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原著
有鉤嚢尾虫症の2例
著者: 斎田俊明1
所属機関: 1東京大学医学部皮膚科学教室
ページ範囲:P.1073 - P.1079
文献購入ページに移動 患者は36歳男と35歳男の2人.いずれも皮下結節を主訴として来院した.摘出した筋肉内嚢腫状結節を鏡検して,吸盤と鉤に囲まれた額嘴を有する頭部scolexを見出して,有鉤嚢尾虫症と確診しえた.第1例は,経過中に一時,神経痛様発作と結節の圧痛を訴えたが,脳寄生を思わす症状はなかつた.第2例は,テンカン発作を時々おこし,嚢尾虫の脳内寄生が考えられた.いずれの例にも,糞便中に条虫片節や虫卵の排出は見られず,成虫(有鉤条虫)の腸管内寄生はないものと判断された.なお,患者は2人とも韓国に在住する朝鮮人であつた.
本邦において,有鉤嚢尾虫症は昭和10年代を中心に昭和28年頃までかなり多数の報告があつたが,以後は激減している.その報告例の大部分は旧満州地区など所謂「外地」での感染の考えられるものである.その他,有鉤条虫の発育史,嚢尾虫症の症状,診断,経過,治療などにつき検討した.
本邦において,有鉤嚢尾虫症は昭和10年代を中心に昭和28年頃までかなり多数の報告があつたが,以後は激減している.その報告例の大部分は旧満州地区など所謂「外地」での感染の考えられるものである.その他,有鉤条虫の発育史,嚢尾虫症の症状,診断,経過,治療などにつき検討した.
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