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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科29巻2号

1975年02月発行

雑誌目次

図譜・388

表在性基底細胞上皮腫

著者: 石川謹也

ページ範囲:P.86 - P.87

患者 57歳女子
初診 昭和48年8月6日

綜説

"Diabetic Rubeosis"

著者: 大沢源吾

ページ範囲:P.89 - P.96

 種々な内科的疾患で,皮膚所見がその診断のきつかけを与えてくれることはしばしば経験される."赤ら顔"もそのような皮膚所見の1つとして,殊に多血症やカルチノイド症候群の診断の有力な手がかりとして注目されてきた1).糖尿病においても高度なketoacidosisで昏睡におち入つた患者がしばしば紅潮を示し2),昏睡の鑑別を助ける症候とされているが,このほかに軽症ないし潜在性の糖尿病患者に顔面紅潮がかなり高率にみられることも欧米でははやくから注目され3)4),dia—betic"rubeosis"とよばれている.本邦ではおそらく有色人種であるという特殊条件もあつたであろうが,軽症糖尿病患者の顔面紅潮には従来あまり注意が向けられていなかつたように思われる.実際問題として,私共のささやかな経験例からしても,糖尿病患者のうちでいわゆる"赤ら顔"を示す者はそう稀ではないようであるし,それら"赤ら顔"の糖尿病に共通した検査所見もある程度抽出できるところから,この"赤ら顔"も糖尿病の診断や病態の把握に役立つ皮膚所見の1つではあるまいかと考えるにいたつた5).以下,"赤ら顔"を示す糖尿病患者の病態をのべ,糖尿病における広義のdermadromeとしての"rubeosis"のもつ意義について検討してみたい.

原著

Keratosis punctata palmaris et plantarisの1例

著者: 手塚正 ,   大熊守也 ,   木村秀子 ,   広瀬至

ページ範囲:P.97 - P.104

 71歳男.初診:昭和48年5月9日.既往歴:2年前より尋常性乾癬に罹患.砒素剤を内服したことなし.現病歴:約3年前より手掌・足蹠・指趾腹に半米粒大までの角化局面多発,歩行時に疹痛をおぼえたことあり.現症:両側掌・蹠・指趾腹に微小な陥凹多発し,いずれも皮膚紋理隆線に一致している.このほか半米粒大までの角化局面あり,中心に角栓を入れる.角栓の除去によりカラー状の角質で囲まれた小陥凹が生じた.発汗試験でこれらの小陥凹に発汗は認められなかつた.組織学的に逆円錐状ないし柱状のParakeratose塊(Feulgen陽性)が中心にあり表皮は菲薄化し,真皮の炎症症状を欠く.連続切片(水平,垂直2方向)で汗管はこのParakeratose塊を貫通しているが,角層上部で閉塞像が認められた.治療:5%サルチル酸ワゼリン及び0.1%ビタミンA酸吸水軟膏が有効であつた.

火傷部に生じた単発型表在性基底細胞上皮腫—特に組織学的な表皮内表皮腫像(Jadassohn現象)についての考察

著者: 玉舎久子 ,   石川幸重

ページ範囲:P.105 - P.109

1)28歳男子の腰部に,煙草の火による火傷後に生じた単発型表在基底細胞上皮腫の例を記載した.
2)組織学的に病巣辺縁部でJadassohn現象を認めた.
3)発症誘因として火傷ならびに火傷部に長期間加えられた物理的刺激(スポーツによる擦過)が何らかの役割りを演じたと想像された.

