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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科30巻10号

1976年10月発行

雑誌目次

図譜・408

非定型抗酸菌症

著者: 木村恭一 ,   吉原丘二子

ページ範囲:P.758 - P.759

患者 34歳,男(初診昭和50年5月17日)
 現病歴 初診の1年前より右第II指背に自覚症状のない丘疹を生じ,次第に症状増殖,局面を形成(図1).局所に外傷を受けた記憶はないが発病当時熱帯魚を飼育したことがある.他に皮疹およびリンパ腺の腫大を認めない.

綜説

Sjogren症候群—紅斑を主訴とした1例を中心にして

著者: 加茂紘一郎 ,   長島正治

ページ範囲:P.761 - P.771

 Sjogren症候群は,1933年Sjogren43)が進行性眼球乾燥症に関する従来の知見をまとめて記載したことに始り,Grosz16)がSjogren症候群の名称を与えた疾患である.本症は乾燥性角結膜炎(keratoconjunctivitis sicca, dry eye)及び口内乾燥症(xerostomia, dry mouth)のいわゆるsicca syn—dromeを主徴とし,従来はリウマチ様関節炎(R.A.)の合併頻度が高いものとされてきた.本症に対しGougerot-Houwer-Sjogren症候群42),Sjogren-Mikulicz症候群30—a)のあるいは単にsiccasyndromeという呼称もあるがいずれも同一の疾患をさしている.
 本症に合併する疾患としては,R.A.が多いとされていたが3,30—a),症例の増加とともに全身性紅斑性狼瘡(S.L.E.)1,26),全身性強皮症(P.S.S.)2,57),多発性筋炎(P.M.)8),潰瘍性大腸炎10),サルコイドーシス66)あるいは橋本病21,44,45,55)等,R.A.以外の自己免疫疾患の合併も少なくないことが明らかになつてきた.殊に最近では橋本病との関連性が強調されつつある45,63).なおSjogren症候群とその合併症との相関については一般に図1(浅川3))のように理解されている.

原著

リンパ管造影に併発した特異な紅斑—3例の報告

著者: 大槻典男 ,   金原武司 ,   川島愛雄 ,   松井修 ,   三崎俊光

ページ範囲:P.773 - P.777

 油性造影剤によるリンパ管造影法実施後,下肢リンパ行に一致すると思われる帯状紅斑を生じた3例を述べた.うち1例では,紅斑の走行にほぼ一致してリンパ管の内外に造影剤の異常な残留が見られた.紅斑の発生機序として,造影剤に因るspontaneous flare-up 現象が推測された.

サルコイドージスを合併した全身性強皮症の1例

著者: 中林康青 ,   石橋康正 ,   北郷修

ページ範囲:P.779 - P.784

 63歳,女性にみられたサルコイドージスを合併した全身性強皮症の1例を報告した.2年来のレイノー症状,皮膚硬化,肺線維化,肺拡散機能低下,食道下部の拡張など典型的な全身性強皮症の所見のほかに,前腕に播種する小丘疹,ツ反陰性,両側肺門リンパ節腫脹,ガンマグロブリン値上昇を認め,病理組織学的には前腕皮膚で結合織のSkleroseおよび類上皮細胞肉芽腫を,斜角リンパ節で類上皮細胞肉芽腫を認めた.全身性強皮症とサルコイドージスの合併は文献上1例を数えるのみである.そこでこれら2疾患およびSjogren症候群を含めた3者間の合併について考按を加えた.

