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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科29巻11号

1975年11月発行

文献概要

薬剤

尿素軟膏の有効であつた水疱型先天性魚鱗癬の1例

著者: 吉井田美子1 戸田浄1 小堀辰治1

所属機関: 1東京逓信病院皮膚科

ページ範囲:P.1009 - P.1013

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 先天性魚鱗癬の水疱型は,魚鱗癬様皮膚症のなかで,もつとも重篤な症状を示す疾患で,ほとんど全身を被う厚い鱗屑と水疱形成で特徴づけられ,その発症は常染色体優性遺伝を示すといわれている.魚鱗癬様皮膚症はその臨床的特徴から,皮膚科学においては特に古くから記載されている疾患群で,よく知られている病名が多いため,数多くの同意語,分類形式があり,混乱を起している.ただ最近は,遺伝形式を重視する立場にたつて,本疾患群を分けるという考え方が強く,これに加えてケラチン生成の機序の異常がよく適合するということから,遺伝形成とケラチン生合成のパターンの二つを基準にして分類するものが英,米学者の中に支配的で,ケラチン研究の成果とあいまつて,一般にこれを受入れられるようになつているが,毎日の臨床をみていると,そうそう簡単にいかないことに遭遇することもある.
 われわれの経験した症例は臨床形式は全く典型的な水疱型の先天性魚鱗癬であるが,両親,兄弟に同症をみとめず,家系の中にも同症をみとめることができないことから,遺伝形式を常染色体,優性遺伝とは決めがたい症例である.本邦の報告例には遺伝関係を証明できないと記載している例もあるので,ここに報告する1,2,3).なお治療として長期間尿素軟膏を使用し,皮疹の軽快を長く保つことができたので,治療の面もあわせて検討する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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