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原著
文献概要
生下時から右下腹部に存していた手掌大の,病理組織学的に真皮内母斑を示す色素細胞母斑病巣の1部から悪性黒色腫の発生をみた23歳の男子例を報告した.悪性黒色腫の発生母地としての色素性母斑の多くは巨大色素性母斑を除けば,臨床的に遅発性の黒色小色素斑を呈するものと考えられるが,自験例の如く,生来性の局面をなす色素細胞母斑病巣からも悪性黒色腫が発生しうることをのべた.本例における悪性化の初発部位は色素細胞母斑病巣の表皮・真皮境界部であろうと推測されたが,かかる変化がかつて存した複合母斑の境界部活性,真皮内母斑の被覆表皮にみられるメラニン産生細胞あるいは真皮内母斑の被覆長皮に新らたに形成された境界部活性等のいずれに基づくかは判然としない,しかし,真皮内母斑であつても何らかの誘因が加わると,被覆表皮に境界部活性が新生しうるとの可能性について論じた.
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