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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科29巻5号

1975年05月発行

雑誌目次

図譜・391

Senile Keratosis

著者: 石川謹也

ページ範囲:P.346 - P.347

患者 70歳,男子
初診 昭和48年7月25日

綜説

皮脂の生化学

著者: 猪股成美

ページ範囲:P.349 - P.357

 脂腺細胞で生合成され,排泄される脂質を皮脂という.しかし脂腺は全分泌腺であるため,脂質を合成する細胞そのものも自壊排泄される.したがつて種々の細胞成分脂質が混入する.新生皮脂は脂腺導管,毛包漏斗部を通過して皮表へ出るが,その過程でリパーゼの作用を受けて組成に変化が生ずる.また脂腺経由で排出される物質も皮脂に混入することは当然のことと考えられる(塩化ビフェニールなど).
 このように複雑な諸因子が介在するなかで,新生皮脂のみを純粋に抽出し,その組成,構造を化学的に決定し,生合成を追求することは極めて困難である.そのため皮脂の研究には,皮表脂質,皮脂様脂質(胎脂vernix caseosa,毛嚢嚢腫などの脂質)あるいは表皮,角質脂質などが対象とされ,比較検討のうえ組成,構造,生合成経路が推定されてきた.

一頁講座

Bourneville-Pringle母斑症

著者: 川村太郎

ページ範囲:P.358 - P.358

The characteristic skin lesionsassociated with tuberous sclerosisis, a. adenoma sebaceum, b. cafe—au-lait spot, c. portwine stain, d.fibroma molluscum, e. Hea-bitepatch,以上は米国のmedical boardの試験問題集にあつて,『正解はd.になつているが,a.ではなかろうか?』という質問がよせられた由である.***この試験問題のように正解が多少明確でないことを問う場合は,○×式でなく,論述式に書かせた方が受験者の知識を詳かに評価できるかと思う.***全身病としてよぶ場合には,van der Hoeve1)の提案を少し変えてBournevme-Prin-gele母斑症2)(以下,本症)とよび,tuberous sclerosisは脳病変ないし脳症状のよび名とした方がすつきりすると思う.近時米,英のものをみるとtuberous sclerosisという術語を全身病のよび名に用いている場合が少くないが,まぎらわしいから感心できない.***本症の顔面皮診をadenoma sebaceumと呼ぶことは,Pringleがこれをadenomes sebac—ees (Balzer)すなわち多発性毛嚢上皮腫と同じと考えたことに由来すると聞いた.その後両者の異同をめぐつて論議が長く続いた.その一端は,Darierの教科書(1928年版)で,adenomes sebacee symetriquede la faceの中にtype Balzer, typePringle,type Hallopeau-Leredde—Darierの分類(文献2,174頁,第19表参照)を設け,多発性毛嚢上皮腫はtype Balzerと共通するものとしていることでもわかる.***『本症の一次的病変は(皮膚及び腎臓の病変をふくめて)間葉発生障害による異型の増殖であることを1957年明記しておいた(文献2,200頁).此の考えは文献3を経て,Rook4)(1972)に伝えられてはいるが,その間Montgomery5)(1967)がNickelら(1962)の業績によつてはじめて,adenoma sebaceumがvascular andconncctive tissue tumor,a hamar—toma in which sebaceous glandsare only passively involvedという観点に達したことを知り,自説を反覆主張することに不熱心であつたことを反省した.***Lever6)もNicke1らを引用して,本症の三主徴としてmental deficiency, epilepsy andangiofibroma (mistakenly calledadenoma sebaseum of Pringle)をあげている.試験問題のfibromamolluscumは,本症と無関係にも見られるが,本症にも屡々見られるから,これを正解とすることも間違いではなかろう.しかしながら,最近のDomonkos7)(1971)の教科書でも,組織所見はNickelの所見をとりいれながらも,標題はadenomasebaceumをとつている.このような次第であるから,出題者が本症の本態乃至顔面皮診の組織像についての知識を試したかつたのなら,seb—aceous adenomaとでもしておいてくれたらよかつたと思う.***Pha—komatosis (母斑症)という術語は語源的に正しくないとするものもあるが,Websterの辞典8)をみると,GK phak—,phako—,fr.phakos lentil(レンズマメ),object shapedlike a lentil,mole,wartとある.従つてvan der Hoeve1)の"a pha-kosis a naevus without naevusrcells;a naevus is a phakos withnaevuts-cells"(文献2,3頁参照)といつたことも,あながち間違とはいえまい.

壊疽性膿皮症とBehcet病

著者: 島田義昌

ページ範囲:P.370 - P.370

 中村先生の「壊疽性脳皮症とBe—hcet病」なる記事1)を面白く読んだので,これに対する著者の考えを申し上げたい.

