icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科29巻8号

1975年08月発行

雑誌目次

図譜・394

Chancriform Pyoderma

著者: 田中治久 ,   浜口次生

ページ範囲:P.644 - P.645

患者 29歳,男子,会社員
初診 昭和49年3月23日

綜説

脂腺の生物学と病理学

著者: 佐藤良夫

ページ範囲:P.647 - P.656

脂腺の生物学
 外見上は脂腺に似た器官をもつ両棲類があり,鳥類の尾腺も構造的にも脂質を分泌する点でも脂腺によく似ている1)が,真の脂腺はほとんどすべての哺乳類に認められ,毛とともに哺乳類皮膚の特長的存在をなしている,しかし脂腺の構造,分泌物の性状は,動物の種類によつて一定していない.たとえばヒトの脂腺に常に存在するグリコゲンは,わずか2,3の霊長類やウサギの白色鼠径腺にみられるにすぎない1)
 脂腺をはじめて記載したのはEichorn (1826)2)である.それ以来150年近くたつた今日,脂腺に関する諸問題は相当明らかにされたが,詳細な点については不明なところも多い.その研究をおくらせている大きな理由は,技術的方法論的困難さによるものであろう.

原著

色素細胞母斑上に生じた悪性黒色腫について

著者: 森嶋隆文 ,   遠藤幹夫 ,   今川一郎 ,   森岡貞雄

ページ範囲:P.657 - P.662

 生下時から右下腹部に存していた手掌大の,病理組織学的に真皮内母斑を示す色素細胞母斑病巣の1部から悪性黒色腫の発生をみた23歳の男子例を報告した.悪性黒色腫の発生母地としての色素性母斑の多くは巨大色素性母斑を除けば,臨床的に遅発性の黒色小色素斑を呈するものと考えられるが,自験例の如く,生来性の局面をなす色素細胞母斑病巣からも悪性黒色腫が発生しうることをのべた.本例における悪性化の初発部位は色素細胞母斑病巣の表皮・真皮境界部であろうと推測されたが,かかる変化がかつて存した複合母斑の境界部活性,真皮内母斑の被覆表皮にみられるメラニン産生細胞あるいは真皮内母斑の被覆長皮に新らたに形成された境界部活性等のいずれに基づくかは判然としない,しかし,真皮内母斑であつても何らかの誘因が加わると,被覆表皮に境界部活性が新生しうるとの可能性について論じた.

エクリン汗嚢腫—稗粒腫とTrichostasis Spinulosaを伴なう1例

著者: 古沢範子

ページ範囲:P.663 - P.669

 38歳,男子にみられたエクリン汗嚢腫の1例を報告した.この症例は同一組織標本上に稗粒腫とtrichostasis spinulosaを相伴なつて認められた.連続切片による組織学的検索から,汗嚢腫,稗粒腫いずれもエクリン汗管由来のものであることが確認された.また汗嚢腫とそれに入り込む下方からの汗管との連絡像に興味ある所見が認められた.
 わが国では,これまでに32例のエクリン汗嚢腫が報告されているが,自験例を合わせ,これらを総括した.そして組織学的所見より,汗嚢腫は汗管の拡張嚢腫であることは疑いなく,その発症の根底に毛嚢脂腺系の先天異常が関係していると推定した.

Sezary症候群(T cell Erythroderma)の1例

著者: 笹岡和夫 ,   井上晃 ,   上平憲 ,   力丸正治 ,   広渡徳治 ,   高橋勇

ページ範囲:P.671 - P.676

 59歳,男.紅皮症,指趾の浸潤性紅斑,掌蹠角化と爪の萎縮を主徴とし,表在リンパ節腫,肝腫大,末梢血に異型細胞の出現(20%)をみとめたSezary症候群の1典型例を報告し,異型細胞の免疫細胞学的検索結果をもとに,Sezary細胞の起源,本症におけるいくつかの問題点について若干の考察を行なつた.
 自験例で,患者末梢血中にみられた異型細胞は,従来のSezary細胞の特徴を有し,免疫細胞学的検査では,羊赤血球を結合してロゼットを形成し,細胞表面に免疫グロブリンが証明されないことから,T-cell (胸腺由来リンパ球)に属するリンパ球であろうと推測された.また,末梢血のみならず,皮膚潮紅部にも,発疱膏貼布による水疱内細胞の検索で,対照に比し顕著なT-cellの浸潤が観察された.
 したがつて本症候群は,Winkelmannが主張するごとく,末梢血と皮膚にT-cellが異常に増殖した疾患(T cell erythroderma)であると考えられるが,独立疾患か否かは,まだ明らかでない.