免疫学的異常を伴なつたLichen Myxedematosusの1例

著者: 穐山富雄 ,   堀真 ,   山浦英明 ,   力丸正治 ,   高橋勇 ,   笹岡和夫 ,   計屋隆子 ,   山之内夘一

ページ範囲:P.785 - P.789

 33歳,男子.顔面,胸部,背部,肩および上腕部に板状の浸潤,肥厚と皮下硬結をみとめ,一部のものでは表面は丘疹状ないし小結節状であつた.経過中,関節痛,発熱,眼症状を伴ない,検査成績では甲状腺機能,骨髄所見は正常であつたが,細胞性免疫能の低下,補体第Ⅲ成分の減少,抗核抗体陽性などの免疫学的異常をみとめた.組織学的に線維芽細胞の増加をみとめ,組織化学的にヒアルロン酸の沈着を証明し,lichen myxedematosusと診断した.現在,ステロイド内服により,皮疹を含め全症状は消失し,経過観察中である.
 われわれが調べた限りでは,自験例のような免疫異常を伴なうlichen myxedematosusの報告は見当らない.本疾患と免疫異常との関連性について若干の考察を行なつた.

血清IgE高値を示す高齢者の慢性湿疹

著者: 須貝哲郎 ,   高橋洋子 ,   高木喬

ページ範囲:P.791 - P.797

 血清IgEが1,000u/ml以上を示した高齢者の慢性湿疹および中年層の乾燥性貨幣状湿疹ないし散布疹の患者18例について,その臨床像をまとめ,アトピー性皮膚炎との関連性について検討した.気管支喘息を合併した男女各2例においては,45歳以後に喘息を発症し,それとともに,あるいは遅れて発疹をみ,喘息発作と皮疹出現に関連性がみられ,かつ小児湿疹の既往や家族歴を有する例もあり,アトピー性皮膚炎の可能性が大きい.喘息を合併せぬ14例においても,60歳以上の高齢者群ではその皮膚症状が喘息合併群に類似し,乾燥性貨幣状湿疹型や痒疹型をとる中年層の皮疹との間に移行像がみられた.日光皮膚炎型の1例と痒疹型の1例を除き,皮疹は被覆部に好発し,容易に苔癬化,色素沈着および痒疹化の傾向は示した.これらがアトピー性皮膚炎かどうかについては今後の検討を要する.

右乳暈部に単発したClear Cell Acanthomaの1例

著者: 滝野長平 ,   有田里加

ページ範囲:P.799 - P.805

要約 22歳,女性.発症は15歳で瘙痒性小皮疹として気付く.漸次増大.初診時右乳暈自体の外側より下部にかけ,乳頭に接しそのほぼ半周を囲む勾玉状の蚕豆大,境界鮮明,軽度隆起性,黒褐色の局面で,軽度の鱗屑,痂皮を付し,幾分硬く触れ湿性の感触がある.周囲に炎症症状なく自覚症もない.組織学的には一見乾癬様で肥大,延長した表皮索はやや大型のグリコーゲンに富む明るい細胞の局面で占められ,病巣の境界は不鮮明ではあつたが本症と診断,全切除後植皮術施行,10カ月後残存乳暈部に再発をみたので,一見正常にみえる乳暈をもすべて再発巣と共に切除,植皮術を施行.組織学的には正常にみえた乳暈部にも表皮索内に初期変化がみられ,病変の顕症化の過程がある程度推測された.また本例の病変は右乳暈のみに限られ,組織学的に汗管との関係も考慮されたことなどから,本症としては特異例ではあろうが,その本態は腫瘍性あるいは母斑性の性格を示すものと考えた.

皮角の臨床・病理学的検討

著者: 木村俊次 ,   中村絹代 ,   長島正治

ページ範囲:P.807 - P.813

 最近15年間に当教室で臨床的に皮角と診断された新生物40例について臨床的および病理組織学的に検討を加えた.臨床的には男女比23対17で男女とも60歳台にピークがある.
 顔面に好発し,うち耳介,頬部に比較的多い.組織学的には尋常性疣贅14例,反転性毛嚢角化症6例,脂漏性角化症4例の順に多かつたが,老人性角化腫3例,ボーエン病2例,レ線角化症2例,有棘細胞癌1例で,これら癌および癌前駆症は8例20%を占めた.臨床像と組織像との間にはいくつかの関連性がみられたが,確定診断には組織学的検索が不可欠であつた.皮角とは独立疾患でも老人性角化腫の亜型でもなく,種々の基礎疾患を含んだ臨床的な症状名であるとする説を支持した.

