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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科29巻3号

1975年03月発行

文献概要

綜説

皮脂中の過酸化脂質と皮膚疾患

著者: 早川律子1

所属機関: 1名古屋大学医学部皮膚科学教室

ページ範囲:P.181 - P.192

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I.過酸化脂質とは
 これは"lipoperoxide","脂肪酸酸化物"などとも呼ばれ,不飽和脂肪酸が自動酸化という反応を経て生じた脂肪酸の過酸化物である.飽和脂肪酸は常温では殆んど酸化されないが,100℃以上の高温では触媒の存在下で徐々に過酸化物を生ずることが知られている.しかし我々が問題とする生体内反応においては全く関係がない.不飽和脂肪酸の酸化による生成物は環状パーオキサイド又はメロオキサイド等が考えられていたが1942年にFarmer1)がハイドロパーオキサイドの生成が自動酸化の初期段階にみられることを証明して以来,自動酸化の生成物はハイドロパーオキサイドであると確認され,その反応過程は図1の如くである.即ち二重結合に隣る活性メチレン基から水素が1つ離脱し生じたフリーラジカルが反応のイニシェーターとなつて連鎖的な反応を起こさせる.反応のごく初期においては約90%がハイドロパーオキサイドになるが,ハイドロパーオキサイド生成に関与したファクターが,また速かに反応の第2段階をひき起し,チェインの分断とともにリポパーオキサイドは分解されてゆく.反応の初期において水素が離脱するためにはかなりのエネルギーが必要とされるが,このエネルギーは二重結合が1個の場合には80kcal,2個の場合には69kcalと報告されている.初期反応の時点では二重結合はのこつているが反応の第2段階においては熱その他の影響によりすみやかに(殆んどは初期反応とともに)チェインの分断が二重結合のところから始まり,次第に一重結合のところにも起つてゆく.このFarmerの考え方に対しHilditch2)は図2の如くO2が直接二重結合に付加するという考え方である.この場合にも反応は連鎖的に起こると考えられ,Farmer,Hilditchともに初期段階の生成物がハイドロパーオキサイドであることには変りない.ハイドロパーオキサイドの生成を促進する因子としては紫外線,X線,宇宙線,金属イオンFe++,Fe+++,Co++,Mn++,Cu++がある.ビタミンCはビタミンEの欠乏時にFe+++の触媒作用を促してハイドロパーオキサイドの生成を促す.しかしビタミンEの存在下ではビタミンEの抗酸化作用を強めハイドロパーオキサイドの生成を抑制する.生体内において通常ビタミンEは多量に存在が認められビタミンCはハイドロパーオキサイドの生成を抑制すると考えられる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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