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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科29巻4号

1975年04月発行

雑誌目次

図譜・390

乳癌の円形脱毛症様皮膚転移

著者: 石橋明 ,   村上章 ,   相馬智 ,   小野美貴子

ページ範囲:P.262 - P.263

患者 29歳,主婦
初診 昭和48年11月5日

綜説

皮脂の排泄コントロールと皮表での役割り

著者: 大城戸宗男

ページ範囲:P.265 - P.273

 保護作用という皮膚の機能には,内部からの水分蒸発を防ぐ作用と,外部からの異物の侵入を防ぐ作用とがある.このいわゆるバリヤー作用には,薄く張つた皮膚表面の脂質が一役買つている.
 この皮膚表面に蓄積している脂質(皮炎脂質skinsurface lipids,ときに平常皮脂casual lipidsと同義的に用いられる一後述)は,常時50〜400r/cm2程度の量である.これは脂腺と表皮という同じ皮膚のなかでも異つた機能をする組織において,異つた代謝過程(合成,分解再合成など)を経て,最終的に皮表に排泄されたものである1)(図1).

原著

蕁麻疹様発疹ならびに虹彩炎,関節痛などを発生したクリオグロブリン血症

著者: 島田義昌 ,   吉井田美子 ,   山崎紘之 ,   平井玲子

ページ範囲:P.275 - P.280

 48歳,主婦.44歳時に高熱,腎炎,薬疹などを発生して以来,蕁麻疹様の発疹,虹彩炎,関節痛,筋肉痛,疲労感,レイノー症状,柴斑,皮下結節などのごとき多彩な症状を時々発生している患者.リウマチ反応陽性でクリオグロブリン(CG)を検出した.基礎疾患はみあたらず本態性CG血症と思われる.症状増悪時にはフルフェナム酸剤が有効であった.そこでこれを経験した機会に,CG血症の臨床症状について考察した.

Necrotizing fasciitis

著者: 渡辺進 ,   木下誠一

ページ範囲:P.281 - P.284

 症例は68歳の主婦.左膝の激痛に始まり,左大腿,左下腿に紅斑,水疱,壊死を来し,約10日間で左大腿より左下腿に広範囲な壊死を来した.壊死部を切除したところ筋肉,筋膜が露出した.貧血が強くなり,白血球増加及び核左方移動がみられ,ASLO 2500T.U.で溶連菌感染を思わせた.強力に抗生剤投与,輸血,輸液を行ない,壊死部にメッシュスキングラフトを行ない軽快したが血清肝炎を併発した1例を病名の考察と共に報告した.

皮膚原発滑平筋肉腫の1症例

著者: 神部誠一 ,   高宮正

ページ範囲:P.285 - P.288

 32歳,女性の前膊伸側に発生した小腫瘤を摘除,その組織学的所見から滑平筋肉腫と診断した.最も特長的な所見はVan Giesonで黄染し,核の長軸が平行に並ぶ所謂pa—lisadingのパターンをとり,好銀線維をもたないなど,線維肉腫およびその類縁腫瘍を除外することができた.増殖の傾向は一般に膨脹性で,一部で深層の脂肪織へ侵襲の潜能性をうかがわせるところがあつた.筋腫であるか筋肉腫であるかの判断は困難を極めたが,核分裂像の豊富に存在すること,真皮層の膠原線維束の破壊,皮膚附属装置へのenchroachmentの観察されるところから筋肉腫と診断された.世界中の文献によれば従来報告されたこの種の皮膚原発滑平筋肉腫は遠隔転移を生ずることは少なく,比較的その予後は良いとされている.なお,その起原について血管壁筋層から発したものであるか立毛筋であるかの決定は容易ではないが,後者である可能性の方が大であると判断した.

粘膜に初発した水疱性類天疱瘡

著者: 藤本典男 ,   山田瑞穂 ,   植木宏明

ページ範囲:P.289 - P.294

 43歳,女子.鼻出血,口腔粘膜の水疱形成,びらん,眼球癒着など粘膜病変を初発としたと考えられる水疱性類天疱瘡の症例である.臨床像,組織像,電顕的所見について記述する.臨床像は程度は軽いとしても,良性粘膜類天疱瘡と鑑別に苦しむ点が存在した症例で,最近発表されているこれら水疱性疾患の免疫組織学的所見を引用して,本症と良性粘膜類天疱瘡との関係について論じた.

