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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科30巻1号

1976年01月発行

雑誌目次

図譜・399

限局性白癬性肉芽腫

著者: 山本哲雄 ,   中野和子

ページ範囲:P.6 - P.7

患者 10歳,男子
初診 昭和49年3月20日

総説

クリオフィブリノーゲン血症

著者: 島田義昌

ページ範囲:P.9 - P.15

 血液蛋白が低温下において沈降を起こす疾患としては,クリオグロブリン血症とクリオフィブリノーゲン血症が知られている.前者の沈降体は免疫グロブリンであり,免疫異常によつて発生する.後者の沈降体はフィブリノーゲンであり,血液凝固異常によつて発生する.両疾患とも,血液蛋白が低温下で沈降を起こすので,血管障害,循環障害,寒冷過敏症状,出血症状,潰瘍壊疽症状,その他を発生するが,著者がここで論ずるのは,クリオフィブリノーゲン血症についてである.クリオフィブリノーゲン血症は決して稀な疾患ではなく,特に皮膚科とは関係の深い症状を発生する.それなのに日常診療では殆ど注意されていない.著者はこれまで,クリオフィブリノーゲンの発生機序について実験的検討を加えていたが,いくつかの知見を得たので,この知見を中心にして,クリオフィブリノーゲン血症に関する綜説的考察を試みることにする.

原著

Cole-Engman症候群の1剖検例

著者: 木村恭一 ,   元木良昭 ,   藤田甫 ,   三浦国輝

ページ範囲:P.17 - P.21

 25歳をもつて死亡したCole-Engman症候群男子例を報告した.1)色素沈着,2)爪の変化,3)白板角化症の3主徴をそなえた完全型であり,再生不良性貧血を合併した.死亡の直接原因はPneumocystis carinii肺炎であつた.これはopportunistic infectionの1つとして最近注目されているものであり,その概念について簡単にふれてみた.

片側にのみ生じたDarier病の1例

著者: 井階幸一 ,   荻野篤彦

ページ範囲:P.23 - P.26

 22歳男子,大学生,左半身にのみ生じたDarier病の一例を報告した.1部,皮疹は帯状に配列しており,組織学的にはcorps ronds, grainsを認め,典型的なDarier病の所見を示す.Rookの教科書にはDarier病の約10%が片側性に出現するとあるが,実際には,もつと稀であるという報告も多い.治療としてビタミンA酸軟膏の単純塗布により軽快した.

青森県を中心とするTrichophyton verrucosumによる皮膚白癬症例

著者: 境繁雄 ,   亀田忠孝 ,   帷子康雄 ,   福士堯

ページ範囲:P.27 - P.32

 1971年より現在までに青森県を中心にT.verrucosumによる皮膚白癬を15例観察した.年齢は10〜61歳男10,女5人.発病月は6月の1例を除き,12〜4月.病型として頑癬型13例,集籏性毛嚢炎型2例,白癬性毛瘡型,ケルスス禿瘡型各1例(延数)であつた.直接鏡検で分節胞子型菌要素が多く,毛に対しては毛外性大胞子菌型寄生を示した.培養上,顕微鏡的形態は数珠状に連なる大小不同の分節胞子と介在性,末端性厚膜胞子が著明で,棍棒状大分生子もみられた,臨床像の特徴は炎症症状強く,中心治癒傾向少なく,毛,毛包を侵す傾向があり,既報告例と一致する.1例を除き,飼育中の牛に皮膚病巣を認めた.肉用和牛が主で,家族内感染,牛から犬を介し人に感染したと思われた例もあつた.

Garlic-Clove Fibromaの1例

著者: 東禹彦 ,   潮田妙子

ページ範囲:P.33 - P.35

 35歳,男子,仕立屋の右第5指に生じたgarlic-clove fibromaの1例を報告した.Garlic-clove fibromaはSteelによつて初めて報告されたもので,爪甲基部に生じ,爪甲を破壊して増大する良性の腫瘍に対して,ニンニクの鱗茎に形態が似ていることから名付けられたものである.Acquired digital fibrokeratornaと同一のものではないかという意見が多いが,自験例は組織学的にはacquired digital fibrokeratomaと一致せず,臨床像はSteelの症例に酷似している.

Lichen planopilarisの1例

著者: 濱松輝美 ,   関真佐忠 ,   池田重雄 ,   鳥居ユキ

ページ範囲:P.37 - P.43

 45歳女性.約1年前から左側頭部に,帽針頭大から小指頭大までの褐色ないし暗褐色の,扁平隆起性皮疹が帯状に配列して生じ,組織学的所見からlichen planopilarisと診断した1例を報告した.
 さらにlichen planopilarisとの関係がしばしば問題となるLassueur-Graham Little症候群との異同について文献的考察を加え,併せて両者の本邦報告例をまとめて検討した結果,lichen planopilarisとLassueur-Graham Little症候群とは同症とみなしたい.

Hunt症候群の4例

著者: 三浦隆 ,   五十嵐稔 ,   酉抜和喜夫

ページ範囲:P.45 - P.49

 昭和50年1月から同5月までの5カ月間に,4例のHunt症候群症例を相次いで経験した.これら4症例の臨床像,治療経過その他につき要約し,2,3の問題点につき考按した.