原著

職業性手湿疹—給食会社職員にみられた手湿疹・爪廓炎・爪変形の多発

著者: 西岡清 ,   西岡橿子

ページ範囲:P.359 - P.364

 大阪府下某給食会社々員に多発した手湿疹・爪廓炎について調査したところ,13人中9人に上記症状を認めた.罹患群と非罹患群を比較したところ,罹患群は,非罹患群より勤務年数がやや長い以外,家庭内での水仕事の負荷等に特別な差異を認めなかつた.症状の発生状態をみると,会社の規模拡大を行つた昭和45年から手湿疹・爪廓炎が出はじめ,昭和48年に急増していた.これは,昭和47年6月より導入したD洗剤が,何らかの役割を演じたものと考えられた.洗剤および,その成分による貼布試験で,洗剤,ソーダ灰,トリポリリン酸,ラウリル硫酸系非イオン活性剤に陽性反応を認めた.

本邦における疣贅様表皮発育異常症の臨床疫学

著者: 筏淳二 ,   松木正義 ,   沖守生

ページ範囲:P.365 - P.369

 汎発性疣贅症を含めた疣贅様表皮発育異常症の本邦例を文献から集めて,腫瘍の有無,疣の分布範囲に基づき腫瘍型,全身型,限局型に分類した.あわせて当科外来を訪れた扁平疣贅例を集計した.その結果,疣を全身に汎発し,かつ男では幼時に初発するほど,後に皮膚腫瘍を生じやすく,そのうち癌は一般皮膚癌に比べて若年に併発した.性比,発症年齢分布,平均発症年齢,平均罹患期間は腫瘍型,全身型,限局型,扁平疣贅の順に逐次推移した.そこで本症と扁平疣贅の関係は断続的でなく,全身型と扁平疣贅の間を限局型が橋渡しすると考えた.そして疫学的属性の推移は同一ないし近縁ウイルスに対する宿主感受性の相違に基づくと推測した.一方,本症と疣贅群の間には腫瘍転換,遺伝的背景,経過に差異がある.以上のことから本症をslow virus infectionとする考えを述べた.

閉塞性黄疸に合併した黄色腫

著者: 小玉肇 ,   益田俊樹 ,   藤田慎一 ,   植木宏明

ページ範囲:P.371 - P.378

 黄色腫の発生をみた原発性胆汁性肝硬変症と肝内胆管閉塞症の各1例を報告し,閉塞性黄疸の際のリポ蛋白の異常ならびに黄色腫の形態について考察した.
 前者の血清中にリポ蛋白Xが存在し,αリポ蛋白が著明に減少していることを電気泳動により確認した.閉塞性黄疸にみられる黄色腫はnodular xanthomaが最も特異であり,その他に粘膜部黄色腫,扁平黄色腫,皺に沿つて数珠状に配列する丘疹状黄色腫ならびに手掌とは限らない部位に出現する線状黄色腫が相混在することが特徴であると考えた.
 リポ蛋白代謝異常や黄色腫の発生機序を考える場合,リポ蛋白の量的異常のみならず質的異常ならびにその結果としての代謝異常にも注目すべきであることを強調した.

Cole-Engman症候群の1例

著者: 小宮勉

ページ範囲:P.379 - P.384

 9歳男子のCole-Engman症候群の1例を報告した.症例にみられた異常所見は次のようなものであつた.
1)舌乳頭の萎縮
2)皮膚の網状色素沈着と萎縮
3)爪の萎縮・変形
4)軽度の知能低下
5)視力低下,視神経の軽度萎縮,求心性視野狭窄,瞳孔対光反射遅延
6)末梢血の血小板減少
7)右鼠径ヘルニア

粘膜に限局した尋常性天疱瘡の1例

著者: 梁瀬恵子 ,   山田瑞穂 ,   今村貞夫

ページ範囲:P.385 - P.389

 44歳,女性.口腔粘膜,咽頭,喉頭,外陰部,子宮頸部など粘膜だけに病変を認める尋常性天疱瘡の1例を経験した.発症後,すでに1年1カ月を経過しているが,いまだ皮膚には異常なく,経過良好である.血中天疱瘡抗体は低値であるがみとめられた.皮膚に病変のない子宮頸部の尋常性天疱瘡の症例は稀と思われる.

Nodular Fasciitis

著者: 鏑木公夫

ページ範囲:P.391 - P.394

 63歳,男子の左前腕外側に発生したnodular fasciitisの1例を報告した.臨床的に2×2cmの皮膚よりわずかに隆起する健常皮膚色腫瘤で,硬度は弾性硬であり,圧痛はなく皮膚や下部組織とはやや易動性である.初診時,石灰化上皮腫または皮膚線維腫を疑つた.組織学的に皮下脂肪組織から下方に及ぶ腫瘤で境界はあまり明瞭でなく,束状に多方向に増殖している.腫瘤を構成する細胞は,紡錘形ないし星芒状を呈し線維芽細胞を思わせる.毛細血管の増生や赤血球の血管外溢出が見られるととも粘液腫様を呈する所見もあつたが,リンパ球を主とする細胞浸潤は軽度であつた.文献的にみて本症の臨床的特色として上肢,特に前腕が好発部位であり,単発で弾性硬,発育が2週間以内と割りあい急速であり,組織学的な所見では,線維芽細胞の増殖,毛細血管の増生,粘液腫様の所見を認めた.著者は本症を結合組織の増殖の1つのパターンという考えに賛同する.

