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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科29巻7号

1975年07月発行

雑誌目次

図譜・393

Carcinoma teleangiectaticum

著者: 古田実夫 ,   斎田俊明

ページ範囲:P.530 - P.531

患者 49歳,女子
初診 昭和48年7月2日

綜説

アトピー性皮膚炎と皮表脂質

著者: 松尾聿朗 ,   籏野倫

ページ範囲:P.533 - P.537

 アトピー性皮膚炎の発症機序に関しては,アレルギー方面からの検索がさかんであるが未だ総てが明らかにされたとは言えない1).その一つの考え方として,アトピー皮膚特有の皮膚素因を主視し,これに各種の刺激が加わつて発症するとする考え方がある.すなわち増田2)は,アトピー皮膚における皮脂分泌障害,汗排泄障害による乾燥皮膚をアトピー性皮膚炎素因の一つとしてあげ,これに一次性刺激因子,接触抗原などが加わつてアトピー性皮膚炎が発症するとしている.
 そこで,はたして従来より注目されている如く,アトピー皮膚において皮脂分泌障害があり,皮表脂質が量的および質的に正常対照群に比べ特異的に差があるのかどうか,差があるとすればその皮表脂質異常がアトピー性皮膚炎の素因となり得るのかどうか等につき,従来の報告に我々の知見を加えて一つの考え方を述べてみたいと思う.

原著

妊娠性疱疹—2例の報告

著者: 石倉多美子 ,   石崎宏 ,   池田真康 ,   竹田公彰 ,   岩泉九二夫 ,   上出二郎

ページ範囲:P.539 - P.547

要約 24歳の家婦および40歳の家婦に見られた妊娠性疱疹について報告した.2例とも激しい瘙痒を訴えた.皮疹は腹部に初発し,間もなくほぼ全身に拡がつた.個疹は紅斑・小水疱・痂皮よりなり,紅斑上に小水疱が環状に並ぶことが多かつた.組織像は表皮下水疱または表皮の壊死性変化で,水疱内と血管周囲に好中球や好酸球のかなり多数の浸潤が見られた.電顕像では,紅斑部において基底膜直下の浮腫と膠原線維の変性が見られ,細胞浸潤のところでは基底膜の不明瞭化・断裂・多層化などが認められた.なおわが国の報告例19例について臨床像・予後・原因・治療・鑑別診断などを簡単に述べた.

Chromomycosis様Phialophora Gougerotii感染症の1例—5-Fluorocytosine著効例

著者: 池上隆彦 ,   東禹彦 ,   朝田康夫

ページ範囲:P.549 - P.555

 17年前沖繩滞在中発症した,58歳,男の右膝蓋部にみられた手掌大の疣贅状皮疹からPhialophora gougerotiiを分離した.P. gougerotiiは通常皮下膿瘍ないし嚢腫を形成するもので,疣贅状皮疹—chromomycosis—を生じた例は文献上認められない.そこで,分離菌の性状,原因菌と臨床像との相関について検討し,さらに本例の病名について,chromomycosisとしてもよいが,chromomycosis様P.gougerotii感染症とするのが現況では妥当であることを述べた.
 また,本例の治療に5-Fluorocytosine(5-FC)を1日8g経口投与させ,2週後に箸明な軽快,6カ月後に略治,その後も3カ月追加投与し,この間副作用を認めず,現在まで再発を認めていない.

Porphyria Cutanea Tarda Symptomaticaの1例

著者: 萩山正治 ,   小野公義

ページ範囲:P.557 - P.562

1)臨床症状および尿中ポルフィリンの生化学的検査によつて,porphyria cutaneatarda (以下PCTと略記) symptomaticaと診断した30歳男子の1例を報告した.
2) Band spectrum照射装置を用い単色光照射を行つたところ,照射直後373〜419nmに軽度の紅斑を伴つた膨疹が認められた.このうち404nmの膨疹は最も強く,この反応を惹起する最少エネルギー量は2.93×107erg・scc/cm2であった.
3)肝生検で肝組織片は赤色螢光発色した.その組織所見では,脂肪変性と線維化があり,鉄染色でヘモジデリンの沈着がみられ,アルコールによる慢性肝炎像と診断された.