汗器官腫瘍の4例

著者: 多田廣祠 ,   荒田次郎 ,   吉田彦太郎

ページ範囲:P.51 - P.56

 典型的なeccrine spiradenoma, clear cell hidradenomaの2例と多彩な組織像を示した汗器官腫瘍2例を報告し,腫瘍をとりまく結合組織の重要性について私見を述べた.

螢光抗体法による迅速な水痘ウイルス感染細胞診

著者: 尾形正裕 ,   茂田士郎 ,   三浦裕 ,   太田瑛子 ,   飯島進 ,   長尾貞紀 ,   鈴木仁

ページ範囲:P.57 - P.61

 水痘ウイルスに対する特異的螢光抗体を家兎より作製し,市販の単純性疱疹ウイルスに対する螢光抗体と共に迅速な診断法として水疱液スタンプ標本によるウイルス感染細胞診を試みた.血清学的診断の際に問題となる両ウイルス間の免疫学的交叉反応は本法では障害とならず,きわめて特異性の高い手軽で迅速な実験室診断法である.又本法を末梢血白血球分画塗抹標本に用いて,そのリンパ球中に水痘ウイルス抗原を認めたので併せて報告した.

脂腺上皮腫の1例

著者: 加茂紘一郎

ページ範囲:P.63 - P.67

 脂腺上皮腫は組織学的に脂腺腺腫,基底細胞上皮腫との異同が問題となる腫瘍である.最近,本症をbasal cell epithelioma with sebaceous differentiationとする考え方が否定的となり,また脂腺腺腫とも組織学的に鑑別しうるものとされつつある.著者も本症の1例を経験し,考察を加えたが上記の考え方に賛意を表したい.

いわゆるHauser and Rothman型Candida granuloma

著者: 広永正紀

ページ範囲:P.69 - P.73

 22歳,女子.小学生の頃より,手の爪が混濁肥厚粗造となり爪囲炎を伴う.中学生の頃には,足の全爪に同様変化をみるに至る.約半月前より,左上眼瞼に睫毛一致性の膿疱性丘疹が生じ,下眼瞼にも拡大.やがて,眉毛・両頬部・鼻翼等に,黄褐色の厚い痂皮を付着する紅斑性局面を多発.顔面皮疹・口腔・爪病変よりCandida albicansを分離.P.P.D.,Candida抗原,trichophytinの皮内反応は全て陰性.DNCB感作は成立.PHA及びCan—dida抗原刺激によるin vitroリンパ球幼若化率,MIF産生,白血球の貪食能,NBT還元テストは全てnormal responseを示した.

全身性強皮症の1剖検例

著者: 斎田俊明 ,   輦止勝麿

ページ範囲:P.75 - P.83

要約 20歳でRaynaud現象をもつて発症し,徐々に皮膚の硬化,指趾の壊疽,嚥下困難,呼吸困難などを来たし,ついには高度の栄養不良状態を来たして32歳で死亡した全身性強皮症の女子例.末期のるいそうと衰弱は,消化管系統の硬化萎縮性変化の進行による摂食・嚥下困難と消化・吸収障害などによるものと考えられた.検査所見上では,抗核抗体陽性,レ線学的にhoneycomb lung状態と十二指腸のloop sign,末期の高度の貧血と低栄養状態が注目された.剖検により,1)食道から大腸に至る消化管の筋萎縮と線維化,2)肺の高度の間質性線維化と大小の嚢胞形成を示す典型的なhoneycomb lungの状態,3)右室肥大と心筋の巣状の萎縮線維化,4)脾臓沪胞動脈のonion skin lesion,5)全身末梢血管壁の線維性肥厚と内腔狭窄,6)皮膚では表皮の高度の萎縮と真皮結合織の硬化など本症の典型的な諸変化が見出された.
文献的に全身性強皮症の内臓病変と死因等につき検討を加えた.

汎発性帯状疱疹と帯状疱疹の補体結合性抗体価及び免疫グロブリンの変動の差等について

著者: 平野京子 ,   青木良枝

ページ範囲:P.85 - P.90

 帯状疱疹と汎発性帯状疱疹の免疫学的差異及び帯状疱疹が,しばしば汎発化する際の発症機序の免疫学的解明の一助として,汎発性帯状疱疹(H.Z.G.)の6例及び帯状疱疹(H.Z.)の8例について,経時的に補体結合性抗体価(CF抗体価)及び免疫グロブリンIgG,A,M価の消長等を観察した.その結果,Varicella-Zoster Virusに対するCF抗体価は,第10〜20病日間に,多くの症例が上昇した.また,H.Z.G.では全例が初診時より抗体を有していたのに反し,H.Z.では,発症時<4が3例あつた.Herpes simplex virusのCF抗体価は,2者共全例が共有していた.IgGについては,H.Z.G.では,初診時より急性期にかけて一度漸減した後で増量し,汎発化は5〜11病日間であり,5例がこの初期下降線上であつたのに対しH.Z.では5例が初診時より漸増した.IgAは,H.Z.G.では高値を示したが,H.Z.では6例が正常値で,消長線型は2者共に不定であつた.IgMは,H.Z.G.では正常値範囲にあつたが初診時より急性期にかけて漸減傾向を示したが,H.Z.では反対に急性期にかけて増加を示したが量的には一定しなかつた.末梢血液像は,2者共に,第20病日前後で総体的白血球増加がみられた以外は著明な変動は認められなかつた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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