自然退縮を見たMulticentric Bowen's Disease

著者: 木村恭一 ,   藤田甫

ページ範囲:P.815 - P.819

 25歳女子,外陰部に生じたいわゆるmulticentric Bowen's diseaseの1例を報告した.本例は妊娠をきつかけとして皮疹が自然に退縮してしまつたが,その原因は全く不明である.この疑問に関連して癌の自然退縮について若干の文献的考察を試みた.

尿素含有軟膏による角化症の治療と走査型電子顕微鏡による観察

著者: 堀嘉昭 ,   竹崎伸一郎 ,   宮沢七郎

ページ範囲:P.821 - P.826

 尿素含有軟膏が種々の角化症に有効であることは多数の臨床治験により認められている.
 我々は尋常性魚鱗癬,魚鱗癬様皮膚及び毛孔性紅色粃糠疹に尿素含有軟膏を外用し,その臨床効果をみると同時に,走査型電子顕微鏡によつて正常皮膚と比較しつつ,表皮角層の細胞を観察し,尿素含有軟膏の角化症にたいする効果を追究した.尿素含有軟膏の外用によつて,表皮角層の表層の細胞は滑らかとなり,細胞間隔は狭小となつた.これは正常皮膚角層の観察所見とほぼ同様であり,尿素含有軟膏は角化症に臨床的に有効であるが,微細構造的にもその効果が明らかとなつた.

薬剤

接触皮膚炎に対する抗ヒスタミン剤の効果

著者: 谷奥喜平 ,   矢村卓三 ,   武田克之 ,   島雄周平 ,   永井隆吉 ,   須貝哲郎 ,   籏野倫

ページ範囲:P.827 - P.830

 湿疹・皮膚炎の治療は外用療法を主とする他,全身的に抗ヒスタミン剤を投与することが多くの皮膚科医の考え方であるが,この抗ヒスタミン剤の投与の意義については必らずしも十分に明らかにされていない.抗ヒスタミン剤が蕁麻疹に有効であることはいうまでもない1)が湿疹・皮膚炎の発症にヒスタミンが関与するという積極的な証明は残念ながら寡聞にしてしらない.したがつて湿疹・皮膚炎の治療に抗ヒスタミン剤の投与が稀ならず行われているとはいえ,古くから抗ヒスタミン剤の有する局所麻痺作用と中枢抑制作用の他,炎症に伴なう血管透過性亢進抑制作用が期待されて止痒の意味で用いられているにすぎないようである.ましてや抗ヒスタミン剤が湿疹・皮膚炎に真に有効であるか否かを多数例を対象にした二重盲検試験の成績から検討した報告はないのが現況である.ここに私共が接触皮膚炎に対して抗ヒスタミン剤の効果を二重盲検試験により検討することを試みた所以がある.
 試験目的 抗ヒスタミン剤HS592の湿疹・皮膚炎の瘙痒に対する有効性と安全性を不活性プラセボを対照薬として二重盲検法により比較検討する.

抗生物質含有ステロイド軟膏によるアトピー性皮膚炎の治験

著者: 鬼頭芳子 ,   水野信行

ページ範囲:P.831 - P.836

 軟膏に抗菌作用のある化学物質を混入することは古くから行われており,例えば硼酸亜鉛華軟膏に硼酸を入れるようなものである.その目的は,殺菌・防かび作用による軟膏の安定化と,皮疹にある感染に対する働きを期待したものである.ステロイド軟膏が開発されてからも,種々の抗生物質をこれに入れる試みがなされて来た.それによつて起こる副作用についての批判もさることながら,まず抗生物質の混入が意味のある事であるかどうかが問題である.そこでわれわれは塩野義製薬からRinderon VG cream (以下RVGCと略す)とRin—deron V cream (以下RVCと略す)との提供を受け,アトピー性皮膚炎,特にその感染の多い状態について比較検討したので報告する.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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