Trichophyton VerrucosumによるKerion Celsiの1例

著者: 濱松輝美 ,   川村太郎 ,   池田重雄 ,   瀧沢清宏

ページ範囲:P.563 - P.567

要約 70歳女子のTrichophyton verrucosumによるkerion Cclsiの1例を報告した.感染経路は患家で酪農業を営み,牛に接する機会があり,飼育していた和牛の顔面に表面粗糙で灰白色の鱗屑を付着した脱毛性皮疹が認められ,牛病毛からもTrichophyton verrucosumを同定し得たことから,牛からの感染と考えた.なおこの和牛の罹患は,北海道から移入した他の罹患牛からの感染であり,今後関東地方でも罹患牛の移入によりTrichophyton verrucosumによる人白癬が発生する可能性について言及し,併せてTrichophytonverrucosum感染症の臨床像について若干の文献的考察を加えた.

播種性帯状疱疹と胃癌との合併症例

著者: 相模成一郎 ,   古川裕夫 ,   榊原嘉彦 ,   稲富昭子 ,   熊田道子

ページ範囲:P.569 - P.573

 播種性帯状疱疹と胃癌との合併症例を記載した.播種状帯状疱疹は右眼神経領域における典型的な帯状疱疹の発症後7日目に出現したため,免疫異常と内臓悪性腫瘍とを疑い精査したところIgMの低値,DNCBの貼布試験の陰性,および,胃癌の存在を証明した.播種性帯状疱疹と胃癌との発症誘因として免疫異常に注目し,文献を参考にして私見を述べた.

糖尿病の皮膚病変—3.カンジダ症における若干の観察及びCandida albicansの分離成績について

著者: 北村啓次郎 ,   原田敬之

ページ範囲:P.577 - P.581

 糖尿病における皮膚カンジダ症について若干の臨床的並びに菌学的検索を行つた.
 臨床的には,女子に多く,殆んどが外陰,陰股部などの間擦部に生じ,長年にわたる糖尿病のコントロール不良に加えて,重篤な合併症,肥満,臥床などによる皮膚の不潔及び間擦部に嫌気的条件を満すようないくつかの要因の加わつた場合に発症に至ると考えた.菌の出所については,主として消化管で,とくに口腔から直腸までの消化管に広く分布する傾向が認められた.
 また,カンジダの血清型では,90%がA型で従来の報告と同じであつた.以上より糖尿病者はCandida albicansのcarrierになりやすいと考えられた.

糖尿病の皮膚病変—4.Pigmented Pretibial Patches(Bauer)について

著者: 北村啓次郎

ページ範囲:P.583 - P.588

 糖尿病者540例(男317例,女223例)の下腿を観察し,そのうち38例(男32例,女6例)にBauerらのPigmented pretibial patchesを認め,その検出率,糖尿病との関連性,病因につき若干の検討を加えた.本症は男10.1%,女2.7%に見られ男子に頻発.総計での検出率は7%で欧米例にくらべ低い.また糖尿病罹患年数の長い例(5年以上)に多く,糖尿病性神経症との合併例が多かつた.網膜症,動脈硬化症もやや多発の傾向にあつたが,足背動脈その他の脈搏はよく触知された.生検組織像及び下肢血管撮影所見からも太い動脈の循環障害はなく,細小血管異常(microangiopathy)の存在が認められた.以上より,本症は長年の糖代謝障害によつて皮膚末梢循環障害および末梢神経障害を来し,慢性の栄養障害に陥つた皮膚に軽微な外的刺激が加わつて発症する反応性皮膚変化と考えた.さらに本症,Bullosis diabeticorum,Necrobiosis lipoidica,Diabetic ulcerなどはいずれも同じ病因で起るDiabetic microangiopathic dermopathyと考えた.

Infantile Digital Fibromatosisの3例

著者: 東久志夫 ,   山田瑞穂 ,   小川豊

ページ範囲:P.591 - P.596

 10カ月男児の右中指,1歳2カ月男児の右第4趾,および4カ月男児の左第4趾に生じたinfantile digital fibromatosisを報告した.
 全例とも,増大傾向の強い部分は,切除と植皮手術を行なつたが,いずれも辺縁の一部より腫瘤の再発をみた.しかし,やがて自然収縮傾向をみているものもある.
 組織学的に,線維芽細胞の著明な増殖と,その細胞質内の好酸性類円形封入体の存在が特徴的である.電顕的に観察すると,この封入体は,微細線維の集合体であるのがみとめられ,ウイルス性封入体とは考え難い.

