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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科29巻6号

1975年06月発行

雑誌目次

図譜・392

経過中に食道癌が発見された外陰部ボーエン癌

著者: 加畑明美 ,   川津智是 ,   岡川和弘

ページ範囲:P.434 - P.435

患者 69歳,女性
初診 昭和49年1月16日

綜説

皮脂と微生物—とくに痤瘡との関連において

著者: 朝田康夫

ページ範囲:P.437 - P.448

 皮脂と微生物の関係について,近年注目される所は,皮膚常在菌の皮膚生理機構とのinteraction,殊に皮脂分解過程に関与する常在菌の問題であろう.本篇ではこの点に焦点を絞つて述べると共に,皮脂分泌亢進と関係深い座瘡の発生病理と細菌の関係にも触れたい.

原著

皮膚のコロイド変性—症例報告

著者: 川島愛雄 ,   松原為明 ,   金原武司 ,   広根孝衛 ,   北村清隆 ,   飛見昭子 ,   林敏 ,   大久保達也

ページ範囲:P.449 - P.458

 皮膚コロイド変性(局面型)の1例を述べた.病巣に見られるコロイド物質は組織化学的に一種の糖蛋白と推定された.この物は電顕的には直径60〜100Aの細線維と低電子密度の間質から成つていた.生化学的分析の成績では酸性粘液多糖体は証明されず,いわゆるシアロムコイドである可能性が考えられた.

眼瞼色素沈着症

著者: 井上勝平 ,   桑原宏始 ,   小野友道 ,   緒方明詔 ,   永広雄一

ページ範囲:P.461 - P.466

 眼瞼色素沈着症の9症例(男1例,女8例)を報告した.
 初診時年齢は38歳より70歳,平均53.7歳である.初発年齢は明確ではないが,20歳台までに目立つて来たと陳述したものが5例ある.6例に家族内発生を認めた.局所合併症として,眼瞼黄色腫4例,老人性面疱1例,全身性疾患として糖尿病2例,慢性肝炎,高血圧,高脂血症各1例がある.組織学的にみて色素沈着の主体は表皮基底層のメラニン顆粒の増加と真皮上層melanophageの出現による.
 本症はclinical entityと見做すことが出来るが,その発症病理は単一ではない.大きく遺伝説(常染色体性優性遺伝)と全身疾患影響説(泌尿生殖器疾患,肝疾患など)に分けられる.自験例で局所因子が重視されている正脂症性の眼瞼黄色腫などの合併が多かつたことから,眼瞼皮膚全体の脆弱性が発症基盤にあるものと推測したい.

アンピシリン疹を伴つた伝染性単核球症

著者: 遠藤幹夫 ,   辻口喜明 ,   今川一郎 ,   森嶋隆文

ページ範囲:P.467 - P.472

 欧米においては伝染性単核球症患者にアンピシリン疹が高率に出現し,本症患者に対する本薬剤の使用は禁忌とされているほどである.しかし,本邦においてはいまだその報告をみないようである.そこで,自験例の概要を報告するとともに伝染性単核球症にみられるアンピシリン疹の臨床的特徴につき記した.
 自験例における皮疹の発現機序としていくつかの可能性が考えられるが,異型リンパ球の出現を特徴とするCytomegalo virus mononucleosisやリンパ性白血病等にもアンピシリン疹が高率に出現するとの事実を考慮に入れると,皮疹発現に際して異型リンパ球が何らかの役割を果しているように思われる.

Poststeroid Panniculitis

著者: 照井寿代 ,   笠井達也 ,   三浦幹枝 ,   宍戸春美

ページ範囲:P.473 - P.480

 特発性ネフローゼ症候群にてステロイドの長期大量投与を受けた3歳および4歳の2例の男児において,ステロイドの減量中に発生せるPoststeroid panniculitisの症例報告.両例とも長期間にわたり高コレステロール血症の状態にあり,ステロイドの減量に伴い血清総コレステロール値の低下をみると同時に,本症の発生をみた.第2例は発熱を伴い,かつ長期にわたり発疹の新生,消退を反復.第1例は全身の肥満傾向があり,潮紅を伴う有痛性硬結性結節が顔面,四肢に広く多発したが,第2例は顔面,躯幹に比して四肢が細く,発疹も四肢には余り生じなかつた.すなわち,本症の皮疹はステロイド投与により異常に脂肪の蓄積をみた部位に一致して生ずる傾向を示す.本症はステロイド投与の結果としての脂質代謝異常に深く関与するが,この点に関し,内外の既報告例を概観して,発症機序にも若干の考察を加えた.

糖尿病の皮膚病変—1.その臨床統計を中心に

著者: 北村啓次郎

ページ範囲:P.483 - P.490

要約 東京都済生会中央病院内科入院中の糖尿病患者271例と,正常ドック入院患者86例にみられた皮膚疾患を比較検討し,次の如き成績を得た.糖尿病者にみられた皮膚疾患は従来の文献と同様で,湿疹皮膚炎,皮膚瘙痒症,血管異常症,感染症,眼瞼黄色腫,発汗異常症の頻発をみとめた.皮膚瘙痒症では女性の外陰瘙痒症,真菌症では白癬以外のものが,また細菌感染症は女性に頻発した.眼瞼黄色腫,口角炎は糖尿病群のみに認められた.また膝,肘,足背,足底(踵)の角化肥厚傾向が,0.01以下の危険率で女性例に頻発した.糖尿病の直接Dermadromeは,下腿潰瘍と下腿の褐色萎縮斑をのぞき全くみられなかつた.従つてありふれた皮膚疾患,即ち間接Dermadromeにこそ糖尿病発見の糸口があると思われた.また,糖尿病群では1人の患者に多種類の皮膚疾患のみられる傾向があり,正常人でも,数多くの皮膚疾患を併発している場合には,糖尿病の潜在も考慮する必要がある.

