染色体性劣性遺伝性疾患で幼少時に発症する.初発症状は凍瘡あるいは結節性紅斑である.手指は長く太く節くれだつて,指関節の運動性は次第に障害され,終には拘縮を来す.上半身の痩削が年齢と共に進行する.本疾患に付けられた病名は全て続発性肥大性骨骨膜症を強調しているが,骨膜肥厚の証明されている症例は半数に満たず,骨膜肥厚の原因と考えられる心肺系の異常の証明されている症例はさらに少ない.貧血,赤沈促進,γ—globulinの増加は全例に見られる.寒冷負荷により紅斑が発生する.紅斑の組織像は真皮深層から皮下脂肪織にかけての血管炎である.

金沢大学皮膚科における白癬菌培養成績

著者: 井上久美子 ,   金原武司 ,   佐野勉 ,   仲村洋一 ,   岡田芳子 ,   福代良一

ページ範囲:P.875 - P.878

 金沢大学皮膚科における昭和43年9月から48年12月までの5年4カ月間の白癬菌の培養成績をまとめた.白癬の総例数は1401例で新患総数の7.2%に当たる.内訳は汗疱状白癬795例(56.8%),頑癬356例(25.4%),爪白癬239例(17.1%),その他10例(0.7%)であつた.分離総株数は857株で,培養陽性率は60.9%であつた.内訳はT. rubrum 510株(59.5%),T. mentagrophytes 309株(36.1%),E. foccosum 13株(1.5%),T. violaceumとT. shoenleinii各3株(各0.4%),M. canis 2株(0.2%),菌種未定ないし不明17株(2.0%)であつた.前回8年間の成績と比較すると,T. rubrumの減少,T. mentagrophytesの増加傾向がうかがわれ,また,今回初めてM. canisが分離された.

汗孔角化症の臨床疫学的検討(II)

著者: 筏淳二

ページ範囲:P.879 - P.883

 本症の全身型,不全型の疹分布と痘瘡の特徴的分布とはほぼ一致した.散布型,列序型では初発疹,完成疹の出現は右上肢に比べて左上肢に少なく,さらに列序型では左側発症例は5歳までに好発し,5歳以後では右側に頻発する傾向をみた.この奇異な疹分布は,種痘による局所皮膚免疫が成立している部位に本症に対する発症抑制因子があると仮定することにより説明できた.この種痘によると考えられる病像の修飾は,前報の結果などを勘案して,ウイルス間の非特異的な干渉現象というより免疫現象であろうと解釈した.そこで痘瘡,ワクチニアウイルス感染で明らかにされている防御因子を援用して本症病型の成因について推論し,そして本症をワクチニアウイルスによるslow virus infectionとする仮説を述べた.

人工妊娠中絶により軽快した膿疱性疾患(角層下膿疱症?)の1例

著者: 菅原信 ,   生冨公明 ,   北村啓次郎

ページ範囲:P.885 - P.891

 経過中に妊娠を認め,人工妊娠中絶により劇的に改善した膿疱性疾患の1例を報告した.症例は25歳家婦で,初診時ジューリング疱疹状皮膚炎が疑われ,生検の結果,角層下膿疱症(Sneddon & Wilkinson)と診断されたが,臨床的並びに組織学的に非定型的であつた.その経過および治療を述べ,妊娠との関連性を考えつつ文献的考察および若干の免疫学的検討を加え,自験症例の診断的位置づけを行なつた.すなわち著者らは,自験症例の如き非定型例を敢えて一つの既成疾患概念に入れることをせず,ヘブラ疱疹状膿痂疹あるいは天疱瘡類などとの移行型あるいは中間型として,または全体を一つの大きな疾患群として整理しつつ今後更に検討を加えるべきものと考えた.

ジューリング疱疹状皮膚炎を思わせた天疱瘡の1例

著者: 吉川田鶴恵 ,   西岡清

ページ範囲:P.893 - P.896

 激痒を伴つた再発性水疱形成が,9年来みられた47歳女子の症例を報告した.水疱は,躯幹・四肢にみられ,紅斑状に環状に配列する比較的小型のもので,検査上,軽度の好酸球増多,ヨードカリ貼布試験陽性で,ジューリング疱疹状皮膚炎を疑わせるものであつた.皮膚生検像で,棘融解性水疱を認め,また,血中に,抗細胞間物質抗体を検出しえた.文献上,"acantholytic herpetiform dermatitis"あるいは,"mixed bullous disease"に相当する症例と考えられるが,あえてその名称を用いず,天疱瘡の亜型にすぎぬものと考えた.

Sign of Leser-Trelat

著者: 中村雄彦

ページ範囲:P.897 - P.900

 68歳,女性.左側乳癌に罹患し,それとほぼ同時に全身に沈贅様皮疹の多発をみた.皮疹は組織学的にseborrheic keratosisと診断,乳癌摘出後やや縮小するのがみられた.
 本症例は1890年に命名され,最近Dantzigによつて再検討されたLeser-Trelatの徴候に一致するものと考え報告し,あわせて若干の考察を行つた.

印象記

京都便り—第74回日本皮膚科学会総会見聞記

著者: 長島正治

ページ範囲:P.902 - P.903

 「生命への畏敬と医学の探求」をテーマに,京都市で開かれた第19回日本医学会総会(会頭・平沢興京大名誉教授)は,昭和50年4月5日波乱の幕開けにはじまり,幾多の問題点を残しつつも,4月7日まずまず平静に閉幕されたとは某新聞の伝える所です.
 ところで第74回日本皮膚科学会総会並びに学術大会は,その分科会として太藤重夫京大教授を会頭に仰ぎ,翌4月8日から3日間の日程で,同じく京都市で開催されました.

連載 皮膚科学に貢献した医学者たち・28

母斑性黄色内皮腫

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.904 - P.907

1.初めての記載者
 James Eustace Radclyffe McDonaghは1881年10月17日にロンドンで生まれた.Bedford CollegeとSt. Bartholomew's Hospitalとで医学を修めてから,ウィーンで勉学の一時期を過した後,外科医として帰国し,London Lock Hospitalsに勤務した.彼は,1929年の創設以来Nature of Disease Instituteの所長であつて,病理学・微生物学・臨床医学に関する多数の論文を発表した.その母斑性黄色内皮腫の報告は,特に皮膚科医に興味を抱かせた.彼は多数の著書の著者であつたが,その中には性病の教科書もあつた(1915年).

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?