硬化性萎縮性苔癬を伴なつた外陰癌

著者: 岸本三郎 ,   上田恵一 ,   松木正義

ページ範囲:P.677 - P.684

 81歳女子の外陰に硬化性萎縮性苔癬に続発したと思われる癌の1例を報告した.腫瘍の光顕・電顕組織像は典型的な有棘細胞癌(Broders 1度)であつた.腫瘍周囲の白斑では,組織学的に硬化性萎縮性苔癬像の部位とロイコプラキー様所見の部位があり,それらの関係は概して腫瘍に近づくほどロイコプラキー様所見の部位が多かつた.同時に同部の電顕的所見を検索し,有棘層ケラチノサイトにおいて核の異常を伴つた細胞があり,真皮上層部では,不定形物の間にコラーゲン線維が介在してみられた.また硬化性萎縮性苔癬の本邦報告の21例について統計的に観察し,外陰部にみられたものは7例,うち癌を伴なつたものは2例であつた.

Rothmund-Thomson Syndromeの1例

著者: 五十嵐稔 ,   佐藤昭彦 ,   加藤泰三

ページ範囲:P.685 - P.690

 種々の先天異常(屈指症・斜指症・骨喩合,受け口,小躯・小足)を伴つたRo—thmund-Thomson Syndromeの1例を経験した.皮膚の臨床像については,毛細血管拡張性紅斑・皮膚萎縮・色素沈着を主徴とする定型的なreticulated patternを呈したが,臨床検査成績では血小板数・LDHに異常を認めたにすぎない.病理組織学的検査では,角質増殖・表皮萎縮がみられたに止まり,表皮・真皮間結合の不安定性といつた所見はみられなかつた.免疫学的検索では,ツ反陰性・DNCB皮膚反応陰性・PHA添加リンパ球幼若化現象59%,血中リンパ球のsubpopulationにてB Cell 40.0%等の所見を得た.これのみで本症の発生機序を説明するには不充分であるが,今後の体液性並びに細胞性免疫機構に関しより詳細な検討が待たれるところである.

白血性細網肉腫症の1例

著者: 岡田哲哉 ,   田代正昭

ページ範囲:P.691 - P.697

 45歳,男で初診時全身に浸潤を有する丘疹,結節が認められた.肝,脾及び全身のリンパ節腫張は認められなかつた.組織学的には細網肉腫が疑われ,またその末梢血液学的所見において30%に及ぶ異型細胞の出現を見た.その異型細胞は種々の検索により皮膚への浸潤細胞と同一すなわち細網細胞と判明した.以上より本症例を白血性細網肉腫症と診断し,VEMP療法にて治療するも効果なく全経過5カ月にて死亡した.

先天性示指爪甲欠損症の2例

著者: 東禹彦 ,   池上隆彦 ,   朝田康夫

ページ範囲:P.699 - P.701

 1歳11カ月および5カ月女児に認められた先天性示指爪甲欠損症の2例を報告した.先天性示指爪甲欠損症は礒により命名されたもので,自験例を含めて本邦で13例になる.その特徴は生下時より両示指爪甲に形成異常を認める以外には骨,関節などに異常はなく,遺伝関係も異常がないということである.爪甲欠損の型は無爪型,矮爪型および多爪型の型が知られている.

肺癌を合併したBowen病の1例

著者: 友田信之 ,   中野正三 ,   谷村晃

ページ範囲:P.703 - P.707

 71歳,男性.砒素剤使用の既往はない.肺癌にて入院したが,一方10年前より右足背部に暗褐色を呈する5×4cmの境界明瞭な皮疹に気がついていた.生検の結果典型的Bowen病の像を呈していた.治療としてBowen病の全切除と,肺癌に対して右下葉切除を行つた.肺癌は組織学的に未分化癌であつた.
 肺癌を合併したBowen病の1例を報告し,本邦における内臓癌を合併したBowen病28例につき文献学的考察を加えた.

疥癬の多発について

著者: 飛見昭子 ,   金原武司

ページ範囲:P.709 - P.711

 国鉄職員と家族に多発した疥癬の事例(23例)について述べた.感染の場所は米原駅の宿泊所と推定された.治療としてはオイラックス軟膏が有効であつた.

連載 皮膚科学に貢献した医学者たち・26

落屑性紅皮症

著者: 高橋吉定

ページ範囲:P.712 - P.715

1.最初の記載者
 落屑性紅皮症(Erythrodermiadesquamativa)にはライネル病(Leiner's disease)の別名があるように,本症を初めて記載した人はライネルである.
 Karl Leinerは1871年1月33日にボヘミアで生まれた.彼が医学の勉学を行なつたのは,ウィーンとプラーハとであつて,学位をとつたのは1896年プラーハにおいてであった.卒業の後,ウィーンの皮膚科教室と病理学研究所(das PathologischeInstitut)において仕事を続け,やがてカロリーネ小児科病院の助手となった.1913年にはその病院の小児科講師の資格を得た.1920年から1930年4月34日の死去に至るまで,ウィーンのマウトネル—マルクホーフ(Mautner-Markhof)小児科病院において医長の勤務を続けた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?