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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科29巻12号

1975年12月発行

雑誌目次

図譜・398

新生児の浅在性白癬

著者: 山本哲雄 ,   浅井芳江 ,   増田太郎

ページ範囲:P.1032 - P.1033

患者 生後21日,女児
初診 昭和49年9月24日

綜説

潰瘍を伴うLivedo病変とその周辺

著者: 斉藤隆三 ,   伊勢信子

ページ範囲:P.1035 - P.1041

 皮膚の網の目状紅斑,すなわちLivedo病変は,その臨床的,組織学的所見より,Cutis marmora—ta, Livedo reticularis, Livedo racemosaに分けられる.これらは真皮と皮下組織との境界部で小動脈の緊張亢進と静脈側での緊張低下の状態で皮疹として現われるが,主として臨床的名称であるため英米系では厳密に区別して使用しているとは限らず,Livedo racemosaをLivedo reticularisの同義語として用いる傾向にある.
 一方,Livedo病変の潰瘍化は必ずしも稀ではなく,動脈の閉塞性変化が強い場合に潰瘍形成を来たし易いとされている.われわれは,4年来夏季のみに潰瘍形成をみ,冬季には潰瘍も軽快する特発性のLivedo患者の1例を経験したのでそれを報告すると共に,Livedo vasculitis, Atrophieblancheとも合わせ,Livedo病変の潰瘍形成について若干の考察を加えたい.

一頁講座

帯状疱疹と単純疱疹との罹患部位

著者: 筏淳二

ページ範囲:P.1042 - P.1042

 帯状疱疹は躯幹に好発し,四肢では末端になるほど少なくなる.罹患部位を支配する神経節からみると,神経節が無差別に侵されず,いくつかは免疫を示すとされ,三叉神経節と躯幹を支配する第3胸髄から第2腰髄に至る神経節は四肢を支配する神経節に比べて侵されやすい1).最近Bastianら2)は悪性リンパ腫に併発した剖検例において疹に対応する後根神経節からvaricella-zoster v—rus (VZV)をはじめて分離している.
 帯状疱疹の部位別出現頻度は水痘疹の中心性分布と対比され,両者の類似性には直接的関連があるという1).水痘のさいにVZVが神経節に達する径路として血流説3)と神経伝播説4)とがあり,一般には神経説が支持されている5).これによればウイルスは水痘疹から知覚神経を求心性に移動し神経節に潜伏する.後に再活動すると同じ神経を遠心姓に皮膚に達し帯状疱疹をつくることになり,両者の類似性も納得できる.

原著

Blue Rubber Bleb Nevus Syndrome

著者: 川上寛子 ,   岡本昭二 ,   田辺義次 ,   千見寺ひろみ ,   広谷忠彦 ,   徳久剛史

ページ範囲:P.1043 - P.1048

 Blue rubber bleb nevus syndromeの24歳女子例を報告した.4歳ごろより躯幹,四肢の皮膚に青黒色の血管腫様小腫瘤が多発して増大するとともに高度の鉄欠乏性貧血が発生していた.12歳には腸管の血管腫の位置に一致した腸重積症のため開腹手術を受けている.高度の貧血と下血などの消化器症状のため来院.被髪頭部を含むほぼ全身の皮膚に青黒色の血管腫様腫瘤が約220個認められる.口腔粘膜にも同様な腫瘤がある.組織学的に真皮上中層には管壁が一層の内被細胞よりなる拡張した血管腔が多数存在する.消化管のレ線造影撮影により食道,胃,小腸,大腸に円形の陰影欠損像を認め,内視鏡検査によつても食道と胃粘膜に血管腫の存在を確認している.鉄欠乏性貧血と下血に対して輸血および鉄剤投与を実施している.Blue rubber bleb nevus syndromeの症例の大半は皮膚とともに消化管に血管腫が認められているので,本症は母斑症に分類されるべきであると考える.