好中球性紅斑

著者: 篠力 ,   中溝慶生

ページ範囲:P.597 - P.607

 浮腫性の紅斑を基盤とし,丘疹状から隆起性局面,結節状,腫瘤状,時に中央が陥凹し環状を示す皮疹を経験することがある.罹患部位は顔面,前腕,頸部,躯幹,下肢の順で,自覚症状はないか,軽度の圧痛,時に疼痛がある.しばしば再発性である.組織所見の特徴は核破壊を伴う好中球浸潤を主とする滲出性炎症像で,増殖性変化は滲出性のそれに比べて強くない.炎症は真皮から一部皮下脂肪に波及するが附属器は正常である.真皮皮下脂肪境界部の小血管は侵されるが壊死性血管炎の像はない.皮疹はコルチコイド内服によく反応する.また皮疹が多発し,発熱,白血球増多等の全身反応を伴う症例もあり,これら重症例では膿疱,結節性紅斑様皮疹を合併することもある.これらの症例はSweet症候群に類似または一致する.われわれは上記の特徴をもつ皮疹を「好中球性紅斑」と呼び経験した13例について検討した.

薬剤

尿素軟膏外用の尋常性魚鱗癬に対する二重盲検法による臨床効果の検討

著者: 戸田浄 ,   手塚正 ,   小堀辰治 ,   三浦祐晶 ,   高木章好 ,   大西修 ,   清寺真 ,   真家興隆 ,   大角毅 ,   久木田淳 ,   石橋康正 ,   香川三郎 ,   手塚正 ,   戸田浄 ,   福代良一 ,   井上久美子 ,   斉藤忠夫 ,   浜田稔夫 ,   占部治邦 ,   幸田弘 ,   利谷昭治 ,   中溝慶生 ,   猿田隆夫 ,   田中恒男

ページ範囲:P.608 - P.619

 魚鱗癬は,比較的よく経験される遺伝性角化異常症で,遺伝形式の相違に従つていくつかの病型に分類されている1)
 魚鱗癬の発生機序については,現在なお不明な点が多く定説はないが,最近のアメリカ学派を中心とするケラチン生合成の研究を基礎にした魚鱗癬様皮膚疾患の発生機序についての考え方は,従来の単なる臨床形態学的分類によるものではなく,ケラチン生合成の機序の異常として,魚鱗癬様皮膚疾患を把握しようとしている.すなわち,遺伝形式の相違と臨床像は,非常によく相関しており,ケラチン生合成の機序の異常も,その臨床像とかなり相関したものとして理解できるように思われている.すなわち魚鱗癬を優生遺伝をする尋常性魚鱗癬と,劣性遺伝をする先天性魚鱗癬に大別し,さらに先天性魚鱗癬を非水疱型と水疱型に分けている.

5-Fluorouracil外用皮疹の電子顕微鏡像

著者: 上田惠一 ,   中安清 ,   松木正義

ページ範囲:P.620 - P.626

 5%5-Fluorouracil軟膏を外用した場合の脂漏性角化症,扁平疣贅における電顕所見につき報告した.
 脂漏性角化症では核と核小体の変化,さらにミトコンドリアの空胞化,リボゾームの減少などがみられ,扁平疣贅では核の変化と共にウイルス粒子の消失がみられた.

ソラーレンによる尋常性乾癬の治療の試み

著者: 戸田浄 ,   井村真 ,   小堀辰治

ページ範囲:P.627 - P.631

 8—methoxypsoralenおよびtrimethylpsoralenの内服,外用後長波長紫外線を照射し,尋常性乾癬の治療を試みた.8—MOPの外用および内服と長波長紫外線照射で皮疹の改善をみとめ,再発の時期も相当に長いので,今後,全身的な影響等副作用の検討の必要はあるが,尋常性乾癬に有用な治療法と考えられる.

連載 皮膚科学に貢献した医学者たち・25

スポロトリコージス(その2)

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.632 - P.637

7.アメリカにおける記述
 スポロトリコージスは,ほとんど世界的に広い分布を示すが,特に頻発するのは南アメリカで,サンーパウロの一クリニックだけで数百例の本症が記録されている.次いで頻発するのはアメリカ合衆国で,そこの中部諸州の北寄りの地方に多い.ここではアメリカの医真菌学者であるEmmons, BinrordおよびUtzによる記述6)を基にしてスポロトリコージスの一般について述べる.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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