Malignant Cellular Blue Nevusの1例

著者: 堀真 ,   前島和樹 ,   西本勝太郎

ページ範囲:P.111 - P.115

要約 45歳女性.初診の3年前に,第Ⅵ〜Ⅶ胸椎のすぐ左側に,3×1.5cm大の地図状の紫褐色斑を生じ,時に瘙痒,疼痛があつた.掻破により,同部は糜爛を呈し,かかる状態が1年続く,その後,この糜爛面に一致して,半球状,表面平滑な淡紅色の腫瘤を形成し,最近,急速に増大傾向を示し,直径1cmの大きさとなる.初診時,右腋窩部に拇指頭大の硬い腫瘤をふれる.悪性黒色腫を疑い,全摘出する.組織学的に,腫瘤はほとんど真皮全層を占め,境界明確である.表皮は萎縮を示すも,直接,腫瘍とは接続しない.腫瘍細胞は異形性のある紡錘形細胞と,明るい細胞質をもちリンパ球様の小さな濃い核をもつものとの二種類を認め,これらが波状構造を呈して配列する.メラニン染色でこの腫瘍細胞内に少量のメラニン顆粒が認められた.

Pseudochromidrosis plantaris—その2例とTransepithelial eliminationについて

著者: 設楽篤幸

ページ範囲:P.117 - P.122

 26歳,男子の右第5趾先端,および17歳,男子の左右の踵に対称性に生じたpseu—dochromidrosis plantarisの2例を報告し,transepithelial elimination (経上皮性排除)を中心に記述した.症例1では角層内汗管腔内およびその周囲の角層に無構造物質を認めた.この物質は赤血球由来のものである.症例2ではこの物質と汗管との関係は認められなかつたが,組織学的に真皮乳頭部の毛細血管の拡張,赤血球の溢出,表皮細胞間の赤血球の存在などが認められ,本症の初期像と考えられる所見であつた.

クリオグロブリン血症の1例

著者: 北野允基 ,   黒瀬浩郎 ,   地土井襄璽 ,   矢村卓三

ページ範囲:P.123 - P.128

 48歳,男子.4年前より寒冷時に四肢末端部に凍瘡様皮疹を繰り返していた.2年前より足関節,膝関節に疼痛を伴つて,足背部に紅斑を生じ,部分的に皮膚壊死を生じた.皮膚組織所見は,Thromboangitisの像を示した.この患者の血清は低温におくと白濁ゲル化する性質をもつている.免疫学的検索により,1,000mg/dlの濃度をもつ,IgG単独のCryogloblinを証明した.骨髄に形質細胞の増加と異形性が認められ,骨髄腫が考えられたため,エンドキサン,プレドニゾロンの併用をおこなつたところCryogloblinは著明に減少し,皮疹の新生も認めなくなつてきた.

ERYTHRASMAの2例

著者: 庄司昭伸 ,   須貝哲郎

ページ範囲:P.129 - P.131

 Erythrasmaの2例を報告し,病変部の落屑を市販の1%小川培地,27℃で培養したところ,10日後淡黄色に変化した培地上に白黄色の集落を得た.この集落にWood's lightを照射したところ,病変部の鮮かな紅色螢光と全く同一の螢光性を示したので,本菌をEry—thrasmaの起因菌であるCorynebacterium Minutissimum (von Barensprung)と推定した.1%小川培地上の集落はかなり長期間螢光性を示す点で従来のものより優れている.

上大静脈症候群を伴つたBehtcet病

著者: 浜田稔夫

ページ範囲:P.133 - P.138

 21歳,男子にみられた上大静脈症候群を伴つたBehcet病について報告した.約3年前より口腔粘膜にアフタ,四肢に皮下硬結,顔面,背部等に毛嚢炎を繰返し,注射をうけた部位に膿疱形成をみる.左葡萄膜炎となり,治療をうけるも症状が増悪し,左眼球摘出術をうけた.2カ月前より顔面,頸部の瀰慢性腫脹,呼吸困難を来たし,胸腹壁の皮下静脈が怒張するようになつた.前腕皮下硬結の組織像では血管炎の所見を示す.両上肢よりの静脈撮影では上大静脈の造影は認められず,鎖骨下静脈より上大静脈に還流する部分で閉塞がみられ,また造影せる静脈壁の輪郭が不規則なことより,上大静脈閉塞は血栓性静脈炎によるものと考えられた.本症例では上大静脈閉塞のために上半身に静脈うつ滞症状および徴候を示したもので,上大静脈症候群に合致する.併せて本邦における上大静脈症候群を伴つたBehcet病報告例も紹介した.