酸化亜鉛吸入によつて生じた貨幣状湿疹の1例

著者: 東禹彦 ,   岩本孝子

ページ範囲:P.1049 - P.1052

 35歳,男子の躯幹,四肢に散在性に認められた貨幣状湿疹が酸化亜鉛の吸入によつて生じたものであることが判明したので報告した.自験例は1)酸化亜鉛製造工程にたずさわるようになつて20日目より皮疹を生じたこと(アレルギー性反応を生じるに充分な感作期間の存在),2)胃潰瘍の手術のために入院していたときには外用薬の塗布で皮疹は簡単に消褪したこと,3)退院後,職場に復帰するとともに皮疹が再発し,医治によつても充分に軽快しなかつたこと,という現病歴から職業性皮膚疾患が疑われた.そして,スピンヘラー® を用いて酸化亜鉛の吸入試験を行ない,皮疹の再現をみた.その後,酸化亜鉛製造工程を無人化するとともに,患者自身が酸化亜鉛蒸気と接触しなくなつて,皮疹の再発は全くなくなつた.いわゆる内因性湿疹の原因の1つとして吸入性物質も重要であることを示す症例である.

Herpes Gestationis

著者: 木村恭一 ,   益田俊樹

ページ範囲:P.1053 - P.1058

 28歳初産婦,妊娠8カ月に発症した1例を報告し,併せて免疫組織学及び内分泌面から若干の文献的考察を行つた.自験例は1)皮疹の形態は多形滲出性紅斑に近かつた.2)ヨードカリ貼布試験は陰性,3)免疫組織所見では基底膜部にIgGの沈着と血中にもIgG抗体が見られ類天疱瘡のそれに近い所見であつた.4)血中ホルモン測定ではプロゲステロンの低値を認めた.5)治療はステロイドが有効,6)新生児は早産,かつ中等度黄疸を伴つていた.

各種皮膚疾患におけるNBT試験

著者: 吉川田鶴恵 ,   西岡清

ページ範囲:P.1059 - P.1062

 関西医科大学皮膚科を訪れた各種皮膚疾患患者についてNBT試験を行つたところ,アレルギー性血管炎,膿疱性乾癬,全身性紅斑性狼瘡,薬疹の各患者に,NBT高値を認めた.ベーチェット病,結節性紅斑,掌蹠膿疱症,尋常性乾癬,天疱瘡,類天疱瘡では,NBT試験は,正常値を示した.しかし,経過を追つて観察すると,ベーチェット病,アレルギー性血管炎,膿疱性乾癬,全身性紅斑性狼瘡,皮膚筋炎の症例では,症状増悪時にNBT高値を示し,症状軽快と共に,NBT値の低下がみられ,病状観察の一指標として,皮膚科領域にも,意味をもつ検査法であると考えられた.

抗てんかん剤Ethosuximide(Zarontin)で誘発されたと思われる全身性エリテマトーデスの1症例

著者: 田中雅祐 ,   重見文雄 ,   松浦秀雄 ,   今津博市

ページ範囲:P.1063 - P.1066

 抗てんかん剤Zarontin(Ethosuximide)の投与中に発生したと思われるSLEの1例を報告した.本症例の報告はほとんどみられないが,SLEを誘発するといわれる種々の薬剤と同様Zarontinの投与に際してもSLEの発生に注意が必要かと思われる.

糖尿病を合併し,深膿痂疹様皮疹および壊疽性膿皮症様皮疹を合併したBehcet病の1例

著者: 山田真理子 ,   吉田彦太郎

ページ範囲:P.1067 - P.1072

要約 48歳男子のBehcet病(不全型)の1例を報告した.この症例は糖尿病を合併し,深膿痂疹様潰瘍,痤瘡様発疹,陰部潰瘍,深い口腔内潰瘍を有し,針反応も陽性を示した.しかし眼症状はない.また肝障害,血沈の促進,クリオフィブリノーゲン血症,血清銅の増加などがみられ,副腎皮質ホルモンとともに抗生物質も有効であつた.
深膿痂疹様潰瘍,口腔粘膜は糖尿病の改善とともに軽快したが,やがて素手でガラス微粒子をとりあつかう作業を契機として両手背,前腕に壊疽性膿皮症様皮疹をきたした.
以上の多彩な合併症,皮膚症状,異常検査所見および壊疽性膿皮症との異同について考察し,糖尿病により皮膚症状が修飾される可能性およびBehcet病とPyoderma gangrenosumとはきわめて近似の疾患であるが,現段階では一応別症とするべきであることなどを指摘した.

