原著
皮膚原発滑平筋肉腫の1症例
著者:
神部誠一1
高宮正2
所属機関:
1大阪鉄道病院中央検査室
2大阪鉄道病院皮膚科
ページ範囲:P.285 - P.288
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32歳,女性の前膊伸側に発生した小腫瘤を摘除,その組織学的所見から滑平筋肉腫と診断した.最も特長的な所見はVan Giesonで黄染し,核の長軸が平行に並ぶ所謂pa—lisadingのパターンをとり,好銀線維をもたないなど,線維肉腫およびその類縁腫瘍を除外することができた.増殖の傾向は一般に膨脹性で,一部で深層の脂肪織へ侵襲の潜能性をうかがわせるところがあつた.筋腫であるか筋肉腫であるかの判断は困難を極めたが,核分裂像の豊富に存在すること,真皮層の膠原線維束の破壊,皮膚附属装置へのenchroachmentの観察されるところから筋肉腫と診断された.世界中の文献によれば従来報告されたこの種の皮膚原発滑平筋肉腫は遠隔転移を生ずることは少なく,比較的その予後は良いとされている.なお,その起原について血管壁筋層から発したものであるか立毛筋であるかの決定は容易ではないが,後者である可能性の方が大であると判断した.