糖尿病の皮膚病変—2.多彩な皮膚症状を呈した1例について

著者: 北村啓次郎

ページ範囲:P.491 - P.497

 31歳男子会社員,両足亀裂角化にはじまり,下腿潰瘍,全身皮膚の乾燥および色素沈着,膝,肘の角化肥厚,下腿伸側の褐色萎縮斑,右上腕の水疱形成など多彩な皮膚症状を呈し,長期にわたり一進一退の経過をとつている糖尿病の1例を報告した.
 これら多彩な皮疹の病因として,全身皮膚のmicroangiopathyおよび慢性の栄養障害を考え,それらに加え種々の外的および内的環境,刺激の違いにより皮疹が多様化すると考えた.また,本例に見られる如き水疱もBullosis diabeticorumの1型と考え,その水疱は表皮の栄養障害による表皮細胞の空胞化,微小水疱形成にはじまる表皮内水疱とみなし,発症誘因として軽度の外的刺激を考えた.
 さらに膝,肘,踵などの角化肥厚傾向の機序についても同様の内的および外的病因を考えた.

各種の治療を行つた尋常性天疱瘡の1例—金化合物療法の成功例

著者: 高橋久 ,   高橋吉定

ページ範囲:P.499 - P.503

 19歳,女子.4カ月来発生し急速に増悪した重篤な尋常性天疱瘡に対して,デキサメサゾン1日10mgを投与して一旦症状を軽快せしめ,ACTHでステロイド離脱をはかるも再発,Endoxan (Cyclophosphamide)を使用したが効果なく,全身病巣の緑膿菌感染を併発したために再び1日16mgのデキサメサゾンを以て水疱発生を抑制したが,ステロイドの副作用である体重増加(45→58kg),極度の腰痛,糖尿,膿瘍などの感染症が次々に発生したので,ステロイド投与量を減量しつつシオゾール(Gold sodium thiomalate)の注射を開始した.投与開始後暫時GPT,GOTの上昇を見たので,本剤による中毒症状を考慮して投与を一旦中止,4カ月後再開した.その頃からステロイドを中止しても水疱の発生なく,肝機能も正常化して全治といつて良い状態となつた.本症例は金化合物で本症を治療した本邦最初の報告例である.

黒色棘細胞症と胃・十二指腸病変—臨床疫学的アプローチ

著者: 筏淳二

ページ範囲:P.505 - P.509

 日本病理剖検輯報から黒色棘細胞症を伴う悪性腫瘍を選び出し,そのうち胃癌随伴例の性状を臨床疫学的に検討した.随伴腫瘍の90.5%は胃癌であつた.胃癌随伴例の死亡年齢は若年に偏り,その分布図は波型を呈した.さらに50歳以後の死亡例は男に著しく偏つた.これらの特異点は本邦良性型の性・年齢分布によく類似した.そこで疫学像の類似と腫瘍随伴症候についての著者の考えに基づき,悪性型と良性型は同一機序により発症すると想定した.文献的にも良性型と胃以外の腫瘍を伴う悪性型とは良性胃・十二指腸病変をときに合併することを知つた.以上のことから癌に限定されない胃・十二指腸病変が本症の発症に重要な役割を演ずると考えた.さらに本症では胃病変が悪性化したと考えられる例が多いことを知つた.そして発癌年齢や悪性転換の可能性に関して本症と疣贅様表皮発育異常症とが類似することを指摘した.

一頁講座

アカツキ病

著者: 浜田稔夫 ,   鈴木伸典

ページ範囲:P.490 - P.490

〔症例1〕11歳,女子
 現病歴 両乳房部およびその周辺に褐色の色素沈着のあるのに母親が気付き,来院した.

連載 皮膚科学に貢献した医学者たち・24

スポロトリコージス(その1)

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.510 - P.514

1.はじめに
 かつてある日本皮膚科学会においてスポロトリコージスの症例報告があつた.その時,会員のひとりから次のような質問が出た.すなわち,"最近スポロトリコージスに関する外国文献を読んでいると,その病原菌をある著者は,従来どおりSpor—otrichum Schenckiiと書いているが,他の著者はSporothrix schen—ckiiと別の属名を与えている.いずれを採択するのが適当なのであろうか.またもしSporothrixを正しいとすると,病名のsporotrichosisも変更を要するのではなかろうか"以上が質問の要旨であつた.
 この問題の第1は,次の記述中に説明されている.第2の問題の解答はこうであつた."動植物性病原体から病名をつくるとき,その属名の語尾をまげて疾患を表わすのは慣用手段であるが,病原体の属名が変更されたからといつて,いちいちそれに応じて新病名をつくることはせず,病名は旧名のまま保留しておくのが一般である.たとえばフィラリア糸状虫病は,その主要病原体Fil—aria bancroftiの属名をとつてfil—ariasisと以前から称されている.現今分類学的にFilariaは適当でないとして,Wuchereriaの名が一般に認容されている.しかし疾患名としては今なお,filariasisという人が多い.そうとすれば,Sporotrichumという属名がどう変つても,病名はsporotrichosisでよいではなかろうか".

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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