有鉤嚢尾虫症の2例

著者: 斎田俊明

ページ範囲:P.1073 - P.1079

 患者は36歳男と35歳男の2人.いずれも皮下結節を主訴として来院した.摘出した筋肉内嚢腫状結節を鏡検して,吸盤と鉤に囲まれた額嘴を有する頭部scolexを見出して,有鉤嚢尾虫症と確診しえた.第1例は,経過中に一時,神経痛様発作と結節の圧痛を訴えたが,脳寄生を思わす症状はなかつた.第2例は,テンカン発作を時々おこし,嚢尾虫の脳内寄生が考えられた.いずれの例にも,糞便中に条虫片節や虫卵の排出は見られず,成虫(有鉤条虫)の腸管内寄生はないものと判断された.なお,患者は2人とも韓国に在住する朝鮮人であつた.
 本邦において,有鉤嚢尾虫症は昭和10年代を中心に昭和28年頃までかなり多数の報告があつたが,以後は激減している.その報告例の大部分は旧満州地区など所謂「外地」での感染の考えられるものである.その他,有鉤条虫の発育史,嚢尾虫症の症状,診断,経過,治療などにつき検討した.

薬剤

ホスホマイシンの臨床効果—二重盲検法による検討

著者: 安田利顕 ,   河野多鶴子 ,   須田百合子 ,   藤田恵一 ,   唐沢直人 ,   野波英一郎 ,   露木重明 ,   富沢尊儀 ,   山口淳子 ,   籏野倫 ,   新井亮一 ,   広川浩一 ,   渡辺靖 ,   永島啓士 ,   久木田淳 ,   佐久間将夫 ,   小川喜美子 ,   清水直容 ,   高橋昭三

ページ範囲:P.1081 - P.1088

 最近における新抗生物質の展開はまことに目覚ましいものがあり,一面では現行医療制度の不備に製薬企業の過当競争も加わつて,抗生物質濫用の傾向があるとはいうものの,抗生物質は現在では日常の診療にさいして欠くことのできない重要な薬剤である.
 したがつて耐性菌が少なく,新しく,しかも効果の確実な抗生物質がつぎからつぎにと発見されることはわれわれ臨床家にとつてまことに喜ばしいことであり,新開発の抗生物質を臨床的に検討することは重要な課題の1つである.

尿素軟膏の奏効した非水疱型先天性魚鱗癬の1例

著者: 戸田浄 ,   小堀辰治

ページ範囲:P.1089 - P.1094

 Ichthyosisは,最近遺伝関係と角化機序の差を指標として分類されている.先天性魚鱗癬は,水疱型と非水疱型に分けられるのが最近の傾向である.この分類に従つて分けると,従来,先天性魚鱗癬様紅皮症と呼ばれていたものの一部も,この非水疱型に入れられることになる.そして,本症は,最近,Van Scott1,2,3)らによつて,尋常性魚鱗癬との異同が論じられ,角化機序の見地からみると確かにそのturn over timeは,短かく,組織学的所見もparakeratosisをともなつたhyperkeratosis,表皮突起の延長,乳頭体の毛細血管の変化という点で,尋常性乾癬のそれに共通点をみとめることができる.しかしながら,臨床像は全く異るということから,著者等は,本症は,尋常性乾癬から全く独立した疾患として考える立場にたつている.
 著者等は,三十数年にわたつて観察を続けた本症に,20%尿素軟膏を使用して有効であつたので,尿素軟膏の作用機序を中心に本症の発症機序とその疾患としての独立性について述べる.

連載 皮膚科学に貢献した医学者たち・最終回

ダリエー病(その2)

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.1095 - P.1099

4.フランスにおける記述
 ここに掲げるのはDuperratのDarier病に関する記述である.その中には水疱性Darier病が特記されていて,それについての知識に乏しいわれわれの参考となることが多い.また水疱性Darier病と鑑別を要する家族性良性天疱瘡を,一般にHailey-Hailey病と呼んでいるが,実はこの両人より数年前にGouge—rotがすでに記載していることも,Duperratの記述からわかるのである.

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臨床皮膚科 第29巻 総索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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