肝癌の皮膚転移

著者: 吉永花子 ,   山田瑞穂

ページ範囲:P.139 - P.145

 肝癌の皮膚転移は非常に稀とされているが,46歳男子の1例を報告する.3年前より肝炎といわれ,顔面,躯幹および上腕の上部に毛細血管拡張,vascular spider,両手掌にred palmを有し,鼻根部に雀卵大の隆起,耳朶,顔面,上腕に一見毛細血管拡張性肉芽腫様の小豆大までの紫紅色の軟い腫瘤を生じた.組織学的にこの腫瘤は肝癌の転移が最も疑われ,電顕所見により,これがほぼ確定した.

薬剤

二重盲検法によるSH製剤C-G(L-Cysteine)の薬疹・中毒疹に対する臨床効果

著者: 帷子康雄 ,   菅原光雄 ,   祖父尼哲 ,   上原伸一 ,   山本欣一 ,   山内哲 ,   最上晋 ,   針生敬三 ,   安田利顕 ,   伊藤正俊 ,   高島已千雄

ページ範囲:P.147 - P.153

 L-CysteineはSH基を有するアミノ酸であるが,α-Mercaptopropinylglycine,GlutathioneなどのSH化合物と同様,生体の酸化還元機構に関与し,解毒作用,抗アレルギー作用あるいは酵素賦活作用などを有することが知られている1〜3)
 SH剤が臨床的に内科,皮膚科など各領域において肝疾患をはじめ,アレルギー性疾患,中毒性疾患,代謝障害,色素沈着症などに広く用いられ,すぐれた効果をあげていることも周知の通りである4〜5)

2,3皮膚腫瘍に対するNeocarzinostatin(NCS)の治験

著者: 石原和之 ,   小松遵至 ,   柳田英夫

ページ範囲:P.155 - P.160

 高分子制癌抗生物質であるネオカルチノスタチン(Neocarzinostatin,以下NCSと略)は仙台市の土壤から採取したStreptomyces carzinostaticusの培養沪液より得られたものである.分子量10700で酸性を示し,石田によれば,18種類109個のアミノ酸が得られるといわれる.NCSの制癌性が証明できた腫瘍は,Ehrlich腹水癌,Sarcoma腹水系,SN-36,MH134などで,またSarcoma180の固形癌に対し静注でも有効であつたといわれる,その作用機序はHela細胞とSarcinaluteaを用いて検討され,DNA合成の特異な阻害作用と細胞分裂阻害作用にあるといわれる.また,NCSの体内分布では藤田の研究があり,種々の実験より腎,皮膚,胃,肺などにかなり高度に発見されている.かかる皮膚に分布のあることより皮膚腫瘍に効果があることが予測され2,3治験を試みた.対象とした皮膚腫瘍は疣贅,有棘細胞がん,基底細胞がん,汗腺がん,悪性黒色腫などである.

連載 皮膚科学に貢献した医学者たち・20

外陰クラウロージス(その2)

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.161 - P.166

 前回において外陰クラウロージスが初めて記載された原著を紹介し,続いて現在のドイツおよびイギリスにおける本症に関する一般的見解を記述した.そして本症が女子にのみ生ずるという初期の考えが変り,現在では男子にも発生することが知られ,陰茎クラウロージスと呼ばれている.今回はアメリカおよびフランスにおける外陰クラウロージスに関する見解を述べるが,もちろん陰茎クラウロージスの論述も含まれる.今回も標題を女子のみに用いられる外陰クラウロージスとしたのは,初めての記載者の命名を尊重して保存したからにほかならない.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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