らい腫に囲まれた皮膚線維腫

著者: 尾崎元昭 ,   原田禹雄

ページ範囲:P.295 - P.298

 38歳の男子のらい腫らい患者の右大腿に生じた皮膚線維腫の1例を報告する.この腫瘍は,らい腫らいの増悪にともなつて母指頭大の有茎性腫瘤となつた.しかし,組織学的には周辺のらい腫性肉芽腫と中央の皮膚線維腫とは明瞭に区別され,皮膚線維腫は線維性組織だけから成り,らい腫や組織球腫の所見を全くしめさなかつた.これは,組織球腫・硬化性血管腫・黄色腫などとは異なる,線維芽細胞由来の皮膚線維腫の存在とその腫瘍性を示唆している.あいまいな定義のままに用いられている線維腫という用語の問題点について考察を加えた.

皮脂過酸化脂質と皮膚疾患の関連—特にB2酪酸エステルの作用について

著者: 早川律子 ,   上田宏 ,   井沢洋平

ページ範囲:P.299 - P.303

要約 皮脂中の過酸化脂質量の変動と皮膚疾患の臨床症状との間連を観察するために,女子顔面黒皮症8名,肝斑4名,尋常性痤瘡7名,健康人7名の皮脂を採取し,皮脂中過酸化脂質量,総皮脂量を測定した.治療はビタミンB2酪酸エステル120mg〜180mg/日を主とした.初診時と軽快時とにおける測定結果によれば,軽快時には女子顔面黒皮症,肝斑においては皮脂中過酸化脂質量,総過酸化脂質量/総皮脂量ともに著明に減少し,特に女子顔面黒皮症において著明であり,皮脂中過酸化脂質量の減少が臨床症状の改善と並行することが認められた.また尋常性痤瘡において総皮脂量の減少が認められ,これと並行して総過酸化脂質量の減少が認められたが総過酸化脂質量/総皮脂量の値は初診時,軽快時ともにほぼ正常値を示し,変化が認められなかつた.

播種性好酸球性膠原病

著者: 今井清治 ,   浜松輝美 ,   池田重雄 ,   川村太郎 ,   南睦彦 ,   藤生道子

ページ範囲:P.305 - P.312

 6歳,女児.1歳2カ月頃よりアトピー性皮膚炎に膿皮症様皮疹を併発し,喘息様発作,関節リウマチ様症状,発熱,リンパ節腫大を来たし,検査所見で高度の好酸球増多を伴つた白血球増多,高蛋白血症,高ガンマ・グロブリン血症,IgEが異常な高値を示し,CRP,RA共に強陽性,LDH高値,血沈の促進,骨髄像における著明な好酸球増多を認めた.足背の表面が漿液性の小結節の組織像では表皮直下に水疱がみられ,その内容には多数の好酸球を認め,真皮では主に血管および皮膚附属器周囲に,皮下では葉間結合織更には血管腔の内外にまで著しい好酸球を主とする細胞浸潤がみられた.また,真皮結合織では一部に膠原線維の変性をみた.上記症状および白血球増多に対して副腎皮質ホルモン剤が著効を呈したが完治に至らず末期には神経症状を来たして死亡した.本症例は1956年Engfeldtらが提唱した播種性好酸球性膠原病にほぼ一致するものであり,彼らの例および本邦報告例を中心に若干の文献的考察を行なつた.

乳児肝炎を併発した色素失調症—免疫学的考察を中心として

著者: 中川俊郎 ,   矢田純一 ,   水野久美子 ,   漆畑修

ページ範囲:P.313 - P.319

 2例の色素失調症について免疫血清学的検索と末梢血リンパ球subpopulationの構成を検討した.色素先調症と乳児肝炎の併発例でIg-Mの増加とcytomegalovirus抗体価の上昇が認められた.末梢血リンパ球では"null"cellの増多とPHA反応性の低下が認められた.他の1例では,Ig-M,Ig-G,Ig-Aといずれの免疫グロブリンも著しく増加しており,先天感染が疑われたが,特定のウイルス抗体価の上昇は認められなかつた.末梢血リンパ球は,補体レセブター陽性リンパ球や表面免疫グロブリン陽性リンパ球などのB細胞の著しい増加がみられた.PHA反応性は低下していた.
 色素失調症,乳児肝炎,血清ウイルス抗体価の上昇,免疫グロブリン値の増加末梢血リンパ球のsubpopulationの変化やPHA反応性の低下などを一元的に考察した.

連載 皮膚科学に貢献した医学者たち・22

皮膚筋炎(その2)

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.321 - P.329

5.イギリスにおける見解
 イギリス学派の本症に関する代表的見解として,Rowellの記述5)を基にして述べる.この人は日本の皮膚科医にはなじみが少ないが,リーズ(Leeds)大学医学部の名誉医学部長であり,またその医学部皮膚科の名誉教授である.本症に関するその見解は穏健で,イギリス皮膚科界の一般的意見とみなしてよいと思われる.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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