塩化ベンザルコニウムによる接触皮膚炎の2例

著者: 東禹彦 ,   潮田妙子

ページ範囲:P.395 - P.398

 近年ひろく使用されるようになつてきた塩化ベンザルコニウムによる接触皮膚炎の2例を報告し,本剤による貼布試験濃度としては市販の10%塩化ベンザルコニウム溶液を1,000倍に希釈したものを用いるのが適当であることを明らかにした.なお,症例1は看護婦で日常塩化ベンザルコニウムに接する機会が多いために,症例2は潰瘍部の消毒に塩化ベンザルコニウムを使用したために接触皮膚炎を生じたものてある.

薬剤

尋常性白斑に対する8-MOP外用とBlack Lightによる照射療法について

著者: 野崎憲久 ,   池谷敏彦 ,   橋本紘

ページ範囲:P.399 - P.406

 8-MOPの外用とBLによる照射療法を尋常性白斑の限局例36例,汎発ないし散在型10例合計46例について実施した.治療scheduleに基づいて照射を行い,間隔は1週1回の割とし,照射回数の最高は90回(1年7カ月)に及んだ.治療成績は限局例では治癒を含めた相当狭小化例が23例(63.9%),汎発散在例では7例(70%)であり,症例総計の治癒,相当狭小化例の占める割合は30例(65.2%)を示した.
 本療法の施行により色素再生後残存した白斑病巣面に点状皮膚移植術を行つた後,再度本療法を継続した例が10例あり,うち5例は治癒,4例は相当狭小化を来し,植皮術に本療法を併用すれば更に優秀な成績が期待される.また健常ならびに白斑皮膚に8-MOP外用とBLの照射実験を臨床的ならびに組織化学的に検討し,本療法の効果が塗布後照射開始までの時間および照射時間の2因子に影響されることを認めた.

ウイルス性皮膚疾患に対するRifampicin軟膏の応用

著者: 清水順也

ページ範囲:P.407 - P.411

 ウイルス性皮膚疾患については,現在のところその診断はついても治療は対症療法の域を出ない.積極的な治療はワクチン以外にないのではないかと極言されても過言ではないであろう.ここ数年来,三国ら1),庭山ら2),大石ら3)の眼科領域での試みとして,流行性角結膜炎,眼瞼ワクチニアなどに対して抗結核剤であるRifam—picin (以下RFPと略す)を0,6%の生理的食塩水で懸濁液となし,これを点眼薬として用い,良好な成績を得ている.そこでRFPを外用剤として,皮膚疾患への応用を追試の形で試み,病巣の早期乾燥化など有効と認めたのでここに報告する.

印象記

第38回日本皮膚科学会東日本連合地方会をみて

著者: 園田民雄

ページ範囲:P.412 - P.413

 第38回東日本連合地方会は,昭和49年9月14,15日にわたつて,岩手医大伊崎正勝教授を会長に,岩手県民会館にて催された.
 私は,学会前日催される臨床病理講習会に出席のため,12日夕方盛岡駅に降り立つた.駅前通りを東に北上川を渡ると,風がひんやりと肌に触れ,空気もどことなく乾いている感じで,いかにも北国へ来たという想いがする.町の中心である南部藩主居城跡までは,歩いても10分たらず,学会場にあてられた県民会館はその北方に位置している.

連載 皮膚科学に貢献した医学者たち・23

末梢血管拡張性肉芽腫

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.414 - P.417

1.病名について
 末梢血管拡張性肉芽腫は,化膿性肉芽腫(granuloma pyogenicum)とか,有茎性肉芽腫(granulomapediculatum)とかの別名もあるが,これらは後にできた名称で,初めはドイツ語でボトリオミコーゼ(Bo—tryomykose)といわれた.人間における本症はフランスのポンセの命名にかかわるが,彼が人間においてこの皮膚病を見た数年前に,馬における同様の疾患にボトリオミコーゼの名が与えられていたのである.当時,馬における本症はボトリオミセス属(Botryomyces)の菌によつて生ずると信じられたので,上記の病名が作られたのである.現今,この属は微生物の分類からは抹消されていて,実際の内容は不明である.馬に発生した本症にbotryomycosisequiの名があるのに対し,人間の本症はbotryomycosis hominisともいい,ポンセの論文には後者の意味の名称が使われている.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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